介護施設では24時間の連続的なケアが求められます。夜間帯のケアでは、安全性の確保や、良質な睡眠の確保、排せつのサポートなど、自立に向けて重要な支援を多く含んでいます。日中だけでなく、夜間のケア体制を整えることが重要であり、制度上でも夜間の職員配置を充実させるよう促しています。
また、業務の効率化が求められる中、センサーやロボットを活用した見守りによって夜間のケアは大きく変わっています。本記事では夜勤職員配置加算について、サービス種別ごとの算定要件を詳しく解説します。
夜勤職員配置加算は、夜間の介護職員配置を強化し、利用者の安全とケアの質を高める取り組みをおこなう施設を評価する加算です。具体的には、夜間の介護職員・看護職員の配置が、運営基準における夜間の人員配置基準よりも充実している事業所を評価するものです。
夜間は事故の可能性も大きく、利用者の見守りが重要な時間帯です。また、職員の負担も大きいため、ICT技術を用いた見守り機器の導入によって、職員の配置基準が緩和されています。2021年および2024年の報酬改定で立て続けに要件が緩和され、夜間のケアの効率化が推進されています。
夜勤職員配置加算が適用されるのは、以下の介護施設です。
- 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)
- 地域密着型介護老人福祉施設(地域密着型特別養護老人ホーム)
- 短期入所生活介護施設(ショートステイ)
- 介護老人保健施設
- 短期入所療養介護(療養ショートステイ)
いずれも入所系のサービスとなっています。
夜間のケアが発生するサービスでも、小規模多機能型居宅介護やグループホームなどは対象外です。また、サービス種別ごとに単位数や算定要件が異なるので注意が必要です。単位数と算定要件の違いについては次の章で詳しく紹介します。
夜勤職員配置加算の単位数と算定要件について、サービス種別・施設種別ごとに解説します。
短期入所生活介護では、施設の形態や職員の体制によって算定できる加算の種類が異なります。以下のように分類されます。
施設形態 | 人員基準に加えて1人以上配置(見守り機器使用などで要件緩和あり) | 看護職員又は喀痰吸引のできる介護職員 |
短期入所生活介護(従来型) | 夜勤職員配置加算(Ⅰ):13単位 | 夜勤職員配置加算(Ⅲ):15単位 |
ユニット型短期入所生活介護 | 夜勤職員配置加算(Ⅱ):18単位 | 夜勤職員配置加算(Ⅳ):20単位 |
算定要件と対象サービスは以下の通りです。
対象サービス:短期入所生活介護(従来型)
算定要件:
通常の夜勤職員(人員基準)に加え、介護職員または看護職員の数を1人以上配置
※ただし見守り機器を利用者の10%以上に導入し、適切な運用体制(委員会の設置など)を整えた場合、夜勤職員の配置基準を緩和し0.9人として算定できます。(以下詳細は次回以降省略)
(i)利用者の動向を検知できる見守り機器を全利用者に設置
(ii)夜勤時間帯を通じて、夜勤を行うすべての介護・看護職員が情報通信機器を利用し、職員同士の連携促進が図られている
(iii)見守り機器等を活用する際の安全体制およびケアの質の確保、ならびに職員の負担軽減に関する以下(1)~(4)を実施し、かつ見守り機器等を安全かつ有効に活用するための委員会を設置し、介護・看護職員、その他の職種と共同して当該委員会で必要な検討等を行い、(1)~(4)の実施を定期的に確認(1)夜勤職員による居室への訪問が個別に必要な利用者への訪問、および当該利用者に対する適切なケア等による安全ケアの質の確保
(2)夜勤職員の負担軽減および勤務状況への配慮
(3)見守り機器等の定期的な点検
(4)見守り機器等を安全かつ有効に活用するための職員研修
引用:厚生労働省「厚生労働大臣が定める夜勤を行う職員の勤務条件に関する基準」
対象サービス:ユニット型短期入所生活介護
算定要件:
通常の夜勤職員(人員基準)に加え、介護職員または看護職員の数を1人以上配置
※ただし見守り機器を利用者の10%以上に導入し、適切な運用体制(委員会の設置など)を整えた場合、夜勤職員の配置基準を緩和し0.9人として算定できます。
対象サービス:短期入所生活介護(従来型)
算定要件:
