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【特定事業所加算】算定要件を自主点検できるチェックシートを紹介|訪問介護における必須項目は?

2024-01-15

元山 ゆず香

監修者

介護福祉士

元山 ゆず香

大学を卒業後、特別養護老人ホームにて現場業務に従事。その後、福祉系大手企業に入社し、エリアマネージャーとして、施設介護事業・居宅介護事業・障害福祉サービス事業でのエリアマネジメント・行政対応を経験。また、法人本部に異動し教育部門・監査担当部門の部長を歴任。現在は全国の介護・障害福祉事業所の支援やセミナーの開催、DXO株式会社での介護関連事業の支援などを実施。

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訪問介護において特定事業所加算を取得することは重要ですが、算定要件はかなり複雑です。そのため、今回は特定事業所加算を取得するにあたって、算定要件を自主点検できるチェックシートを紹介します。

今回のチェックシートを活用して、ぜひ特定事業所加算の取得を検討してください。

特定事業所加算とは?

専門性の高い従業員を多く配置するなどし、要介護度の高い・支援が困難な利用者でも、質の高い介護サービスを提供することで事業所に対して支払われる加算を特定事業所加算といい、現在では全体の40%程度が加算を取得しています。

この特定事業所加算は、高齢化が深刻になる今後において取得することは重要です。実際、2025年における高齢者割合は65歳以上が30.3%、75歳以上が18.1%になると推計しています。その後も2036年には33.3%と3人に1人、2065年には38.4%と国民の約2.6人に1人が65歳以上の者となると高齢化率は上昇する予測です。

高齢化率が上昇すると要介護者も増加しており、2020年度では要介護(要支援)認定者数は約682万人でしたが、2040年には988万人と予測されています。

また同じように訪問介護を利用する方も増えており、2021年の時点でおよそ118万人だった1ヵ月あたりの利用者数が、2040年にはおよそ134万人まで増加すると厚生労働省は発表しました。

これらの予測から訪問介護の事業所数は年々増加していますが、質の低い介護サービスを行っている事業所が増えているのも事実です。

そのため、特別事業所加算を取得することで、「介護の質の向上」「人材確保」に取り組んでいる事業所であることが第3者でも評価できるため、今後の事業所運営にとって取得すべき加算の1つです。

参考:
厚生労働省「社会保障審議会介護給付費分科会(第220回) 訪問介護」
内閣府「第1章 高齢化の状況(第1節6(1))」
厚生労働省「第11回健康日本21(第二次)推進専門委員会 資料」
内閣府「第1章 高齢化の状況(第1節 1)」
厚生労働省「介護保険事業状況報告(暫定)」
厚生労働省「令和2年度 介護保険事業状況報告(年報)」
経済産業省「将来の介護需給に対する高齢者ケアシステムに関する研究会」
厚生労働省「第222回社会保障審議会介護給付費分科会」

訪問介護の特定事業所加算を算定するためのチェックシート

訪問介護の特定事業所加算は下記の5つに分類されます。

  • 特定事業所加算Ⅰ:総単位数プラス20%
  • 特定事業所加算Ⅱ:総単位数プラス10%
  • 特定事業所加算Ⅲ:総単位数プラス10%
  • 特定事業所加算Ⅳ:総単位数プラス5%
  • 特定事業所加算V :総単位数プラス3%

上記から分かるように、特定事業所加算は総単位数から3〜20%が加算されます。

特に最も加算率が高い「特定事業所加算Ⅰ」を取得すれば、総単位数プラス20%と事業所の経営安定に大きく貢献します。実際、月商150万円の事業所であれば、年間で360万円の売り上げが向上する計算です。

経営の安定以外に、特定事業所加算ⅠまたはⅡを取ることで、特定処遇改善加算の中でも加算率が1番高い「特定処遇改善加算Ⅰ」を算定できます。

「特定処遇改善加算」は介護職員の処遇改善を目的としている加算で、「特定処遇改善加算Ⅰ」であれば6.3%、「特定処遇改善加算Ⅱ」であれば4.2%の割合を1ヵ月の総単位数に乗じて単位数を算定します。

この加算を取得すれば、介護職員の処遇を高く設定できるため人材の確保・定着にもつながります。

このように特定事業所加算を取得すると事業所にとって大きなメリットですが、取得方法は複雑です。そのため、詳細な特定事業所加算Ⅰ〜Ⅴまでの取得方法が気になる方は下記の記事をぜひ参考にしてください。

