サービス提供責任者とは、介護サービス事業所において、サービス提供の責任を負う役職です。は、サービス提供するために必要不可欠な計画の立案や職員の教育、ご利用者や家族との連絡調整など多岐にわたります。サービス提供責任者になるための要件は、介護福祉士の資格を有すること、実務者研修終了者等の資格が求められます。今回はそんなサービス提供責任者が扱う書類の1つ『重要事項説明書』についてご紹介していきます。
目次
「重要事項説明書」は、ご利用者に対して適切なサービスを提供するため、サービス提供の開始に際し、あらかじめ、ご利用申込者またはそのご家族に対し、ご利用者がサービスを選択するために必要な事項を説明するためのものです。
運営規程と重要事項説明書は『イコール』になっている必要があり、例えば実施地域が運営規程と重要事項説明書等で異なっている場合は指導での指摘事項となります。
重要事項説明書だけ変えることは出来ないということに注意が必要です。
また、運営規程の変更を行った場合は『変更届』が必要であり、変更届は変更から10日以内に提出することが必要です。
①重要事項説明書を用いて事業所における重要な事項を説明する
②重要事項説明書に同意が得られたら契約書の締結を行う
③個人情報の同意書に同意を頂く
④その他鍵の預かりや入浴に関する同意書等、法人・事業所で準備をしている同意書に同意を頂く
契約書を先に締結される方がいらっしゃいますが、厳密に言うとこれは間違いです。
『製本テープを付ければすべてのページに契印はいらない』
『割印と契印はいらなくなった』
等、契約書や重要事項説明書の押印に関する質問は多くいただいています。
割印には法的効力がないため、運営指導や実地指導において文書による指摘事項としてあがることは最近ではほとんどありません。必須ではありませんが、割印には契約書の内容が正しいものであると証明する役割があります。
このため、法人ごとに『必ず割印を行う』『必ず製本テープを付ける』などのルールが存在します。
このため、『法人のルールに則る』ということが必要になります。
また、契印・割印を押す場合のルールは以下の通りです。
【契印:個々の契約書の中身を当事者各々が勝手に入れ替えていないことの証明】
製本している場合:契約書本体と製本テープ(or製本紙)の境目に表紙、裏表紙への押印が必要。
ホッチキス止めのみの場合:表紙、裏表紙に加え各ページすべての見開きの境目に押印。
【割印:複数の契約書の内容が同一であることを証明】
甲乙両方の契約書を少しずらして重ね、その境目(上下)に押印。上が甲、下が乙のものとなります。
個人情報同意書は、事業所がご利用者及びご家族の個人情報を取り扱うにあたって事前に同意を得るために必要な同意書です。
個人情報同意書において、運営指導や実地指導時に指摘が多いのは『家族の分の同意を得ていない』ということです。
ご家族と同居している場合はもちろん、別居している場合にも必要となります。
例えばご利用者とご家族が疎遠になっておられ、個人情報の同意が得られない場合はその理由を記録として残し、特段の事情がない場合で担当者会議や緊急時の連絡先としてご家族の情報を取り扱う場合には郵送等で同意を頂くことが必要になります。
また、ご家族が複数人いらっしゃる場合にはご家族の代表のみに同意を得ればよいとする自治体と、全家族から同意を得なければならないとする自治体の2つが存在しますので、管轄の自治体に確認を取ってみましょう。
重要事項説明書は、ご利用者がこれに納得して契約をしているという前提があります。このため、内容に変更があった場合は『変更したことに同意』をして頂く必要があります。
重要事項説明書の内容が変更した場合は、『変更同意書』を示す必要がある、少なくともご案内を行う必要があることに注意が必要です。
ご利用者が同意を得たことが分かればよいため、例えば管理者の変更等で記載事項が変わる、実施地域の変更で記載内容が変わる場合等、ご利用者にとって金銭的負担を伴わない場合にはご案内文章をもって変更の説明を行う事で良いとする自治体が多いです。
一方で、料金の変更を伴う変更の場合は後のトラブルを防ぐために変更同意書の締結を行う事が望ましいとされています。
①介護報酬改定等で単位数(料金)が変わったとき
②特定事業所加算の取得・処遇改善加算の区分変更等に伴い単位数(料金)改定があったとき
令和3年度の介護報酬改定で、事業所でハラスメントの対策をとることが義務付けられました。カスタマーハラスメントについてもハラスメントに該当すると、重要事項説明書や契約書により、どのようなことがハラスメントに当たるのか、ハラスメントが行われた際の対応方法、場合によっては契約解除になることをご利用者様に適切に伝えていくことが望ましいとされています。
令和3年度に義務付けられたハラスメント対策について詳しく知りたい方は介護事業所におけるハラスメント対策を参照ください。
第●条
事業者は、介護現場で働く職員の安全確保と安心して働き続けられる労働環境が築けるようハラスメントの防止に向け取り組みます。
①事業所内において行われる優越的な関係を背景とした言動や、業務上必要かつ相当な範囲を超える下記の行為は組織として許容しません。
(1)身体的な力を使って危害を及ぼす(及ぼされそうになった)行為
(2)個人の尊厳や人格を言葉や態度によって傷つけたり、おとしめたりする行為
