年間目標を立てることは、自分自身や組織が何を達成したいのかを明確にし、その方向性に向かって努力するための指針となります。
また、目標を設定することで、やるべきことが明確になり、時間やリソースを効果的に活用することができます。
今回の記事では、訪問介護に特化した目標設定の具体的な立て方と、訪問介護員として働くにあたっての年間目標例を紹介します。
訪問介護や介護職だけでなく、年間目標を立てるように言われる場面があるかもしれません。
今後、自分はどこの方向性に進むべきか分からないまま、仕事を続けてもゴールに到着しないだけでなく、自分が行っていることが正しいのか間違っているのかすら分かりません。
しかし、しっかりと目標設定することで、目標に到達するまでの道筋を自分自身で考えながら進むことができるようになります。
年間目標を立てたうえで、年度末に目標設定の振り返りを行い、自己評価と客観的評価を元にして昇進・昇給を決めている事業所も近年では多くなっています。
訪問介護で年間目標を立てる目的としては、次に説明する3つが挙げられます。
仕事を続けるにあたって、モチベーションは重要です。
介護労働安定センターが報告した、「令和2年度 介護労働実態調査」結果によると、訪問介護員・サービス提供責任者・介護職員の3職種合わせた離職率は令和元年10月1日~令和2年9月30日で離職率は14.9%でした。
訪問介護員だけを見ても、採用率は15.0%、離職率は15.6%と離職率の方が上回っていることからも心身ともに負担がかかる仕事であることが分かります。
参考:介護労働安定センター
そのため、他産業と比較しても、普段からモチベーションを高い状態で維持することが重要になります。
実際に自宅へ訪問して、利用者さんが困っているところを介護するのも、「自分から考えて行う」のではなく、「言われたことだけやっておけばいい」というような受け身の姿勢でいると、モチベーションを保つことは難しいでしょう。
しかし、自分で目標設定を行うと、その目標を達成させたいという気持ちが強くなり、受け身の姿勢にはならず、小さな壁が立ちはだかっても乗り越えることができます。
設定した目標を達成することで、自分の強みを再発見できるなど、自分の仕事に自信が持ちやすくなります。
ただ、目標設定しても、前に進んでいる感覚がなければモチベーションは低下するため、目標は小さく設定し、細かく進めていくことが重要です。
キャリアプランとは、自分の将来の目標を明確にして、その目標を達成するために、今後どのような経験を積む必要があるかなどを具体的に決めた行動計画のことです。
例えば、「10年後に現在の事業所でリーダー的存在になる」という目標を設定した場合、その目標達成を実現するためには、どのようなスキル・経験が必要か考えて、その内容を毎年の年間目標とします。
「入職した1年目は、全ての仕事を1人前に行えるようになる」「3年目には自分の仕事だけでなく、事業所全体のことを考えるようになる」など、具体的な年間目標を立てることで、将来の目標が明確になります。
目標を設定することにより、そのゴールに向かうために行うべきステップや、達成すべき項目を事前に把握することができます。
最終的に達成したいものが、実現することが容易ではない高い目標である場合でも、小さい目標を細かく設定し、達成したことを可視化できるようにすることで、具体的な行動を起こしやすくなります。
年間目標を立てることで、より十時間をもって仕事をし、成長することが出来ます。
しかし、どのように年間目標を立てるかによって、年間目標の効果は大きく異なります。
訪問介護における年間目標を立てる場合、下記のポイントをしっかり押させておく必要があります。
年間目標を立てる場合、最終的な目標を最初の段階で明確にすることが重要です。
その理由として、目標設定は、最終的な目的から逆算して、必要な行動・結果・方針を立てるからです。
最終的な目標が曖昧な状態では、目標を設定しても効果は低いでしょう。
最終的な目標が明確になれば、現時点の自分と最終的に思い描いた自分とのギャップを明確にします。
思い描いた自分とのギャップに落ち込むのではなく、現時点の自分には何が不足しているのかを理解することで、今後のするべきことが明確になります。
