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通所介護における個別機能訓練加算とは?取得後の運用方法と注意点もご紹介します!

元山 ゆず香

監修者

介護福祉士

元山 ゆず香

大学を卒業後、特別養護老人ホームにて現場業務に従事。その後、福祉系大手企業に入社し、エリアマネージャーとして、施設介護事業・居宅介護事業・障害福祉サービス事業でのエリアマネジメント・行政対応を経験。また、法人本部に異動し教育部門・監査担当部門の部長を歴任。現在は全国の介護・障害福祉事業所の支援やセミナーの開催、DXO株式会社での介護関連事業の支援などを実施。

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個別機能訓練加算を取得した通所介護事業所で、加算取得後の運用方法が気になる経営者も多いでしょう。特に、これから個別機能訓練加算を算定する事業所は、加算を取得した後の業務内容や注意点について理解しておく必要があります。この記事では、個別機能訓練加算の概要と注意点について解説します。この記事を読むことで、個別機能訓練加算を取得した後の業務内容について具体的にイメージできるでしょう。

通所介護における個別機能訓練加算とは

通所介護における個別機能訓練加算とは、利用者の個別的なニーズに応じて、効果的な機能訓練を実施する事業所を評価する加算です。

個別機能訓練加算を算定するためには、専門的な資格を保有した機能訓練指導員を配置し、計画的に個別機能訓練を実施しなければいけません。これにより、個別機能訓練加算を算定している事業所では、利用者のニーズに応じた効果的な機能訓練を実施することが可能で、利用者のADLやQOLの向上につながります。

個別機能訓練加算には、個別機能訓練加算(Ⅰ)と個別機能訓練加算(Ⅱ)の2種類があり、それぞれ算定要件や単位数などが異なります。

通所介護における個別機能訓練加算の算定要件

通所介護における個別機能訓練加算の算定要件は、個別機能訓練加算(Ⅰ)と個別機能訓練加算(Ⅱ)で異なります。各個別機能訓練加算の算定要件は以下の表をご覧ください。また、人員配置基準と設備基準に関する注意点について解説します。

 

個別機能訓練加算の算定要件

項目

個別機能訓練加算(Ⅰ)イ

個別機能訓練加算(Ⅰ)ロ

個別機能訓練加算(Ⅱ)

単位数

56単位/日

85単位/日

20単位/月

機能訓練指導員の配置

専従1名以上
(配置時間の定めなし)

専従1名以上
(サービス提供時間通じて1名)

加算(Ⅰ)に加えて、個別機能訓練計画等の内容を厚生労働省に提出し、フィードバックを受けていること(LIFEへのデータ提出とフィードバックの活用)

計画作成

居宅訪問で把握したニーズと居宅での生活状況を参考に、多職種共同でアセスメントを行い、個別機能訓練計画を作成

機能訓練項目

利用者の心身の状況に応じて、身体機能及び生活機能の向上を目的とする機能訓練項目を柔軟に設定。

訓練項目は複数種類準備し、その選択に当たっては利用者の生活意欲が増進されるよう利用者を援助する。

訓練の対象者

5人程度以下の小集団又は個別

訓練の実施者

機能訓練指導員が直接実施(介護職員等が訓練の補助を行うことは妨げない)

進捗状況の評価

3ヶ月に1回以上実施し、利用者の居宅を訪問した上で、居宅での生活状況を確認するとともに、当該利用者又はその家族に対して個別機能訓練計画の進捗状況等を説明し、必要に応じて個別機能訓練計画の見直し等を行う。

 

参考:厚生労働省 介護給付分科会「令和3年度介護報酬改定の主な事項について」

機能訓練指導員の配置について

通所介護における個別機能訓練加算を算定するためには、専従で1名以上の機能訓練指導員を配置しなければいけません。ただし、機能訓練指導員を配置すべき時間数は加算ごとに異なるので注意しましょう。

「個別機能訓練加算(Ⅰ)イ」を算定する場合、機能訓練指導員を専従で1名以上配置する必要がありますが、配置時間の定めはありません。サービス提供時間内のどこかで機能訓練指導員が配置されていれば算定できます。一方で、「個別機能訓練加算(Ⅰ)ロ」を算定する場合、サービス提供時間を通じて、専従で1名以上配置しなければいけません。

個別機能訓練加算を算定する場合、「個別機能訓練加算(Ⅰ)イ」と「個別機能訓練加算(Ⅰ)ロ」における機能訓練指導員の配置時間には注意しましょう。

設備基準について

個別機能訓練加算を算定する要件として、明確な設備基準はありません。しかし、算定要件として機能訓練項目に以下の文章が記載されています。

 

