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2024年介護・医療同時改定予測!医療連携の何が変わる?

元山 ゆず香

監修者

介護福祉士

元山 ゆず香

大学を卒業後、特別養護老人ホームにて現場業務に従事。その後、福祉系大手企業に入社し、エリアマネージャーとして、施設介護事業・居宅介護事業・障害福祉サービス事業でのエリアマネジメント・行政対応を経験。また、法人本部に異動し教育部門・監査担当部門の部長を歴任。現在は全国の介護・障害福祉事業所の支援やセミナーの開催、DXO株式会社での介護関連事業の支援などを実施。

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2024年は介護・医療同時改定の年です。介護報酬と診療報酬の両方で大きな方向転換が起こる可能性が高く、特に注目されている内容が「医療と介護の連携強化」です。厚生労働省で実施されている会議の中で、現在の連携体制と大きく変わる可能性も示唆されています。

この記事では、2024年の同時改定に関する情報の中で、医療介護連携に関する内容について詳しく解説します。この記事を読むことで、介護サービス事業所の運営において変化する内容が具体的にわかります。

介護・医療同時改定の背景

介護報酬改定は3年に1回、診療報酬改定は2年に1回実施されるため、6年に1回は介護と医療の同時改定が実施されます。そして、次に介護と医療の同時改定が実施される年にあたるのが2024年です。

過去に同時改定が実施された内容を確認すると、介護分野と医療分野の両方で大きな方向転換が行われてきました。そのため、今回の同時改定にも注目が集まっているのです。

また、2024年は障がい福祉サービス等報酬改定も重なっており、医療・介護・障がい福祉のトリプル改定が実施される年でもあります。そのため、3つの分野における連携強化など、さまざまな内容が検討されていくでしょう。

介護・医療同時改定のキーワードは2025年問題

介護・医療の同時改定において、把握しておくべきキーワードが「2025年問題」です。

2025年には、団塊の世代が75歳以上高齢者となり、急激な医療や介護の需要増加が予測されています。高齢者の人口増加によって、医療や介護の提供体系に大きな負荷がかかると指摘されている問題が2025年問題です。

さらに、2040年には団塊の世代の子供世代が75歳以上高齢者となることで、さらに医療や介護の提供体系がひっ迫すると言われています。

将来的に高齢者への社会保障費が増大し、労働力人口も減少し続けることが予測されているため、社会保障制度の持続可能性についても問われています。

次回の介護・医療同時改定では、2025年問題への対策が大きなテーマのひとつとなるでしょう。

介護報酬改定の方向性

2024年介護報酬改定は、地域包括ケアシステムの進化と介護現場の生産性向上を目指し、医療機関との連携を強化する方向性が示されています。

具体的には、訪問介護と通所介護の複合型サービス創設や、科学的介護の推進などが検討中です。医療と介護の連携強化については、医療計画と介護保険事業計画の整合性確保や、地域リハビリテーション支援体制の構築、かかりつけ医機能の強化に関する内容が検討されています。

また、予想される介護人材不足に対処するため、ICTやロボット技術の活用による生産性向上や、介護事業所の財務状況公開なども重要なポイントです。

参考:厚生労働省老健局「介護分野の最近の動向について」

診療報酬改定の方向性

次回の診療報酬改定では、新型コロナウイルス感染症の対応を通じて明らかになった地域医療・介護提供の課題解決が重要とされています。

2025年に医療提供体制がひっ迫する問題を見据え、地域医療構想の推進に向けた「医療・介護人材の確保」と「働き方改革」が必要です。そのために、地域包括ケアシステムの進化と各地域の特性を活かした柔軟な体制構築が求められており、限られた社会資源の効率的利用によって全世代型の社会保障制度の実現を目指しています。

デジタル化とデータヘルスの推進によって、医療・介護分野での連携を強化することも重要です。患者や利用者の情報共有を進め、客観的なデータに基づいた医療・介護提供体制の構築が求められています。

地域共生社会の実現に向け、孤独や孤立、生活困窮の問題解決と地域の包括的支援体制構築にも力を入れる必要があります。医療と介護だけの問題ではなく、地域の将来像を踏まえた「まちづくり」の一環として医療・介護提供体制の整備を進めていくことが重要です。

