令和3年度に、福祉サービス全般の介護報酬改定が行われました。
もちろん放課後等デイサービスも対象になっています。
介護報酬改定では、加算の増減はもちろん気になるところです。
しかしそこからは、今後の国の方針が見えてきます。大きな特徴として、質の高い支援を提供している事業所を評価する見直しになっているといえるでしょう。
本記事では、放課後等デイサービスとはなにか、放課後等デイサービスの加算の改定ポイントを解説しています。ぜひ参考にしてください。
目次
放課後等デイサービスは、6〜18歳までの障害のある就学児が、放課後や休日に利用できる福祉サービスです。
仕事などで、放課後や学校が休みの日に子どもを見れない家庭のために、障害のある児童の居場所を提供します。
放課後等デイサービスで実施されているプログラムには、主に生活力向上を目的としたものが多くあります。
施設によりさまざまですが、読み書きや計算などの基礎的なものや、パソコンを使ったものなどに取り組んでいます。
令和3年度の障害福祉サービス等の報酬改定は、0.56%のプラス改定でした。
ここでは、放課後デイサービスにかかわる以下の改正点について解説します。
・基本報酬の新設
・医療連携体制加算の単価を大幅に拡充
・報酬設定の区分を廃止
・個別サポート加算ⅠⅡの新設
・専門的支援加算の新設
・障害福祉サービス経験者の廃止
・業務効率化のためのICT活用
・障害者虐待防止のための運営基準が義務化
・身体拘束等の適正化の推進
・福祉・介護職員等特定処遇改善加算の見直し
障害児通所支援において「医療的ケア児」の基本報酬区分が創設されました。
従来は医療的ケアが必要な児童を直接評価せず、一般児と同じ報酬単価でした。
しかし、医療的ケアが必要な児童の受け入れは難しい面があります。
そのため、医療的ケア児の基本報酬区分の創設は、支援に対する積極的な評価が必要との判断でしょう。
新たな基本報酬区分は、判定基準のスコアの点数に応じて段階的な評価を行うものです。
また同時に、医療的ケア児にかかる判定基準の見直しも行われています。
これには厚生労働科学研究により開発された、医療的ケア児にかかる判定基準が導入されています。
今回の改正では、医療連携体制加算も大幅に見直されました。
従来は、看護の濃度にかかわらず加算額は一定でした。
今回の改正では「医療的ケアを必要とする児童」への医療的ケアは単価が高くなり、それ以外の児童に対しては低い設定になりました。
例えば、看護職員が事業所を訪問して障害児(上限8名)に対して看護を行った場合(2時間以上)の加算単位数は、125単位/日です。
一方で看護職員が事業所を訪問して医療的ケアを必要とする障害児1人に対して看護をおこなった場合(4時間未満)の加算単位数は800単位/日となっています。
ここでも、受け入れの難しい医療ニーズの高い児童について、配慮した形となっています。
2021年3月まで、一定の指標により該当する障害児の数が、全体の50%以上かどうかやサービス提供時間(3時間を基準にした)で「区分1」「区分2」としていたものが廃止されました。
より手厚い支援を必要とする児童に応じて、きめ細かく加算を算定するものへと変わりました。
新たに新設された加算については、次項で解説します。
2021年3月までの報酬設定の区分に変わり、新たな加算が新設されました。
個別サポート加算Ⅰは、ケアニーズの高い児童(著しく重度および行動上の課題のある児童)への支援を評価するものです。
現行の基本報酬に合わせて、個別サポート加算1として100単位/日が算定されます。
個別サポート加算Ⅱは、虐待等の要保護児童等を受け入れた場合に、関係機関との連係に対する評価を行うための加算です。
本加算は、事業所にかかる費用に対して、報酬上で手当しようとするものです。
そのため、事業所に今まで以上にさらなる役割を担うことを推進するものではありません。
算定要件を満たした要支援児童が利用した日ごとに、個別サポート加算Ⅱとして125単位/日が算定されます。
今回の改正で、支援の質向上の観点から、理学療法士や作業療法士、言語聴覚士などの専門職を1名以上加配して評価する専門的支援加算が新設されました。
一方で、児童指導員等加配加算Ⅰの報酬単価が見直され、児童指導員等加配加算Ⅱが廃止されています。
これまで人員配置基準を満たす職種として認められていた「障害福祉サービス経験者」が廃止されました。
2021年3月までにすでに開設している事業所であれば、2023年3月までの経過措置があります。
それまでに、人員配置基準を満たさなければなりません。
2021年4月以降に開所する事業所については、「障害福祉サービス経験者」を配置できません。
