介護職員の待遇向上のための、処遇改善加算があることは知っているけど、給料がなかなか上がらず、
「介護職員処遇改善加算がピンハネされているのでは?」と疑問に思ったことがある方は多いのではないでしょうか。
今回の記事では、介護職員処遇改善加算がピンハネされることはあるのか、介護職員処遇改善加算がもらえるまでの流れ、介護職員処遇改善加算がもらえない時の対処法などについて詳しく解説します。
介護職員処遇改善加算が正しく支払われていないのではと疑問に思っている方はぜひ参考にしてみてください。
目次
そもそも介護職員処遇改善加算とは何か詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。
介護職員処遇改善加算とは?取得方法・区分・種類・注意するポイントを徹底紹介
結論から言うと、介護職員の処遇改善加算は、事業所によるピンハネができない仕組みになっています。
国や地方自治体から支給されたお金は、全額介護職員に支払わなければならないとされているためです。
介護職員処遇改善加算がピンハネできない理由として、次の4点があります。
・介護職員処遇改善加算により支給されたお金は、全額介護職員に支払わなければならない。
・介護職員処遇改善加算により支給されたお金を、何人に、いくら、どのように事業所が支給したかを、国や自治体に報告する義務がある。
・事業所に支給されたお金の分配方法を、事業所で働く全ての介護職員に周知しなければならない。
・支給されたお金を事業所に残すなど、介護職員処遇改善加算により支給されたお金が適正に支払われなかった場合、返還の対象となる。
介護職員処遇改善加算とは、介護職員の処遇を改善するために支給されるお金のことです。
このお金は、介護職員のキャリアアップの仕組み作りや、職場環境の改善を実施した事業所に対して支給されます。
高齢化が進み、多くの介護職員が必要となったことで、介護職員の給与水準の低さによる離職率の高さなどが問題となりました。
これを改善するために、国はまず介護報酬の単価を向上させたのです。
介護報酬の単価が向上したことで介護報酬額が増えた一方、その介護報酬額を事業所がピンハネし、介護職員の給与水準が向上しないという問題が発生しました。
介護職員処遇改善加算は、このピンハネ問題を改善した制度です。
また、介護職員処遇改善加算では、介護職員のキャリアなどによって支給される金額に大きな差があります。
この問題を解消するため、2021年度の介護報酬改正により、特定処遇改善加算制度の分配ルールが見直されました。
介護職員処遇改善加算の対象は、介護サービスに従事する全ての介護職員です。
アルバイトやパートなどの雇用形態によってではなく、職種によって対象となるかどうかが決まります。
生活相談員や看護師など、介護職以外の職種は対象外となります。
ただし、これらの職種でも、介護職を兼務している場合は対象となります。
扶養内で働いている方にも適応されますが、介護職員処遇改善加算により扶養範囲外となる可能性があるため、注意が必要です。
介護職員処遇改善加算の申請には、要件があります。
介護職員処遇改善加算の算定要件には、「キャリアパス要件」と「職場環境等要件」とがあり、どの種類のキャリアパス要件を満たしているかによって申請できる区分が異なります。
キャリアパス要件は、要件の達成度によって、次の3つに区分されています。
・職位(職責・職務内容)に応じた要件と賃金体系の整備をすること
・資質向上のための計画を策定して、研修の実施または研修の機会を設けること
・経験若しくは資格等に応じて昇給する仕組みや一定の基準で定期的に昇給を判定すること
職場環境等要件では、職場環境の改善など、給与以外の改善を行うことが求められます。
介護福祉士の取得を目指す介護士の支援や、職員が研修を受けられる仕組み作りなどを行い、キャリアアップを支援することなどが職場環境等要件に該当します。
厚生労働省の「介護保険最新情報vol.935」をもとに、介護職員処遇改善加算の種類と加算額を表にまとめました。
加算の種類 | 加算額Ⅰ | 加算額Ⅱ | 加算額Ⅲ |
訪問介護 | 13.7% | 10.0 | 5.5 |
訪問入浴介護 | 5.8 | 4.2 | 2.3 |
通所介護 | 5.9 | 4.3 | 2.3 |
通所リハビリテーション | 4.7 | 3.4 | 1.9 |
特定施設入居者生活介護 | 8.2 | 6.0 | 3.3 |
認知症対応型通所介護 | 10.4 | 7.6 | 4.2 |
小規模多機能型居住介護 | 10.2 | 7.4 | 4.1 |
認知症対応型共同生活介護 | 11.1 | 8.1 | 4.5 |
介護福祉施設サービス | 8.3 | 6.0 | 3.3 |
介護保険施設サービス | 3.9 | 2.9 | 1.6 |
介護療養施設サービス | 2.6 | 1.9 | 1.0 |
参考:厚生労働省
介護職員処遇改善加算の計算方法については、こちらの記事を参考にしてください。
【令和4年最新版】介護職員処遇改善加算の計算方法を詳しく解説!
