障害福祉制度において利用できる訪問系サービス「行動援護」は、障害者の外出を支援することを目的としています。
徐々に利用者や事業所の数は増加していますが、サービスで受けられる内容やできないことなど具体的な内容はあまり知られていません。
この記事では、行動援護でできること、できないことについてほかの外出サービスと比較しながら詳しく紹介します。
目次
行動援護は障がいを持つ方を対象とした障害福祉サービスです。
利用するためには市町村による障害支援区分認定を受けなければなりません。
障害支援区分は6区分に分かれており、行動援護は3区分以上の比較的重度の障害者を対象としたサービスになっています。
行動援護の対象者は、知的障害または精神障害により行動上著しい困難を有する障害者で、常時介護が必要な人です。
さらに市町村がおこなう認定調査において「行動面で特別な注意を必要とすること」と認められないと利用できません。
援助するヘルパーは、「行動援護従業者養成研修」などの専門資格をもったヘルパーが従事することになっています。
参考:厚生労働省
行動援護で援助をおこなうヘルパーは、知的障害や精神障害による特性や障害者の性格、環境などにあわせて柔軟に対応しますが、場合によってはできないこともあります。
行動援護でできないことは以下の通りです。
①1日に2回以上のサービス提供ができない
②サービス提供は1日あたり8時間まで
③知的障がい者以外の外出援助
④移動支援との併用ができない
この4点について解説していきます。
行動援護は、1日につき1回の援助が原則となっています。
例えば、朝食後と夕食後に服薬の援助が必要な障害者の場合、ヘルパーは朝と夕方に分けて訪問をおこなうことはできません。
また、おむつ交換だけを目的に1日に何度も訪問し排泄介助をおこなうことは認められていません。
参考:WAMNET
行動援護の1日あたりのサービス提供時間は、原則8時間以内となっています。
事業所が得られる介護報酬は30分ごとに単価が設定されており、もっとも短い「30分以内」で258単位、もっとも長い「7時間30分以上」が2540単位となっています。
参考:厚生労働省
行動援護の対象は、知的障害または精神障害により行動上著しい困難を有する障害者で、常時介護が必要な人です。
そのため、該当者以外の外出援助はサービスの対象とはなりません。
外出の援助をおこなうサービスはほかにもあります。
どのサービスも障害者の外出をサポートし、社会参加の機会を確保することで、生活の質の向上を図ることが目的となっています。
おもな外出支援サービスとその対象者を表で整理してみました。
名称 | 対象者 | 主なサービス内容 |
行動援護 | 知的障がいまたは精神障がいにより行動上著しい困難を有する障がい者で、常時介護が必要な人 | ・ 行動する際に生じ得る危険を回避するために必要な援護 ・外出前後、移動中の介護 ・ 排せつ及び食事等の介護その他の障害者等が行動する際に必要な援助 |
移動支援 | 障がい者等であって、市町村が外出時に移動の支援が必要と認めた者 | ・社会生活上必要不可欠な外出及び余暇活動等の社会参加のための外出の際の移動を支援 ・個別型、グループ型、車両移送など多様な手法あり |
同行援護 | 一人で外出することが難しい視覚障がい者 | ・外出時における移動に必要な情報の提供 ・移動の援護、排せつ及び食事等の介護 ・その他外出時に必要な援助 |
行動援護と移動支援の併用は、原則できません。
行動援護は障害福祉制度に位置づけられているサービスなので、利用するには障害支援区分で3以上の認定が必要です。
一方移動支援は、市町村が独自にサービス内容や対象者を決める地域支援事業なので、障害の認定は必要ない場合があります。
つまり行動援護は比較的重度の障害者、移動支援は軽度障害者をそれぞれ対象にしているので、外出支援事業を併用することは想定されていません。
ただし、保護者の怪我や行動援護をおこなう事業所がないといった理由により市町村が併用を認めれば、どちらも利用できる場合があります。
行動援護において、障害者をヘルパーが運転する車に乗せて移動することは認められていません。
行動援護の援助内容には、ヘルパーが常に障害者の危険防止や不適切行動の制御など行動全般において見守り、声掛けなどをおこなうことも含まれています。
つまりヘルパーが車を運転していると急な対応がとれないため、移動手段は徒歩や公共交通機関が中心となります。
障害者の行動を援護する事業ですから、移動中でも常に障害者の行動を観察するのが、このサービスの重要な目的といえます。
どうしても車に乗せて移動しなければならない時は、重度訪問介護サービスでの移動介護などを検討するようにしましょう。
参考:厚生労働省
行動援護は外出支援サービスの中で、特に知的障害や精神障害がある方が社会とつながるために必要不可欠なサービスです。
しかし行動援護も万能ではないので、できることやできないことを見極め、ほかのサービスを上手に活用しながら、障害者の社会参加の機会を保つことが重要です。