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認知症ケア加算とは?取得の仕方と算定の注意点

元山 ゆず香

監修者

介護福祉士

元山 ゆず香

大学を卒業後、特別養護老人ホームにて現場業務に従事。その後、福祉系大手企業に入社し、エリアマネージャーとして、施設介護事業・居宅介護事業・障害福祉サービス事業でのエリアマネジメント・行政対応を経験。また、法人本部に異動し教育部門・監査担当部門の部長を歴任。現在は全国の介護・障害福祉事業所の支援やセミナーの開催、DXO株式会社での介護関連事業の支援などを実施。

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2021年度介護報酬改定後、訪問介護サービスでも認知症ケア加算を算定できるようになりました。しかし、「認知症ケア加算の算定要件が理解しづらい、わかりやすく解説してほしい」と悩んでいる経営者の方も多いのではないでしょうか。今回は、認知症ケア加算を取得する要件と算定する際の注意点について、わかりやすく解説します。この記事を読むことで、認知症ケア加算を算定するために必要なことが理解できるでしょう。ぜひ最後までお読みください。

認知症ケア加算とは

認知症ケア加算とは、認知症に関する専門的な研修を受けた介護職員を配置した事業所が、認知症の利用者を受け入れることで算定できる加算です。正式には「認知症専門ケア加算」という名前ですが、省略して「認知症ケア加算」と呼ばれることもあります。今回は略称の「認知症ケア加算」を使って解説していきます。

厚生労働省「認知症の人の将来統計について」によると、2025年には「65歳以上高齢者の約20%が認知症である」と予測されています。高齢者の5人に1人が認知症という時代を目前に、認知症高齢者への介護支援体制を整えなければいけません。

介護サービス全般における認知症への対応力強化を目的に創設されたのが「認知症ケア加算」です。

2021年の介護報酬改定では、加算の対象となるサービスが拡大する、認知症ケア加算の算定要件となる「認知症ケアに関する専門研修を修了した者の配置」について対象範囲を拡大する、といった変更もありました。今後、算定事業所が増加する可能性のある重要な加算です。

 

認知症ケア加算を算定できる介護サービス

認知症ケア加算を算定できる介護サービスは以下のとおりです。

 

  • 短期入所生活介護
  • 短期入所療養介護
  • 特定施設入居者生活介護
  • 介護老人福祉施設
  • 介護老人保健施設
  • 介護療養型医療施設
  • 介護医療院
  • 認知症対応型共同生活介護
  • 地域密着型特定施設入居者生活介護
  • 地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護
  • 訪問介護(2021年から)
  • 訪問入浴介護(2021年から)
  • 夜間対応型訪問介護(2021年から)
  • 定期巡回・随時対応型訪問介護看護(2021年から)

 

2021年度介護報酬改定において、介護サービス全般の認知症への対応力を向上させることを目的に算定できるサービスが追加されています。居住系サービスに加えて、訪問系サービス(訪問介護、訪問入浴介護、夜間対応型訪問介護、定期巡回・随時対応型訪問介護看護)でも算定できるようになりました。

認知症ケア加算の種類と単位数

認知症ケア加算には、認知症専門ケア加算(Ⅰ)と認知症専門ケア加算(Ⅱ)という2種類があります。各加算の単位数については以下のとおりです。

 

認知症ケア加算の種類と単位数

サービス名

認知症専門ケア加算(Ⅰ)

認知症専門ケア加算(Ⅱ)

短期入所生活介護

短期入所療養介護

特定施設入居者生活介護

介護老人福祉施設

介護老人保健施設

介護療養型医療施設

介護医療院

認知症対応型共同生活介護

地域密着型特定施設入居者生活介護

地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護

訪問介護

訪問入浴介護

3単位/日

4単位/日

夜間対応型訪問介護

夜間対応型訪問介護費(Ⅰ)を算定:3単位/日

夜間対応型訪問介護費(Ⅱ)を算定:90単位/月

夜間対応型訪問介護費(Ⅰ)を算定:4単位/日

夜間対応型訪問介護費(Ⅱ)を算定:120単位/月

定期巡回・随時対応型訪問介護看護

90単位/月

120単位/月

認知症ケア加算の算定要件

認知症ケア加算の算定要件は以下のとおりです。

 

認知症ケア加算の算定要件

認知症専門ケア加算(Ⅰ)

・ 認知症高齢者の日常生活自立度Ⅲ以上の者が利用者の100分の50以上

・ 認知症介護実践リーダー研修修了者を認知症高齢者の日常生活自立度Ⅲ以上の者が20名未満の場合は1名以上、20名以上の場合は1に、当該対象者の数が19を超えて10又は端数を増すごとに1を加えて得た数以上配置し、専門的な認知症ケアを実施

・ 当該事業所の従業員に対して、認知症ケアに関する留意事項の伝達又は技術的指導に係る会議を定期的に開催

認知症専門ケア加算(Ⅱ)

