行動援護は、障害福祉サービスの中の訪問援助の一つです。
行動援護とはどのようなサービス内容なのか、費用はどのくらい必要か、他の外出支援サービスとの違いはあるかなど様々な疑問があると思います。
この記事では行動援護の具体的な内容について紹介していきます。
目次
行動援護は、障害により一人で外出できない障害者に対して、介助スタッフが外出時の見守りや介助をおこなう介護サービスです。
令和2年の調査では利用者数は9千人を超えており、障害者の外出支援にとって行動援護はなくてはならないサービスです。
参考:厚生労働省
行動援護の対象者は、知的障害または精神障害により行動上著しい困難を有する障害者で、常時介護が必要な人です。
さらに障害支援区分が「3」以上(1〜6区分で6が最重度)で、市町村がおこなう認定調査において「行動面で特別な注意を必要とすること」と認められた際に利用できるようになります。
参考:厚生労働省
行動援護のサービス内容は以下の通りです。
①身体介護
②外出介助
③予防的対応
④制御的対応
行動援護サービスの特徴は、外出時の見守りや身体介護だけでなく、自己判断能力が制限されることによって生じる危険を回避する支援が含まれる点です。
重度の知的障害、精神障害の人を対象としているため、リスクを避ける予防的対応として安全への配慮をおこなうことも行動援護のサービスの一つです。
行動援護で提供される4つのサービス内容をご紹介します。
行動援護でおこなわれる身体介護は、外出中の着替えや便意の認識ができない場合の排泄介助、外出中の食事介助などです。
あらかじめ介助に必要な物品を持参したり、外出先の設備などを確認したりして、スムーズに援助できるよう準備しておくことが重要です。
出発前の支度や帰宅後の水分補給、外出にともなう自宅での介助、そして外出時の移動にかかる介助などの総称を外出介助と言います。
外出先は市役所や病院受診、社会参加促進となる余暇活動への参加が対象となりますが、通勤や営業活動等の外出、通年かつ長期にわたる外出は対象となりません。
またギャンブルや飲酒目的など社会通念上適当でない外出も対象外となります。
参考:横浜市
予防的対応とは、利用者が初めての場所で不安定になったり、不適切な行動に出たりしないよう、あらかじめ外出する場合の目的地や行動など分かり易いように説明することをいいます。
利用者によっては視覚情報や音などで不安行動が引き起こされる場合があるので、事前に予防できるように障害の特性に応じた配慮も予防的対応に含まれます。
制御的対応とは、利用者が危険であることが認識できずに不適切な行動に出てしまったり、強い意志により行動が制御できなかったりした場合に、本人や周囲の安全を確保しつつ、行動を適切におさめる対応をいいます。
行動援護のサービス基本単価は国が定めており、30分ごとに単価が設定されています。もっとも短い援助時間は「30分以内」で、利用者は1割の258円を払うことになっています。
最長は「7時間以上」で2540円です。
なお、初めて利用する場合に発生する「初回加算」や事業所の体制に応じて設定される「特定事業所加算」などが追加される場合がありますので、具体的な利用料金は事業所によって異なります。
障害者の外出を支えるサービスは行動援護だけではありません。
利用者の状態や様々な地域特性、個別のニーズに対応できるように色々な外出支援サービスがあります。
この章では「行動援護」と「移動支援」に注目し、それぞれの対象者や特徴、種類について表を交えながら解説していきます。
行動援護 | 移動支援 | |
管轄主体 | 国 | 市町村 |
対象者 | 重度の知的障害、精神障害者 | 障害者等であって、市町村が外出時に移動の支援が必要と認めた者 |
利用条件 | 次の①②すべてに該当 ① 障害支援区分3以上 ② 障害支援区分認定調査項目のうち行動関連項目等(12項目)の合計点数が 10点以上である者 | 市町村からサービスが必要だと認められた人 |
支援の範囲 | ・行動する際に生じ得る危険を回避するために必要な援護 ・移動中の介護 ・外出前後に行われる衣服の着脱介助 ・排せつ及び食事等の介護その他の障害者等が行動する際に必要な援助 | 社会生活上必要不可欠な外出及び余暇活動等の社会参加のための外出の際の移動 |
援助者要件 | 行動援護従事者養成研修修了かつ直近1年以上の実務経験 | ガイドヘルパー |
費用 | 国が定める基本単価 | 市町村によって異なる |
参考:厚生労働省
行動援護は国による障害福祉制度に基づいた福祉サービスであるのに対して、移動支援は市町村が独自にサービス内容や対象者を決める地域支援事業です。
そのため、行動援護は全国一律の基準のもと運用されていますが、移動支援は市町村によってサービスの基準が異なるため、地域やニーズに合わせて柔軟に運用されているといえます。
行動援護と移動支援は、どちらも障害者が社会参加をするために必要不可欠な外出支援サービスです。
自宅から移動することが目的なので、支援の種類は様々です。
支援方法の特徴を表でまとめました。
行動援護 | ・事業所が作成した個別支援計画書に基づいて実施 ・原則一人のヘルパーが対応 ・外出前後の準備や移動時の介護にも対応 |
移動支援 | ・個別支援(一人のヘルパーが対応) ・グループ支援(一人のヘルパーが複数の利用者に対応) ・車両移送型支援(福祉バス等車両の巡回による送迎支援) など状況に応じた外出支援て対応 |
行動援護は、重度な障害者のニーズに対応する外出支援サービスです。
サービスができてからも色々な課題に対応したり、利用者のニーズに合わせて使いやすいサービスになったりと、日々進化しています。
サービスを提供する事業所の数も年々増加しているので、運営基準を遵守した健全な事業運営が求められています。
平成30年度より行動援護に従事するサービス提供責任者とヘルパーは、行動援護従業者養成研修の受講が義務化されました。
さらに実務経験も従事者要件に加わり、サービス提供責任者は3年、ヘルパーは1年の現場経験が必要です。
なお、実務経験に該当する業務とは知的障害者、精神障害者又は障害児の直接支援業務です。
参考:厚生労働省
サービス事業所は、利用者への具体的な援助方針を定めた「支援計画シート」や「支援手順書兼記録用紙」の作成を怠ると、所定単位の5%が減算されるので注意が必要です。
これは複数のスタッフで一人の利用者に関わる際、シートや手順書で方針や対応を共有しておくことで、サービスの質を標準化することが狙いとされています。
ヘルパーによって対応が変わったり、記録がないことで利用者に迷惑がかかったりしないよう、シートで共有しておくことは重要です。
行動援護は、障害者の社会参加にとって必要不可欠な外出支援サービスです。
今回の記事では外出を支援するサービスとして、市町村がおこなう「移動支援」があることも紹介し、移動支援との違いも解説しました。
いずれのサービスも利用者のニーズや生活パターン、障害特性を理解して、効率よく効果的に導入することが重要です。