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介護報酬改定のポイント!医療・介護の連携機能及び提供体制等の基盤強化

元山 ゆず香

監修者

介護福祉士

元山 ゆず香

大学を卒業後、特別養護老人ホームにて現場業務に従事。その後、福祉系大手企業に入社し、エリアマネージャーとして、施設介護事業・居宅介護事業・障害福祉サービス事業でのエリアマネジメント・行政対応を経験。また、法人本部に異動し教育部門・監査担当部門の部長を歴任。現在は全国の介護・障害福祉事業所の支援やセミナーの開催、DXO株式会社での介護関連事業の支援などを実施。

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人生100年時代における持続可能な社会保障制度を確立するため、今後さまざまな改革が行われる予定です。その中でも、介護サービス事業所に大きく影響を与えるのが「医療・介護の連携機能及び提供体制等の基盤強化」です。

この記事では、医療・介護の連携機能及び提供体制等の基盤強化の内容について解説します。この記事を読むことで、この制度が介護サービス事業所の運営に与える影響について理解できます。

全世代型社会保障制度とは

全世代型社会保障制度は、令和元年に政府が立ち上げた検討会議を通じて、年齢を問わず全ての国民が安心して生活できる基盤を築くことを目指す制度です。この検討会議によって、令和5年5月19日に公布された法律が「全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律」です。厚生労働省の資料「全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律案の概要」によると、法案の趣旨として以下のように示されています。

改正の趣旨

全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するため、出産育児一時金に係る後期高齢者医療制度からの支援金の導入、後期高齢者医療制度における後期高齢者負担率の見直し、前期財政調整制度における報酬調整の導入、医療費適正化計画の実効性の確保のための見直し、かかりつけ医機能が発揮される制度整備、介護保険者による介護情報の収集・提供等に係る事業の創設等の措置を講ずる。

引用:厚生労働省「全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律案の概要」

この制度は、人生100年時代に向けて、子どもから高齢者まで、全ての世代が互いに支え合いながら生活できる社会を構築することを目的としています。

この制度では、個人の能力や状況に応じた負担と支援を実現し、社会全体の安定と発展を図ることにあります。特に、就労意欲のある高齢者や子育て中の女性の意欲を活かし、社会保障の支え手を維持することが重視されています。

全世代型社会保障制度では、以下の4つを中心に法改正が行われていきます。

 

  • 子ども・子育て支援の拡充
  • 高齢者医療を全世代で公平に支え合うための高齢者医療制度の見直し
  • 医療保険制度の基盤強化等
  • 医療・介護の連携機能及び提供体制等の基盤強化

 

上記の中でも、介護保険制度は「医療・介護の連携機能及び提供体制等の基盤強化」に該当します。2024年に介護報酬改定を控えている介護保険制度において、全世代型社会保障制度は重要なポイントになるでしょう。次回改定の傾向を把握するためにも、全世代型社会保障制度を理解しておく重要性は高いでしょう。

医療・介護の連携機能及び提供体制等の基盤強化とは

厚生労働省の資料「全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律案の概要」によると、医療・介護の連携機能及び提供体制等の基盤強化について以下のように記載されています。

医療・介護の連携機能及び提供体制等の基盤強化

① かかりつけ医機能について、国民への情報提供の強化や、かかりつけ医機能の報告に基づく地域での協議の仕組みを構築し、協議を踏まえて医療・介護の各種計画に反映する。
② 医療・介護サービスの質の向上を図るため、医療保険者と介護保険者が被保険者等に係る医療・介護情報の収集・提供等を行う事業を一体的に実施することとし、介護保険者が行う当該事業を地域支援事業として位置付ける。
③ 医療法人や介護サービス事業者に経営情報の報告義務を課した上で当該情報に係るデータベースを整備する。
④ 地域医療連携推進法人制度について一定の要件のもと、個人立の病院等や介護事業所等が参加できる仕組みを導入する。
⑤ 出資持分の定めのある医療法人が出資持分の定めのない医療法人に移行する際の計画の認定制度について、期限の延長(令和5年9月末→令和8年12月末)等を行う。

