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老健の強化型とは?|超強化型老健のメリット・デメリットを解説

2024-06-10

元山 ゆず香

監修者

介護福祉士

元山 ゆず香

大学を卒業後、特別養護老人ホームにて現場業務に従事。その後、福祉系大手企業に入社し、エリアマネージャーとして、施設介護事業・居宅介護事業・障害福祉サービス事業でのエリアマネジメント・行政対応を経験。また、法人本部に異動し教育部門・監査担当部門の部長を歴任。現在は全国の介護・障害福祉事業所の支援やセミナーの開催、DXO株式会社での介護関連事業の支援などを実施。

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強化型老健は、介護老人保健施設の中で在宅復帰や在宅療養支援に特価した施設の1つです。

この記事では、超強化型老健を中心に老健の特徴について紹介し、老健のそれぞれの区分の違いについて詳しく解説します。

超強化型老健とは|在宅強化型との違いを5つの算定要件から解説

強化型老健には「超強化型老健」と「在宅強化型老健」の2つの型があります。

超強化型老健は、在宅復帰・在宅支援機能が高い特徴を持っています。在宅強化型老健は、在宅復帰や在宅療養支援はあるものの、超強化型ほど高い機能ではありません。厚生労働省が定める5つの要件を満たすことで、それぞれ超強化型老健、在宅強化型老健に区分されます。算定要件を順番に見ていきましょう。

1.在宅復帰・在宅療養支援等指標

在宅復帰・在宅療養支援等指標は、老健において在宅復帰と在宅療養をサポートするための評価指標です。高齢者が自宅で過ごすことを促進し、必要なケアを提供するための指標が10個定められています。

  1. 在宅復帰率:高齢者が自宅に戻る割合。在宅復帰率が高いほど、施設のサポートが効果的であることを示します
  2. ベッド回転率:ベッドの利用頻度。回転率が高いほど在宅復帰が促進されることを意味します
  3. 入所前後訪問指導割合:入所前後に高齢者を訪問してケアの調整や指導を行う割合
  4. 対処前後訪問指導割合:対処前後に訪問指導を行う割合
  5. 居宅サービスの実施数:在宅で提供されるサービスの数。リハビリテーションも含まれます
  6. リハ専門職の配置割合:リハビリ専門職(理学療法士、作業療法士、言語聴覚士)の配置割合
  7. 支援相談員の配置割合:社会福祉士などの支援相談員の配置割合
  8. 要介護4または5の割合:要介護度が高い高齢者の割合
  9. 喀痰吸引の実施割合:喀痰吸引が適切に行われているかを評価
  10. 経管栄養の実施割合:経管栄養が適切に行われているかを評価

1~10について、項目に応じて足し合わせた値で評価されます。最高値は90です。超強化型老健では、在宅復帰・在宅療養支援等指標の値が70以上を満たさなければなりません。在宅強化型老健では、値が60以上になる必要があります。

超強化型老健は「在宅復帰・在宅療養支援機能加算(Ⅱ)」の算定が可能

超強化型老健は、介護報酬の「在宅復帰・在宅療養支援機能加算(Ⅱ)」の算定要件である在宅復帰・在宅療養支援等指標の合計値が70以上であることを満たすため、他の算定要件を満たせば、1日あたり51単位を取得することができます。

2.退所時指導等

退所時指導等では、退所時指導と退所後の状況確認の2つを満たすことが必要です。退所時に高齢利用者やその家族に対して、退所指導を行い、在宅復帰した後にも継続的にサポートをすることは、高齢者の健康と生活の質を向上させるために重要です。

a.退所時指導

高齢者が施設から退所し、自宅復帰する際には退所後の療養指導を行い、適切なサポートやアドバイスをします。また高齢者本人だけではなく、本人をサポートする方のサポートが大事になるため、家族や介護者に対しても退所指導が行われます。以下のような例が挙げられます。

