2021年に3年に1度の介護報酬改定が行われました。
この記事では改定内容について、認知症対応型共同生活介護(グループホーム)における改定内容について徹底紹介していきたいと思います。
目次
グループホームの改定について知る前に、そもそも介護報酬改定とは何か知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。
介護報酬改定とは?2021年の改定内容や何年ごとに行われるかなどについて徹底解説!
2021年に行われた介護報酬改定では、グループホームに関係する部分も多く変更がなされました。
改定内容について、1つずつ説明していきます。
グループホームの基本報酬も変更され、それぞれの場合で3〜4単位増加となっています。
詳しい単位数は以下の表をご覧ください。
認知症対応型共同生活介護費Ⅰ(入居で1ユニットの場合)
改定前 | 2021年改定後 | |
要支援2 | 757単位 | 760単位 |
要介護1 | 760単位 | 764単位 |
要介護2 | 797単位 | 800単位 |
要介護3 | 820単位 | 823単位 |
要介護4 | 837単位 | 840単位 |
要介護5 | 854単位 | 858単位 |
認知症対応型共同生活介護費Ⅱ(入居で2ユニット以上の場合)
改定前 | 2021年改定後 | |
要支援2 | 745単位 | 748単位 |
要介護1 | 749単位 | 752単位 |
要介護2 | 784単位 | 787単位 |
要介護3 | 808単位 | 811単位 |
要介護4 | 824単位 | 827単位 |
要介護5 | 840単位 | 844単位 |
短期利用認知症対応型共同生活介護費Ⅰ(短期利用で1ユニットの場合)
改定前 | 2021年改定後 | |
要支援2 | 785単位 | 788単位 |
要介護1 | 789単位 | 792単位 |
要介護2 | 825単位 | 828単位 |
要介護3 | 849単位 | 853単位 |
要介護4 | 865単位 | 869単位 |
要介護5 | 882単位 | 886単位 |
短期利用認知症対応型共同生活介護費Ⅱ(短期利用で2ユニット以上の場合)
改定前 | 2021年改定後 | |
要支援2 | 773単位 | 776単位 |
要介護1 | 777単位 | 780単位 |
要介護2 | 813単位 | 816単位 |
要介護3 | 837単位 | 840単位 |
要介護4 | 853単位 | 857単位 |
要介護5 | 869単位 | 873単位 |
参考:厚生労働省
看取り対応充実のため、これまで算定されていなかった死亡以前31〜45日以下の部分でも看取り介護加算が算定されることになりました。
1日72単位が算定されます。
これまでは死亡日の30日前以下で算定されていましたが、看取りケアに30日以上をかけているケースが多いのを反映した形です。
死亡日前30日以下で算定される単位数はそれぞれ変更がありませんでした。
短期利用を除く看取り介護加算は以下のようになっています。
改定前 | 2021年改定後 | |
死亡日以前31~45日以下 | ー | 72単位/日(新設) |
死亡日以前4~30日以下 | 144単位/日 | 144単位/日 |
死亡日以前2日又は3日 | 680単位/日 | 680単位/日 |
死亡日 | 1280単位/日 | 1280単位/日 |
参考:厚生労働省
看取り介護加算について詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。
緊急時短期利用の受入人数、受入日数、利用可能な部屋についての要件が変更になりました。
緊急時短期利用は、認知症グループホームにおける緊急に利用が必要になった場合の定員を超えての短期利用のことです。
2021年の介護報酬改定ではグループホームが地域における認知症ケアの拠点として、緊急時の宿泊ニーズを受け止められるように下記のように受入要件が緩和されました。
緊急短期入所受入加算は90単位/日で変更ありません。
変更内容は以下の通りです。
<受入人数>
「1事業所1名まで」から「1ユニット1名まで」に変更。
<受入日数>
「7日以内」から「やむを得ない事情がある場合には14日以内」に変更。
利用者の日常生活上の世話を行う家族の疾病などの場合に適応されます。
