高齢化が進む現代では、高齢者に対する医療や介護のニーズが増加しています。高齢者の健康を管理するためには、夜間も対応できる適切な看護体制を整えることが不可欠です。
夜間の対応を十分に行うために必要な体制を整えた事業所では「夜間看護体制加算」を算定することができます。
この記事では、2024年の介護報酬改定の内容を踏まえて、夜間看護体制加算の概要や、算定要件、申請方法について詳しく解説します。ぜひ最後までお読みください。
目次
夜間看護体制加算とは、夜間の緊急時における対応や適切な処置を行うために、看護体制を整えている事業所が算定できる加算のことです。
夜間看護体制加算の対象サービスは、以下の2つです。
後ほど紹介する算定要件を満たせば、入所者全員に対して算定を行うことができます。
夜間看護体制加算は、通常は要介護認定を受けている方に対して夜間などの緊急時であっても看護やケア、看取りを行うことを対象としています。
一方で、介護予防特定施設入居者生活介護は、要支援1または要支援2の認定を受けた方に対して、日中の生活支援や機能訓練を提供することを対象としたサービスです。
そのため、要支援認定の方が入居する介護予防施設では、夜間看護体制加算の算定はできません。
夜間看護体制加算は介護報酬における算定、看護職員夜間配置加算は診療報酬における算定となっており、支払われるサービス対象が医療行為か、介護サービスかという点で違いがあります。
どちらも夜間の看護体制を充実させる点は共通していますが、夜間看護体制加算は障害者や高齢者などの要介護者が対象であるのに対し、看護職員夜間配置加算は医療を必要とするすべての方が対象となります。
2024年4月からの介護報酬改定に伴い、夜間看護体制加算が見直され、夜間看護加算(Ⅰ)、夜間看護加算(Ⅱ)と区分されるようになりました。順番に解説します。
夜間看護体制加算(Ⅰ)の算定要件は以下の通りです。
この3つを満たすことで、1日あたり18単位を算定することができます。
夜間看護体制加算(Ⅱ)の算定要件は以下の通りです。
この2つを満たすことで、1日あたり9単位を算定することができます。また、この算定要件に加えて、特定施設における看護職員の人員基準は利用者数によって変動します。
利用者数 | 看護職員の人員基準 |
30人以下 | 1人以上 |
30人を超える場合 | 30人に対して1人かつ30人を超えた人数に関しては50の端数が増すごとに+1人 |
看護体制加算においては、准看護師のみの配置で加算をすることはできません。加算を行うためには、必ず常勤の看護師を1名以上配置する必要があります。
オンコール体制とは、緊急時にすぐに対応できるように常に待機しておく勤務体制のことです。緊急時に駆けつけられるように基本的には自宅などの職場外で待機して、連絡があった際に介護職員に指示を出したり、出勤して自ら対応したりします。
特定施設入居者生活介護における夜間看護体制については、夜勤や当直の看護職員を常駐する事業所よりも、オンコールで対応する事業所の方が多いようです。
事業所によっては、オンコール用の携帯電話が支給される場合もあります。待機中にはオンコールが取れる状態で過ごさなければなりません。待機中は夜勤や、当直勤務とは異なり給料が発生しませんが、オンコール手当てが支給されます。
夜間看護体制加算において必要な書類の例を紹介します。自治体によって必要書類が異なる可能性があるので、申請前に各自治体のホームページなどをよく確認しましょう。
*¹:「夜間看護体制に係る届出書」では算定要件を満たしていることを証明するだけでなく、実際に勤務する看護職員の人数を記載しなければならない自治体もあります。自治体の届出書を確認しましょう。
*²:「重症化対応のための指針」では急性期における医師や医療機関との連携体制、特定施設における入院中の居住費や食費の取り扱い、見取りに関する考え方や方針などを盛り込むことが求められます。
夜間緊急時に十分な対応を行うためには、前もって体制を整えておく必要があります。看護職員の配置、オンコール体制の準備などどのように緊急時の夜間対応を行うのか取り決めましょう。
看護職員の配置人数は、利用者数によって変動します。看護職員が必要かよく確認しましょう。オンコール対応は職員に大きな負担となります。看護職員がオンコール対応を行う場合には手当を充実させることも検討しましょう。他にも、訪問看護ステーションと契約して看護師を派遣する、オンコールの代行サービスを利用する方法もあります。
夜間看護体制加算を算定するためには、算定要件にもあるように「看護責任者を定めている」ことが必要になります。夜間に緊急時に最適な看護が何かを判断でき、実践にも精通しており全体を統括できる看護職員が望ましいでしょう。
夜間看護体制加算の算定における必要書類は自治体によって様々です。指定の様式が用意されている書類もあるため、事前に確認して必要書類の準備を行いましょう。
必要書類がそろったら、自治体に提出を行いましょう。
申請は、算定予定月の前月末日までに届け出が必要です。上記よりも締め切りが早い自治体もあるため、事前に確認しましょう。書類の不備や不足があると審査が遅れるため、準備ができ次第、申請しましょう。
夜間看護体制加算により、利用者の健康上の管理や緊急時の対応を円滑に行うことができるでしょう。夜間でも適切な看護ケアを受けられるため、利用者やその家族は安心感を持って1日を過ごすことができ、事業所への信頼を高めることもできるでしょう。
夜間看護体制加算は、夜間の緊急時対応ができる体制を整えておくことができれば利用者全体に算定することができ、事業所の収益アップにつながるでしょう。
夜間看護体制加算の算定条件は、看取り介護加算の条件にもなっています。そのため、夜間看護体制を整えることは、看取り介護のための環境整備とも言え、より充実した見取り介護をも提供できる事業所といえるでしょう。最期を迎えられる利用者がいた場合、看取り介護加算を算定できるようになることもまた、事業所の収益アップにつながります。
夜間看護体制加算には、看護職員の夜勤やオンコール勤務が必要です。オンコールでは遠出をしない、飲酒をしない、睡眠中も常に電話に出られるように待機をするなど、行動制限があります。せっかくの休日でも気が休まらなくなってしまうかもしれません。
夜勤もオンコール勤務も肉体的、精神的に大変であるため、夜間対応を行う職員の離職率が増加してしまう可能性があります。夜勤手当、オンコール手当てを与えて働くうえでのやりがいを保つことが必要です。
夜間看護体制を充実させるためには、看護師や看護補助者を増員しなければならない場合があります。年々看護職員の就業者数は増加しているものの、需要推計から見ると、不足の傾向にあります。
そのため、夜間看護体制加算を算定したくても、看護職員の配置基準を満たせず、算定を行うことが難しい場合もあるかもしれません。
今回は、夜間看護体制加算の算定について、算定要件や必要な研修について紹介しました。
高齢者は健康上の問題を抱えることが多く、夜間にも容体が急変するなど緊急対応が必要になります。そのため、夜間の看護体制を強化することで医療やケアのニーズに対応出来るでしょう。
しかし、夜間看護体制を強化するためには、看護師や看護職員を増やす必要があったり、看護職員にとって負担が大きくなってしまいます。夜間看護体制加算を算定する際には、十分な環境整備を行いましょう。