重度訪問介護は重い障害のある方が自宅で暮らすためのサービスです。
この記事では重度訪問介護事業所は儲かるのかを、重度訪問介護の現状と課題をふまえて説明しています。
収益を上げるためのポイントもまとめましたので、ぜひ参考にしてください。
目次
一般的に、重度訪問介護事業所は儲かりづらいと言われています。
しかし重い障害があっても自宅で過ごしたい方が増えているため、重度訪問介護の利用者数や事業所数は増加中です。
国全体の総費用額をみると、平成24年は約536億円なのに対し令和元年は約924億円と、約1.7倍になっています。
簡単に儲けられる事業であるとは言えませんが、根強いニーズがある分野です。
事業所の経営戦略やサービスの質、スタッフの確保などの状況によっては事業所の収益を上げることも可能でしょう。
参考:厚生労働省
重度訪問介護事業所が儲かりづらいと言われるのは、診療報酬が低いことと、人件費がかかることが原因です。
事業所の収益を上げるために、まずは儲かりづらい原因を理解しましょう。
それぞれ詳しく説明します。
重度訪問介護事業所が儲かりづらい原因の1つ目として、診療報酬が低く設定されていることがあげられます。
重度訪問介護のサービス提供時間ごとの単位数は以下の通りです。
重度訪問介護サービス費(入院・入所していない障害者の場合) | |
時間 | 単位数 |
1時間未満 | 185単位 |
1時間以上1時間30分未満 | 275単位 |
1時間30分以上2時間未満 | 367単位 |
2時間以上2時間30分未満 | 458単位 |
2時間30分以上3時間未満 | 550単位 |
3時間以上3時間30分未満 | 640単位 |
3時間30分以上4時間未満 | 732単位 |
4時間以上8時間未満 | 817単位 30分を増すごとに+85単位 |
8時間以上12時間未満 | 1,497単位 30分を増すごとに+85単位 |
12時間以上16時間未満 | 2,172単位 30分を増すごとに+80単位 |
16時間以上20時間未満 | 2,818単位 30分を増すごとに+86単位 |
20時間以上24時間未満 | 3,500単位 30分を増すごとに+80単位 |
参考:厚生労働省
重度訪問介護は、障害支援区分が4以上であるなど重い障害を持った方が対象であるため、24時間連続してサービス提供をすることも少なくありません。
長時間の利用が前提となっているため、1時間あたりの診療報酬は低く設定されています。
訪問介護の身体介護と重度訪問介護の診療報酬を比較すると、以下のようになります。
時間 | 訪問介護(身体介護) | 重度訪問介護 |
20分未満 | 167単位 | 185単位 |
20分以上30分未満 | 250単位 | |
30分以上1時間未満 | 396単位 | |
1時間以上 | 579単位 30分を増すごとに+84単位 | 275単位 (以降は上の表通り) |
参考:厚生労働省
上記の表から、短時間の支援がメインである訪問介護と重度訪問介護では、診療報酬に差があるのがわかります。
重度訪問介護の診療報酬は低く設定されており、事業所が儲かりづらい原因になっているのです。
重度訪問事業所が儲かりづらい原因の2つ目は、スタッフの人件費がかかることです。
重度訪問介護は自宅で重い障害を持った方が生活する上で必要な介護支援を行います。
24時間対応の利用者には8時間の3交代で支援を行う場合が多く、スタッフの数や時間が必要になるため人件費がかかります。
したがって夜間や8時間を超える勤務を行った場合には割り増し賃金を支払う必要があります。
重度訪問介護は8〜12時間の長時間の勤務が多く、夜間の業務もあるため人件費がかかり、事業所が儲かりづらいのです。
参考: 厚生労働省
人手不足は介護業界全体で問題となっています。
介護のなかでも重度訪問介護はきついと思われることが多く、従事希望者は決して多くはありません。
重度訪問介護の従事希望者が少ない理由は以下の通りです。
この3点について解説していきます。
重度訪問介護の利用者は1日を通して常に支援が必要である場合がほとんどです。
そのためスタッフは1回の勤務が8〜12時間で設定されています。
勤務時間が長いだけではなく、勤務時間中は同一の利用者へサービスを提供することが多いため、より利用者に寄り添ったケアが求められます。
複数の利用者を短時間で支援する訪問介護と比べると、重度訪問介護の長時間勤務を負担に感じる方もいるでしょう。
