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療養食加算とは?算定要件や対象となる療養食などについて詳しく解説!

2024-08-22

元山 ゆず香

監修者

介護福祉士

元山 ゆず香

大学を卒業後、特別養護老人ホームにて現場業務に従事。その後、福祉系大手企業に入社し、エリアマネージャーとして、施設介護事業・居宅介護事業・障害福祉サービス事業でのエリアマネジメント・行政対応を経験。また、法人本部に異動し教育部門・監査担当部門の部長を歴任。現在は全国の介護・障害福祉事業所の支援やセミナーの開催、DXO株式会社での介護関連事業の支援などを実施。

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医療や介護の現場では、患者や利用者の健康状態に応じた適切な栄養管理が重要な役割を果たします。その中でも、療養食加算は特に注目される制度です。特別な食事が必要な患者や利用者に対して、医療機関や介護施設が提供する療養食に対して加算されるものです。しかし、療養食加算の具体的な算定要件や、どのような療養食が対象となるのかを正確に理解している方は少ないでしょう。

本記事では、療養食加算の基本的な仕組みから、対象となる療養食、算定要件までを詳しく解説します。これを読めば、療養食加算に関する理解が深まり、患者や利用者の栄養管理に役立つ知識が得られることが期待されます。

療養食加算とは?

療養食加算とは、介護施設やサービス事業所が特定の病状に応じた療養食を提供することによって報酬を受けることができる制度です。介護保険制度上に位置づけられている加算のひとつです。入所者・利用者の健康管理を目的に、医師の指示に基づく特別な食事提供をおこなうことで算定できます。

糖尿病や腎臓病などの疾患には、塩分やカロリーなども含め、療養食として特別に栄養コントロールされた食事提供が必要です。特別に配慮された食事を提供するためには、通常に提供する食事と異なり、食材等に追加の費用や手間がかかります。経費負担を補助するために設定されているのが療養食加算です。

介護施設やサービス事業所は、療養食加算による収入増によってコスト増額分を補填しつつ、適切な栄養管理によって利用者の健康増進を図ることができます。

対象となる事業所は?

療養食加算の対象となる施設・事業所は以下の通りです。

  1. 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)
  2. 地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護
  3. 介護老人保健施設
  4. 短期入所生活介護(ショートステイ)
  5. 短期入所療養介護(ショートステイ)
  6. 介護医療院
  7. 介護療養型医療施設

上記に示した通り、特別養護老人ホームなどの入所施設やショートステイが主に対象となります。デイサービスなどの通所サービスや、小規模多機能型居宅介護、グループホーム、有料老人ホーム(特定施設)などは療養食加算の対象外です。

対象となる療養食は?

療養食加算には対象となる療養食が限定されています。下記に該当する疾患に向けた食事であれば療養食加算をとることが可能です。

  • 糖尿病食
  • 腎臓病食
  • 肝臓病食
  • 胃潰瘍食
  • 貧血食
  • 膵臓病食
  • 脂質異常症食
  • 痛風食
  • 特別な場合の検査食

特別な配慮が必要な食事としては、アレルギー食なども注意を必要としますが、アレルギー食は追加費用が発生したとしても加算の条件に該当しません。

療養食加算の単位数・算定要件

療養食加算の単位数と算定要件について解説します。

単位数

具体的には以下の通りです。

施設・サービス種別単位数
介護老人福祉施設
地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護
介護老人保健施設
介護療養型医療施設
介護医療院
6単位/回
短期入所生活介護
短期入所療養介護
8単位/回

1日あたり3回まで加算できます。ショートステイの場合、3回提供すれば24単位となるので、改定前より多く加算できる計算となります。また、以下4つのサービスでは経口移行加算もしくは経口維持加算と併せて算定が可能です。

  • 介護老人福祉施設
  • 地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護
  • 介護老人保健施設
  • 介護医療院

算定要件

算定のためには以下3つの要件を満たす必要があります。

  1. 食事の提供が管理栄養士又は栄養士によって管理されていること
  2. 医師が発行した食事せんに基づき、療養食の献立表作成や、利用者の年齢・症状などに対応した栄養量および食事を提供すること
  3. 食事の提供が、別に厚生労働大臣が定める基準に適合する指定事業所においておこなわれていること

参考:日総研印刷「療養食加算」

療養食加算における療養食の種類の詳細は?

療養食加算で対象となる療養食は以下のように細かく定められています。対象病食と療養食の種類を以下にまとめたので参考にしてください。

対象病食療養食の種類
糖尿病食
腎臓病食心臓疾患などに対しておこなわれる総量6.0g未満の減塩食については、腎臓病食に準じて取り扱うことができる。

高血圧症に対しておこなわれる減塩食は、加算の対象とはならない。
肝臓病食肝庇護食、肝炎食、肝硬変食、閉鎖性黄疸食(胆石症及び胆嚢炎による閉鎖性黄疸の場合を含む)などをいう。
胃潰瘍食十二指腸潰瘍は胃潰瘍食として扱って差し支えない。