(3)意に沿わない性的言動、好意的態度の要求等、性的ないやがらせ行為
上記は、当該法人職員、取引先事業者の方、ご利用者及びその家族等が対象となります。
②ハラスメント事案が発生した場合、マニュアルなどを基に即座に対応し、再発防止会議等により、同時案が発生しない為の再発防止策を検討します。
③職員に対し、ハラスメントに対する基本的な考え方について研修などを実施します。また、定期的に話し合いの場を設け、介護現場におけるハラスメント発生状況の把握に努めます。
④ハラスメントと判断された場合には行為者に対し、関係機関への連絡、相談、環境改善に対する必要な措置、利用契約の解約等の措置を講じます。
参考:厚生労働省「介護現場におけるハラスメント対策マニュアル」
令和3年度の介護報酬改定で、以下を定め必要な措置を講じることが定められました。このことについて運営規程と重要事項説明書には記載が必要になります。
令和3年度に義務付けられたハラスメント対策について詳しく知りたい方は高齢者虐待防止の推進についてを参照ください。
①虐待の防止のための対策を検討する委員会の設置を行う
②虐待防止のための指針を定める
③虐待防止のための研修を定期的に実施する
④虐待防止のための担当者を置く
第●条 虐待防止について
事業所は、ご利用者の人権の擁護・虐待の防止等のため、指針を整備し責任者を設置する等必要な体制の整備を行うとともに、その従業者に対し、虐待防止を啓発・普及するための研修を実施する等の措置を講じます。
①事業所はご利用者が成年後見制度を利用できるよう支援を行います。
②当該事業所従業者又は養護者(現に養護している家族・親族・同居人等)による虐待を受けたと思われる利用者を発見した場合は、速やかに、これを市町村に通報します。
③虐待防止のための対策を検討する委員会を定期的に開催し、その結果について従業者に周知徹底を図ります。
④事業所は次の通り虐待防止責任者を定めます。役職:●● 氏名:●●●●
感染症対策の強化として、介護サービス事業者に、感染症の発生及びまん延等に関する取組の徹底を求める観点から、以下の取組を義務づける。その際、3年の経過措置期間を設けることとされました。
施設系サービス:現行の委員会の開催、指針の整備、研修の実施等に加え、訓練(シミュレーション)の実施
その他のサービス:(訪問系サービス、通所系サービス、短期入所系サービス、多機能系サービス、福祉用具貸与、居宅介護支援、居住系サービス)について、委員会の開催、指針の整備、研修の実施、訓練(シミュレーション)の実施等
第●条 感染症対策について
事業所において感染症が発生し、又はまん延しないように、次に掲げる措置を講じます。
①訪問介護員等の清潔の保持及び健康状態について、必要な管理を行います。
②事業所の設備及び備品等について、衛生的な管理に努めます。
③事業所における感染症の予防及びまん延の防止のための対策を検討する委員会をおおむね6月に1回以上開催するとともに、その結果について、従業者に周知徹底しています。
④事業所における感染症の予防及びまん延防止のための指針を整備しています。
⑤従業者に対し、感染症の予防及びまん延防止のための研修及び訓練を定期的に実施します。
感染症や災害が発生した場合であっても、必要な介護サービスが継続的に提供できる体制を構築する観点から、全ての介護サービス事業者を対象に、業務継続に向けた計画等の策定、研修の実施、訓練(シミュレーション)の実施等が義務づけられ、これについても重要事項説明書に盛り込むべき内容となっています。
第●条 業務継続に向けた取り組みについて
①感染症や非常災害の発生時において、利用者に対する指定訪問介護の提供を継続的に実施するための、及び非常時の体制で早期の業務再開を図るための計画(業務継続計画)を策定し、当該業務継続計画に従って必要な措置を講じます。
②従業者に対し、業務継続計画について周知するとともに、必要な研修及び訓練を定期的に実施します。
③定期的に業務継続計画の見直しを行い、必要に応じて業務継続計画の変更を行います。
本来は変更日の前にご利用者様やご家族様にご案内をする必要があります。
例えば特定事業所加算や処遇改善加算の取得や区分に変更が生じる場合等は事前にご案内が可能ですので、変更日の前に同意を得ることが必要です。
介護報酬改定時においては、単位数の発表が3月末になったりとあらかじめご案内を行う事が難しい場合があります。
この場合は、予め自治体に確認を行いなるべく早いうちにご案内や変更同意書を頂くことが必要になります。
法令で『いつまでに』と定められていること以外は期限を設けられることはありませんが、介護報酬改定時は特段の理由がなければ4月中、遅くともQ&Aが出る5月中には終わらせることが望ましいでしょう。
今回は、重要事項説明書についてご紹介してまいりました。次の介護報酬改定では令和3年度の報酬改定事項が義務化することの対応と、令和6年度の対応でバタバタになることが想定されます。
今から出来る準備は行っておきましょう!
特定事業所加算における人材要件・重度者要件について、計算の注意点や詩的事例について詳しくまとめました。
<目次>
1.人材要件・重度者要件の理解
2.計算の注意点
3.管理のための用語
4.指摘事例
5.良い事例・悪い事例
6.まとめ