通常の夜勤職員(人員基準)に加え、介護職員または看護職員の数を1人以上配置
※ただし見守り機器を利用者の10%以上に導入し、適切な運用体制(委員会の設置など)を整えた場合、夜勤職員の配置基準を緩和し0.9人として算定できます。
夜勤時間帯を通じて、看護職員又は次のいずれかに該当する職員(喀痰吸引の実施可能な職員)を一人以上配置していること。
対象サービス:ユニット型短期入所生活介護
算定要件:
通常の夜勤職員(人員基準)に加え、介護職員または看護職員の数を1人以上配置
※ただし見守り機器を利用者の10%以上に導入し、適切な運用体制(委員会の設置など)を整えた場合、夜勤職員の配置基準を緩和し0.9人として算定できます。
夜勤時間帯を通じて、看護職員又は次のいずれかに該当する職員(喀痰吸引の実施可能な職員)を一人以上配置していること。
介護老人福祉施設の夜勤職員配置加算について解説します。介護老人福祉施設の夜勤職員配置加算は8種類に分かれます。施設形態、職員の配置数、喀痰吸引の可能な職員配置だけでなく、入所定員によっても加算の種類が分かれます。
施設形態 | 入所定員 | 人員基準に加えて1人以上配置(見守り機器使用などで要件緩和あり) | 看護職員又は喀痰吸引のできる介護職員 |
介護老人福祉施設(従来型) | 30名以上50名以下 | 夜勤職員配置加算(Ⅰ)イ 22単位/日 | 夜勤職員配置加算(Ⅲ)イ 28単位/日 |
51名以上 | 夜勤職員配置加算(Ⅰ)ロ 13単位/日 | 夜勤職員配置加算(Ⅲ)ロ 16単位/日 | |
ユニット型介護老人福祉施設 | 30名以上50名以下 | 夜勤職員配置加算(Ⅱ)イ 27単位/日 | 夜勤職員配置加算(Ⅳ)イ 33単位/日 |
51名以上 | 夜勤職員配置加算(Ⅱ)ロ 18単位/日 | 夜勤職員配置加算(Ⅳ)ロ 21単位/日 |
算定要件に関しては、短期入所生活介護と内容に重複する部分は省略します。介護老人福祉施設では、短期入所生活介護と異なり、夜勤職員配置加算にイとロの区分があります。これは施設の入所定員によって区分されています。
入所定員が30名以上50名以下はイとなり、51名以上はロの区分となります。イの区分(小規模)の方が単位数が高く、ロの区分(大規模)の方が単位数が低く設定されています。
算定要件と対象サービスは以下の通りです。
対象施設:従来型特別養護老人ホームなど
算定要件:
通常の夜勤職員(人員基準)に加え、介護職員または看護職員の数を1人以上配置
※ただし見守り機器を利用者の10%以上に導入し、適切な運用体制(委員会の設置など)を整えた場合、夜勤職員の配置基準を緩和し0.9人として算定できます。
対象施設:ユニット型特別養護老人ホームなど
算定要件:
通常の夜勤職員(人員基準)に加え、介護職員または看護職員の数を1人以上配置
※ただし見守り機器を利用者の10%以上に導入し、適切な運用体制(委員会の設置など)を整えた場合、夜勤職員の配置基準を緩和し0.9人として算定できます。
対象施設:従来型特別養護老人ホームなど
算定要件:
通常の夜勤職員(人員基準)に加え、介護職員または看護職員の数を1人以上配置
※ただし見守り機器を利用者の10%以上に導入し、適切な運用体制(委員会の設置など)を整えた場合、夜勤職員の配置基準を緩和し0.9人として算定できます。
夜勤時間帯を通じて、看護職員又は次のいずれかに該当する職員(喀痰吸引の実施可能な職員)を一人以上配置していること
対象施設:ユニット型特別養護老人ホームなど
算定要件:
通常の夜勤職員(人員基準)に加え、介護職員または看護職員の数を1人以上配置
※ただし見守り機器を利用者の10%以上に導入し、適切な運用体制(委員会の設置など)を整えた場合、夜勤職員の配置基準を緩和し0.9人として算定できます。
夜勤時間帯を通じて、看護職員又は次のいずれかに該当する職員(喀痰吸引の実施可能な職員)を一人以上配置していること
続いて地域密着型介護老人福祉施設の夜勤職員配置加算について解説します。
施設形態 | 人員基準に加えて1人以上配置(見守り機器使用などで要件緩和あり) | 看護職員又は喀痰吸引のできる介護職員 |
従来型 | 夜勤職員配置加算(Ⅰ)イ 41単位/日 | 夜勤職員配置加算(Ⅲ)イ 56単位/日 |