次回の診療報酬改定では、地域医療構想を推進しつつ、医療と介護の連携強化を一体的に推し進めることが求められています。

参考:厚生労働省医政局地域医療計画課「地域医療構想について」
参考:厚生労働省「診療報酬改定の基本方針 参考資料」

介護・医療の同時改定に向けた方向性

厚生労働省の資料「診療報酬改定の基本方針 参考資料」では、介護・医療の同時改定に向けて出されている意見について記載されています。ここでは、介護・医療同時改定に向けて出されている意見について、厚生労働省の資料をもとにわかりやすく解説します。

引用:厚生労働省「診療報酬改定の基本方針 参考資料」

医療・介護・障がい福祉サービスの連携

地域包括ケアシステムを推進するためには、医療・介護・障がい福祉サービスの連携が重要です。また、これらの連携は単なる情報の提供や閲覧ではなく、相互のコミュニケーションを深めるものでなければいけません。相互にコミュニケーションを深めながら、患者や利用者、家族と共に目標に向かって質の高いケアを実現することが重要です。

医療・介護・障がい福祉サービスの連携を強化するためには、各施設や職種が各自の機能を十分に発揮し、マルチタスクで協力しながらサービスを提供することが求められます。

特に、医療・介護の連携において、ケアマネージャーと主治医の連携が重要です。ケアマネージャーと主治医の情報共有により、適切なケアマネジメントを実現できます。ケアマネージャーと主治医の連携強化へ向けた具体策として、ICTの活用や窓口設置も提案されています。

リハビリテーション・口腔・栄養における医療介護連携

介護・医療の同時改定に向けた意見として、リハビリテーション、口腔、及び栄養の一体的な取組みが重要視されています。

 リハビリテーション・口腔・栄養においては、多職種が連携して速やかに評価や介入を行える体制を構築することが重要です。その際、患者の経過を継続的に観察している看護職が中心となって情報を共有し、早期の対応につなげる体制構築が必要とされています。

急性期から生活期への移行において、医療側のリハビリテーションから介護事業者のリハビリテーションに円滑に移行できていない現状も指摘されています。リハビリテーションにおける連携体制構築も重要な課題のひとつです。

口腔の面では、歯科専門職以外の職種による口腔アセスメントの普及が必要とされています。また、栄養の側面では、潜在的な低栄養の高齢者への対策と退院後の栄養・食生活支援が必要です。

要介護者等の高齢者に対応した急性期入院医療

限られた医療資源を有効活用するため、要介護の高齢者に対する急性期医療は、介護保険施設の医師や地域包括ケア病棟が中心的に担うことが検討されています。

急性期病院においては、高齢者の生活機能の低下を防ぐために、チーム医療による早期の離床を促進することが求められています。また、入退院支援においては、薬剤管理が重要とされており、医療機関と高齢者施設との情報共有が重要です。

急性期病院における介護やリハビリの人材確保は困難であり、多職種でお互いの機能を担うタスクシフト・タスクシェアによる連携が必要となることが指摘されています。

高齢者施設・障害者施設等における医療

高齢者施設における医療提供は、人材不足と厳しい保険財政の中で大きな課題となっています。施設内での対応力向上を図りつつ、外部の医療機関との連携を強化し、緊急時の対応や医療・介護の連携体制を進めることが必要です。

厚生労働省の資料では、各高齢者施設の協力医療機関と位置付けられていながら、実質的には連携できていない実態も指摘されていました。今後は、協力医療機関との実質的な連携が求められており、急変時の速やかな対応や予防的な関わりを重視する観点から、協力医療機関の看護師による訪問看護の推進も検討されています。

また、高齢者施設から医療機関へ救急車を利用した搬送が一部で見られるものの、これは医療資源の適切な利用や本人・家族の利益につながらないとも指摘されています。そのため、医師あるいは特定行為の看護師による助言・判断を、高齢者施設の職員がリアルタイムで簡単に受けられるような仕組みも検討中です。

高齢者施設における医療ニーズは拡大しており、高齢者施設の対応力強化と協力医療機関との連携強化が必要とされています。

認知症における医療介護連携

認知症患者への対応には、医療・介護現場での尊重と多職種連携が重要です。地域包括ケアシステムでは、認知症の早期発見と重度化予防に努め、適切な医療サービスの提供が必要とされています。

特に、薬剤管理や歯科治療、外来看護師による相談が重要視され、認知症初期支援においてかかりつけ医の役割も重要です。また、医療機関や介護保険施設では、認知症対応力向上と身体拘束の低減・ゼロを目指し、療養病床での身体拘束外しの工夫が進められています。