・認知症専門ケア加算(Ⅰ)の要件を満たし、かつ、認知症介護指導者養成研修修了者を1名以上配置し、事業所全体の認知症ケアの指導等を実施

・ 介護、看護職員ごとの認知症ケアに関する研修計画を作成し、実施又は実施を予定

 

認知症専門ケア加算(Ⅰ)を算定する場合、認知症介護に係る研修を修了している職員を配置しなければいけません。配置数は対象者の人数に応じて設定されており、以下の計算式で配置人数を決定します。なお、対象者の判断基準である「認知症高齢者の日常生活自立度」に関しては別の章で解説します。

 

認知症介護に介護に係る研修を修了している職員の配置人数

対象者数

研修修了者の配置人数

20人未満

1名以上

20人以上

「1+(対象者数-19+1)」名以上

 

認知症ケア加算を算定するために必要な研修

認知症ケア加算を算定するためには、認知症介護に係る研修を修了した介護職員の配置が必要です。認知症介護に係る研修とされているものとして、認知症介護実践リーダー研修、認知症介護指導者養成研修、認知症看護に係る適切な研修の3つが該当しています。3つの研修について解説します。

認知症介護実践リーダー研修とは

認知症介護実践リーダー研修とは、介護施設や事業所において認知症介護の指導ができるリーダーを育成するための研修で、「認知症介護基礎研修」と「認知症介護実践者研修」の上位資格にあたります。認知症介護実践リーダー研修に修了試験などはなく、受講するカリキュラムは以下のとおりです。

 

認知症介護実践リーダー研修

講義・演習

・認知症介護の理念

・認知症介護のための組織論

・人材育成のための技法

・チームケアのための事例演習

実習

・実習課題設定

・外部実習

・職場実習

・実習結果報告を通してのまとめ

 

認知症介護実践リーダー研修は、各都道府県が指定する事業所で開催されるため、会場、開催日時、受講料などは都道府県ごとに異なります。受講を希望する際は、各自治体のホームページなどで情報を確認しましょう。

認知症介護指導者養成研修とは

認知症介護指導者養成研修とは、認知症介護基礎研修や認知症介護実践者研修を自ら企画立案し、講義・演習・実習を担当できる人材を養成する研修です。介護保険施設・事業所で提供している介護サービスの質の改善について、自ら指導できる人材育成を目的としています。受講するためには以下の要件を満たす必要があるので注意しましょう。

 

  • 以下のいずれかの資格を有するもの
    (ア)医師、保健師、助産師、看護師、准看護師
    (イ)理学療法士、作業療法士、言語聴覚士
    (ウ)社会福祉士、介護福祉士、精神保健福祉士
    (エ)上記(ア)~(ウ)に準ずる者
  • 以下のいずれかに該当する者であって、相当の介護実務経験を有する者
    (ア)介護保険施設・事業所等に従事している者(過去において介護保険施設・事業所等に従事していた者も含む。)
    (イ)福祉系大学や養成学校等で指導的立場にある者
    (ウ)民間企業で認知症介護の教育に携わる者
  • 認知症介護実践リーダー研修を修了した者
  • 認知症介護基礎研修又は認知症介護実践者研修の企画・立案に参画し、又は講師として従事することが予定されている者
  • 地域ケアを推進する役割を担うことが見込まれている者

認知症看護に係る適切な研修とは

2021年度介護報酬改定によって、認知症看護に係る適切な研修を受けた職員も配置要件に加えられました。認知症看護に係る適切な研修については、以下の3つの研修が該当します。

 

  • 日本看護協会認定看護師教育課程「認知症看護」の研修
  • 日本看護協会が認定している看護系大学院の「老人看護」及び「精神看護」の専門看護師教育課程
  • 日本精神科看護協会が認定している「精神科認定看護師」

 

上記のような研修を終了している看護師も、認知症介護に係る研修を修了した職員として配置できます。事業所に所属している看護師も「認知症介護に係る研修を修了した職員」として配置できないか検討してみてもよいでしょう。

認知症ケア加算を算定する際の注意点

認知症ケア加算を算定する際には、認知症利用者の計算方法について理解しておく必要があるでしょう。また、認知症ケア加算において重要な指標となる「認知症高齢者の日常生活自立度」の内容についても解説します。

認知症高齢者の日常生活自立度について

認知症高齢者の日常生活自立度とは、高齢者の認知症の症状がどの程度日常生活に影響しているのかを表す指標です。介護保険制度の要介護認定では認定調査や主治医意見書でこの指標が用いられており、要介護度の認定審査会で参考にされています。認知症高齢者の日常生活自立度の具体的な判断基準は以下の通りです。

 