経過的の場合 | 夜勤職員配置加算(Ⅰ)ロ 13単位/日 | 夜勤職員配置加算(Ⅲ)ロ 16単位/日 |
ユニット型 | 夜勤職員配置加算(Ⅱ)イ 46単位/日 | 夜勤職員配置加算(Ⅳ)イ 61単位/日 |
ユニット型経過的 | 夜勤職員配置加算(Ⅱ)ロ 18単位/日 | 夜勤職員配置加算(Ⅳ)ロ 21単位/日 |
基本的には介護老人福祉施設に近いですが、地域密着型介護老人保健施設は定員数の区分はありません。
地域密着型介護老人福祉施設という施設種別が誕生する前に開設し新基準に適合していない30人未満の施設は経過的地域密着型介護老人福祉施設という施設形態で扱われます。ロの形態と同じ単位数に設定されています。経過的の場合を除けば、介護老人福祉施設の夜勤職員配置加算よりも高い報酬が設定されています。
算定要件と対象サービスは以下の通りです。
対象施設:従来型
算定要件:
通常の夜勤職員(人員基準)に加え、介護職員または看護職員の数を1人以上配置
※ただし見守り機器を利用者の10%以上に導入し、適切な運用体制(委員会の設置など)を整えた場合、夜勤職員の配置基準を緩和し0.9人として算定できます。
対象施設:ユニット型
算定要件:
通常の夜勤職員(人員基準)に加え、介護職員または看護職員の数を1人以上配置
※ただし見守り機器を利用者の10%以上に導入し、適切な運用体制(委員会の設置など)を整えた場合、夜勤職員の配置基準を緩和し0.9人として算定できます。
対象施設:従来型
算定要件:
通常の夜勤職員(人員基準)に加え、介護職員または看護職員の数を1人以上配置
※ただし見守り機器を利用者の10%以上に導入し、適切な運用体制(委員会の設置など)を整えた場合、夜勤職員の配置基準を緩和し0.9人として算定できます。
夜勤時間帯を通じて、看護職員又は次のいずれかに該当する職員(喀痰吸引の実施可能な職員)を一人以上配置していること
対象施設:ユニット型
算定要件:
通常の夜勤職員(人員基準)に加え、介護職員または看護職員の数を1人以上配置
※ただし見守り機器を利用者の10%以上に導入し、適切な運用体制(委員会の設置など)を整えた場合、夜勤職員の配置基準を緩和し0.9人として算定できます。
夜勤時間帯を通じて、看護職員又は次のいずれかに該当する職員(喀痰吸引の実施可能な職員)を一人以上配置していること
介護老人保健施設と短期入所療養介護の夜勤職員配置加算は区分が1種類のみです。夜間の職員配置が基準を超えていれば算定できます。算定要件は以下の通りです。
算定要件:
利用者等の数が41以上の介護老人保健施設にあっては、利用者等の数が20又はその端数を増すごとに1以上であり、かつ、2を超えていること。
利用者等の数が40以下の介護老人保健施設にあっては、利用者等の数が20又はその端数を増すごとに1以上であり、かつ、1を超えていること。
※見守り機器等を導入した場合、配置人員数2人以上の場合であれば、1.6人以上に緩和
夜勤職員配置加算の人員配置基準が緩和される場合があります。その条件が、見守り機器の活用です。
見守り機器とは、夜間の職員巡回を補助し、利用者の異常や転倒を検知するセンサーやカメラのことを指します。ICTによる見守りによって、夜間巡回の負担が軽減され、効率的に安全の確保が可能です。見守り機器の導入により配置基準を緩和することが認められています。見守り機器に関しては以下の条件を満たすことが必要です。
- 「見守り機器」は、入所者がベッドから離れようとしている状態又は離れたことを検知できるセンサー及び当該センサーから得られた情報を外部通信機能により職員に通報できる機器であり、入所者の見守りに資するものとする。
- また、「見守り機器を安全かつ有効に活用するための委員会」は、3月に1回以上行うこととする。
夜勤職員配置加算は、夜間帯の利用者の安全を守るため、人員体制を充実させる制度です。夜勤の配置人数だけでなく、看護職員の配置や、ICT技術の活用など、施設の特性や状況に応じた体制づくりが重要です。
特に、見守り機器の導入などにより、効率化・負担軽減も期待されています。テクノロジーを上手に活用していくことで、効率的に加算算定を目指していきましょう。