業務効率化を測るために、運営上必要な委員会など、身体的接触を伴わない又は必ずしも対面で提供する必要のない支援について、テレビ電話装置等を用いた対応を可能とすることが、明示されました。
対象となるのは、以下にある各種委員会や会議などです。
・感染症・食中毒の予防のための対策検討委員会
・身体拘束等の適正化のための対策検討委員会
・虐待防止のための対策検討委員会
・個別支援計画作成等に係る担当者会議等
・関係機関連携加算の算定に要する会議
令和3年度まで努力義務だった虐待防止のための運営基準が、令和4年度から義務化となりました。
具体的には「従業者への研修の実施」や「虐待の防止等のための責任者の設置」は従来努力義務だったのが、義務化となります。
さらに、虐待防止委員会の設置および委員会での検討結果を従業者に周知徹底することが、新たに義務化されました。
上記の障害者虐待防止のための運営基準が義務化されたのに合わせて、身体拘束等の適性化についても追加がありました。
追加された内容については以下のとおりです。
・身体拘束等の適正化のための対策を検討する委員会を定期的に開催するとともに、その結果について、従業員に周知徹底を図ること
・身体拘束等の適正化のための指針を整備すること
・従業者に対し、身体拘束等の適正化のための研修を定期的に実施すること
引用:社会保障審議会障害者部会
運営基準を満たさない場合は、基本報酬が減算されるので、注意が必要です。
上記の追加分については、令和5年4月からの適用となります。
福祉・介護職員等特定処遇改善加算について、加算率の算定方法や、算定要件の一つである「職場環境等要件」などに見直しがありました。
特に加算率の算定については、新しい加算率に代わっているので確認が必要です。
また、各サービスの福祉・介護職員数や経営状況等をふまえて、今後の報酬改定において段階的に反映していくとされているので、今後も変更の可能性があります。加算率については、常に確認するなど意識しておきましょう。
その他にも、リーダー級の職員などの配分ルールについても、変更が加えられています。
従来は経験・技能のある障害福祉人材は他の障害福祉人材の「2倍以上とすること」とされていましたが、「より高くすること」へと見直されています。
放課後等デイサービスで算定できる加算の一覧を、表にまとめました。
加算の算定や、見直しのさいに参考にしてください。
児童指導員等加配加算 加算要件 算定に必要な従業員に加え、「理学療法士等」「児童指導員等」または「その他の従業者」を常勤換算方法で1名以上配置していること | |||
(障害児(重症心身障害児を除く)に対し指定放課後等デイサービスを行う場合) | |||
定員 | 理学療法士等 | 児童指導員等 | その他の従業者 |
10人以下 | 187単位/日 | 123単位/日 | 90単位/日 |
11人以上20人以下 | 125単位/日 | 82単位/日 | 60単位/日 |
21人以上 | 75単位/日 | 49単位/日 | 36単位/日 |
重症心身障害児に対し指定放課後等デイサービスを行う場合 | |||
定員 | 理学療法士等 | 児童指導員等 | その他の従業者 |
5人 | 374単位/日 | 247単位/日 | 180単位/日 |
6人 | 312単位/日 | 206単位/日 | 150単位/日 |
7人 | 267単位/日 | 176単位/日 | 129単位/日 |
8人 | 234単位/日 | 154単位/日 | 113単位/日 |
9人 | 208単位/日 | 137単位/日 | 100単位/日 |
10人 | 187単位/日 | 123単位/日 | 90単位/日 |
11人 | 125単位/日 | 82単位/日 | 60単位/日 |
看護職員加配加算1 算定要件 ・主として重症心身障害児を通わせる放課後等デイサービスであること ・通所基準の従業者に加え看護師を常勤換算数で1名以上配置していること ・スコア表の項目の欄に規定するいずれかの医療行為を必要とする状態である重症障害児のそれぞれのスコアを合算した点数が40点以上であること ・医療的ケアが必要な児童に関して支援を提供できる旨をインターネット等により広く公表していること | |
定員 | 単位数 |
5人 | 400単位/日 |
6人 | 333単位/日 |
7人 | 286単位/日 |
8人 | 250単位/日 |
9人 | 222単位/日 |
10人 | 200単位/日 |
11人 | 133単位/日 |
看護職員加配加算Ⅱ 算定要件 ・主として重症心身障害児を通わせる放課後等デイサービスであること ・通所基準の従業者に加え看護師を常勤換算数で2名以上配置していること ・スコア表の項目の欄に規程するいずれかの医療行為を必要とする状態である重症心身障害児のそれぞれのスコアを合算した点数が72点以上であること ・医療的ケアが必要な児童に関して支援を提供できる旨をインターネット等のにより広く公表していること | |
