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介護報酬改定は何年ごと?歴史・対応するべきこと・背景を徹底解説!

元山 ゆず香

監修者

介護福祉士

元山 ゆず香

大学を卒業後、特別養護老人ホームにて現場業務に従事。その後、福祉系大手企業に入社し、エリアマネージャーとして、施設介護事業・居宅介護事業・障害福祉サービス事業でのエリアマネジメント・行政対応を経験。また、法人本部に異動し教育部門・監査担当部門の部長を歴任。現在は全国の介護・障害福祉事業所の支援やセミナーの開催、DXO株式会社での介護関連事業の支援などを実施。

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介護報酬改定が何年ごとに行われているかは、経営や普段の業務に深く関わってくるため、介護事業に携わる人なら知っておかなくてはなりません。

介護報酬改定は国の財政や介護サービスの事情を踏まえて、介護報酬の適正化を図るために行われており、介護給付費の増大や介護人材の確保は介護報酬制度において重要な課題です。

介護保険制度と医療保険制度のダブル改定がある年は、介護・医療の連携によって利用者・事業者にとって「介護」をより良いものとする絶好の機会となります。

この記事では介護報酬やダブル改正が何年ごとにおこなわれるのか、どのような改定がおこなわれているかについてお伝えします。

介護報酬改定とは

介護報酬改定は日本の経済状況や介護に関するサービス事情など、さまざまな状況を踏まえて行われます。

2000年4月に公的介護保険制度が開始されました。

それにより、介護事業者が、要介護や要支援者といった介護サービスを受けている人から介護報酬を受け取るようになりました。

介護報酬は次のような仕組みとなっています。

引用:厚生労働省

介護報酬の仕組みは保険者(市町村)・利用者・サービス事業者の三者から成り立っています。

まず、保険者から認定をされた介護サービスの利用者が事業者からサービスを受けて、事業者に利用負担金を支払います。

事業者に支払う金額は収入によって1〜3割となり、事業者は利用料の残り7〜9割分の金額を介護給付費として保険者(市町村)に請求します。

国民健康保険連合会によって介護給付費の請求内容を審査して、審査が無事通るとサービスを提供した月から計算して2か月後に、介護給付費が支払われるという仕組みです。

少子高齢化が進むと医療や介護サービスの需要が高くなっていきますが、同時に問題となるのが介護をする人材の不足や医療・介護の財源不足です。

2025年には団塊の世代が75歳となり、2042年には高齢者の人口がピークに達するといわれています。

医療費や介護サービス費用を常に見直していかなければ介護保険制度の継続が厳しくなってしまうため、介護報酬改定がおこなわれています。

介護報酬改定は介護サービスを営んでいる企業にとって売り上げに大きく影響を与えます。

また、介護サービスの利用者にとっては介護報酬が変更されることで支援の拡充や強化につながるといえるでしょう。

介護報酬改定についてより詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。

介護報酬改定を徹底解説!2021年/2022年/2024年の改定内容は?介護業界の流れを捉える!

介護報酬改定は3年ごと

介護報酬改定は3年ごとに介護保険法を改正して、適正な介護報酬となるようにしています。

毎回改定の際は調査した結果をもとに、介護保険制度や介護保険サービスがどうあるべきかを考えられて、テーマが決定されます。

そしてそのテーマをもとに、介護サービスの形態をどうするかや加算の廃止や追加、変更が行われ、整備されていきます。

直近の介護報酬改定は2021年に行われました。

その中では、主に新型コロナウイルス感染症や災害時の対応における事業継続計画(BCP)の盛り込みや、科学的介護の取り組み推進による加算の新設や見直しが行われました。

2021年の介護報酬改定

これまでの介護報酬改定は次のような視点を元に行われてきました。

引用:厚生労働省

2021年の介護報酬改定で重視されたのは以下の点です。

  • 感染症や災害への対応力強化 
  • 地域包括ケアシステムの推進
  • 自立支援・重度化防止の取組の推進
  • 介護人材の確保・介護現場の革新
  • 制度の安定性・持続可能性の確保