参考:けあタスケル「訪問介護の特定事業所加算を算定するための要件とは?Ⅰ~Ⅴまでの取得方法を解説」

下記が訪問介護の特定事業所加算を算定するためのチェックシートです。

算定要件

1.訪問介護員等ごとの研修計画の作成、計画に基づく研修の実施

2.会議の定期的な開催

3.伝達、訪問介護員等からの報告

4.健康診断等の定期的な実施

5.緊急時等における対応方法の明示

6.サービス提供責任者ごとの研修計画の作成と実施

7.訪問介護員等が以下のいずれかを満たす
・介護福祉士の占める割合が30%以上
・介護福祉士、実務者研修修了者、介護職員基礎研修課程修了者、1級課程修了者の占める割合が50%以上


8.全てのサービス提供責任者が以下のいずれかを満たす
・3年以上の実務経験がある介護福祉士
・5年以上の実務経験がある実務者研修修了者、介護職員基礎研修課程修了者、1級課程修了者


9.常勤のサービス提供責任者を配置し、基準を上回る数の常勤のサービス提供責任者を1人以上配置

10.訪問介護員等の総数のうち、勤続年数7年以上の占める割合が30%以上

11.利用者のうち、要介護4以上、日常生活自立度Ⅲ・Ⅳ・M、たんの吸引等を必要とする利用者の占める割合が20%以上

12.利用者のうち、要介護3以上、日常生活自立度Ⅲ・Ⅳ・M、たんの吸引等を必要とする利用者の占める割合が60%以上

*:7.または8.の要件のいずれかを満たすこと

参考:厚生労働省「令和3年度介護報酬改定における改定事項について」

 

1.訪問介護員等ごとの研修計画の作成、計画に基づく研修の実施

  •  全ての訪問介護員等(サービス提供責任者・登録ヘルパーを含む。)に対し、個別の研修計画を策定し、当該計画に従って研修(外部研修を含む)を実施している(または実施を予定している)
    • 訪問介護員等ごとの、個別具体的な研修の目標、内容、研修期間、実施時期等を定めた計画を策定している(事業所全体としての計画のみは不可。ただし、経験年数・所有資格・本人の意向・能力等に応じ、職員をグループ分けをして作成することは可)
    • 研修実施のための勤務体制(職員が積極的に研修に参加できるような環境)を確保している

2.会議の定期的な開催

  • 利用者に関する情報もしくはサービス提供に当たっての留意事項の伝達、または訪問介護員等の技術指導を目的とした会議を定期的に開催している
    • 会議は、サービス提供責任者が中心となって行い、訪問介護員等(登録型を含む)の全員が参加している。(会議は全員が参加することが困難である場合は、いくつかのグループに分かれて開催することも可)
    • 概ね1ヵ月に1回以上会議を開催している
    • 会議は、テレビ電話装置等(リアルタイムでの画像を介したコミュニケーションが可能な機器)を使用して行うことも可。ただ、その際は個人情報保護委員会・厚生労働省「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」、厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」等を守っていること

3.伝達、訪問介護員等からの報告

  • 訪問介護を実施するに当たって、サービス提供責任者は、訪問介護員等に対して、利用者に関する情報や留意事項について文書等の確実な方法により伝達している
  • 少なくとも以下の事項について、その変化の動向を含めて記載(伝達)している
    • ① 利用者のADLや意欲
    • ② 利用者の主な訴えやサービス提供時の特段の要望
    • ③ 家族を含む環境
    • ④ 前回のサービス提供時の状況
    • ⑤ その他サービス提供に当たって必要な事項

*④は毎回必ず記載(伝達)すること。④以外の事項は、初回および変化があった場合のみ記載することで可

  • 文書以外の方法により伝達する場合
    • 電子メールを利用する場合、古いデータが自動的に消去されないよう別途保存する等の対策を行っている
    • FAXを利用する場合、送信先のFAXを後日、訪問介護員等から回収している

4.健康診断等の定期的な実施

  • 全ての訪問介護員等に対し、健康診断等を定期的に実施している
    • 労働安全衛生法により定期的に実施することが義務付けられた「常時使用する労働者」に該当しない訪問介護員等も含めて、少なくとも1年以内ごとに1回、事業主の費用負担により実施している。(新たに加算を算定する事業所においては、1年以内に実施することが計画されておれば可)

参考:厚生労働省「労働安全衛生法に基づく定期健康診断」

5.緊急時等における対応方法の明示

  • 緊急時等における対応方法を利用者に明示している
    • 緊急時における対応方針・連絡先・対応可能時間等を記載した文書を利用者に交付して説明している。(重要事項説明書において当内容明記し、説明しても可。)