引用:厚生労働省「全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律案の概要」

医療・介護の連携機能及び提供体制等の基盤強化では、これまで別々に行っていた情報収集を医療機関と介護施設で共有する内容が含まれています。また、介護施設の経営情報の報告義務によって、データベースを整備する点にも注意は必要です。これらの内容によって、全国の介護サービス事業所に大きな影響を与える可能性が高いでしょう。

医療・介護の連携機能及び提供体制等の基盤強化の内容

今後、「医療・介護の連携機能及び提供体制等の基盤強化」が推進されることで、介護サービス事業所の運営に大きな影響を与えるでしょう。ここでは、その内容について詳しく解説していきます。

介護情報基盤の整備

介護情報基盤の整備は、医療と介護におけるサービスの質を向上させ、より効率的なサービス提供を目指す取り組みです。

現在、介護情報は各介護事業所や自治体に分散しており、各施設で効率的に情報を収集できていません。この情報を一元化して、電子的に共有可能な情報基盤を構築することで、利用者、介護事業者、医療機関、自治体が効果的に情報を利用できるようになります。

具体的なメリットとして、自治体は地域の介護保険事業の運営を効率化し、利用者は自身の介護情報を把握して自立支援を推進させやすくなります。また、介護事業者と医療機関においては、提供するサービスの質を向上させられるでしょう。また、紙ベースのやり取りが減少し事務負担が軽減される点も、この制度におけるメリットのひとつです。

この情報基盤の整備は、地域支援事業として位置付けられ、保険者である市町村が実施主体となり、地域での自立した生活支援を目的として推進される予定です。

介護サービス事業者の財務状況等の見える化

介護サービス事業者の財務状況等の見える化は、政策立案と適切な支援策の検討を行うために、介護事業者の財務状況を明らかにする取り組みです。

この制度により、介護サービス事業者は詳細な財務状況の報告を行い、国は収集した情報を整理・分析して公表します。具体的な内容としては、経営情報の収集とデータベースの整備、収集した情報を属性等に応じてグルーピングし分析結果を公表する制度が創設される予定です。

これにより、将来的な人口動態変化や新興感染症等による影響を踏まえ、的確な支援策の検討が可能となります。また、3年に1度の介護事業経営実態調査を補完し、より正確な経営実態を把握しやすくなるでしょう。

この制度は、原則として全ての介護サービス事業者が対象となります。さらに、公表は国民に分かりやすい形で行われ、利用者が介護サービス事業者を選びやすくなるように、情報公表制度の見直しも併せて行われる予定です。

これらの取り組みにより、介護事業者の財務状況の透明性が向上し、制度の持続可能性と介護・医療サービスの質向上につながることも期待されています。

生産性の向上に資する取り組みに係る努力義務

介護サービス事業所等における生産性の向上に資する取り組みに係る努力義務とは、介護現場での生産性を向上させるために実施する新しい枠組みを示しています。

この改正では、都道府県介護保険事業支援計画において、生産性向上に関連する事項を任意記載事項として追加しなければいけません。これにより都道府県は地域単位でのモデル事業所の育成や取り組みを推進し、生産性向上の支援の拡充を図れます。

また、市町村介護保険事業計画の任意記載事項にも、生産性向上に資する都道府県との連携に関する事項が追加され、地域全体での協力体制の強化が図られるでしょう。

この改正により、一つの介護事業者だけの自助努力に依存するのではなく、地域全体で介護現場の生産性向上とサービスの質向上を実現する基盤強化が期待されています。

看護小規模多機能型居宅介護のサービス内容の明確化

看護小規模多機能型居宅介護(看多機)におけるサービス内容の明確化とは、看多機の更なる普及を目指す取り組みであり、サービス内容を法律上明確に定義する内容となっています。

