夜間支援体制加算とは、認知症対応型共同生活介護において基準以上の職員を夜間に配置することで算定できる加算です。2024年介護報酬改定によって算定要件が緩和されるため、より多くの事業所が算定しやすくなります。
この記事では、夜間支援体制加算の算定要件や見直しのポイントについて解説します。この記事を読むことで、加算の算定へ向けて準備すべきこともわかります。
目次
夜間支援体制加算は、認知症対応型共同生活介護において、夜間に多くの職員を配置した場合に算定できます。2024年介護報酬改定前の算定条件と単位数については、以下をご参照ください。
【夜間支援体制加算の算定要件と単位数(2024年介護報酬改定前)】
夜間支援体制加算(Ⅰ):50単位/日
算定要件
- 共同生活住居の数が1の場合
- 事業所ごとに常勤換算方法で1人以上の夜勤職員又は宿直職員を加配する
夜間支援体制加算(Ⅱ):25単位/日
算定要件
- 共同生活住居の数が2以上の場合
- 事業所ごとに常勤換算方法で1人以上の夜勤職員又は宿直職員を加配する
参考:厚生労働省「令和6年度介護報酬改定における改定事項について」
夜間支援体制加算を算定するためには、全ての開所日において夜間及び深夜の時間帯の体制が人員配置基準を上回っている必要があります。
また、宿直職員は事業所内に宿直する必要があり、併設事業所と同時並行的に宿直勤務を行うと算定対象外となるため注意しましょう。ただし、各事業所ごとに宿直職員が配置されている場合は、それぞれ算定できます。
認知症対応型共同生活介護では、以前から夜勤体制に関する意見が議論されていました。
厚生労働省の資料「認知症対応型共同生活介護(認知症グループホーム)(改定の方向性)」では、認知症対応型共同生活介護の人員配置基準の厳しさや、実際に夜間支援体制加算を算定している事業所が少ない実態について指摘されています。
認知症対応型共同生活介護以外の多くの入所系施設では、2ユニットごとに常勤換算1以上の職員を配置することが求められています。一方、認知症対応型共同生活介護は1ユニットごとに常勤換算1以上の職員を配置する必要があり、他の施設よりも多めに夜勤スタッフを確保しなければいけません。
これらの実態を踏まえて、2021年介護報酬改定では、一定の条件下において3ユニットにおける夜勤職員を2人以上配置でも算定可能とする要件緩和を実施しました。
この基準緩和によって、現場職員の業務負担を軽減できる一定の効果は見られていますが、算定要件を満たせる事業所が少なく、十分なデータを集められませんでした。
これらの実態を踏まえて、今後はICT機器の活用等によって人員配置基準を見直し、夜勤職員の例外的な配置についても検討されています。
2024年の介護報酬改定では、夜間支援体制加算の算定要件が見直されます。具体的な見直し内容については、以下をご参照ください。
【夜間支援体制加算の算定要件見直し内容】
夜勤職員の最低基準(1ユニット1人)への加配人数
- 現行要件:事業所ごとに常勤換算方法で1人以上の夜勤職員又は宿直職員を加配する。
- 新設要件:事業所ごとに常勤換算方法で0.9人以上の夜勤職員を加配すること。
見守り機器の利用者に対する導入割合
- 現行要件:なし
- 新設要件:10%
その他の要件
- 現行要件:なし
- 新設要件:利用者の安全並びに介護サービスの質の確保及び職員の負担軽減に資する方策を検討するための委員会を設置し、必要な検討会等が行われていること。
参考:厚生労働省「令和6年度介護報酬改定における改定事項について」
現行加算との違いとして、最低基準への加配人数が常勤換算1名から0.9名に緩和されることと、見守り機器等の設置や委員会の設置といった新たな算定要件が挙げられます。
ここでは、2024年以降の夜間支援体制加算の算定要件について詳しく解説します。
2024年の介護報酬改定以降に算定する夜間支援体制加算において、算定単位数の変化はありません。改定前と同様、夜間支援体制加算(Ⅰ)が50単位/日、夜間支援体制加算(Ⅱ)が25単位/日です。
夜間支援体制加算の算定要件については、細かい変更が実施される予定です。特に注意しなければいけないのは、以下の2点です。
現行の算定基準に加えて、上記の2つの算定要件を満たした場合、夜勤を行う介護従事者が最低基準を0.9人以上上回っていた場合でも算定できるようになります。この変更によって、これまで以上に夜間支援体制加算を算定しやすくなりました。
2024年介護報酬改定後には、夜間支援体制加算の算定要件等が緩和され、多くの認知症対応型共同生活介護で加算を算定しやすくなります。
2024年以降に夜間支援体制加算を算定しようと考えている事業所は、今から準備を始めることでスムーズに算定できるでしょう。ここでは、夜間支援体制加算の見直しへ向けた対策について詳しく解説します。
2024年の介護報酬改定以降、認知症対応型共同生活介護利用者のうち10%の方に対して、動向を検知できる見守り機器を設置することで夜間支援体制加算の算定基準緩和に繋がります。
加算の算定へ向けて、事業所内の利用者のうち見守り機器等を導入している方の割合や、これから必要になる方をリストアップして使用者の割合を計算しておくとよいでしょう。
利用者の動向を検知できる見守り機器の例として、以下の機器が挙げられます。
認知症高齢者は危険な行動をとる場合もあるため、上記のような見守り機器を使用して職員が動向を把握しておく必要があります。
しかし、本来は必要ない方に対してセンサーを設置すると高齢者虐待に該当するため、見守り機器を導入する際には十分に注意しなければいけません。
また、仮に必要性の高い利用者だったとしても、必ず本人とご家族の了承が必要なため、事前に本人やご家族に説明して同意を得てから見守り機器を導入しましょう。
夜間支援体制加算の算定要件緩和を受けるためには、見守り機器を導入するだけでなく「利用者の安全並びに介護サービスの質の確保及び職員の負担軽減に資する方策を検討するための委員会」を設置する必要があります。
しかし、2024年3月時点では、委員会を構成する職員の要件や委員会の開催頻度等の詳しい情報は公開されていません。
今後、追加の情報発表やQ&A等で詳細が公開される可能性があります。厚生労働省からの最新情報に注意しつつ、詳細な情報を確認して委員会を設置しましょう。
夜間支援体制加算は、認知症対応型共同生活介護の夜間配置職員を手厚くすることで算定できる加算です。
介護業界の人手不足が深刻化する中で、現行の算定要件で夜間支援体制加算を算定できる事業所は少なく、厚生労働省でも算定要件の見直しを検討しています。
2024年の介護報酬改定により、利用者のうち10%の方々に見守り機器を導入し、利用者の安全確保と職員の負担軽減に資する委員会を設置することで配置基準を緩和できるようになります。
この改定により、多くの認知症対応型共同生活介護で夜間支援体制加算を算定できるようになるでしょう。
今後、夜間支援体制加算の算定を考えている事業所は、見守り機器等を設置している利用者数の把握や委員会の設置に取り組むことをおすすめします。
【参考資料】
厚生労働省「令和6年度介護報酬改定に関する審議報告」
厚生労働省「令和6年介護報酬改定における改定事項について」
厚生労働省「認知症対応型共同生活介護(認知症グループホーム)(改定の方向性)」