さまざまな障害や難病により、一般企業で働くことが難しいと感じる方は少なくありません。
このような方をサポートするために、就労系障害福祉サービスが提供されています。
就労系障害福祉サービスは就労継続支援A型、就労継続支援B型、就労移行支援、就労定着支援の4種類です。
自分に合ったサービスを利用しながら就労の経験を積み重ね、将来は一般就労を目指すこともできます。
本記事では就労継続支援A型の概要や、他の障害福祉サービスとの違いを中心に解説します。
目次
就労継続支援A型は、障害者総合支援法で定められた福祉サービスの1つです。
障害や難病により一般企業への就職が困難で、雇用契約を結んだ就労が可能な方に対し、一定のサポートを受けられる職場で働く機会を提供します。
就労継続支援A型は利用者とA型事業所で雇用契約を結ぶため、最低賃金額以上の収入が保証される雇用型のサービスです。
1週間の労働時間が20時間以上になる場合は、労災保険や雇用保険に加入することができます。
令和2年の時点では、約7万2千人の方がA型事業所を利用しています。
参考:厚生労働省
就労継続支援A型には以下のようなメリットがあります。
就労継続支援A型は事業所と雇用契約を結んで働くため、最低賃金額以上の安定した収入が見込めます。
職場には職業指導員と呼ばれる支援者が常駐し、利用者の適性を考慮しながら仕事の内容や量を調整します。
残業や休日出勤もないため、無理なく働ける点もメリットの1つです。
事業所での就労を通して必要な知識や技能を身につけた利用者は、希望があれば一般就労への移行も目指せます。
一方で、以下のようなデメリットもあります。
A型の事業所数が少なく、就労先の選択肢が少ないことが難点です。
令和3年の時点で、就労継続支援B型の事業所数が1万3,828か所であるのに対し、A型の事業所数は3,992か所となっています。
参考:厚生労働省
また、A型事業所は仕事をするために通所する場所であるため、一般企業へ就職するための学習ができません。
通所時間外に自宅で行うか、就労移行支援の利用に切り替えるなどの対策が必要です。
就労継続支援A型の仕事内容は、一般企業と大きな差はないといわれています。
具体例を以下にまとめました。
一般企業と違う点は、職場から一定のサポートを受けながら働けることです。
また、1日の実働時間が4〜8時間程度と比較的短い場合があります。
就労継続支援A型では雇用契約を結んで働くため、都道府県が定める最低賃金額以上の収入が保障されています。
ただし、1日の実働時間が4〜8時間と短い場合が多く、収入も一般企業と比べて低くなりがちです。
令和2年度のA型事業所の月額平均給料は7万9,625円、時給換算すると899円です。令和元年の月額平均給料は7万8,975円、時給換算で887円です。平成26年度から収入は増加傾向にあります。
参考:厚生労働省
A型事業所で働く場合、労働時間によっては社会保険や雇用保険が適応されます。
毎月給料から適応されている保険料が差し引かれた金額を、手取りとして受け取ります。
就労継続支援A型が利用できるのは、原則18歳以上65歳未満で身体障害、知的障害、発達障害を含む精神障害や難病がある方です。
一般企業での就職が困難で、以下のいずれかに該当する場合に利用可能となります。
平成30年4月より、65歳を迎える前日までに就労継続支援A型を利用した方は、65歳以降も継続して利用できるようになりました。
参考:厚生労働省
就労継続支援A型の利用料は、事業所に通所する日数と世帯(利用者本人とその配偶者)の収入状況によって変わります。
約9割の方は無料で利用できますが、利用料がかかる場合も月額の上限が以下のように決まっています。
区分 | 世帯収入状況 | 利用料の上限額(月額) |
生活保護 | 生活保護受給世帯 | 0円 |
低所得 | 市町村民税非課税世帯※1 | 0円 |
一般1 | 市町村民税課税世帯※2 (約600万円以下の年収) | 9,300円 |
一般2 | 上記以外 | 37,200円 |
※1 3人世帯で障害者基礎年金1級需給の場合、年収が約300万円以下の世帯が対象。
※2 20歳以上の入所施設利用者やグループホーム利用者で市町村民税課税世帯の場合、上限額は一般2の区分と同じ月37,200円となる。
参考:厚生労働省
就労継続支援A型は利用期間に制限はありません。
利用する事業所と結ばれた雇用契約に期間が定められている場合、契約の更新があれば同じ事業所を引き続き利用できます。
しかし、契約の更新がない場合は継続して利用することができません。
就労継続支援A型を利用するためには、以下の手順に沿って手続きを行う必要があります。
まずは、通いたい事業所を探すために情報収集します。
市区町村の障害福祉窓口やハローワークに問い合わせるとよいでしょう。
実際に見学や説明会に行くことで、事業所の雰囲気などを知ることができます。
