強化型老健は、介護老人保健施設の中で在宅復帰や在宅療養支援に特価した施設の1つです。
この記事では、超強化型老健を中心に老健の特徴について紹介し、老健のそれぞれの区分の違いについて詳しく解説します。
目次
強化型老健には「超強化型老健」と「在宅強化型老健」の2つの型があります。
超強化型老健は、在宅復帰・在宅支援機能が高い特徴を持っています。在宅強化型老健は、在宅復帰や在宅療養支援はあるものの、超強化型ほど高い機能ではありません。厚生労働省が定める5つの要件を満たすことで、それぞれ超強化型老健、在宅強化型老健に区分されます。算定要件を順番に見ていきましょう。
在宅復帰・在宅療養支援等指標は、老健において在宅復帰と在宅療養をサポートするための評価指標です。高齢者が自宅で過ごすことを促進し、必要なケアを提供するための指標が10個定められています。
1~10について、項目に応じて足し合わせた値で評価されます。最高値は90です。超強化型老健では、在宅復帰・在宅療養支援等指標の値が70以上を満たさなければなりません。在宅強化型老健では、値が60以上になる必要があります。
超強化型老健は、介護報酬の「在宅復帰・在宅療養支援機能加算(Ⅱ)」の算定要件である在宅復帰・在宅療養支援等指標の合計値が70以上であることを満たすため、他の算定要件を満たせば、1日あたり51単位を取得することができます。
退所時指導等では、退所時指導と退所後の状況確認の2つを満たすことが必要です。退所時に高齢利用者やその家族に対して、退所指導を行い、在宅復帰した後にも継続的にサポートをすることは、高齢者の健康と生活の質を向上させるために重要です。
高齢者が施設から退所し、自宅復帰する際には退所後の療養指導を行い、適切なサポートやアドバイスをします。また高齢者本人だけではなく、本人をサポートする方のサポートが大事になるため、家族や介護者に対しても退所指導が行われます。以下のような例が挙げられます。
入所者が退所後の30日以内に自宅を訪問する、あるいは指定居宅介護支援事業者からの情報提供によって、在宅での生活が1か月以上継続する見込みであることを確認して記録します。
入所者の心身機能の維持回復を図り、日常生活の自立を助けるために、必要なリハビリテーションを計画的に行い、適宜その評価を行っていることが必要です。
理学療法では、筋力トレーニング、バランス訓練、歩行訓練などを通して身体機能の改善を行います。作業療法では、食事、入浴、着替え、家事などの日常生活動作(ADL)の向上を目指します。言語療法では、言語、発音、嚥下の問題を改善したり、認知症の方には認知リハビリテーションも行っていきます。
そのほかにも、心理療法や音楽療法、レクリエーション両方等利用者のニーズに合わせたリハビリーテーションを計画し、効果的に提供していきます。
老健では、入所者が地域の人々と一緒に活動したり、親交を深めたりするなど地域に貢献する活動が行われます。身近な社会との交流を持ち、入所者の生活を豊かにすることを目的としています。
例えば、地域のお祭りや文化祭などに入所者が参加したり、公園の清掃、地域イベントのお手伝い、読み聞かせなどのボランティア活動を行ったりします。地域の施設や学校等と連携して、講座や交流イベントを企画し、入所者が地域の人々と一緒に楽しむ機会を提供する場合もあります。
老健の超強化型では、リハビリテーションの回数や時間も細かく定められており、少なくとも週に3回20分以上の個別リハビリテーションを行うことが必要です。個別の訓練は、理学療法士や作業療法士が担当することが多いようです。
老健(介護老人保健施設)は利用者の尊厳を保ち、安全に留意しながら、生活機能を維持したり向上したりできるように支援をする施設のことです。介護を必要とする高齢者が在宅生活を送れるように、医師の指示のもと、医療専門職が連携して支援を行い、在宅復帰を目指します。
また、利用者だけではなく、家族や地域の人々・機関と協力して自立した在宅生活を安心して送れるようにサポートします。
老健では、役割によって5つの施設に分けられます。1つずつ見ていきましょう。