改定率は0.70%増加しており、新型コロナウイルス感染症や近年深刻な課題となる災害への対応の強化がポイントとなりました。

他にも現在不足している介護人材をどのようにして確保していくのか、地域医療として利用者をケアしていく地域包括ケアシステムなどに重点が置かれました。

<感染症や災害への対応力強化> 

まずは感染症や災害への対応強化についてみていきましょう。

介護業界は社会的インフラの立場であり、感染症や災害によって機能不全になってしまわないようにする必要があります。

2021年の改定により「BCP(事業継続計画)」の策定がすべての介護事業所で義務化され、3年の経過措置期間が設けられています。

計画に基づいた研修やシミュレーション、委員会を開催することで、どのような状況であっても業務が継続できるようにすることが狙いです。

<地域包括ケアシステムの推進> 

地域包括ケアシステムの推進では、医療と介護の連携を進めながら認知症への対応力向上や看取りへの対応を充実させていきます。

認知症介護基礎研修の受講義務がされたことで、2024年3月までの3年間の経過措置期間後は無資格で介護職はできなくなりました。

増え続ける高齢者の自立を促し、できる限り住み慣れた地域で、自分らしく最期まで過ごせるようにするために地域全体でケアしていくことが目的です。

<自立支援・重度化防止の取組の推進> 

 自立支援・重度化防止の取組の推進では高品質の介護サービスを目的としています。

「科学的介護情報システム」(LIFE)へのデータ提出やフィードバックが多くの加算で必要になりました。

ケアの計画や内容といった情報をLIFEに入力すると、厚生労働省へ送信され、分析結果が送られてくることから、フィードバックをケアに活かしていくPDCAサイクルの推進をしていきます。

フィードバックされた情報を活用して施策の効果や課題を把握して、さらに見直しをおこなっていくことが重要になります。

<介護人材の確保・介護現場の革新> 

介護人材の確保・介護現場の革新はかなり差し迫った問題であるといえるでしょう。

介護の担い手を確保するほか処遇の改善は続けられているものの、人材が増えている状況にはいたっていません。

引き続き介護職員の処遇を改善するとともに職場環境を改善する必要があります。

テクノロジーを活用することで人員・運営の基準の緩和をおこない、業務を効率化させたり、文書や手続きの効率化を図ったりすることで介護職員の業務負担を軽減させる取り組みを推進しています。

<制度の安定性・持続可能性の確保>

制度の安定性・持続可能性の確保では給付費の抑制につながることとして、必要なサービスは保ちつつ算定要件の見直しがおこなわれています。

低取得率の加算を整理して不要な加算の廃止をしたり、基本報酬の見直しにより介護サービスの効率化を促したりしています。

2021年の介護報酬改定についてより詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。

2021年介護報酬改定の総まとめ!これさえ見れば間違いない!!

介護保険と医療保険のダブル改定は6年ごと

介護報酬改定は3年ごと、診療報酬改定は2年ごとにおこなわれていて双方が同時に改定される”ダブル改定”がおこなわれるのは6年ごとです。

日本の社会保障制度の中にある介護保険制度と医療保険制度は制度の根本に「被保険者からの保険料徴収と公費(税金)が財源」という共通点があります。

この財源をもとに介護保険制度ではホームヘルパーの訪問サービスや、老人施設への入所に関わる介護サービスの給付がおこなわれ、医療保険制度では治療・投薬といった医療サービスが給付されます。