特定処遇改善加算は、経験や技能のある介護職員の処遇改善を目的としています。
2019年に設けられた制度で、勤続年数10年以上の介護福祉士が主な対象となります。
介護職員等特定処遇改善加算では、介護職員処遇改善加算の要件を満たしたうえで、賃上げ以外の処遇改善加算の取り組みを「見える化」することが求められます。
参考:厚生労働省
特定処遇改善加算について詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。
特定処遇改善加算とは?算定要件や配分ルールなどについて徹底解説!
介護職員処遇改善加算の申請や支給は、全て事業所が行います。支給されるまでの大まかな流れは、次のとおりです。
1.事業所が都道府県(または市町村)に加算の届け出を行う
2.事業所が国保連に加算請求を行う
3.都道府県から支払いの委託を受けた国保連が、事業所に介護職員処遇改善加算の報酬を支払う
4.事業所が介護職員処遇改善加算の報酬を介護職員に支給する
なお、事業所は介護職員処遇改善加算の報酬をどのように支給したのかを記載した報告書を都道府県に提出しなければならないため、ピンハネはできません。
ただし、報酬の配分や支給の時期は事業所ごとに決めることができるため、事業所によって配分方法は異なります。
介護職員の方が、介護職員処遇改善加算のお金をもらえない場合、次の3点を確認してみましょう。
まず、勤務している事業所がそもそも介護職員処遇改善加算の要件を満たしているかどうかを確認しましょう。
事業所が要件を満たしていない場合、介護職員処遇改善加算の報酬を受け取ることはできません。
なお、介護職員処遇改善加算の支給方法は事業所ごとに異なるため、ボーナスとまとめて支給されているなどのケースもあります。
給与明細に、処遇改善手当という欄がないかどうか確認してみましょう。
勤務している事業所が介護職員処遇改善加算の要件を満たしている場合、介護職員処遇改善加算の配分ルールを事業所の施設長などに確認しましょう。
介護職員への分配方法は事業所ごとに定められるため、勤務している事業所によっては受け取れない可能性があります。
また、勤務している事業所へ支払われる報酬額がそもそも少ないというケースも考えられます。
分配ルールに納得できない場合、まずは事業所に異議を申し立てましょう。
それでも改善されない場合、弁護士などの専門家に相談するといった方法もあります。
それでも介護職員処遇改善加算のお金がもらえないようであれば、報酬の支払いに積極的な事業所への転職を検討してみるのも方法のひとつです。
次のような場合、転職も視野に入れてみましょう。
・働いている事業所が介護職員処遇改善加算の要件を満たしておらず、今後も積極的に取り組む気がない。
・介護職員処遇改善加算の分配ルール(報酬額)に納得がいかない。
なお、転職先を探す際には、給与規定などの各種規定や、給与表などを確認しておきましょう。
同じ仕事内容でも事業所によって待遇は異なります。給与アップの仕組みが細かく規定された、手当が付きやすい事業所のほうが、介護職員にとって働きやすい職場である可能性が高いといえます。
特定処遇改善加算がもらえない時の対処法については、こちらの記事でも紹介しているので、是非参考にしてください。
処遇改善加算が未払いになっている時はどうしたらいい?相談など対処法を徹底解説!
介護職員の処遇改善加算は、介護職員であれば支給の対象となります。
介護職員処遇改善加算のお金がピンハネされることはありませんが、支給方法は事業所ごとに異なります。
納得のいく報酬額をもらえていない場合には、事業所に異議を申し立てたり、転職を検討してみるなど、何かアクションを起こしてみてはいかがでしょうか。