6.サービス提供責任者ごとの研修計画の作成と実施

  • 全てのサービス提供責任者に対し、サービス提供責任者ごとの研修計画を作成し、その計画に従って研修(外部研修を含む)を実施している(または実施予定)
    • サービス提供責任者ごとの、個別具体的な研修の目標、内容、研修期間、実施時期等を定めた計画を作成している
    • 研修実施のための勤務体制(職員が積極的に研修に参加できるような環境)を確保している

7.訪問介護員等の基準を満たしている

  • 前年度(3月を除く)または3ヵ月前における訪問介護員等の総数のうち、
    • 介護福祉士の占める割合が50%以上である
    • 介護福祉士 + 実務者研修修了者 + 介護職員基礎研修課程修了者 + 一級課程修了者の占める割合が50%以上である

*上記の基準をいずれか満たしている

8.全てのサービス提供責任者が条件を満たす

  • 全てのサービス提供責任者が、以下のいずれかに該当する
    • 3年以上の実務経験を有する介護福祉士
    • 5年以上の実務経験を有する、実務者研修修了者または介護職員基礎研修課程修了者または一級課程修了者

*訪問介護事業所は、前3ヵ月の平均利用者数40名につき1人以上のサービス提供責任者を配置する必要がある。そのため、平均が40名以上になる場合は、常勤のサービス提供責任者を2名配置することが必要。

参考:厚生労働省「訪問介護におけるサービス提供責任者について」

9.常勤のサービス提供責任者を配置し、基準を上回る数の常勤のサービス提供責任者を1人以上配置

  • 前3ヵ月の平均利用者数40名以下であれば、基準上サービス提供責任者が1名必要なため、プラス1名で合計2名が必要

*なお、平均利用者数41名以上の場合は基準上サービス提供責任者が2名必要なため、さらに1名プラスの合計3名必要。

参考:厚生労働省「訪問介護におけるサービス提供責任者について」

10.訪問介護員等の総数のうち、勤続年数7年以上の占める割合が30%以上

  • 訪問介護員等の総数のうち、勤続年数7年以上の者の占める割合が30%以上である

*勤続年数は、各月の前月の末日時点におれる勤続年数をいうものとする。具体的には、令和5年4月における勤続年数7年以上の者とは、令和4年3月31日時点で勤続年数が7年以上である者をいう。

*勤続年数の算定に当たっては、当該事業所における勤務年数に加え、同一法人等の経営する他の介護サービス事業所、病院、社会福祉施設等においてサービスを利用者に直接提供する職員として勤務した年数を含めることができるものとする。

11.利用者のうち、要介護4以上、日常生活自立度Ⅲ・Ⅳ・M、たんの吸引等を必要とする利用者の占める割合が20%以上

  • 前年度(3月を除く)または前3ヵ月における予防介護を除く利用者の総数のうち、
    • 要介護4・5
    • 認知症高齢者の日常生活自立度のランクⅢ、Ⅳ又はMに該当
    • たんの吸引等(口腔内の喀痰吸引、鼻腔内の喀痰吸引、気管カニューレ内の喀痰吸引、胃ろう又は腸ろうによる経管栄養又は経鼻経管栄養)を必要(たんの吸引等の業務を行うための登録を受けている事業者に限る)

*上記の利用者数を占める割合が20%以上である。

12.利用者のうち、要介護3以上、日常生活自立度Ⅲ・Ⅳ・M、たんの吸引等を必要とする利用者の占める割合が60%以上

  • 前年度(3月を除く)または前3ヵ月における利用者の総数(予防利用者を除く)のうち、
    • 要介護3~5
    • 認知症高齢者の日常生活自立度のランクⅢ、Ⅳ又はMに該当
    • たんの吸引等(口腔内の喀痰吸引、鼻腔内の喀痰吸引、気管カニューレ内の喀痰吸引、胃ろう又は腸ろうによる経管栄養又は経鼻経管栄養)を必要(たんの吸引等の業務を行うための登録を受けている事業者に限る)

*上記の利用者数を占める割合が60%以上である。

まとめ:チェックシートを活用して特定事業所加算を取得しよう

特定事業所加算を算定するには、さまざまな算定要件があり複雑です。そのため、算定要件の理解が不足していると、運営指導で指摘を受けた結果、加算の返還を求められる場合があります。

実際、数百万〜数千万円の返還を求められた事例も少なくありません。

しかし、特定事業所加算を取得すると事業所の経営安定が高まるだけでなく、介護職員の確保につながるなど多くのメリットもあります。

そのため、ぜひ今回紹介したチェックシートを活用して特定事業所加算を取得しましょう。

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