手術前後の高カロリー食は加算対象外としないが、大きな消化管手術後に胃潰瘍食に準じた食事を提供する場合は、療養食加算が認められる。

クローン病や潰瘍性大腸炎で腸の機能が低下している入所者に対する低残さ食も、療養食として扱って差し支えない。
貧血食血中ヘモグロビン濃度が10g/dl以下であり、原因が鉄分の欠乏に由来する入所者が対象となる。
膵臓病食
脂質異常症食空腹時定常状態におけるLDL-コレステロール値が140mg/dl以上である者、またはHDL-コレステロール値が40mg/dl未満、もしくは血清中性脂肪値が150mg/dl以上である入所者が対象となる。
※高度肥満症(肥満度が+70%またはBMIが35以上)に対して食事療法をおこなう場合は、脂質異常症食に準じて取り扱うことができる。
痛風食
特別な場合の検査食潜血食のほか、大腸X線検査・大腸内視鏡検査のために特に残さの少ない調理済食品を使用した場合は、特別な場合の検査食として取り扱って差し支えない。

参考:日総研印刷「療養食加算」

療養食加算の算定における必要書類は?

介護老人福祉施設や介護老人保健施設では、加算を算定する月の月末までに「介護給付費算定に係る体制等に関する届出書」を都道府県に提出します。

短期入所生活介護や短期入所療養介護では、加算を算定する月の前月15日までに「介護給付費算定に係る体制等に関する届出書」「従業者の勤務体制および勤務形態一覧表(管理栄養士)」および「管理栄養士または栄養士の資格証の写し」を都道府県の担当団体に提出します。

また、指定権者となる自治体によっては療養食加算にかかる届出書の提出が求められます。届出の内容としては、算定要件を遵守していることを確認するためのチェックリストとなっていることが多いです。

療養食加算についてのQ&A

療養食加算について、食材料費及び調理に係る費用は含まれるの?

療養食加算においては,療養食の栄養管理,特別な調理及び食材料費の費用を評価して いるところである。

引用:日総研印刷「療養食加算に関するQ&A」

療養食加算は、特別な調理や食材料費の費用を評価するための加算であるため、追加コスト部分は療養食加算による報酬の追加分でカバーすべきという回答です。利用者に追加費用として徴収するのではなく、加算部分で充足すべきとしています。

ショートを数回利用する場合、療養食加算の食事せんはその都度発行となるの?

短期入所生活(療養)介護の利用毎に食事せんを発行することになる。

引用:京都府介護支援専門員会「介護保険サービスQ &A」

利用毎に食事せんを発行する必要があります。期間が近いショートステイ利用であったとしても、利用毎に個別に食事せんを発行する必要があります。

療養食加算のうち、貧血食の対象となる入所者等について、原因が鉄分の欠乏に由来する者とは何なのか?

対象となる者は,その貧血の原因が鉄分の欠乏に由来すると医師が認める者である。

引用:全老健介護保険制度情報サービス「法令・省令詳細」

貧血食で療養食加算に該当するかどうかは、検査の数値等ではなく、医師の判断によります。鉄分の欠乏していることで貧血が発生していると医師が認める場合に、貧血食の提供が評価されます。

療養食加算の対象となる脂質異常症の入所者等について、血液検査の数値が改善された場合でも、療養食加算を算定できるの?

医師が疾病治療の直接手段として脂質異常症食にかかる食事せんの発行の必要性を認めなくなるまで算定できる。

引用:全老健介護保険制度情報サービス「法令・省令詳細」

検査結果が条件に該当しなくなったとしても、食事療法の必要があると医師が認め、食事せんが発行されていれば療養食加算は算定可能です。

10時や15時に提供されたおやつは1食に含まれるの?

おやつは算定対象に含まれない。

引用:厚生労働省「平成 30 年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1)」

おやつは療養食加算の対象から除外されています。おやつに限らず、1日の食事回数を増やした場合でも、3食までしか算定することはできません。ただ、加算の対象外とはいえ、おやつも栄養の一部。入所者・利用者の健康管理のために、おやつも含めて総合的な栄養管理をおこなう必要があります。

まとめ

特定の病状にある入所者・利用者に対して、医師の指示に基づく適切な食事を提供することで得られる加算となっています。

加算を算定することで、特別食を提供するための追加費用を補填できるだけでなく、利用者の健康状態の維持や合併症の予防など、生活の質の改善に寄与することが期待できます。特に介護施設での栄養管理については、近年非常に多くの注目が集まっています。今回紹介した療養食加算だけでなく、介護報酬上でも栄養ケアマネジメント強化加算や経口維持加算、再入所時栄養連携加算など、栄養管理に関する加算は多く、充実している傾向です。

国としても施設等での栄養管理の質の向上を通して、悪化防止や入院等による医療コストの削減を目指していることがわかります。こうした栄養改善の取り組みを積極的に進めることで、入所者・利用者の生活の質を向上させることができるでしょう。より質の高いケアと、安定した収益を確保するため、該当する利用者の療養食加算は確実に算定できる体制を整えていきましょう。

お役立ち資料:加算取得を目指す方へ

訪問介護の事業者向けに、各種加算と減算の要件や、優先的に取得するべき加算などについて、わかりやすくまとめました。
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