ギャップを明確にできれば、そのギャップをどのようにすれば埋められるのかという仮説を立てて、行動することが出来ます。
訪問介護において、キャリアアップの目標設定として最も立てやすいのは、資格を取得することです。
ここでは、訪問介護においてキャリアアップに必要な主要な資格を紹介します。
介護職員初任者研修は、「在宅・施設を問わず、介護職として働く上で基本となる知識・技術を習得する研修」のことです。
介護業務に必要な基礎知識・技術などを身につけることができるため、介護職のキャリアとしてスタートになる資格で、講義と演習で構成される約130時間の研修受講と、全課程修了後の修了試験に合格することで資格を取得できます。
介護職員初任者研修について詳しく知りたい方は、介護職員初任者研修とは?無料で受ける方法や働きながら取得する方法について徹底解説!の記事を参考にしてください。
介護福祉士実務者研修は、基本的な介護提供能力の修得を目的とした資格となっており、介護職員初任者研修の上位に位置づけられる資格です。
また、介護福祉士資格を目指すうえで必須の資格となっています。
介護福祉士実務者研修の資格を取得することで、サービス提供責任者として活躍することも可能です。
介護福祉士実務者研修について詳しく知りたい方は、介護福祉士実務者研修とは?取得方法や難易度、期間について徹底解説!の記事を参考にしてください。
介護福祉士は、介護の専門職として知識や技術を有していることを証明できる資格です。
厚生労働省の「2025年に向けた介護人材にかかる需給推計」によると、2025年には37.7万人もの介護人材が不足すると予測していることからも、介護福祉士の需要は近年高まっています。
参考:厚生労働省
もっと介護福祉士実務者研修について詳しく知りたい方は、介護福祉士ってどんな仕事?なる方法は?試験はどのくらい難しい?の記事を参考にしてください。
目標設定を達成するために必要な課題が分かれば、それらを整理して優先順位付けと絞り込みを行い、3ヶ月後・6ヵ月後・1年後などの期間を設けて、どのようにすべきか逆算して考え行動に移します。
年間目標を設定しただけでは、1年後という長い期間になるため、3ヶ月後・6ヵ月後など、ある程度の期間で区切ることで、現時点で自分にとってどのような課題があり、それを解決するための行動もすぐに行えるようになります。
ここまでの解説通りに行えば、訪問介護の年間目標を明確に設定できるはずです。
ここでは、訪問介護の年間目標を達成するためのポイントを具体的に解説します。
目標達成するためには、できる限り行動を具体化することが重要です。
せっかく目標を明確に設定したものの、行動を具体化せずに曖昧なままだと実際に行動に移すことはできません。
具体的な行動を考えるために、「結果目標」「行動目標」に分けて考えます。
「結果目標」とは、達成したいゴールを具体的に示した目標です。例えば、「介護福祉士の資格を取る」と決めるのが結果目標です。
その結果目標に向かって、「行動目標」とは、実際の行動の目標になり、「いつ」「何を」「どれだけ」行動するかを具体的に設定します。
先程の例でお伝えすると、「介護福祉士の資格を取る」という結果目標のために、「1日にテキストを20ページ進める」「1日に2時間勉強する」など、目標達成するための行動を立てることが行動目標になります。
「結果目標」「行動目標」の両方を考えることで、目標達成のための行動を具体化できます。
目標達成のために実行した行動は毎日記録しておくようにします。
ここでのポイントは、必ず文字として残しておくことです。
頭の中で、毎日目標に向けてやった行動を思い返しても、大まかな内容となるだけでなく、進捗や達成度が可視化できません。
年間目標を達成するためには、毎日の行動を可視化して現時点の自分の位置や、目標達成するまでの距離などを毎日把握することが重要になるので、必ず目標に向けてやった行動を毎日記録してください。
毎日の行動を記録しながら、1週間程度ごとに定期的な振り返りも行いましょう。
1週間程度で定期的な振り返りを行うことで、自分の取り組んでいる行動が正しいのかどうかを客観的に見つめ直すことができます。