  1. 健康管理やリハビリテーション:健康や栄養状態を評価して、適切なリハビリテーションプログラムを提案します。運動療法や、栄養指導、薬物管理が含まれます
  2. 生活支援の提案:安心して自宅で暮らせるように生活をサポートします。家族との連絡方法、食事の準備、入浴、移動方法などを調整します
  3. 社会的・心理的なサポート:孤立を避けるために、地域参加の方法を提案します。退所後の不安に対する心理的なサポートも行います
  4. 居住環境の調整:自宅を評価し、手すりの設置や床の滑り止め対策など、転倒予防やバリアフリーの改善策の提案を行います
  5. 家族や介護者への情報提供:自宅で高齢者を支える家族や介護者に対し、適切なサポートができるように、ケアの方法を説明します

b.退所後の状況確認

入所者が退所後の30日以内に自宅を訪問する、あるいは指定居宅介護支援事業者からの情報提供によって、在宅での生活が1か月以上継続する見込みであることを確認して記録します。

3.リハビリテーションマネジメント

入所者の心身機能の維持回復を図り、日常生活の自立を助けるために、必要なリハビリテーションを計画的に行い、適宜その評価を行っていることが必要です。

理学療法では、筋力トレーニング、バランス訓練、歩行訓練などを通して身体機能の改善を行います。作業療法では、食事、入浴、着替え、家事などの日常生活動作(ADL)の向上を目指します。言語療法では、言語、発音、嚥下の問題を改善したり、認知症の方には認知リハビリテーションも行っていきます。

そのほかにも、心理療法や音楽療法、レクリエーション両方等利用者のニーズに合わせたリハビリーテーションを計画し、効果的に提供していきます。

4.地域貢献活動

老健では、入所者が地域の人々と一緒に活動したり、親交を深めたりするなど地域に貢献する活動が行われます。身近な社会との交流を持ち、入所者の生活を豊かにすることを目的としています。

例えば、地域のお祭りや文化祭などに入所者が参加したり、公園の清掃、地域イベントのお手伝い、読み聞かせなどのボランティア活動を行ったりします。地域の施設や学校等と連携して、講座や交流イベントを企画し、入所者が地域の人々と一緒に楽しむ機会を提供する場合もあります。

5.充実したリハ

老健の超強化型では、リハビリテーションの回数や時間も細かく定められており、少なくとも週に3回20分以上の個別リハビリテーションを行うことが必要です。個別の訓練は、理学療法士や作業療法士が担当することが多いようです。

そもそも老健(介護老人保健施設)とは?

老健(介護老人保健施設)は利用者の尊厳を保ち、安全に留意しながら、生活機能を維持したり向上したりできるように支援をする施設のことです。介護を必要とする高齢者が在宅生活を送れるように、医師の指示のもと、医療専門職が連携して支援を行い、在宅復帰を目指します。

また、利用者だけではなく、家族や地域の人々・機関と協力して自立した在宅生活を安心して送れるようにサポートします。

老健の役割

老健では、役割によって5つの施設に分けられます。1つずつ見ていきましょう。

1.包括的ケアサービス施設

  • 利用者の意思を尊重して、最適な在宅/施設生活が送れるようにチームで支援します
  • 利用者ごとに目標や支援計画を立て、必要な医療、看護、介護、リハビリテーションを提供しています

2.リハビリテーション施設

  • 生活機能向上(体力や基本動作能力の獲得、活動や参加の促進、家庭環境の調整など)を目的に、集中的な維持期リハビリテーションを行っています

3.在宅復帰施設

  • 脳卒中、廃用症候群、認知症などによる個々の状態像に応じて、多職種でのチームケアを行い、想起の在宅復帰に努めています

4.在宅生活支援施設

  • 自立した在宅生活を継続できるよう、入所や通所、訪問リハビリテーションなどのサービスを提供し、介護予防に努めています
  • 他のサービス機関と連携して総合的にサポートすることで利用者家族の負担の軽減を目指しています

5.地域に根差した施設

  • 家族や地域住民と交流して、情報提供を行いながら多様なケアの相談に対応します
  • 行政や各事業者、保健・医療・福祉機関と連携しながら地域で一体となったケアを積極的に行っています