定員 | 単位数 |
5人 | 800単位/日 |
6人 | 666単位/日 |
7人 | 572単位/日 |
8人 | 500単位/日 |
9人 | 444単位/日 |
10人 | 400単位/日 |
11人以上 | 266単位/日 |
共生型サービス体制強化加算 | ||
児童発達支援管理責任者及び保育士又は児童指導員をそれぞれ1名以上配置した場合 | ||
算定要件 | 単位数 | |
・共生型放課後等デイサービス給付費の基本報酬を算定していること ・児童発達支援管理責任者及び保育士または児童指導員をそれぞれ1名以上配置していること ・地域に貢献する活動を行っていること | 181単位/日 | |
児童発達支援管理責任者を配置した場合 | ||
算定要件 | 単位数 | |
・共生型放課後等デイサービス給付費の基本報酬を算定していること ・児童発達支援管理責任者を1名以上配置していること ・地域に貢献する活動を行っていること | 103単位/日 | |
保育士又は児童指導員を配置した場合 | ||
算定要件 | 単位数 | |
・共生型放課後等デイサービス給付費の基本報酬を算定していること ・保育士または児童指導員を1名以上配置していること ・地域に貢献する活動を行っていること | 78単位/日 |
加算 | 単位 | 算定要件 |
家庭連携加算(月4回を限度) | 1時間未満:187単位/回 1時間以上:280単位/回 | ・事前に通所給付決定保護者の同意を得ること。 ・個別支援計画に基づき、事業所の従業者が児童の居宅等を訪問し、児童及びその家族等に対して面談等の支援を行うこと。 |
事業所内相談支援加算Ⅰ・Ⅱ | 事業所内相談支援加算1 100単位/回 (1月に1回を限度) 事業所内相談支援加算Ⅱ 80単位/回 (1月に1回を限度) | ・事前に通所給付決定保護者に同意を得ること ・従業者が放課後等デイサービス計画に基づき、児童及びその家族に対して療育に関する相談援助を行うこと。 ・相談援助を行った日時、相談内容の要点について記録すること。 |
訪問支援特別加算 | 所要時間1時間未満 :187単位 所要時間1時間以上 :280単位 | 3ヵ月以上継続して日中活動サービスを利用していたものが最後に利用した日から5日間以上連続して利用していなかった場合、あらかじめ利用者の同意を得たうえで利用者の居宅を訪問し、家族等との連絡調整、引き続き利用するための働きかけ、個別支援計画の見直し等の支援を行った場合に算定。 |
欠席時対応加算 | 94単位/1回 月に4回のみ 重症心身障害の児童は月8回まで | ・利用日の前々日、前日、当日までに欠席の連絡を通所決定保護者からもらうこと ・その場で児童または保護者に相談援助を行うこと ・相談援助の内容を記録すること |
送迎加算Ⅰ・Ⅱ | 送迎加算Ⅰ
送迎加算Ⅱ
| 送迎加算Ⅰ ・障害児に対しての送迎であること ・居宅等と事業所の間の送迎であること 送迎加算Ⅰ(一定条件) ・送迎加算Ⅰを算定していること ・喀痰吸引等が必要な児童に対しての送迎であること ・看護職員が送迎すること 送迎加算Ⅱ ・重症心身障害児に対しての送迎であること ・運転手に加え、直接支援業務従事者を1人以上配置して送迎すること ・医療的ケアに配慮した職員配置をすること |
延長支援加算 | 障害児(重症心身障碍児を除く)の場合 1時間未満 :61単位 1時間以上2時間未満 :92単位 2時間以上 :123単位 重症心身障害児の場合 1時間以上 :128単位 1時間以上2時間未満 192単位 2時間以上 256単位 | ・運営規程に定められている営業時間が8時間以上であること。 ・8時間以上の営業時間の前後において、サービスを提供すること ・通所基準の規程により配置する直接支援業務を行う職員を1名以上配置していること ・保育所等の子育て支援にかかる受け入れ先が不足している等のやむを得ない理由があり、その理由が障害児支援利用計画に記載されていること |
福祉専門職員配置等加算Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ | 福祉専門職員配置等加算Ⅰ :15単位/日 福祉専門職員配置等加算Ⅱ :10単位 福祉専門職員配置等加算Ⅲ :6単位 | 福祉専門職員配置等加算Ⅰ 常勤の児童指導員または障害福祉サービス経験者のうち、社会福祉士・介護福祉士・精神保健福祉士または公認心理師の資格保有者が35%以上雇用されていること 福祉専門職員配置等加算Ⅱ 上記の資格保有者が25%以上雇用されていること 福祉専門員職員配置等加算Ⅲ 児童指導員、保育士または福祉サービス経験者のうち、常勤職員が75%以上または勤続3年以上の常勤職員が30%以上 |