1週間程度ごとに振り返りをすることで、
・計画通りに進まなかった原因を洗い出せる
・計画以上の成果をあげた要因を考察できる
・原因への反省とともに修正作業を実施できる
など、目標を達成するために大きなメリットとなるので、毎日の振り返りだけでなく、定期的な振り返りも合わせて行いましょう。
ここまでで、訪問介護員として年間目標を設定する時のポイント、設定した目標を達成するためのポイントはしっかりと理解できたはずです。
ここからは、説明してきたポイントを踏まえた年間目標の具体例を紹介します。
1〜3年目は、経験年数がまだ浅いため、まずは業務を覚えることから始めます。
そのためには、自分が目標にしたい先輩をモデルケースとすると、具体的な行動が明確になります。
業務を覚えていく中で、自分がこうなりたいという介護士像を思い描き、実際に資格取得のために勉強を行いましょう。
項目 | 実施内容 |
最終目標 | 業務を一通りできるようになり、介護の基本的な技術を身に付ける。 |
なりたい自分と今の自分のギャップ | 経験年数が浅いため、業務を理解していない。また、介護に関する知識・技術が不十分である。 |
目標達成に必要な資格 | ・介護職員初任者研修 ・介護福祉士実務者研修 ・社会福祉主事任用資格 |
達成期限 | ・1年目:基本的な業務の取得 ・2年目:介護職員初任者研修の取得 ・3年目:社会福祉主事任用資格の取得 |
目標達成のための具体的な行動 | 入職して1年目で、基本的な業務を全て取得します。 その後、2年目からは、訪問介護の現場介入を積極的に行うために、介護職員初任者研修の受講を事業所へ依頼する。 介護職員初任者研修終了後の3年目は、サービス提供責任者として働くことを目標に社会福祉主事任用資格を取得します。 |
中堅の立場になるため、基本的な介護技術を身につけ、一通りの業務を問題なく行えるため、より専門的な知識や技術の習得や、リーダーとしてスタッフを束ね、新人や後輩を指導するマネジメント能力を身につけるなどが目標になります。
項目 | 実施内容 |
最終目標 | 専門的な知識・技術の習得だけでなく、リーダーとしてスタッフを束ね、実際に指導するマネジメント能力を身につける |
なりたい自分と今の自分のギャップ | 基本的な業務内容と、介護知識しか身に付けていない。 |
目標達成に必要な資格 | ・介護福祉士 ・サービス提供責任者 |
達成期限 | ・3年目:基本的な知識だけでなく、専門的な介護知識も取得する ・4~6年目:介護福祉士の取得 ・7~9年目:サービス提供責任者の取得 |
目標達成のための具体的な行動 | 実務経験3年あると、介護福祉士の受験可能となるため、専門知識を身に付ける 4~6年目には、現場介護職としての活躍だけでなく、スタッフの指導も合わせて行えるように介護福祉士の資格取得を目指す 7〜9年目は、より管理的な部分へ力を入れるために、サービス提供責任者を取得して、訪問介護事業所の責任者となる。 |
10年目以上のベテラン訪問介護員になると、自分の業務をこなすだけではなく、全体を把握して動くことや、次の世代の介護職を育てるという意味でのスタッフの指導や育成も重要です。
また、今まで以上に他職種との連携・利用者さんのご家族への説明の機会・会議への参加も増えます。
項目 | 実施内容 |
最終目標 | 自分の業務だけでなく、全体を把握して行動するとともに、次の世代の介護職を育てる。 |
なりたい自分と今の自分のギャップ | 全ての業務において、自分は問題なく行えるものの、自分の代わりに行えるスタッフがいない。 |
目標達成に必要な資格 | ・認定介護福祉士 ・施設長 |
達成期限 | 10年目:認定介護福祉士の取得 10年目~:施設長を目指す |
目標達成のための具体的な行動 | 10年目で介護士系の資格の中で最上位である認定介護福祉士を取得する その後、自分の事業所を任されるように施設長を目指す。 |
今回の記事で紹介したポイントを抑えて年間目標を設定することで、自分のやるべきことが明確になり、目標に近づくことが出来ます。
ここまで読んでいただいた皆さんが、よりよい介護士になることを願って記事を締めくくらせていただきます。