A型事業所は雇用契約を結んで働く場所であるため、事業所の選考を受ける必要があります。
応募したい事業所が見つかれば、履歴書や面接などの選考に進みましょう。
採用後は、市区町村の窓口で就労継続支援A型のサービス利用を申し込みます。
申し込みの際には生活状況などについての面談と、サービス等利用計画案の作成が必要です。
申し込み後にサービスを受けるための受給者証が発行されると、就労継続支援A型の利用が可能になります。
就労支援が受けられる福祉サービスは就労継続支援A型だけではなく、就労継続支援B型や就労移行支援があります。
それぞれのサービスの違いについて、以下にまとめました。
就労継続支援A型 | 就労継続支援B型 | 就労移行支援 | |
雇用契約 | あり | なし | |
利用期間 | 定めなし | 原則2年 | |
対象者 | 原則18歳~65歳未満 | 年齢制限なし | 原則18歳~65歳未満 |
目的 | 働く機会を提供する | 就職に必要なスキルを得る | |
賃金 (平均月額) | 7万9,625円 (令和2年度) | 1万5,776円 (令和2年度) | 一部事業所を除き支給なし |
利用料金 | 前年度の世帯収入による |
就労継続支援B型は、A型と違い雇用契約を結ばないため、収入は最低賃金額を下回ることも多いです。
ただし、短時間から利用できる事業所が多く、体調を優先しながら自分のペースで働けます。
就労移行支援は、一般就労に必要なスキルの習得や、就職活動のサポートを行うサービスです。就労継続支援A型との併用はできません。
就労継続支援A型の事業所を開業し、運営するためには、定められた人員配置基準と設備基準を満たす必要があります。
まず、A型事業所の人員配置基準について以下にまとめました。
職種 | 人員配置基準 | 資格要件 |
管理者 | 常勤1名 | なし |
サービス管理責任者 | ・利用者数60名以下:1名以上 ・利用者数61名以上:2名以上※1 (1名以上は常勤) | 実務経験+研修終了 |
生活支援員及び 職業指導員 | ・利用者:スタッフ=10:1または7.5:1 ・生活支援員、職業指導員それぞれ1名以上配置(1名以上は常勤) | なし |
※1 利用者数61名以上の場合、40名増えるごとにサービス管理責任者を1名配置する。
次に、設備基準について以下にまとめました。
項目 | 設備基準 |
訓練・作業室 | ・訓練や作業に支障がない広さを有すること ・訓練や作業に必要な機械器具等を備えること |
相談室・多目的室 | 話し声が漏れないように間仕切り等を設けること |
洗面所・便所 | 利用者の特性に応じたものであること |
事務所 | 鍵付き書庫 |
就労継続支援A型に関する質問で多いのが以下の5点です。
それぞれ詳しく解説していきます。
就労継続支援A型が利用できる年齢は、原則18歳以上65歳未満の方です。
ただし、平成30年4月より、65歳になる前日までに利用を開始した場合は、以降も継続して利用できるようになりました。
参考:厚生労働省
一般就労が困難な方を対象にした就労継続支援A型とアルバイトの併用は原則できません。
アルバイトであっても一般就労が可能な方は、サービスの利用対象者にならない場合がほとんどです。
ただし、一般就労先から事業所への通所が認められている場合や、市区町村の許可が出た場合はアルバイトと併用できることがあります。
ダブルワークに関する就業規則がある事業所もあるので、検討している方は事業所に相談してみましょう。
就労継続支援A型に応募するためには、履歴書の作成が必要です。履歴書には以下について書くのがポイントです。
障害の状況や必要な配慮に関することは、できるだけ詳細に書くことで事業所に伝わりやすくなります。
ハローワークでは、履歴書の書き方についてアドバイスを行っています。不安がある方は、相談してみましょう。
就労継続支援A型は、障害や難病のある方が利用できるサービスです。
しかし、障害者手帳が必ず必要なわけではありません。
医師が利用の必要性を認めた診断書や意見書がある場合は、手帳がなくてもサービス利用が可能になります。
就労継続支援A型は雇用契約を結び、1週間の労働時間が20時間を超える場合がほとんどです。そのため、働きながら失業保険を受け取ることはできません。
しかし、A型事業所では雇用保険の加入ができるため、離職後は失業給付の受給が可能です。
就労継続支援A型は、雇用契約を結んで収入を得たり、障害や難病に理解のあるスタッフからサポートを受けながら働けることが特徴です。
A型事業所での就労を通して、一般企業での就職を目指すなど、希望があれば他のサービスに移行することもできます。
就労を目指すためには、自分に合ったサービスを見つけることが大切です。
就労継続支援A型の利用を検討している方は、市区町村窓口やハローワークで相談してみましょう。