認知症高齢者の日常生活自立度

ランク

判定基準

症状・行動

何らかの認知症を有するが、日常生活は家庭内及び社会的にほぼ自立している。

日常生活に支障を来すような症状・行動や意思疎通の困難さが多少見られても、誰かが注意していれば自立できる。

Ⅱa

家庭外で上記Ⅱの状態が見られる。

たびたび道に迷う、買い物や事務、金銭管理などそれまでできたこと

にミスが目立つ等

Ⅱb

家庭内でも上記Ⅱの状態が見られる。

服薬管理ができない、電話の対応や訪問者との対応などひとりで留守番ができない等

日常生活に支障を来すような症状・行動や意思疎通の困難さがときどき見られ、介護を必要とする

Ⅲa

日中を中心として上記Ⅲの状態が見られる。

着替え、食事、排便・排尿が上手にできない・時間がかかる、やたらに物

を口に入れる、物を拾い集める、徘徊、失禁、大声・奇声を上げる、火の不始末、不潔行為、性的異常行為等

Ⅲb

夜間を中心として上記Ⅲの状態が見られる。

ランクⅢaに同じ

日常生活に支障を来すような症状・行動や意思疎通の困難さが頻繁に見られ、常に介護を必要とする。

ランクⅢに同じ

M

著しい精神症状や問題行動あるいは重篤な身体疾患が見られ、専門医療を必要とする。

せん妄、妄想、興奮、自傷・他害等の精神症状や精神症状に起因する問題行動が継続する状態等

 

引用:厚生労働省「認知症高齢者の日常生活自立度」

認知症利用者の計算方法

認知症ケア加算を算定するためには「認知症高齢者の日常生活自立度Ⅲ以上の者が利用者の100分の50以上」という要件を満たす必要があります。ただし、この利用者の割合は、以下の条件下で計算されなければいけません。

 

  1. 算定日が属する月の前3ヶ月において、利用者実人数または利用者延人数の平均を計算
  2. 認知症高齢者の日常生活自立度Ⅲ以上のものが平均値の50%以上か判断する

 

毎月継続的に上記の計算を繰り返し、算定要件を満たしているか判断していかなくてはいけません。仮に、日常生活に支障を来すおそれのある認知症利用者が50%未満になった場合、認知症ケア加算を算定できないので注意しましょう。

認知症ケア加算のよくある質問

認知症ケア加算について基本的なことが理解できたとしても、詳細な要件がわからずに困る方もおおいでしょう。そこで、認知症ケア加算に関連するQ&Aのなかから、重要度の高いものを3つご紹介します。認知症ケア加算を算定する際にお役立てください。

認知症介護実践リーダー研修について

 

Q:平成18年度より全国社会福祉協議会が認定し、日本介護福祉士会等が実施する「介護福祉士ファーストステップ研修」については、認知症介護実践リーダー研修相当として認められるか。

 

A:本加算制度の対象となる認知症介護実践リーダー研修については、自治体が実施又は指定する研修としており、研修カリキュラム、講師等を審査し、適当と判断された場合には認められる。

 

引用:厚生労働省「介護サービス関係 Q&A集」No.368

認知症介護指導者の配置について

 

Q:認知症専門ケア加算Ⅱの認知症介護指導者は、研修修了者であれば施設長でもかまわ ないか。

 

A:認知症介護指導者研修修了者であり、適切に事業所又は施設全体の認知症ケアの実施等を行っている場合であれば、その者の職務や資格等については問わない。

 

引用:厚生労働省「介護サービス関係 Q&A集」No.369

「配置」の考え方について

 

Q:認知症介護に係る専門的な研修を修了した者を配置するとあるが、「配置」の考え方如何。常勤要件等はあるか。

 

A:専門的な研修を修了した者の配置については、常勤等の条件は無いが、認知症チームケアや認知症介護に関する研修の実施など、本加算制度の要件を満たすためには施設・事業所内での業務を実施する必要があることから、加算対象施設・事業所の職員であることが必要である。なお、本加算制度の対象となる施設・事業所は、専門的な研修を修了した者の勤務する主たる事業所1か所のみである。

 

引用:厚生労働省「介護サービス関係 Q&A集」No.371

まとめ

今回は認知症ケア加算について解説しました。2025年には「65歳以上高齢者の約20%以上が認知症になる」という予測データが出されていることから、介護サービスにおける認知症対応力の強化は重要な課題です。そのため、認知症ケア加算の重要性も高くなっています。

2021年度介護報酬改定では、認知症介護に係る研修を修了した職員の要件も追加され、算定可能な介護サービスも増加しました。

職員が認知症介護に係る研修を修了するまでには、数ヶ月の期間が必要です。そのため、認知症ケア加算を算定したくても、すぐに算定できない場合もあります。今後、全ての介護サービスにおいて認知症ケアの需要が高くなる可能性は非常に高いため、今から認知症ケア加算を算定する準備を始めておきましょう。

 

参考文献

厚生労働省「介護サービス関係 Q&A集」

厚生労働省「認知症高齢者の日常生活自立度」

厚生労働省「令和3年度介護報酬改定における 改定事項について」

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