専門的支援加算とは、児童発達支援事業所や放課後等デイサービスが理学療法士等の専門職を配置した際に算定できる加算です。
基準以上の人員を配置することで算定できる加算ですが、2024年の障害福祉サービス等報酬改定で、加算の内容が大きく変更されています。専門的支援加算の算定要件や単位数について、詳しく知りたい障害福祉サービス事業所経営者も多いのではないでしょうか。
この記事では、専門的支援加算の算定要件や単位数について詳しく解説します。この記事を読むことで、2024年度障害福祉サービス等報酬改定による変更点についても把握できます。
目次
専門的支援加算とは、より専門的な支援を提供するために必要な人員を配置した障害福祉サービス事業所が算定できる加算です。
この加算は、令和3年度障害福祉サービス等報酬改定で創設された加算で、人員配置基準以上にリハビリ専門職等を配置した上で、利用者の支援計画に基づいた支援をすることで算定できます。障害福祉サービスで提供する支援の質を向上させることが専門的支援加算を創設した目的です。
厚生労働省の資料「児童発達支援・放課後等デイサービスに係る報酬・基準について≪論点等≫」では、令和5年4月時点における専門的支援加算の取得状況が公開されています。この資料によると、児童発達支援における専門的支援加算の取得率は44%で、放課後等デイサービスは全体平均で22.6%でした。
2024年の介護報酬改定では、専門的支援加算が2段階評価へ変更されました。この見直しは、それまで算定されていた専門的支援加算と特別支援加算の実態を踏まえた上で、両加算を統合する形で見直されたものです。ここでは、2024年障害福祉サービス等報酬改定による専門的支援加算の見直しに関する内容について詳しく解説します。
2024年の障害福祉サービス等報酬改定に向けた議論では、特別支援加算の算定率の低さについても言及されていました。さらに、特別支援加算を算定している事業所は、専門的支援加算等の算定によって評価を受けていることも指摘されています。これらの実態を踏まえて、2024年の障害福祉サービス等報酬改定では、2つの加算を統合することになりました。厚生労働省の資料「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定の概要」には、以下のように記載しています。
専門的支援加算・特別支援加算の見直し
専門的支援加算及び特別支援加算について、専門人材の活用とニーズを踏まえた計画的な専門的支援の実施を進める観点から、両加算を統合し、専門的な支援を提供する体制と、専門人材による個別・集中的な支援の計画的な実施について、2段階で評価を行う。
引用:厚生労働省「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定の概要」
2024年障害福祉サービス等報酬改定の見直しによって、専門的支援加算は「専門的支援体制加算」と「専門的支援実施加算」の2段階に変更されました。既存の専門的支援加算に相当する加算が「専門的支援体制加算」で、既存の特別支援加算に該当する加算が「専門的支援実施加算」です。
加算名 | 算定要件のポイント |
専門的支援体制加算 | 理学療法士等を配置 |
専門的支援実施加算 | 専門人材が個別・集中的な専門的支援を計画的に実施 |
各加算で算定要件や単位数が異なるため、これから専門的支援加算を算定する予定の事業所は注意しましょう。
専門的支援加算は、各加算で算定できる支援内容や算定できる回数が異なります。そのため、実際に算定する際には支援内容や算定回数などに注意しましょう。ここでは、厚生労働省の資料をもとに、専門的支援体制加算と専門的支援実施加算の算定要件と単位数について詳しく解説します。
専門的支援加算は「放課後等デイサービス」と「児童発達支援」の2つのサービスが該当します。どちらも通所系の施設ですが、在宅生活を送っている方が利用するため、利用者の自立した生活を支えるために専門的な支援が求められる施設です。
専門的支援体制加算は、専門的な支援の強化を図るため、人員配置基準の人員に加えて理学療法士などの専門職を配置していることで算定できる加算です。算定要件と単位数については、以下の通りです。
専門的支援体制加算の算定要件と単位数 | |
算定要件 | 専門的な支援の強化を図るため、基準の人員に加えて理学療法士等を配置している場合 |
単位数 | 【児童発達支援センター】 区分に応じて15~41単位/日 【児童発達支援事業所(障害児)】 区分に応じて49~123単位/日 |
引用:厚生労働省「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定の概要」
児童発達支援センターや児童発達支援事業所(障害児)において算定できる単位数は、それぞれの区分に応じて異なるため注意が必要です。
専門的支援実施加算は、理学療法士等が専門的支援を実施した際に算定できる加算です。詳しい算定要件や単位数については、以下の表をご参照ください。
専門的支援実施加算 | |
算定要件 | 理学療法士等により個別・集中的な専門的支援を計画的に実施 ※専門的支援体制加算との併算定可能 |
単位数 | 150単位/回(原則月4回を限度) 利用日数等に応じて最大6回まで |
引用:厚生労働省「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定の概要」
例えば、児童発達支援事業所を週1回利用する利用者に対して、理学療法士等の専門職が計画書に基づいて、専門的な支援を個別的かつ集中的に実施したとします。
この場合、1回につき150単位を算定できるので、1ヵ月で算定できる単位数は600単位となります。
1ヵ月に算定できる専門的支援実施加算の回数は原則4回までです。ただし、放課後等デイサービスの場合は6回まで算定できるため注意しておきましょう。
専門的支援体制加算と専門的支援実施加算は併算定が可能です。2つの加算を同時に算定する際には、人員配置基準以上の専門職を配置した上で、専門的支援の実施計画に基づいた支援を行っていることが求められます。
例えば、児童発達支援事業所で専門的支援体制加算と専門的支援実施加算を算定する場合、まずは人員配置基準以上に理学療法士等の専門職を配置する必要があります。
事業所に配置されている専門職は、専門的支援が必要な利用者に対して個別に支援計画を立案し、支援計画に基づいて個別的かつ集中的な訓練を実施します。これにより、専門的支援体制加算と専門的支援実施加算の両方を同時に算定可能です。
人員配置基準以上の専門職を配置できる児童発達支援事業所や放課後等デイサービスは、専門的支援体制加算と専門的支援実施加算の同時算定を検討してもよいでしょう。
専門的支援加算は、児童発達支援事業所や放課後等デイサービスにおいて理学療法士等の専門職を配置した場合に算定できる加算です。令和6年度障害福祉サービス等報酬改定によって、専門的支援加算と特別支援加算が統合して専門的支援体制加算と専門的支援実施加算の2つ加算に変更されています。
専門的支援体制加算と専門的支援実施加算は、それぞれ算定要件や単位数が異なります。2024年以降に専門的支援加算を算定する事業所は、各加算の算定要件を把握した上で算定しましょう。
2つの専門的支援加算は、同時に算定することも可能です。同時に算定することで、より多くの加算を算定できるため、理学療法士等の専門職を多めに配置できる事業所は、積極的に専門的支援体制加算と専門的支援実施加算を同時に算定していくことをおすすめします。