<利用可能な部屋>
「個室」から「おおむね7.43㎡/人でプライバシーの確保に配慮した個室的なしつらえが確保される場合には、個室以外も認める」に変更。
グループホームのユニット数は「原則1又は2、地域の実情により事業所の効率的運営に必要と認められる場合は3」から「1以上3以下」に弾力化されました。
また、人材の有効活用、利用者に身近なサービス提供を目的としてサテライト型事業所の基準も設定されています。
サテライト型の代表者や管理者は本体事業所と兼務でき、計画作成担当者は認知症介護実践者研修を修了した者なら配置可能です。
サテライト型事業所のユニット数は本体事業所のユニット数を上回らず、合計が最大4までと定められています。
グループホームにおける栄養改善の取り組みとして、栄養管理体制加算が新たに設立されました。
管理栄養士が日常的な栄養ケアに関わる介護職員への技術的助言や指導を行うことで加算されます。
加算単位は30単位/月です。
夜勤職員の配置は1ユニットに1人以上とされていましたが、条件を満たすと3ユニットで2人の配置での夜勤が可能になりました。
利用者の安全確保や職員の負担にも留意しつつ、人材の有効活用を図ることを目的としています。
3ユニットのグループホームで、例外的に夜勤2人以上の配置をとることのできる要件は以下です。
・各ユニットが同一階に隣接している
・職員が円滑に利用者の状況把握ができる
・速やかな対応が可能な構造である
・安全対策(マニュアルの策定、訓練の実施)をとっている
3ユニットの夜勤を2人で行う場合、1日あたりの単位数は2ユニット以上の場合の基本報酬からマイナス50単位で算定されます。
認知症グループホームに医療ニーズのある方の積極的な受け入れを行うため、医療連携体制管理加算を算定できる医療的ケアが追加されました。
従来の喀痰吸引・経腸栄養に加え、下記の医療的ケアが必要な状態が追加されています。
・呼吸障害等により人工呼吸器を使用している状態
・中心静脈注射を実施している状態
・人工腎臓を実施している状態
・重篤な心機能障害、呼吸障害等により常時モニター測定を実施している状態
・人工膀胱又は人工肛門の処置を実施している状態
・褥瘡に対する治療を実施している状態
・気管切開が行われている状態
算定日が属する月の前12月間において、上記のいずれかに該当する状態の入居者が1人以上いると医療連携体制加算(Ⅱ)または(Ⅲ)が算定可能です。
認知症への対応を強化するため、認知症専門ケア加算(Ⅰ) 3単位/日と、認知症専門ケア加算(Ⅱ) 4単位/日が新設されました。
算定要件は以下の通りです。
<認知症専門ケア加算(Ⅰ)>
・認知症高齢者の日常生活自立度Ⅲ以上の者が利用者の100分の50以上
・認知症介護実践リーダー研修修了者を認知症高齢者の日常生活自立度Ⅲ以上の者が20名未満の場合は1名以上、20名以上の場合は1に、当該対象者の数が19を超えて10又は端数を増すごとに1を加えて得た数以上配置し、専門的な認知症ケアを実施
・当該事業所の従業員に対して、認知症ケアに関する留意事項の伝達又は技術的指導に係る会議を定期的に開催
<認知症専門ケア加算(Ⅱ)>
・認知症専門ケア加算(Ⅰ)の要件を満たし、かつ、認知症介護指導者養成研修修了者を1名以上配置し、事業所全体の認知症ケアの指導等を実施
・ 介護、看護職員ごとの認知症ケアに関する研修計画を作成し、実施又は実施を予定
引用:厚生労働省
口腔機能低下の早期発見、適切な管理を行うため介護職員が実施可能な口腔・栄養スクリーニング加算も2021年の介護報酬改定で新設されました。
単位数は以下の通りです。
改定前 | 2021年改定後 |
栄養スクリーニング加算 5単位/回 | 口腔・栄養スクリーニング加算(Ⅰ)20単位/回 |
口腔・栄養スクリーニング加算(Ⅱ)5単位/回 (6ヶ月に1回を限度) | |
口腔機能向上加算 150単位/回 | 口腔機能向上加算(Ⅰ) 150単位/回 (改定前と同様) |
口腔機能向上加算(Ⅱ) 160単位/回 (原則3月以内、月2回を限度) |
参考:厚生労働省
それぞれの算定要件は以下のようになっています。
<口腔・栄養スクリーニング加算(Ⅰ)>
確認した情報を利用者を担当する介護支援専門員に提供する。(※栄養アセスメント加算、栄養改善加算及び口腔機能向上加算との併算定不可)
<口腔・栄養スクリーニング加算(Ⅱ)>