老健の施設区分(施設基準)は5種類|強化型以外の型を解説

老健には、以下の五種類があります。

  1. 超強化型
  2. 在宅強化型
  3. 加算型老健
  4. 基本型老健
  5. その他型老健

老健は、「在宅復帰・在宅療養支援等指標」の数値によって分類がされます。ここでは3~5の老健について紹介します。

加算型

加算型老健は、在宅復帰・在宅療養支援等指標の値が40以上であり、退所時指導、リハビリテーションマネジメント、地域貢献活動の3つの要件を満たしている施設を指します。

基本型

基本型老健は、在宅復帰・在宅療養支援等指標の値が20以上であり、退所時指導とリハビリテーションマネジメントの2つの要件を満たしている施設を指します。

その他

その他型老健では、在宅復帰・在宅療養支援等指標の値も、退所時指導、リハビリテーションマネジメント、地域貢献活動のいずれの要件も満たさない施設を指します。以下に、5つの老健の要件についてまとめましたので、ご参照ください。

1.超強化型

2.在宅強化型

3.加算型4.基本型5.その他
在宅復帰・在宅療養支援等指標
(Max:90)
70以上60以上40以上20以上要件を満たさない
退所時指導×
リハビリテーションマネジメント×
地域貢献活動××
充実したリハビリ×××

超強化型老健のメリットとデメリット

老健の中で提供できるサービスが多く最上位に位置する超強化型老健ですが、メリットだけでなく、デメリットもあります。順番に見ていきましょう。

超強化型老健の3つのメリット

超強化型老健のメリットは以下の3つです。

  1. 高い介護報酬を受けとれる
  2. 質の高いサービスが提供できる
  3. スタッフがやりがいを感じやすく離職率の低下につながる

1.高い介護報酬を受けとれる

超強化型老健では、老健の中でも最も厳しい算定要件があるため、報酬水準が高く設定されています。施設によっては、他の老健と比べて給与が高くなる可能性があります。介護スタッフのモチベーションが高まり、職業定着が促進されていくことで安定した経営体制に繋がっていくでしょう。

2.質の高いサービスが提供できる

老健の目的は、入所者の在宅復帰です。そのために質の高いリハビリテーションや、本人・家族の在宅ケアの機能を高めるための看護・介護技術や知識の提供が必要になります。医療ケアの専門職と連携しながら働くことで、介護だけでない専門分野の知識や経験を得ることができ、スタッフのスキルアップに繋がるでしょう。そうすることで質の高いサービスが実現でき、地域にも施設の評判が広まり、利用者の増加が期待できます。

3.スタッフがやりがいを感じやすく離職率の低下につながる

超強化型老健では、リハビリテーションや医療ケアの専門スタッフと連携してケアに取り組むことからスキルアップを望めます。そこで得た知識や技術を活かすことができることや、ケアを通して入所者の生活の質を向上させたり、在宅復帰が実現したりすることでやりがいを感じることができるでしょう。スタッフの働く意欲を高めることができ、職業定着を向上させることができるでしょう。

超強化型老健のデメリット

短期的な医療ケアがメインになる

老健の1番の目的は在宅復帰です。入所者が在宅復帰後に自立した生活ができるよう、他職種間で連携しながら、短期間(原則3ヵ月以内)で身体機能の回復や維持に努めます。

専門スタッフによるリハビリテーションや、医師や看護師による医療ケアを中心とした支援になるため、入浴介助、移動支援などの身体介護のケアを中心に働きたい方は、やりたいこととやるべきことにずれを感じてしまうかもしれません。

また、短期的なケアのため、入所者の入れ替わりも頻繁です。一人ひとりの経過を長期的に見て支援していきたいという方は、やりがいを感じにくいかもしれません。

まとめ:超強化型老健は施設もスタッフもメリットが大きい

超強化型老健は、在宅復帰を目指す方が、高度なケアを受けることができる施設です。

介護報酬も高く、施設の収益アップも期待できます。在宅復帰を目指す入所者を支えていくことでやりがいを感じられ、ケアに関する知識を深めながらスタッフのスキルアップにも繋がっていくでしょう。

しかし医療的なケアがメインになるため、介護職がどのような立ち位置でいるか考えていく必要があります。超強化型老健の認定をお考えの方は、スタッフの給与や福利厚生、職場環境、スキルアップの機会の保障など経営体制を検討してみましょう。

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