介護保険制度と医療保険制度が同時に改定されるダブル改定は、連携体制をより強固な制度へ変える大きな機会といえるでしょう。

直近のダブル改定は2018年におこなわれ、次回は2024年に控えています。

それぞれどのような点に着目した改定なのか見てみましょう。

2018年のダブル改定

2018年度は6年に一度おこなわれる介護報酬と診療報酬両方のダブル改定で、テーマは「医療と介護の連携」として在宅医療推進につながる内容となりました。

改定の方向性は従来と大きな変化はなく、医療・介護は施設ではなく在宅や地域でケアしていくという内容です。

2018年の改定では、目標の達成度がまだ足りていないという認識から、抜本的な改革と徹底するためのしくみを構築しています。

診療報酬改定に関わる中央社会保険医療協議会と介護報酬改定を検討する介護給付費分科会では、2017年に2回の意見交換会が実施されました。

看取り・リハビリテーション・関係者や機関の調整と連携などが議論の内容です。

診療報酬改定は医療の需要への変化や医療技術の進歩から、医療の担い手となる人材の確保や働き方改革の推進へ重点が置かれました。

改定率は医科+ 0.63%、歯科 + 0.69%、調剤で+ 0.19%の診療報酬本体の合計は+0.55%となり薬価等は-1.74%です。

介護報酬改定は2017年4月26日から介護給付費分科会で議論が開始され、2018年4月より改定されました。

2015年の介護報酬改定の改定率は介護サービス全体で-2.27%でしたが、2018年の改定では、+0.54%となり医療と介護の連携を重視した、以下の内容になっています。

  • 地域包括ケアシステムの推進
  • 自立支援・重度化防止に役立つ、質の高い介護サービスの実現
  • 多様な人材の確保と生産性の向上
  • 介護サービスの適正化・重点化を通じた制度の安定性・持続可能性の確保

<地域包括ケアシステムの推進>

地域包括ケアシステムの推進は、都会や地方といった住む場所にかかわらず適切な医療・介護サービスを受けられる体制整備が目的です。

例えば特別養護老人ホームに複数の医師を配置して、医療と介護の連携によって看取りが可能な体制を整えれば、施設側に介護報酬が加算されるようになりました。

<自立支援・重度化防止に役立つ、質の高い介護サービスの実現>

利用者の自立支援と重度化を防ぐために安心かつ安全でありながら、いかに高品質なサービスが提供できるかが重視されています。

適切なリハビリテーションの提供、利用者の水準が一定以上ADL(日常生活動作)の維持もしくは改善された場合などに加算されるようになり、リハビリテーションへの評価が強化される結果となりました。

<多様な人材の確保と生産性の向上>

常に課題である人材確保と生産性の向上が目的で、業務分担の明確化と効率化アップを図ります。

機械の力も取り入れて、ロボット技術の導入による見守り機器や、テレビ電話を活用したリハビリテーション会議の参加を取り入れる形となりました。

<介護サービスの適正化・重点化を通じた制度の安定性・持続可能性の確保>

現役世代の負担が圧迫されず、介護保険制度が継続できるように介護サービスの見直しが必要です。

福祉用具貸与の価格の上限設定や、訪問看護の評価の見直しがおこなわれました。

2018年の介護報酬改定についてより詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。

厚生労働省が行った2018年の介護報酬改定を徹底解説!

2024年の介護報酬改定に向けて

2024年におこなわれる次回の介護報酬改定は、医療保険も同時に改定を迎えるダブル改定になることから、医療・福祉にとって連携を高める機会となるでしょう。

介護に携わる人や企業は改正の動向や情報の動きに対して常にアンテナを張るとともに、改定までに可能な準備に取り掛かる必要があります。

現在の段階で財務省の財政制度等審議会が出した「財政健全化に向けた建議」から介護報酬に向けた提案が出されており、主に課題に挙げられている内容は以下のとおりです。

  • 利用者負担の見直し
  • 介護人材確保の取組とICT化等による生産性向上
  • ケアマネジメントの在り方の見直し
  • 多床室の室料負担の見直し
  • 地域支援事業(介護予防・日常生活支援総合事業)の在り方の見直し
  • 区分支給限度額の在り方の見直し
  • 居宅サービスについての保険者等の関与の在り方
  • 軽度者に対する居宅療養管理指導サービス等の給付の適正化
  • 介護サービス事業者の経営状況の把握