関係機関連携加算Ⅰ・Ⅱ | 関係機関連携加算Ⅰ :200単位/1回 (月1回を限度) 関係機関連携加算Ⅱ :200単位/1回 (月1回を限度) | 関係機関連携加算Ⅰ ・あらかじめ保護者の同意を得ること ・児童に係る放課後等デイサービス計画に関する会議を開催すること ・小学校その他の関係機関と連絡調整及び相談援助を行うこと 関係機関等連携加算Ⅱ ・あらかじめ保護者の同意を得ること ・児童の状態や支援方法に関する文書を就学先または就職先に渡すこと ・就職予定の企業や官公庁等との連絡調整及び相談会援助を行うこと ・就職先が就労継続A型、B型、就労移行支援事業所ではないこと |
保育・教育等移行支援加算 | 500単位/1回 | ・児童が放課後等デイサービスを退所し、集団生活を営む施設等へ移行すること ・退所後30日以内に居宅等を訪問し移行支援・相談援助を行うこと ・移行支援及び相談援助を行った場合、その移行支援・相談援助を行った日、内容の要点を記録すること |
医療連携体制加算Ⅰ | 1日につき32単位 | ・医療機関と連携して看護職員が放課後等デイサービスを訪問した場合 ・障害児に対し、1時間未満の看護を行うこと ・医療的ケア区分の1から3、及び重症心身障害児に対する基本報酬の算定をしていないこと |
医療連携体制加算Ⅱ | 1日につき63単位 | ・医療機関と連携して看護職員が放課後等デイサービスを訪問した場合 ・障害児に対し、1時間以上2時間未満の看護を行うこと ・医療的ケア区分の1から3、及び重症心身障害児に対する基本報酬の算定をしていないこと |
医療連携体制加算Ⅲ | 1日につき125単位 | ・医療機関と連携して看護職員が放課後等デイサービスを訪問した場合 ・障害児に対し、2時間未満の看護を行うこと ・医療的ケア区分の1から3、及び重症心身障害児に対する基本報酬の算定をしていないこと |
医療連携体制加算Ⅳ | 利用者が1人 1日につき800単位 利用者が2人 1日につき500単位 利用者が3人以上8人以下 1日につき400単位 | ・医療機関と連携して看護職員が放課後等デイサービスを訪問した場合 ・スコア表の項目の欄に規定するいずれかの医療行為を必要とする状態である障害児に対して4時間未満の看護を行った場合 ・医療連携体制加算のⅠ~Ⅲを算定していないこと ・医療的ケア区分の1から3、及び重症心身障害児に対する基本報酬の算定をしていないこと |
医療連携体制加算Ⅴ | 利用者が1人 1日につき1,600単位 利用者が2人 1日につき960単位 利用者が3人以上8人以下 1日につき800単位 | ・医療機関と連携して看護職員が放課後等デイサービスを訪問した場合 ・スコア表の項目の欄に規定するいずれかの医療行為を必要とする状態である障害児に対して4時間以上の看護を行った場合 ・医療連携体制加算のⅢを算定していないこと ・医療的ケア区分の1から3、及び重症心身障害児に対する基本報酬の算定をしていないこと |
医療連携体制加算Ⅵ | 1日につき500単位 | ・医療機関と連携して看護職員が放課後等デイサービスを訪問した場合 ・認定特定行為業務従事者に 喀痰(かくたん) ・ 吸引等に係る指導を行った場合 ・医療的ケア区分の1から3、及び重症心身障害児に対する基本報酬の算定をしていないこと |
医療連携体制加算Ⅶ | 1日につき100単位 | ・喀痰吸引等が必要な障害児に対して、認定特定行為業務従事者が、医療機関等との連携により、 喀痰かくたん 吸引等を行った場合 ・医療連携加算Ⅰ~Ⅴを算定していないこと ・医療的ケア区分の1から3、及び重症心身障害児に対する基本報酬の算定をしていないこと |
個別サポート加算Ⅰ | 1日につき100単位 | ・重症心身障害児に対する放課後等デイサービスの算定をしていないこと ・厚生労働大臣が定める基準に適合する心身の状態にある児童に対し、指定児童発達支援事業所等において、指定児童発達支援等を行った場合 |
個別サポート加算Ⅱ | 1日につき125単位 | ・要保護児童又は要支援児童に対して、児童相談所その他の公的機関と連携し、支援を行った場合 ・その児童の保護者から支援方針について同意を得ること |
昨今は福祉に専門性が求められるようになりましたが、2021年の報酬改定ではその傾向がより強く現われたのではないでしょうか。
専門職の配置や、より重度の障害児の受け入れに対して加算が手厚くなっているようです。今後もこの流れは変わらないでしょう。
加算を算定できないと、安定した経営は望めません。しっかりと専門性を高めて、確実に加算を取得していきましょう。