2024年の介護報酬改定では、介護施設と医療施設との連携が高く評価されています。そのような中で、既存の加算の重要度はますます高くなりました。入居継続支援加算もその一つですが、算定要件などが分からず導入できていない施設もあります。
今回はどのような施設で算定可能なのかや、どのような算定要件かなどについて紹介していきます。この記事を参考に、施設で入居継続支援加算を導入していきましょう。
目次
入居継続支援加算は特定施設入居者生活介護が対象であり、痰の吸引など質の高いケアをおこなっている施設を評価する目的で創設されました。ここでは特定施設とは何か、また特定施設入居者生活介護とは何かについてまとめていきます。
特定施設には次にあげるものが該当します。
ただし、サービス付き高齢者向け住宅のうち、有料老人ホームの定義(食事、介護、家事、健康管理のうちいずれかのサービスを提供していること)に該当するものは、有料老人ホームとして扱われます。
特定施設入居者生活介護は、有料老人ホームなどの特定施設に入居する要介護者について、当該特定施設が提供するサービス等を計画します。その計画に基づいて提供される入浴、排泄、食事など介護やその他必要な日常生活での世話のほか、機能訓練及び療養上の世話のことを指します。
ここでは特定施設入居者生活介護の入居継続支援加算と、地域密着型特定施設入居者生活介護の入居継続支援加算についてみていきます。
まずは特定施設入居者生活介護の単位数と事業所ベースの算定率をみていきます。
単位数 | 算定率(%) | |
入居継続支援加算(Ⅰ) | 36単位/日 | 2.39 |
入居継続支援加算(Ⅱ) | 22単位/日 | 1.89 |
次に地域密着型特定施設入居者生活介護の単位数と事業所ベースの算定率をみていきます。
単位数 | 算定率(%) | |
入居継続支援加算(Ⅰ) | 36単位/日 | 3.68 |
入居継続支援加算(Ⅱ) | 22単位/日 | 0.28 |
このように単位数は同じでも、算定率に差が出ています。
入居継続支援加算は(Ⅰ)と(Ⅱ)に分けられます。次の項目から算定要件についてくわしく見ていきましょう。
厚生労働省が発表してる下記の算定要件1または2のいずれかに適合し、3および4のいずれにも適合すること。
- 社会福祉士及び介護福祉士法施行規則第1条各号に掲げる行為(*¹)を必要とする者の占める割合が入居者の100分の15以上であること。
- 社会福祉士及び介護福祉士法施行規則第1条各号に掲げる行為(*¹)を必要とする者及び次のいずれかに該当する状態(*²)の者の占める割合が入居者の100分の15以上であり、かつ、常勤の看護師を1名以上配置し、看護に 係る責任者を定めていること。
- 介護福祉士の数が、常勤換算方法で、入居者の数が6又はその端数を増すごとに1以上(*³)であること。
- 人員基準欠如に該当していないこと。
*¹:①口腔内の喀痰吸引、②鼻腔内の喀痰吸引、③気管カニューレ内部の喀痰吸引、④胃ろう又は腸ろうによる経管栄養、⑤経鼻経管栄養
*²:①尿道カテーテル留置を実施している状態、②在宅酸素療法を実施している状態、③インスリン注射を実施している状態
*³:テクノロジーを活用した複数の機器(見守り機器、インカム、記録ソフト等のICT、移乗支援機器等)を活用し、利用者に対するケアのアセスメント・評価や人員体制の見直しを行い、かつ安全体制及びケアの質の確保並びに職員の負担軽減に関する事項を実施し、機器を安全かつ有効に活用するための委員会を設置し必要な検討等を行う場合は、当該加算の介護福祉士の配置要件を「7又はその端数を増すごとに1以上」とする。
参考:厚生労働省「令和6年度介護報酬改定における改定事項について」
入居継続支援加算(I)の1又は2のいずれかに適合し(*⁴)、かつ、3及び4のいずれにも適合すること。
*⁴:ただし、1又は2に掲げる割合は、それぞれ100分の5以上100分の15未満であること。
参考:厚生労働省「令和6年度介護報酬改定における改定事項について」
2024年介護報酬改定での変更は、主に以下の2つとなります。それぞれのポイントをみていきましょう。
2024年介護報酬改定により、入居継続支援加算の対象者は以下の通りとなりました。
これらの状態にある利用者が、入居継続支援加算の対象者となります。
喀痰吸引などは本来医療系の資格を取得している医師や看護師などができる業務です。そのため施設では看護師などの積極的な採用及び設置が求められています。
入居継続支援加算を算定する際に、気を付けておきたい注意点がいくつかあります。ここでは主な注意点を3つ紹介していきます。
入居継続支援加算を加算しようとした際に、サービス提供強化加算を算定している場合、両方を算定することはできません。そのためサービス提供体制強化加算を算定しているのであれば、入居継続支援加算の加算はできないことになります。両者の併算定は不可であるため、注意しておきましょう。
入居継続支援加算を加算するためには、看護師の配置が義務付けられています。しかし、介護福祉士が喀痰吸引をおこなえる体制を整えておくことも必要です。介護福祉士が喀痰吸引をおこなうには、喀痰吸引等研修を受講する必要があります。
喀痰吸引等研修については、以下の記事で詳しく説明していますので併せてご覧ください。
喀痰吸引等研修とは?研修の種類や必要な費用、日数について徹底解説!
基本的に介護福祉士の配置は、常勤換算方法で入居者の数が6又はその端数を増すごとに1以上(6:1) が必要ですが、以下の条件を満たすことで7:1に配置を緩和することができます。
【介護福祉士の配置が7:1に緩和される条件】
- テクノロジーを活用した複数の機器を活用し、利用者に対するケアのアセスメント・評価や人員体制の見直しをおこなう
- 安全体制及びケアの質の確保並びに職員の負担軽減に関する事項を実施する
- 機器を安全かつ有効に活用するための委員を設置し、必要な検討等をおこなう
入居継続支援加算についてみてきましたが、ここで特に多い疑問点を一つ紹介していきます。
介護福祉士の資格を有していない介護職員も対象になります。介護に携わっている職員が対象と考えてよいでしょう。
入居継続支援加算は個々で解説した算定要件を満たすことで、算定可能となります。施設の介護体制の質の向上を目指すためにも、加算の検討をしてみてはいかがでしょうか。この記事を参考に、入居継続支援加算を導入する施設が増加していくことを祈っています。