利用者が、栄養改善加算や口腔機能向上加算を算定している場合に、口腔の健康状態と栄養状態のいずれかの確認を行う。
確認した情報を担当する介護支援専門員に提供していること。(※栄養アセスメント加算、栄養改善加算又は口腔機能向上加算を算定しており加算(Ⅰ)を算定できない場合にのみ算定可能)
<口腔機能向上加算(Ⅱ)>
口腔機能向上加算(Ⅰ)の取組に加え、口腔機能改善管理指導計画等の情報を厚生労働省に提出する。
口腔機能向上サービスの実施にあたって当該情報その他口腔衛生の管理の適切かつ有効な実施のために必要な情報を活用していること。
引用:厚生労働省
2021年の介護報酬改定では、科学的介護推進体制加算(LIFE加算)も新設されました。グループホームにも適応され、加算単位数は40単位/月です。
科学的介護推進体制加算とは、科学的介護情報システムに全ての利用者のデータを提出しフィードバックを受け、PDCAサイクルをまわすことで算定される加算です。
提出するデータはADL、栄養、口腔・嚥下、認知症などです。
得られたフィードバックを通所介護計画の見直しやサービスの提供に活かすことが算定の要件となっています。
サービスの質の向上や職員のキャリアアップ推進を目的として、サービス提供体制強化加算の見直しも行われました。
グループホームにおける加算条件は以下の通りです。
資格・勤続年数要件 | 予防通リハ以外の単位数 | 予防通リハの 単位数 | |
加算Ⅰ | ①介護福祉士70%以上 ②勤続10年以上介護福祉士25%以上 のどちらかを満たす | 22単位/回(日) | 176単位/月 |
加算Ⅱ | 介護福祉士60%以上 | 18単位/回(日) | 144単位/月 |
加算Ⅲ | ① 介護福祉士50%以上 ② 常勤職員75%以上 ③ 勤続7年以上30%以上 のいずれかを満たす | 6単位/回(日) | 48単位/月 |
参考:厚生労働省
介護職員処遇改善加算はⅠからⅤまでの5区分に分類されていましたが、加算率の低い加算ⅣとⅤは2021年3月で廃止されることが決まりました。
ただし2021年3月時点で加算IVまたはVを算定していた事業所に限り、1年の経過措置期間が定められていました。
経過措置期間が終了し、介護職員処遇改善加算はⅠ、Ⅱ、Ⅲの3区分になりました。
以下の条件で算定されます。
<キャリアパス要件>
①職位・職責・職務内容等に応じた任用要件と賃金体系を整備すること
②資質向上のための計画を策定して研修の実施又は研修の機会を確保すること
③経験若しくは資格等に応じて昇給する仕組み又は一定の基準に基づき定期に昇給を判定する仕組みを設けること
※就業規則等の明確な書面での整備・全ての介護職員への周知を含む。
<職場環境等要件>
賃金改善を除く、職場環境等の改善
満たすべきキャリアパス要件 | 職場環境等要件 | |
加算(Ⅰ) | ①+②+③ | 満たす |
加算(Ⅱ) | ①+② | 満たす |
加算(Ⅲ) | ①or② | 満たす |
参考:厚生労働省
経験豊富な介護職員の処遇改善のために加算されていた介護職員等特定処遇改善加算の配分ルールについても、2021年に要件の見直しが行われました。
この加算は経験・技能のある介護職員について他産業と同等の賃金水準の実現を図りながら、介護職員の更なる処遇改善を行うことが目的です。
すべての介護職員を
1.経験・技能のある職員
2.その他の介護職員
3.その他の職種の職員
の3つに分け、経験・技能のある職員の月収を平均8万円アップさせることを目指しています。
施設内でルールに則って1や2の職員に配分することも認められています。
2021年には配分ルールが変更になり、経験・技能のある介護職員はその他の介護職員の「2倍以上」から「より高くすること」となりました。
その他の職種は、その他の介護職員の「2分の1を上回らないこと」のルールは維持されています。
特定処遇改善加算について詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。
特定処遇改善加算とは?算定要件や配分ルールなどについて徹底解説!
2021年の介護報酬改定ではグループホームに関係する部分も多くの変更がなされました。
利用者や家族のさらなる安心安全や職員の処遇改善を目指した改定は、今後も重ねられていくでしょう。
次回の介護報酬改定は2024年に予定されています。