行動援護と移動支援は、よく同じサービスと勘違いされている場合がありますが、これらのサービスは大きく異なります。
しかし、それぞれを理解しようとしてもなかなか違いを理解できません。
そのため、今回は行動援護と移動支援の気になる項目についてそれぞれ比較して理解を深めていきます。
目次
障害者総合支援法の障害福祉サービスです。
知的障がい・精神障がいによって、自分だけで行動することが非常に難しい利用者を対象とし、日常生活を過ごすにあたって、外出する際における外出時の危険回避・外出の前後の着替え・移動中の介護・排せつ・食事などの介護など「行動面」を支援します。
自分だけで行動することが非常に難しいことを示す評価は、障害支援区分3以上であって、障害支援区分の認定調査項目のうち行動関連項目等(12項目)の合計点数が10点以上である者となっています。
参考:厚生労働省
移動支援も障害者総合支援法に基づくサービスの1つです。
移動することが難しい人に対してガイドヘルパーが行う外出の支援サービスのことで、障がいを持っている方は、移動することが難しいなどの理由により、外出を控えがちになり、日常生活における活動が制限されてしまう場面が多くみられます。
移動支援は活動が制限されないように、障がいのある人が地域で自立した生活を送ることができるようにすることが目的となっています。
行動支援・移動支援はともに移動時のサービスとなっているため、違いを理解することが難しい内容です。
しかし、これら2つは大きく異なるため、ここでは主要な違いを比較してまとめます。
参考:厚生労働省
主な違いは以下の通りです。
①サービス内容の違い
②サービス提供元の違い
③従業者資格の違い
④対象者の違い
⑤費用の違い
この5点について解説していきます。
サービス内容としては、下記の違いがあります。
サービス内容 | |
行動援護 | ・行動するにあたって危険が生じる可能性を回避するために必要な援護 ・外出時における移動中の介護 ・排せつ、食事などの介護その他の障害者等が行動する際に必要な援助 ・外出前後に行われる衣服の着脱介助 |
移動支援 | ・社会生活を送る上で必要な外出及び余暇活動などに参加するための移動を下記の3つで支援する 1.個別支援型 個別の支援が必要な場合、1対1による移動支援が行われます。実際に移動する際にはバス、電車、タクシーなどの公共交通機関を原則として使用します。 2.グループ支援型 移動するにあたって、複数の利用者さんがいる場合には複数人の同時支援が行われます。 例えば、目的地が同じである場合、複数人が同じイベントに参加する場合などに利用されます。 3.車両移送型 福祉バスなど車両の巡回による送迎です。公共施設、駅、福祉センターなど障がいのある人が利用する可能性の高い場所を通って運行しています。 |
続いてサービス提供元について比較します。
サービス提供元 | |
行動援護 | 障害福祉サービス(介護給付・訓練等給付)、自立支援医療、補装具からなる「自立支援給付」のサービス。 |
移動支援 | 市町村が主体となって実施している「地域生活支援事業」のサービスの1つ。 |
参考:厚生労働省
下記のようにそれぞれ必要な研修は異なります。
従業者資格 | |
行動援護 | 資格要件:行動援護従業者養成研修の修了 実務要件:知的障害児者もしくは精神障害者の直接業務1年以上かつ実際の業務が180日以上 |
移動支援 | 資格要件:移動支援従業者養成研修等(地域により介護福祉士で実施可能な地域と、移動支援専門の資格が必要な場合があるため注意が必要) |
行動援護従事者養成研修は、都道府県もしくは都道府県の指定事業所のスクールで受講することができ、行動障害に関する介護知識を中心に学習し、研修期間は3〜4日程度です。
都道府県や地方自治体が指定する移動支援従業者養成研修実施機関にて、研修のすべてのカリキュラムを履修すると、修了証明書を授与されます。
移動支援従業者養成研修は、全身性、視覚、知的、精神の各項目を2日間で14〜20時間程度受講した後に1日間の8時間実習を行います。
参考:埼玉県
参考:埼玉県
参考:大阪府
下記から分かるように対象者が大きく異なります。
対象者 | |
行動援護 | 障がい支援区分が区分3以上であって、障がい支援区分の認定調査項目のうち行動関連項目等(12項目)の合計点数10点以上ある方 |
移動支援 | 障がいなどの理由により、市町村に外出支援が必要であると判断された方 |
行動援護を希望する場合は、自治体福祉の窓口に相談をしましょう。
そして「サービスの利用申請」「障がい支援区分の判定」「サービス等利用計画の作成」「市町村の支給決定と受給者証(通知決定)の受け取り」の4つ手続きを行うと受給者証を受け取れますが、受け取るまでに最大で2ヶ月程度の期間が必要です。
移動支援は、障害の等級や支援区分は関係なく利用できるサービスです。
そのため、日常生活の移動に障がいがある場合であれば、療育手帳や障害者手帳を取得していなくても、自治体から発行された受給者証を取得すればサービスを受けることができます。
自治体によって利用対象者とする障がい種別が異なる場合がある点には注意が必要です。
参考:厚生労働省
ここでは、行動援護と移動支援の費用の違いを解説します。
行動援護は厚生労働省によって、時間による利用料は単位数として下記のように決められています。
サービス提供時間 | 単位数 |
30分未満 | 258単位 |
30分以上1時間未満 | 407単位 |
1時間以上1時間30分未満 | 592単位 |
1時間30分以上2時間未満 | 741単位 |
2時間以上2時間30分未満 | 891単位 |
2時間30分以上3時間未満 | 1,040単位 |
3時間以上3時間30分未満 | 1,191単位 |
3時間30分以上4時間未満 | 1,340単位 |
4時間以上4時間30分未満 | 1,491単位 |
4時間30分以上5時間未満 | 1,641単位 |
参考:厚生労働省
移動支援は、市町村によりサービス単価が違うので、一律に利用料は決まっていませんが、サービス利用料の1割が利用者負担となります。
およその利用料は、1時間当たり2,500〜3,000円程度になるため、利用者負担は250〜300円となります。
しかし、ほとんどの自治体は1割負担金上限月額が定められているため、月額の負担は4,600円、9,600円、37,200円のどれかになることがほとんどです。
参考:神戸市
今回、解説したように行動援護と移動支援は、移動を支援するというサービスは同じものの、詳細は大きく異なります。
また、対象者や利用料もそれぞれ異なるため、ご自身がどんな目的で使用したいのかを理解することで有効に活用できるサービスの1つです。
所を活かして頑張ってください。
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<目次>
1)障害者総合支援法とは
2)令和6年度の障害福祉サービス等報酬改定
3)まとめ