引用:財務省

現在の利用者負担は1割負担となっていますが、今回の改正で介護保険サービスの利用者負担を2割にしたり、2割負担の対象範囲を拡大したりすることを検討しています。 

これには、高齢者の増加により介護保険給付費の増大が著しく、介護保険給付範囲の見直しによる利用者負担の増加が必要になったという背景があります。

この課題を解消するために、制度改革を実施して介護保険制度を継続可能にする狙いがあります。

近年では居宅系サービス費用の伸び率が大幅に増加していることも課題に挙げられていて、軽度者に対する居宅療養管理指導サービスの適正化に関しても把握が必要です。

引用:財務省

軽度者の居宅療養管理指導サービスの利用が、要介護者数を大きく上回って増加しています。

これを受けて、通院が困難な利用者以外にもサービス提供がされていないか把握しなければならないのではないかと議論されています。

 居宅療養管理指導の算定要件には「少なくとも独歩で家族・介助者等の助けを借りずに通院ができる者などは、居宅療養管理指導費は算定できない」

財源が無限にあるわけではないため、算定要件を満たす請求のみがおこなわれるようにしていかなけばなりません。

介護給付費だけでなく、介護人材が不足していることも課題の一つです。

機械の導入をして介護者の負担を減らす施策や、他業種から介護人材の確保をおこなうことも視野に取り入れて、より少ない労働力で高品質なサービスができるような取り組みを考えていかなければなりません。

2024年の介護報酬改定への議論は始まったばかりで、今後も新たな建議が出されるでしょう。

介護・医療のダブル改定であることから、介護・医療の連携や役割分担がどのようになるのか動向に注目していく必要があります。

介護報酬改定後に事業所がするべきこと

介護報酬改定後は事業所によるガイドラインに沿った取り組みと、質の高い介護が求められます。

介護人材の確保と介護現場の革新をしていく必要があり、業務におけるロボットやICT化の導入はこれからますます加速していくでしょう。

事業所はコストダウンしながら業務の効率化を図る必要があり、そのうえで各種加算をとっていかなければ、事業の継続が困難となってしまいます。

2025年に団塊の世代がすべて後期高齢者となる中で、看取りに対する対応を充実させる必要があり、看取り介護加算の見直しにより在宅ケアでも終末医療が望まれています。

地域包括ケアシステムにおける介護と医療の連携により、それぞれの専門的知識を持ったスタッフが患者の在宅生活を連携しながら支援していかなければなりません。

事業者にとって押さえなければならないポイントとして、厚生労働省は経営の大規模化や協働化により効率化を図り、利益の出る体制作りを検討しています。

小規模事業者が経営を続けにくい報酬設定が導入される可能性も否定できず、吸収合併により大規模事業化が進められることになるでしょう。

厚生労働省の向上のためのガイドラインでは、人材確保とともに生産性の向上が求められています。

地域の実情に応じた質の高いきめ細やかな介護ができる体制の整備や、介護保険事業計画に基づく取組みを勧める動きがとられています。

国が求めていることは専門的な介護の実施と質の高い介護の提供であり、介護報酬の加算により評価されることから、加算が取得できない事業所は介護報酬の低下により事業の継続が厳しくなっていくでしょう。

事業所は今後、処遇改善加算や特定処遇改善加算の取得による介護職員の労働環境や待遇の整備をおこない人材の確保と定着、特定事業所加算の取得による質の高い介護サービスが必須となります。

加えて認知症や自立度の向上、ターミナルに関する加算の取得をして、身体介護のような専門的介護の実施をおこなっていかなければなりません。

特定事業所加算は現状より上位の加算となります。

介護における専門的な知識や技術をもとに加算を取得していくこととなるでしょう。

処遇改善加算や特定処遇改善加算など各種加算を算定して職員の賃金を高くすることで、介護人材の確保につなげてサービスの質を向上させていく必要があります。

通所介護の事業所がやるべきことについては、こちらの記事を参考にしてください。

【2021年度】通所介護介護報酬改定でやるべきことまとめ!

まとめ

介護報酬改定は3年に一度、経済状況や介護サービスの現状を踏まえておこなわれます。

2024年に行われるダブル改定では、少子高齢化による財源不足を解消すべく様々なことが検討されています。

事業所には、さらなる上位の加算を取得し、介護職員の労働環境や待遇の整備を行い、質の高い介護サービスへとつなげていくことが求められています。

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