『利用者の心身の状況に応じて、身体機能及び生活機能の向上を目的とする機能訓練項目を柔軟に設定。訓練項目は複数種類準備し、その選択に当たっては利用者の生活意欲が増進されるよう利用者を援助する。』

 

引用:厚生労働省 介護給付分科会「令和3年度介護報酬改定の主な事項について」

 

上記の文章から、通所介護における機能訓練は、利用者ごとの目標に応じて訓練項目を複数種類準備する必要があります。そのために必要な設備は、準備しなければいけません。各事業所に配置されている機能訓練指導員の意見を聞きながら、必要な設備を整えるとよいでしょう。

個別機能訓練計画書の作成

個別機能訓練加算を算定するためには個別機能訓練計画書を作成しなければいけません。事例として厚生労働省が提示している「別紙様式3-3」を参考にして、個別機能訓練計画書の作成方法について解説します。

 

参考:厚生労働省「個別機能訓練計画書(別紙様式3)」

機能訓練の目標を設定

個別機能訓練計画書では、今後3ヶ月程度で達成可能な短期目標と長期目標の2つを設定する必要があります。この2つの目標は、関連性のある内容でなければいけません。

例えば、長期目標が「近所の店に買い物に行ける」という内容であるのに対して、短期目標が「自宅で入浴できる」という内容だった場合、2つの目標に関係性がないので目標を変更したほうがよいでしょう。

短期目標は長期目標達成のためのスモールステップになっている必要があります。例えば、「近所へ買い物に行く」が長期目標であった場合、「自宅の庭を3周できるようになる」といった内容であれば、歩行能力の向上という方向性が合致しているので問題ありません。

個別機能訓練計画書における目標設定は、重要な項目なので注意しましょう。

 

機能訓練の内容を計画

訓練内容を計画する際には、訓練の実施方法、実施頻度、実施時間について記載する必要があります。

実施方法は、訓練の内容をできるだけ詳細に記載します。実施頻度については、利用者の利用回数などにもよりますが、概ね1週間に1回以上の頻度で実施するとよいでしょう。

個別機能訓練の実施時間は明確に定められていません。機能訓練指導員が必要と判断する時間で提供しなければいけないため、利用者ごとの評価内容に応じて必要な訓練時間を設定しましょう。

 

通所介護における個別機能訓練加算を算定する流れ

個別機能訓練加算を算定していなかった事業所が新たに算定する場合、以下の7つの手順で算定を開始できます。

 

個別機能訓練加算を算定するまでの流れ

  1. 各自治体へ申請書類を提出
  2. ケアマネージャー、利用者、家族へ周知する
  3. 算定対象の方の自宅に訪問調査
  4. 個別機能訓練計画書を作成
  5. 利用者と家族へ説明、同意を得る
  6. 機能訓練メニューを実施
  7. 3ヶ月ごとに再評価する

 

また、新たに個別機能訓練加算を算定する場合、事業所がある自治体の窓口へ必要書類を提出しなければいけません。個別機能訓練加算の算定に必要な書類は以下のとおりです。

 

  • 介護給付費算定に係る体制等に関する届出書
  • 介護給付費算定に係る体制等状況一覧表
  • 従業者の勤務体制及び勤務形態一覧表 
  • 機能訓練指導員の資格証 
  • 機能訓練計画に関連する様式

 

個別機能訓練加算を新たに算定する場合、利用者が支払う利用料金も増加します。そのため、算定前に必ず利用者と家族に対して説明を行い、同意を得なくてはいけません。同意がないまま算定することはできないのでご注意ください。

 

個別機能訓練加算取得後の運用方法について

機能訓練指導員は、3ヶ月ごとに個別機能訓練加算を算定している利用者の自宅へ訪問し、身体機能と生活機能を評価します。評価結果をもとに新たな機能訓練計画書を作成し、利用者から同意を得られば加算を算定できません。評価内容によっては、個別機能訓練計画書の内容を変更しなければいけないので注意しましょう。

「個別機能訓練加算(Ⅰ)ロ」を算定し続けるためには、サービス提供時間中は常に機能訓練指導員を配置していなければいけません。仮に、機能訓練指導員が配置できなくなった場合、算定できなくなるため注意しましょう。

個別機能訓練加算取得後の運用については、機能訓練指導員の配置状況が重要です。利用者の自宅訪問や計画書の作成には人手が必要なので、個別機能訓練加算取得後の運用については「機能訓練指導員を配置し続けられるか」が重要なポイントとなるでしょう。

通所介護における個別機能訓練加算のメリット

通所介護施設で個別機能訓練加算を算定するメリットとして、利用者の機能訓練ニーズに対応できること、使用者の施設基準が向上すること、介護保険の給付費が増加することが挙げられます。各メリットについて解説します。

