医療連携体制加算の仕組みは複雑で、条件を理解するのは難しいですよね。特に、グループホームなどで障害者支援を行う事業所にとって、適切な連携と支援策の選定は頭を悩ませる問題です。どのようにして医療連携体制加算を算定するか、看護師の勤務体制をどう組むべきかなど、多くの方が疑問や不安を抱えていることでしょう。
この記事を読むことで、医療連携体制加算の概要から詳細な算定要件まで、明確に理解することができます。適切な医療連携の実現方法や、看護師の勤務時間に関する考え方も紹介します。制度の理解を深め、施設運営の質を向上させるために役立ててください。
目次
医療連携体制加算は、介護サービスおよび障がい福祉サービス事業所が医療機関や訪問看護ステーションと連携することなどを評価するための加算です。この連携により、看護師が事業所を訪問して利用者への看護や介護職員へのたん吸引等の指導を行った場合に加算されます。
医療連携体制加算の対象となる事業所種別について説明します。医療連携体制加算の対象となる事業所種別は以下のとおりです。なお、医療連携体制加算は介護サービスおよび障害福祉サービスにて算定が可能です。
【医療連携体制加算が算定できる介護サービス】
【医療連携体制加算が算定できる障害福祉サービス】
厚生労働省の通知では、特定の行為が医療行為には該当しないと明記されており、これらは医療連携体制加算の対象外です。内容は以下の通りです。
医療連携体制加算を算定するための要件は、対象となるサービスの種類によって異なり、その報酬体系に違いがあります。この記事では、医療連携体制加算の算定要件について詳しく解説し、各サービスごとの報酬体系の違いを紹介します。
- 認知症対応型共同生活介護事業所の職員、または病院、診療所、訪問看護ステーションとの連携により、看護師を1名以上確保していること
- 看護師により、24時間連絡できる体制を確保していること
- 重度化した場合の対応に係る指針を定め、入居の際に、利用者又はその家族等に対して、当該指針の内容を説明し、同意を得ていること
- 利用者に対する日常的な健康管理、通常時及状態悪化時における医療機関との連絡や調整、看取りに関する指針の整備を行うこと
- 認知症対応型共同生活介護事業所の職員として看護職員を常勤換算方法で1名以上配置していること
- 看護職員または病院、診療所、訪問看護ステーションの看護師との連携により、24時間連絡できる体制を確保していること
ただし看護職員が准看護師のみの場合は、病院等の看護師により24時間連絡できる体制を確保していること- 算定日が属する月の前の12月間において、喀痰吸引を実施している状態または経腸栄養が行われている状態の利用者が1人以上であること
- 重度化した場合の対応に係る指針を定め、入居の際に、利用者又はその家族等に対して、当該指針の内容を説明し、同意を得ていること
- 利用者に対する日常的な健康管理、通常時及状態悪化時における医療機関との連絡や調整、看取りに関する指針の整備を行うこと
- 認知症対応型共同生活介護事業所の職員として看護師を常勤換算方法で1名以上配置していること
- 看護師または病院、診療所、訪問看護ステーションの看護師との連携により、24時間連絡できる体制を確保していること
- 算定日が属する月の前の12月間において、喀痰吸引を実施している状態または経腸栄養が行われている状態の利用者が1人以上であること
- 重度化した場合の対応に係る指針を定め、入居の際に、利用者又はその家族等に対して、当該指針の内容を説明し、同意を得ていること
- 利用者に対する日常的な健康管理、通常時及状態悪化時における医療機関との連絡や調整、看取りに関する指針の整備を行うこと
- 看護職員が事業所を訪問して利用者(上限8人)に対して看護を行った場合(1時間未満)
- 看護職員が事業所を訪問して利用者(上限8人)に対して看護を行った場合(1時間以上2時間未満)
- 看護職員が事業所を訪問して利用者(上限8人)に対して看護を行った場合(2時間以上)
- 看護職員が事業所を訪問して医療的ケアを必要とする利用者に対して看護を行った場合
利用者が1人の場合:800単位/日
利用者が2人の場合:500単位/日
利用者が3人以上8人以下の場合:400単位/日
- 看護職員が介護職員等に喀痰吸引等に係る指導のみを行った場合
- 研修を受けた介護職員等が喀痰吸引等を実施した場合
- 日常的な健康管理、医療ニーズへの適切な対応がとれる等の体制を整備している事業所の場合
※就労移行・就労継続支援A型・就労継続支援B型には、医療連携体制加算(Ⅶ)の加算区分はありません。
- 看護職員が事業所を訪問して利用者(上限8人)に対して看護を行った場合(1時間未満)
- 看護職員が事業所を訪問して利用者(上限8人)に対して看護を行った場合(1時間以上2時間未満)
- 看護職員が事業所を訪問して利用者(上限8人)に対して看護を行った場合(2時間以上)
- 看護職員が事業所を訪問して医療的ケアを必要とする利用者に対して看護を行った場合(4時間未満)
利用者が1人の場合:960単位/日
