障害者総合福祉法により配置が義務付けられており、事業所にとって必要不可欠な存在である『サービス管理責任者』。
近年では、人材不足が深刻化しており、そのため名前だけを貸して配置基準を満たすといった事業所が一定数存在しています。
この記事では、「サービス管理責任者で名前だけ借りるのは違法!」など、サービス管理責任者を配置する際の注意点などを解説していきます。
目次
サービス管理責任者は、障害福祉サービスを提供する事業所において、利用者への支援プロセスの管理や職員への指導や、各種関係者との円滑な連携等を行う欠かせない存在です。
しかしサービス提供の質の確保等の観点から、2019年(令和元年)に研修体制が見直されたことで、一部規定が緩和されたものの、以前に比べ配置の基準や資格を取得するための要件がやや複雑になりました。
また、サービス管理責任者の欠如は減算の対象となるため、どうしても人材を確保できない事業所にとっては、事業を運営するうえで大きな損失となる可能性があります。
そのせいで、事実上名前だけを貸して申請を行う、いわゆる『名義貸し』といった行為が行われることもありますが、これは違法行為にあたります。
判明した場合、指定の取り消しとなることもあるので、くれぐれも、『名前だけを借りる』または『名義だけを貸す』ようなことは避けましょう。
サービス管理責任者の配置基準については、障害者福祉サービスの種類ごとにそれぞれ異なっているため、あらかじめ配置基準をチェックしておきましょう。
現行の配置基準は以下のようになっています。
障害福祉サービス事業所 | 配置基準 |
療養介護/生活介護/自立訓練/就労移行支援/就労継続支援 | 利用者60人に1人 |
グループホーム(共同生活支援) | 利用者30人に1人 |
参考:厚生労働省
上記のような基準が義務付けられており、こちらの配置基準をもとに、新体制への移行期間にかぎって『みなし配置』制度が設けられています。
以前までの体制であれば、実務経験の要件を満たした者であれば、研修修了後、すぐにサービス管理責任者として配置することが可能でした。
しかし、令和元年における研修制度の見直しをもって、『実務経験要件』を満たした者が『基礎研修』修了後、そこから2年以上の『実務経験(OJT)』の期間を要し、さらに『実践研修』を修了することが配置の要件として定められました。
つまり、サービス管理責任者としての養成開始から配置に至るまで、最低でも2年以上の期間を要する必要があります。
そのため、直ちに人員を確保できない一部の事業所に対する対応策として、みなし配置が認められたのです。
みなし配置の基準は、令和元年以降の研修修了者が、実践研修を修了するまでの間にかぎり、基礎研修を受講するために必要となる実務年数にくわえ、2年の実務経験を満たす場合であれば、研修修了者を3年の間サービス管理責任者等と『みなす』というものです。
ですが、こちらの特別措置は令和4年をもって廃止されます。
参考:厚生労働省
これから事業所を開設するという場合、サービス管理責任者は最低でも2か月以上前に確保しておくことをオススメします。
事業所の開設には開所の2か月前までに指定申請とよばれる書類を提出しなければなりません。
申請の際にはサービス管理責任者の名義が必要となるため、事前にサービス管理責任者を確保しておく必要があるのです。
また、人材不足という観点から考えても、なるべく早い段階で、遅くとも3か月前には候補を確保しておくのが無難でしょう。
サービス管理責任者の主な役割としては、利用者ごとの個別支援計画の作成や職員への指導等が含まれ、サービス提供の質を向上させる観点から配置が義務付けられています。
そんな重要な役割を持つサービス管理責任者。研修制度の見直しにより、実務要件等の一部規定が緩和されましたが、人材の確保はいまだ難しいのが現状です。
ここからは、サービス管理責任者の人材を確保するためのポイントを紹介します。
サービス提供に関わる全体的な管理を担うだけに、サービス管理責任者にはある程度の経験や実績が求められます。
しかし、ただでさえ人材不足の中、経験豊富なサビ管となるとその需要も高く、なかなか良い人材を確保することは難しいのが現実でしょう。
そのため、サビ管の確保に困っている事業所であれば、経験の有無を問わず、資格を有する未経験者の採用を検討することも1つの手段です。
その際には、はじめのうちはサビ管の業務に集中してもらえるよう、雑務や事務作業を極力減らし、職員とのコミュニケーションの機会を頻繁に設けるなどして、徹底したサポート体制をつくることが重要です。
厚生労働省による令和2年度の調査によると、サービス管理責任者の平均給与額は『409,300円』となっており、他の職員と比較すると高い水準となっています。
しかしサービス管理責任者は、利用者や家族とのコミュニケーションにとどまらず、事業所内の職員に対する指導、ならびに関連機関との連携という役割も任されているため、業務内容に比べ待遇面に不満のある方も少なくないです。
また、関連機関が参加する会議等への参加にしても、必ず費用負担がともないます。
厚生労働省の調査によると、会議への参加に関する費用負担に対して、「ほとんど決定できない」と答えた割合が48.9%という結果が出ています。
サービスの質を向上させる観点から考えても、事業所が一定の費用を負担するなどの対策を取り、待遇面を改善していくことが人材確保のポイントとなるでしょう。
サービス管理責任者に関する注意すべき点や配置基準、また、みなし配置制度の廃止について解説しました。
サービス管理責任者の欠員は減算の対象となり、名前だけを貸すような行為は違法となります。
また、これから新規で立ち上げることを検討している事業所にとって、必ず配置しなければならない人員のため、最低でも開設希望の2か月前には確保しておきましょう。