新型コロナウイルス感染症が蔓延した際、医療機関ではなく介護施設などでの療養のケースが多数見られました。医療機関と連携し、感染症拡大を防ぐなどの対応が必要でしたが、施設内に感染症に精通した職員が少ないため、感染症予防などの面で多くの課題がありました。そこで感染症対策や感染症発生に備えた研修や訓練が令和6年度より義務化されました。
今回は令和6年度に新設された介護・医療間での連携体制の構築などを評価する「高齢者施設等感染対策向上加算」について紹介していきます。この記事を参考に加算がつくよう施設の整備などに取り組みましょう。
目次
高齢者等施設では、施設内で新型コロナウイルスなどの感染者が出た場合、感染者の対応をしなくてはいけません。その場合、医療機関と連携を取ったうえで施設内で感染者の療養などをおこなうこと、ほかの利用者から新たな感染者が出ないよう対処することが求められました。その対応を評価するために高齢者施設等感染対策向上加算が新設されました。
高齢者施設等感染対策向上加算の対象となる施設は下記の通りです。
高齢者施設等感染対策向上加算の単位数は次の通りです。
高齢者施設等感染対策向上加算は(Ⅰ)と(Ⅱ)に分けられます。次から(Ⅰ)と(Ⅱ)の違いについてみていきましょう。
高齢者施設等感染対策向上加算(Ⅰ)の算定要件は、下記の通りです。
- 感染症法第6条第17項に規定する第二種協定指定医療機関との間で、新興感染症の発生時等の対応をおこなう体制を確保すること
- 協力医療機関等の間で、感染症の発生時等の対応を取り決めるとともに、感染症の発生時に等に、協力医療機関等と連携し適切に対応していること
- 診療報酬における感染対策向上加算もしくは、外来感染対策向上加算にかかる届け出をおこなった医療機関又は地域の医師会が開催する院内感染対策に関する研修または訓練に年1回参加すること
※研修もしくは訓練の際にビデオ通話が可能な機器を用いて参加しても、差し支えないとされています。
高齢者施設等感染対策向上加算(Ⅱ)の算定要件は、下記の通りです。
- 診療報酬における感染対策向上加算の届出をおこなった医療機関から、3年に1回以上施設内で、感染者が発生した場合の感染制御等の実地指導を受けていること
感染対策向上加算の詳しい実地指導の内容は以下の通りです。単に施設等で机上の研修のみをおこなう場合には、算定されれません。
高齢者施設等感染対策向上加算(Ⅰ)は、令和7年3月までに実施見込みがあれば算定ができます。高齢者施設等感染対策向上加算(Ⅱ)の起算日は運営指導または実地研修を受けた日と規定されています。そのため両者の併用算定は可能です。
ここでは主な高齢者施設等感染対策向上加算に関するQ&Aについて記載していきますので、参考にしてみてください。
令和6年9月末までの間は、現に感染対策向上加算又は外来感染対策向上加算の届出を行っている医療機関と連携することでも差し支えない。なお、令和6年10月以降については、第二種協定指定医療機関と連携することが必要であることから留意すること。
引用:厚生労働省「令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1)」
- 感染対策向上加算又は外来感染対策向上加算の届出を行った医療機関において、感染制御チーム(外来感染対策向上加算にあっては、院内感染管理者。)により、職員を対象として、定期的に行う研修
- 感染対策向上加算1に係る届出を行った保険医療機関が、保健所及び地域の医師会と連携し、感染対策向上加算2又は3に係る届出を行った保険医療機関と合同で、定期的に行う院内感染対策に関するカンファレンスや新興感染症の発生時等を想定した訓練
- 地域の医師会が定期的に主催する院内感染対策に関するカンファレンスや新興感染症の発生時等を想定した訓練
引用:厚生労働省「令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1)」
医療機関等に研修又は訓練の実施予定日を確認し、高齢者施設等の職員の参加の可否を確認した上で令和7年3月31日までに当該研修又は訓練に参加できる目処があれば算定してよい。
引用:厚生労働省「令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1)」
高齢者施設等感染対策向上加算は、協力医療機関などと連携することで、高齢者施設内で感染症への適切な対応ができることで算定可能な加算です。感染症への日頃からの備えが重要であるため、感染症拡大を未然に防ぐためにも加算を検討し、感染症に備えるようにしましょう。