看多機は、訪問看護と小規模多機能型居宅介護を組み合わせ、多様なサービスを一体的に提供する複合型サービスです。

この改正により、看多機のサービス内容における「通い」「泊まり」の際の看護サービスが明確に定義され、法律上の位置付けも明確化されます。

これにより、看多機の普及が進められ、要介護者の在宅生活をさらに支援しやすくなることが期待されています。

地域包括支援センターの体制整備等

地域包括支援センターの体制整備では、地域住民への支援をより適切に行うための新しい枠組みを提供することを目的としています。

この改正によって、地域の複雑化・複合化したニーズや家族介護者支援の充実に対応し、地域包括支援センターの役割と業務を強化できるでしょう。

具体的には、市町村から指定を受けることで、居宅介護支援事業所でも介護予防支援を実施できるようになります。これにより、地域包括支援センターは、一部の相談支援業務を居宅介護支援事業所のケアマネージャー等に委託できるようになります。

この改正によって、地域の資源を効果的に活用し、地域のケアマネージャーと連携を図りながら、地域住民への支援をより適切に行う体制が整えられるでしょう。

医療・介護の基盤強化によって介護事業所が受ける影響

医療・介護の基盤強化によって、多くの介護サービス事業所の運営に影響を与えることが予測されます。ここでは、法改正によって介護事業所が受ける影響について解説します。

LIFE(科学的介護情報システム)の役割が重要になる

厚生労働省の資料「全国介護保険担当課長会議資料(令和5年7月31日)」では、介護情報整備基盤の整備において、LIFEや要介護認定情報などを収集・整理する事業を計画していると記載しています。

共有する情報の範囲や共有先については「検討中」としながらも、資料上では、医療機関や自治体、利用者本人と共有することを想定しているようです。

2021年介護報酬改定から本格的に導入されたLIFEですが、今後さらに重要性が増していくでしょう。まだ導入していない事業所は、早めに導入することをおすすめします。

参考:厚生労働省「令和5年度 全国介護保険担当課長会議資料 総務課」

経理関係の業務負担が大きくなる

医療・介護の基盤強化では、介護サービス事業者の財務状況等の見える化も検討されています。財務諸表の見える化において懸念されているのが、小規模事業所における事務負担の増大です。

政府は、これまで通りの経理業務と変わらないため、事業所の負担が増大することは想定していないようです。しかし、小規模な事業所になると、ちょっとした業務の負担がその他の業務に大きな影響を与えることもあるでしょう。

どのような手順で財務諸表データを提出するのか明らかになっていませんが、これまでの経理業務に加えて「行政にデータを提出する」という業務が増える可能性があります。今から、会計業務の整理や財務諸表の見直しなどの準備を進めていくとよいでしょう。

まとめ

この記事では、来年の介護報酬改定において重要なポイントとなる「医療・介護の連携機能及び提供体制等の基盤強化」について解説しました。

医療・介護の連携機能及び提供体制等の基盤強化とは、政府が主導している全世代型社会保障制度における取り組みのひとつです。

医療・介護の連携機能及び提供体制等の基盤強化として、介護情報基盤の整備、財務諸表の見える化、生産性向上に資する取り組みなどが挙げられます。この改正によって、LIFEの重要度が増し、事業所の会計業務に負担が増大することが予測されます。

介護保険制度だけでなく、国の社会保障制度全体の問題として位置付けられているため、次回の介護報酬改定において重要なポイントとなる可能性は高いでしょう。

今後も最新情報を確認して、今から準備できるものは、少しずつ準備を始めていくことをおすすめします。

 

参考資料:

厚生労働省「全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律案の概要」

厚生労働省「令和5年度 全国介護保険担当課長会議資料 総務課」

厚生労働省「全世代型社会保障改革」

 

お役立ち資料:介護報酬改定に備えたい方に

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