利用者の機能訓練ニーズに対応できる

通所介護の利用者から「機能訓練を提供してほしい」という要望があった場合に、個別機能訓練加算を算定している事業所であればすぐに対応できます。

特に、退院して自宅に帰宅したばかりの利用者の場合、病院でのリハビリが終了しているため、通所介護で機能訓練を受けたい方も多いでしょう。

個別機能訓練加算を算定している事業所には、機能訓練指導員が手厚く配置されているので、退院後に通う通所介護事業所として選ばれやすくなります。

利用者の心身機能が向上する

個別機能訓練加算を算定することで、専門的な機能訓練が提供されます。定期的に評価を繰り返しながら専門職が機能訓練を提供するため、利用者の心身機能が向上する可能性が高いでしょう。

利用者の心身機能が向上することで、利用者や家族からの信頼を得ることにもつながります。また、機能訓練を提供した利用者の心身機能が向上すれば、職員のモチベーションも向上するため、介護職員の離職防止効果も期待できます。

利用者が元気になっていくことで、利用者と職員の両面から、通所介護事業所に対する満足度が向上しやすくなるでしょう。

介護保険の給付費が増加する

個別機能訓練加算を算定することで事業所に入ってくる保険給付費が増加します。事業所の収益を増加させるためにも個別機能訓練加算は有効です。ただし、新たに加算を算定する事業所では、個別機能訓練加算を算定するために必要な人件費や諸経費を計算することをおすすめします。

特に、「個別機能訓練加算(Ⅰ)ロ」を算定する場合、機能訓練指導員をサービス提供日に毎日配置しなければいけません。加算を算定するために必要な経費と、加算で見込める増収分を比較して、個別機能訓練加算を算定すると決めるとよいでしょう。

通所介護における個別機能訓練加算の注意点

個別機能訓練加算を算定する際には、人員配置に注意しなければいけません。個別機能訓練加算の注意点として、機能訓練指導員の要件、看護師を機能訓練指導員とする場合、「個別機能訓練加算(Ⅰ)ロ」が算定できない場合の対処について解説します。

機能訓練指導員となる職員

個別機能訓練加算を算定するためには、機能訓練指導員を配置する必要があります。機能訓練指導員になるためには、特定の資格を保有している職員でなければいけません。機能訓練指導員として配置できる職員は以下のとおりです。

 

  • 理学療法士
  • 作業療法士
  • 言語聴覚士
  • 看護職員(看護師・准看護師)
  • 柔道整復師
  • あん摩マッサージ指圧師
  • はり師・きゅう師(6月以上の実務経験が必要)

 

看護師は、正看護師と准看護師のどちらでも配置できます。また、はり師・きゅう師は、機能訓練指導員のいる施設で6ヶ月以上の実務経験が必要なので注意しましょう。

看護師を機能訓練指導員として配置する

看護師を機能訓練指導員として配置することも可能です。しかし、個別機能訓練加算を算定するには機能訓練指導員を専従で配置しなければいけません。そのため、個別機能訓練を実施している時間は、看護師として配置できないことを理解しておきましょう。

個別機能訓練加算(Ⅰ)ロが算定できない

「個別機能訓練加算(Ⅰ)ロ」を算定するためには、サービス提供時間を通じて機能訓練指導員を専従で一名以上配置しなければいけません。しかし、人員不足などの問題で、機能訓練指導員をサービス提供時間中配置できなかった場合、「個別機能訓練加算(Ⅰ)イ」を算定することが可能です。「個別機能訓練加算(Ⅰ)ロ」が算定できなかった場合の対処として覚えておきましょう。

 

参考:厚生労働省 老健局「令和3年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.3)令和3年3月26日」

まとめ

 

個別機能訓練加算は、通所介護における加算の一つです。個別機能訓練加算には、個別機能訓練加算(Ⅰ)と個別機能訓練加算(Ⅱ)の2種類の加算があり、それぞれ算定要件や単位数が異なります。個別機能訓練加算を算定するためには、定期的に評価と計画の見直しが必要です。また、機能訓練指導員の配置が重要な課題となってきます。

個別機能訓練加算によって、利用者と職員のモチベーションも向上し、事業所の増収にも繋がります。個別機能訓練加算を算定できる事業所は積極的に算定することをおすすめします。

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【参考資料】

厚生労働省 介護給付分科会「令和3年度介護報酬改定の主な事項について」

厚生労働省 介護給付分科会「令和3年度介護報酬改定の主な事項について」

厚生労働省「個別機能訓練計画書(別紙様式3)

厚生労働省 老健局「令和3年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.3)令和3年3月26日」

 

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