利用者が2人の場合:600単位/日
利用者が3人以上8人以下の場合:480単位/日
- 看護職員が事業所を訪問して医療的ケアを必要とする利用者に対して看護を行った場合(4時間以上)
利用者が1人の場合:1,600単位/日
利用者が2人の場合:960単位/日
利用者が3人以上8人以下の場合:800単位/日
- 看護職員が事業所を訪問して高度な医療的ケアを必要とする利用者に対して看護を行った場合(8時間以上)
利用者が1人の場合:2,000単位/日
利用者が2人の場合:1,500単位/日
利用者が3人の場合:1,000単位/日
- 看護職員が介護職員等に喀痰吸引等に係る指導を行った場合
- 研修を受けた介護職員等に喀痰吸引等の指導を行った場合
- 日常的な健康管理、医療ニーズへの適切な対応がとれる等の体制を整備している事業所の場合
- 看護職員が事業所を訪問して障がい児(上限8人)に対して看護を行った場合(1時間未満)
- 看護職員が事業所を訪問して障がい児(上限8人)に対して看護を行った場合(1時間以上2時間未満)
- 看護職員が事業所を訪問して障がい児(上限8人)に対して看護を行った場合(2時間以上)
- 看護職員が事業所を訪問して医療的ケアを必要とする障がい児に対して看護を行った場合(4時間未満)
障がい児が1人の場合:800単位/日
障がい児が2人の場合:500単位/日
障がい児が3人以上8人以下の場合:400単位/日
- 看護職員が事業所を訪問して医療的ケアを必要とする障がい児に対して看護を行った場合(4時間以上)
障がい児が1人の場合:1,600単位/日
障がい児が2人の場合:960単位/日
障がい児が3人以上8人以下の場合:800単位/日
- 看護職員が介護職員等に喀痰吸引等に係る指導のみを行った場合
- 研修を受けた介護職員等が喀痰吸引等を実施した場合
医師からの指示書は、医療的ケアがなぜ必要なのかを具体的に示すものです。利用者一人ひとりの状態や必要とするケアについて詳細に記載されている必要があります。指示書には、利用者別にケアの理由、必要な回数、そして具体的なケア内容が含まれていることが重要です。また、有効期限内であることが必要です。
サービス計画書に「医療連携」についての内容記載が必要です。「医療連携」の内容を含め、担当者会議で検討されます。その後、利用者に計画を説明し、同意を得た上で交付されます。
事業所は、該当する医療機関や訪問看護ステーションと文書による委託契約が必要です。費用については、一般的には医療機関や看護ステーションに対して報酬を支払います。この加算による報酬額は大きく設定されているものの、事業所に残る利益は限られています。また運営指導および実地指導での否認時に、医療機関や看護師が責任を負うわけではありません。
医療連携の過程で医師や看護師に個人情報を提供するため、利用者本人の同意書を取得する必要があります。
看護提供時間の計算は、利用者が医療的ケアを必要とするかどうかによって異なります。具体的には、以下のように区分されます。
【医療的ケアを必要としない利用者】
看護職員が直接看護を提供した時間のみを考慮します。つまり、看護職員が利用者に直接介護や医療サービスを提供している実際の時間がカウントされます。
【医療的ケアを必要とする利用者】
看護職員が直接看護を提供した時間に加えて、見守りの時間も含めます。見守りの時間とは、看護職員が事業所に滞在している時間のことです。
ただし、医療的ケアを必要とする利用者が事業所にいない時間帯は、看護提供時間に含まれません。例えば、医療的ケアを必要とする利用者が3時間のサービスを利用しており、看護職員がその3時間を含む合計6時間事業所に滞在していた場合、看護職員の滞在時間は3時間として計算されます。
利用者の状態や医療的ニーズに応じて、医師から看護提供に関する指示が出されている場合、バイタルサインの測定だけを行っても、医療連携体制加算の対象となります。
なおバイタルサイン測定の必要性の根拠を、明確にするこ とが必要です。医師からの指示書に測定を行う目的や病態変化時のバイタルサインの変動等について記載してもらってください。
加算の算定は可能です。医療的ケアを必要とする利用者に看護職員を派遣しており、結果的に医療的ケアを必要としなかった場合であっても算定できます。
多機能型事業所では、提供される各サービス毎に加算の対象となる利用者を特定し、それらを合計して加算対象とする利用者数を算出します。
ただし生活介護や自立訓練(機能訓練)を実施している多機能型事業所の場合、医師及び看護職員が配置されています。そのため、これらのサービスの利用者(児童発達支援や放課後等デイサービスの利用者を除く)に関しては、医療連携体制加算を算定することはありません。
医療連携体制加算を適切に算定し、最大限に活用するためには、要件をしっかりと理解し、運用に生かすことが大切です。算定要件をよく確認し、日々のサービス提供において医療連携体制加算を活用していきましょう。
医療連携体制加算を適切に活用することで、事業所は利用者に対してより良い医療サービスを提供することができます。