高齢社会の日本では、2025年にはおよそ700万人(5人に1人)が認知症になると言われています。医療機関・介護施設等での認知症対応が固定化されないように、その方にとって最もふさわしい場所で適切なサービスが提供されることが重要です。認知症に伴う行動・心理症状に対して適切な対応をおこなっていくために、対象事業所では認知症行動・心理症状緊急対応加算を算定することが出来ます。
今回は、認知症行動・心理症状緊急対応加算の概要や算定要件について詳しく解説していきます。
目次
認知症行動・心理症状緊急対応加算とは、在宅の認知症の方に「認知症の行動・心理症状(BPSD)」が出現して、在宅での生活が困難となり、緊急に入所することが適当であると医師が判断した場合に、施設へ入所し、サービスを提供することで算定できる加算のことです。7日間を限度に算定が可能となります。
BPSDとは、認知症の進行による認知機能の障害に伴って現れる妄想・幻覚、興奮・暴力、不安・焦燥・徘徊など、日常生活への適応を困難にするような行動上、心理的な問題のことです。
参考:厚生労働省「厚生労働省:政策レポート」
対象事業者は以下の通りです。
参考:厚生労働省「令和3年度介護報酬改定における改定事項について 」
認知症行動・心理症状緊急対応加算にあたって届出は不要ですが、対応した記録を経過記録や診療録に残しておく必要があります。また判断した医師は、診療録に症状、判断した内容などを記録しておきましょう。事業所のほうでも、医師の指示があった旨の文書を記録したり、判断を行った医師名、日付、利用開始にあたっての留意事項などを介護サービス計画書に記録しておくことが必要です。また、事業所のある自治体によっては、利用者・利用者家族の同意書が必要な場合もあるようですので、各自治体のホームページなどをご確認ください。
認知症行動・心理症状緊急対応加算は、算定要件を満たすことで、サービス利用開始日から数えて7日間、1日につき200単位を算定することができます。
加算対象となる事業所種別は、介護老人福祉施設・介護老人保健施設・短期入所生活介護・短期入所療養介護となります。
主な算定要件は以下の通りです。
- 利用者に「認知症の行動・心理症状」が認められる。(認知症の認知機能の障害に伴う妄想・幻覚・興奮・暴言等の症状)
- 利用者が緊急に入所が必要であると医師が判断した場合であって、介護支援線音韻、受入施設の職員と連携し、利用者又は家族の同意の上、当該施設に入所した場合に算定できる。また、当該施設への救急入所ではなく、医療機関における対応が必要だと判断された場合は、速やかに適切な医療機関の紹介、情報提供をおこなう必要がある。
- a,b,cのいずれかに該当する者が、直接、入所した場合には、認知症行動・心理症状緊急対応加算は算定できない。
- a.病院または診療所に入院中の者
b.介護保険施設または地域密着型介護老人福祉施設に入院中または入所中の者
c.短期入所生活介護、短期入所療養介護、短期利用認知症対応型共同生活介護、地域密着型- 判断をおこなった医師は診療録等に症状、判断の内容等を記録しておくこと。また事業所も判断をおこなった指名、日付及び利用開始にあたっての留意事項等を介護サービス計画書に記録しておくこと。
また、この要件に加えて、対象事業所ごとに異なる算定要件や留意事項があります。表にまとめましたのでご参照ください。
要件及び留意事項 | |
介護老人福祉施設 |
|
短期入所生活介護 |
|
認知症行動・心理症状緊急対応加算についてよくある質問について見ていきましょう。
当初の入所予定期間も含めて、認知症行動・心理症状によって緊急で入所した日から7日間いないで算定することができます。
認知症行動・心理症状緊急対応加算の制度は、認知症の方が予定外に緊急で入所した場合の受け入れの手間を評価する加算です。そのため、予定日どおりの入所では、算定することはできません。
認知症行動・心理症状緊急対応加算を算定している場合は、緊急短期入所受入加算を同時に算定することはできません。その際には、まず認知症行動・心理症状緊急対応加算を算定します。
短期入所生活介護では、緊急短期入所受入加算を算定できない日数を3で除した日数と、短期入所生活介護については 14 日、短期入所療養介護については7日と比較して少ない日数につき、緊急短期入所受入加算の算定が可能です。
今回は認知症行動・心理症状緊急対応加算について紹介しました。認知症行動・心理症状緊急対応加算を算定することで、今後増加が見込まれる認知症利用者に必要なサービスを提供でき、その人らしく過ごすことに繋がるでしょう。対象となる事業所も多いので、算定要件を確認の上、認知症行動・心理症状緊急対応加算の算定を是非ご検討ください。