また、利用者との相性やケアの難易度によっても、長時間の勤務が大変だと感じるケースもあります。
重度訪問介護の対象者は、厚生労働省によって以下のように定められています。
重度の肢体不自由者または重度の知的障害、もしくは精神障害により行動上著しい困難を有する者であって、常時介護を要する障害者
したがってコミュニケーションが図りづらい利用者も少なくありません。
利用者が細かなケアを希望していても、意思疎通が難しいため理想の支援ができず、スタッフと利用者で信頼関係を築くのが難しい現状があります。
コミュニケーションが難しい利用者と、自宅で長時間過ごすことに困難を感じる方もいるでしょう。
このコミュニケーションの図りづらさも、従事希望者が少ない理由となっています。
参考:厚生労働省
介護職全体の問題とも言えますが、給与が低いことも重度訪問介護の従事希望者が少ない原因となっています。
重度訪問介護は、重い障害のある利用者を長時間にわたって支援する責任とプレッシャーのある仕事です。
また、勤務が夜間や長時間の場合もあり、身体的にもハードだと感じる方も少なくないでしょう。
仕事が大変であるにも関わらず、給与は他の職種と比べても決して高くはありません。
診療報酬が低く設定されているためスタッフの賃金アップは難しく、給与が仕事内容に見合わないこともスタッフが増えない原因です。
儲かりづらいと言われている重度訪問介護ですが、収益を上げるためには以下のようなポイントが重要です。
この3点について1つずつ詳しく説明していきます。
現在、重度訪問介護には給与の低さや人員不足、利用者とのコミュニケーションの難しさなど様々な課題があります。
すぐには達成が難しいかもしれませんが、課題と向き合い解決に向かうことで事業所の収益にも繋がるのです。
例えば給与を上げるためには業務の効率化やコストの削減、国や自治体に対して診療報酬の見直しを求めることなどが考えられます。
業務改善に必要な機械やシステムを導入したり、人件費や備品でカットできる部分はないか見直してみましょう。
また、利用者とのコミュニケーションの難しさに関してはサービス提供前のヒアリングやスタッフ間の情報共有をしっかりと行うことが大切です。
サービスが向上することで新規利用や継続利用が増え、経営の安定化も図れます。
重度訪問介護は、相談支援専門員からの紹介で利用を開始する方が少なくありません。
そのため相談支援センターの近くで開業することも、収益を上げるために大切です。
重度訪問介護を利用したいと考えている方は、まず家の近くの相談支援センターで相談するケースが多いです。
したがって相談支援センターの近くならば、立地的に利用しやすい方の安定した集客、収益の向上が期待できます。
重度訪問介護で収益を上げるために事業を継続・拡大するためには、従業員の力が必要不可欠です。
従業員が安心して働くことのできる労働環境を整えましょう。
具体的には研修や教育の充実、適切な人員確保を行ってスタッフ1人ひとりの負担を軽減する、給与などの待遇改善などが考えられます。
また、いざという時の相談や保険などを充実させることも従業員の安心につながります。
介護の業界は離職率が高く、重度訪問介護も同様です。
離職を防ぐことで新規スタッフの募集にかける費用や引き継ぎ時間の削減にもなります。
従業員が安心して働き続ける環境を整えることで、事業所の収益にも繋げることが可能なのです。
重度訪問介護事業は利用者・事業所数ともに年々増加を続けています。
事業所数は、平成24年は約5700件でしたが令和元年には約7400件に増えており、重度訪問介護のニーズが高まっていることがわかります。
多様な生き方が認められる社会になっていることもあり、障害があっても自宅で生活したい人はこれからも増えていくでしょう。
平成30年には入院中の医療機関などへの訪問も可能になり、重度訪問介護をとりまく現状は変化を続けています。
今後も重度訪問介護のニーズは高まり、どんどん環境も変化していくでしょう。
参考:厚生労働省
重度訪問介護は儲かりづらいと言われています。
しかし重度訪問介護が抱える課題の解決、相談支援センターの近くでの開業、労働環境の整備などを行えば収益を上げることも可能です。
重度訪問介護のニーズは増加を続けており、今後も重い障害のある方が自宅で暮らすためのサービスとして需要が期待できます。