訪問介護サービスの特定事業所加算における算定要件のひとつに「定期的な健康診断の実施」があります。しかし、ただ健康診断を定期的に行えばよいというわけではなく、対象となる職員の範囲や受診の頻度など、算定の際には注意が必要です。
実際に特定事業所加算を算定している事業所の方でも、運営指導に向けてしっかりと算定要件を満たせているか不安を感じるという人も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、特定事業所加算における定期的な健康診断実施の算定要件について詳しく解説します。運営指導での返還を防ぐためのポイントについても紹介するので是非参考にしてください。
目次
特定事業所加算は、専門性の高い人材の確保やサービスの質の向上に取り組む事業所を評価する制度で、 国が定めた要件を満たし、事業所所在地の都道府県・市区町村に届け出ることで算定できます。
もともと特定事業所加算は、2006年の介護報酬改定で創設された加算でしたが、算定要件の複雑さなどから取得する事業所は少数でした。しかし、現在では加算を取得することによるメリットなども幅広く理解されたなどの理由により、近年では全体の40%程度が加算を取得しています。
特定事業所加算の単位数や最新の算定要件については、以下の記事でまとめているのであわせて参考にしてください。
【2024年改定対応】訪問介護の特定事業所加算とは?メリットや算定要件を解説
訪問介護事業所が特定事業所加算を算定するためには、定期的な健康診断の実施が不可欠です。算定要件では以下のように求められています。
当該訪問介護事業所の全ての訪問介護員等に対し、健康診断等を定期的に実施すること
特定事業所加算の算定要件を確認しただけでは、健康診断の実施に関する要件を完全に理解することはできません。以下では厚労省から公開されたQ&Aなどをもとに、健康診断を受診させる際のポイントについて解説します。
健康診断の要件を満たすには、すべての訪問介護員等に対し、健康診断を実施する必要があります。
なお、ここでいう「すべての訪問介護員等」とは、「常時使用する労働者」に該当しない訪問介護員等を含めるとされており、俗にいう非常勤の訪問介護員等に健康診断を受診させなくてはいけません。
健康診断の要件を満たすには、労働安全衛生法と同等の健康診断を定期的に実施すること必要です。
ここでいう定期的とは原則1年(365日)に1回以上のことをさします。年度による切り替わりではなく、日付ベースで確認が入る可能性があることに留意しましょう。
特定事業所加算の算定要件を満たすために健康診断を実施する場合は、事業主による費用負担によりおこなわれる必要があります。
また、運営指導の際に、事業主による費用負担により健康診断がおこなわれた旨を示す必要があるため、医療機関への費用支払いを示す領収書などを保管しておくようにしましょう。
全訪問介護員等に受診させていなかった、定期的に受診させられていなかったなど、算定要件を正しく満たせていなかった場合、後の運営指導で指摘が入る可能性があります。また、最悪のケースにおいては、算定した加算の返還を求められることもあるでしょう。
加算の返還を求められた場合、過去支給された加算についても遡って返還しなければいけないため、加算を算定する際には算定要件をしっかりと理解したうえでおこなう必要があります。
特定事業所加算の算定には定期的な健康診断の実施が必要です。ただし、ただ健康診断をおこなえばよいというわけではなく、対象となる職員の範囲や、実施する頻度、費用負担など、さまざまなルールを守る必要があります。加算の算定をおこないたいと思っているものの、算定要件の理解が怪しい場合や、書類の管理などに不安が残る場合は、介護システムの活用もひとつの手といえるでしょう。
以下で紹介しているお役立ち資料では、健康診断の受診に関してより詳しいルールの解説をおこなっています。「自治体が実施する健康診断を利用する場合はどうなる?」「健康診断を受診する際の項目はどうしたらいい?」といったよくある質問や、「ダブルワークのヘルパーが別事業所の管轄で健康診断を受診した場合、どうしたらよい?」などのイレギュラーなパターンについてもわかりやすく解説しています。
特定事業所加算の算定を検討している、もしくはすでに算定しているものの加算の運用に自身がないという方は、是非参考にしてください。