退院支援指導加算は、訪問看護ステーションが医療機関の退院日に利用者や家族へ療養上必要な指導を行うことで算定できる医療保険上の加算です。算定対象者に該当し、さまざまな算定要件を満たすことによって算定できます。
しかし、「退院支援指導加算の算定対象者や算定要件をくわしく知りたい」「算定する場合、注意すべきポイントはあるのか?」と疑問に思う訪問看護ステーションも多いのではないでしょうか。
今回は、退院支援指導加算の概要や算定要件を中心に、退院時共同支援加算との違いなどもあわせて解説します。これから退院支援指導加算の算定を検討している訪問看護ステーションの担当者は、ぜひ参考にしてください。
退院支援指導加算とは、訪問看護ステーションが医療機関の退院日に、利用者や家族へ在宅での療養上必要な指導を行うことで算定できる加算です。退院日当日は入院期間として扱うため、訪問看護療養費を算定できません。そのため、退院日の翌日以降で初回の訪問看護を利用した際の訪問看護管理療養費に合わせて算定できます。
退院支援指導加算の基本的な算定額は以下のとおりです。
算定回数 | 算定額 |
1回につき | 6,000円 |
令和4年度の報酬改定で、長時間の訪問を要する人に90分以上の訪問を行った場合、以下の算定額が設定されました。
算定回数 | 算定額 |
1回につき | 8,400円 |
しかし、算定できる対象者が決まっており、以下のようになります。
【長時間の訪問の要する者】
そのため、退院支援指導加算を算定する際は、訪問時間や対象者に注意しましょう。
退院支援指導加算の算定対象者は以下のとおりです。
【算定対象者】
また、長時間の訪問を要する者で90分以上の訪問を行った場合の算定対象者は以下のとおりです。
【長時間の訪問を要する者で90分以上の訪問を行った場合の算定対象者】
上記の対象者に該当し、退院指導支援を行った場合は加算を算定できます。ちなみに、厚生労働大臣が定める疾病等の者とは、以下の疾病にかかっている人を指します。
【厚生労働大臣が定める疾病等の者】
また、特別管理加算の対象者は以下のとおりです。
【特別管理加算の対象者】
退院支援指導加算を算定する際は、必ず算定対象者に該当するか確認しましょう。
退院支援指導加算を算定する際、以下の3つの注意点があります。
【退院支援指導加算を算定する際の注意点】
上記3つは退院支援指導加算の算定要件に含まれるため、算定する際は注意しましょう。
退院支援指導加算の基本的な算定要件は4つあります。
本章では退院支援指導加算の算定要件と算定可能なポイントについて解説します。
退院支援指導加算の基本的な算定要件は、以下のとおりです。
【退院支援指導加算の基本的な算定要件】
退院支援指導加算を算定するためには、上記4つの算定要件を満たすことが必要となります。算定する際は必ず算定要件に沿って退院支援指導を行うようにしましょう。
退院支援指導加算の算定ポイントは、以下のとおりです。
【退院支援指導加算の算定ポイント】
上記のように、イレギュラーなケースにおいても算定できるように定められています。そのため、算定ポイントを参考にしつつ、イレギュラーなケースにおいて算定可能か確認しましょう。
退院時共同支援加算は、医療機関や介護施設と訪問看護ステーションが連携し、在宅における療養に必要な指導を連携しながら行った場合に算定できる加算です。退院支援指導加算と似たような性質を持っているため、同じように扱われやすい加算でもあります。
しかし、対象の保険の種類や算定額など大きく違いがあります。本章では退院支援指導加算と退院時共同支援加算の違いについて解説します。
退院時共同支援加算とは、医療機関や介護施設の医師などの専門職と訪問看護ステーションの看護師などが連携し、退院(退所)後の在宅生活における療養に必要な指導を行った場合に算定できる加算です。
退院時共同支援加算は医療保険・介護保険において算定可能であり、退院・退所につき1回のみ算定できます。しかし、以下の対象者に該当する場合、退院時共同支援加算を2回算定できます。
【退院時共同支援加算を2回算定できる対象者】
そして、退院時共同支援加算の算定額は以下のとおりです。
【退院時共同支援加算の算定額】
ちなみに、医療保険の特別管理加算の対象者に必要な支援・指導を行った場合、上記の金額に合わせて特別管理指導加算である2,000円を上乗せして算定できます。
退院時共同支援加算と退院支援指導加算との違いは、以下のとおりです。
退院時共同支援加算 | 退院支援指導加算 | |
保険の種類 |
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算定可能なタイミング | 「退院前」に支援・指導することで算定可能 | 「退院日」に指導することで算定可能 |
算定額 |
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算定の頻度 |
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退院時共同支援加算と退院支援加算は、お互いに退院支援に関する加算のため、同じように扱われやすいです。
退院支援指導加算を算定する際、ケースによっては算定できるのか判断に迷うこともありますよね。本章では4つのケースを基に、退院支援指導加算の算定に関する可否をQ&A形式で解説します。
退院日に退院支援指導を実施したが、初回介入することなく利用者が死去した場合、算定できる可能性があります。ある都道府県では、同様のケースの場合、死去した日に退院支援指導加算の算定を認めています。
しかし、保険者である各都道府県・市区町村によって判断が異なる場合があるため、このようなケースで算定する場合、確認をとるようにしましょう。
介護保険利用者が退院時に特別訪問看護指示書が交付され、退院日に訪問する場合、退院支援指導加算は算定可能です。介護保険利用者の場合、退院時に特別訪問看護指示書が交付されることで、医療保険による訪問看護に切り替わります。
そして、退院日に療養上の退院支援指導が必要な利用者で、次のいずれかに該当する場合は退院支援指導加算の算定を認めています。
こちらのケースも退院支援指導加算の算定が可能です。末期の悪性腫瘍で退院日に訪問する場合、以下の厚生労働大臣が定める退院支援指導を要する者に該当します。
精神科訪問看護指示書が交付された利用者の退院支援指導を行った場合、退院支援指導加算の算定は可能です。こちらも、厚生労働大臣が定める退院支援指導を要する者に該当する場合、算定が認められます。
今回は退院支援指導加算の概要や算定要件を中心に解説しました。
退院支援指導を加算するためには、算定対象者に該当し、算定要件を満たす場合に算定できます。
しかし、算定可能か判断に迷うようなイレギュラーなケースもあるため、算定における注意点やポイント・Q&Aを参考にしつつ、保険者である各都道府県・市区町村にも相談するようにしましょう。