老健には、以下の五種類があります。
老健は、「在宅復帰・在宅療養支援等指標」の数値によって分類がされます。ここでは3~5の老健について紹介します。
加算型老健は、在宅復帰・在宅療養支援等指標の値が40以上であり、退所時指導、リハビリテーションマネジメント、地域貢献活動の3つの要件を満たしている施設を指します。
基本型老健は、在宅復帰・在宅療養支援等指標の値が20以上であり、退所時指導とリハビリテーションマネジメントの2つの要件を満たしている施設を指します。
その他型老健では、在宅復帰・在宅療養支援等指標の値も、退所時指導、リハビリテーションマネジメント、地域貢献活動のいずれの要件も満たさない施設を指します。以下に、5つの老健の要件についてまとめましたので、ご参照ください。
1.超強化型 | 2.在宅強化型 | 3.加算型 | 4.基本型 | 5.その他 | |
在宅復帰・在宅療養支援等指標 (Max:90) | 70以上 | 60以上 | 40以上 | 20以上 | 要件を満たさない |
退所時指導 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | × |
リハビリテーションマネジメント | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | × |
地域貢献活動 | 〇 | 〇 | 〇 | × | × |
充実したリハビリ | 〇 | 〇 | × | × | × |
老健の中で提供できるサービスが多く最上位に位置する超強化型老健ですが、メリットだけでなく、デメリットもあります。順番に見ていきましょう。
超強化型老健のメリットは以下の3つです。
超強化型老健では、老健の中でも最も厳しい算定要件があるため、報酬水準が高く設定されています。施設によっては、他の老健と比べて給与が高くなる可能性があります。介護スタッフのモチベーションが高まり、職業定着が促進されていくことで安定した経営体制に繋がっていくでしょう。
老健の目的は、入所者の在宅復帰です。そのために質の高いリハビリテーションや、本人・家族の在宅ケアの機能を高めるための看護・介護技術や知識の提供が必要になります。医療ケアの専門職と連携しながら働くことで、介護だけでない専門分野の知識や経験を得ることができ、スタッフのスキルアップに繋がるでしょう。そうすることで質の高いサービスが実現でき、地域にも施設の評判が広まり、利用者の増加が期待できます。
超強化型老健では、リハビリテーションや医療ケアの専門スタッフと連携してケアに取り組むことからスキルアップを望めます。そこで得た知識や技術を活かすことができることや、ケアを通して入所者の生活の質を向上させたり、在宅復帰が実現したりすることでやりがいを感じることができるでしょう。スタッフの働く意欲を高めることができ、職業定着を向上させることができるでしょう。
老健の1番の目的は在宅復帰です。入所者が在宅復帰後に自立した生活ができるよう、他職種間で連携しながら、短期間(原則3ヵ月以内)で身体機能の回復や維持に努めます。
専門スタッフによるリハビリテーションや、医師や看護師による医療ケアを中心とした支援になるため、入浴介助、移動支援などの身体介護のケアを中心に働きたい方は、やりたいこととやるべきことにずれを感じてしまうかもしれません。
また、短期的なケアのため、入所者の入れ替わりも頻繁です。一人ひとりの経過を長期的に見て支援していきたいという方は、やりがいを感じにくいかもしれません。
超強化型老健は、在宅復帰を目指す方が、高度なケアを受けることができる施設です。
介護報酬も高く、施設の収益アップも期待できます。在宅復帰を目指す入所者を支えていくことでやりがいを感じられ、ケアに関する知識を深めながらスタッフのスキルアップにも繋がっていくでしょう。
しかし医療的なケアがメインになるため、介護職がどのような立ち位置でいるか考えていく必要があります。超強化型老健の認定をお考えの方は、スタッフの給与や福利厚生、職場環境、スキルアップの機会の保障など経営体制を検討してみましょう。