今後は、認知症患者に関する医療・介護の情報連携が重要であり、本人の意思を尊重した丁寧な検討によって課題を解決していく必要があります。

人生の最終段階における医療介護連携

人生の最終段階における医療・介護では、患者の意思確認とその尊重が重要です。特に、認知症の増加を考慮し、事前に本人の意思を共有することが必要とされます。そのためには、かかりつけ医が重要な役割を果たします。

また、人生の最終段階における医療・介護提供では、在宅診療や施設での緩和ケアを専門とする医師との連携が必要で、ICTを利用した情報共有が必要です。

緩和ケアの提供には、日常からの連携体制構築が重要であり、特に非がんの緩和ケアの提供についても検討が求められています。看取りの取組み強化とともに、医療と介護の連携を図るための標準的な情報交換フォーマットの策定も検討中です。

訪問看護における医療介護連携

厚生労働省の資料では、介護保険と医療保険の訪問看護に関する制度上の差異について言及されています。

訪問看護事業所は、利用者に対する訪問看護計画に基づき、継続的なケアを実施しています。しかし、ターミナル期などでは、保険の適用が介護保険から医療保険に移行しなければいけません。医療保険に移行することで、加算の要件を満たさなくなる場合や、事業所の体制に関して介護保険と医療保険で要件が異なる場合があるのです。

重度者の医療ニーズ対応や看取りを実施する事業所への評価に関して、同時改定での整理・検討が必要とされています。

同時改定後に医療介護連携で変わること

2024年の介護・医療同時改定において、医療介護連携の体系が大きく変化します。ここでは、現在検討されている内容をもとに2024年の改定移行で変化する内容について、簡潔にわかりやすく解説します。

協力医療機関との連携が強化される

要介護状態の高齢者が増加することで、高齢者施設における医療ケアのニーズが増加していくと予測されています。しかし、高齢者施設と協力医療機関との連携が積極的に行われていない実態も指摘されています。

これらの実態を踏まえて、今後は高齢者施設と協力医療機関との連携強化が求められるでしょう。

例えば、介護老人ホームへ協力医療機関の看護師が定期的に訪問するなどの案が検討されています。また、医師あるいは特定行為の看護師による助言・判断を、高齢者施設の職員がリアルタイムで簡単に受けられるような仕組みも検討中です。

介護サービス事業所と協力医療機関との連携強化を見据えて、今から準備を進めていくとよいでしょう。

医療・介護における情報基盤の構築

現在、リハビリテーションや認知症支援などにおいて、医療機関から介護事業所へ移行した際の連携体制に関する問題が指摘されています。

これらの課題解決に向けて、デジタル化やデータヘルスの推進が有効とされています。また、患者の経過を継続的に観察している看護職が中心となって情報を共有し、早期の対応につなげる体制構築も検討中です。

将来的には、介護と医療が共有できるデータベースを構築し、医療と介護を一体的に提供できる情報基盤の構築が必要とされています。

まとめ:2024年同時改定によって医療介護連携が強化される

この記事では、2024年の介護・医療同時改定による医療介護連携の変化について解説しました。

2024年は介護報酬改定と診療報酬改定が同時に実施される年であり、2025年問題への対策として、その方針が明確化される重要なタイミングでもあります。

今後、高齢者は増加し、生産年齢人口が減少する中で、社会保障制度の持続可能性が問われています。人材と財源が限られてくる中で、医療と介護を安定的に提供するためには、介護と医療の連携強化が重要とされています。

現在、さまざまな方面から医療介護連携の強化が検討されています。具体的には、高齢者施設と協力医療機関との連携強化や、医療と介護で情報共有を図るための情報基盤の構築などが挙げられています。

次回の同時改定後、医療介護連携が強化されることは間違いありません。今後、2024年4月施行に向けて、より具体的な連携強化の方針が示されていくでしょう。厚生労働省からの情報をいち早く確認して、関連の医療機関と連携できる体制を整えていくことをおすすめします。

 

参考資料:

厚生労働省老健局「介護分野の最近の動向について」

厚生労働省医政局地域医療計画課「地域医療構想について」

厚生労働省「診療報酬改定の基本方針 参考資料」

 

お役立ち資料:介護報酬改定に備えたい方に

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2024年の介護報酬改定に向けて、事前に準備をしておきたいという方は、ぜひご一読ください。
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