「重度訪問介護の移動加算って何?」「移動加算の算定要件は?」
このような疑問を持っている方は、多いのではないでしょうか。
この記事では、重度訪問介護「移動加算」とは何か、単位数や算定要件を等について解説します。
目次
「重度訪問介護」とは、重度の肢体不自由者・重度の知的障害者・精神障害者に対して、身体介護・家事援助・見守りおよび外出時の介護を長時間、総合的に行うものになります。
対象者は、常時介護を必要とする障害を要し、4以上の障害区分で支給決定を受けていて、そのうえでさらに次の①または②に該当する人です。
①二肢以上に麻痺等があり、障害支援区分調査項目のうち「歩行」「移乗」「排泄」「排便」のいずれも「支援が不要」以外に認定されていること
②障害支援区分調査項目のうち、行動関連項目等(12項目)の合計点数が10点以上
参考:厚生労働省
以上が要件になります。
重度の障害者が地域で自立した生活を送れるようにする総合的な支援で、訪問介護員の長時間滞在を前提としています。
身体介護、生活支援などそれぞれ個別にみるのではなく、日常生活の行動を一連の支援としてとらえています。
重度訪問介護を利用することにより、障害者の生活の自律性を確保する必要があります。
18歳未満の障害児は原則対象外です。
ただし15歳以上の障害児に関しては、児童相談所長が必要性を認め市町村に通知すると、重度訪問介護が利用できる場合があります。
費用は原則1割負担で、低所得者(市町村民税非課税世帯)や生活保護受給者は無料です。
重度訪問介護における「移動加算」とは、重度の身体障害者、重度の知的障害者や精神障害者に、入浴介助や居室の掃除など居宅内の介護と、社会参加など外出時の介護を一体的に行う障害福祉サービスです。
もともと重度訪問介護自体の単位数が低いため、訪問介護員にとって負担の大きい外出支援に関して加算が設定されています。
障害福祉サービスでは、障害者一人ひとりに支給量(1か月に障害福祉サービスが使える時間数)が決められています。
例えば重度訪問介護が月248時間(そのうち移動支援が20時間)のように、重度訪問介護が利用できる時間数の中で、移動支援の支給時間が決定されているのです。
支給量を超えないように、計画を立てて外出をしていくことが求められます。
外出支援には「社会生活上必要不可欠な外出」と「社会参加のための外出」があります。
社会生活上必要不可欠な外出には、金融機関の利用・葬式・法事・官公庁への手続きなどがあります。
社会参加のための外出には、買い物・理美容・習い事・カラオケ・散歩などがあります。
重度訪問介護を利用する障害者は自宅にいることが多く、外出支援を利用し外に出ることで気分転換や社会参加につながります。
重度訪問介護を実施している事業所
所要時間区分 | 加算単位 |
1時間未満 | 100単位 |
1時間以上1時間30分未満 | 125単位 |
1時間30分以上2時間未満 | 150単位 |
2時間以上2時間30分未満 | 175単位 |
2時間30分以上3時間未満 | 200単位 |
3時間以上 | 250単位 |
参考:厚生労働省
移動加算の算定要件について説明します。
利用者の同意を得ていることが前提で、下記のいずれかに該当する場合。
イ:障害者等の身体的理由により1人の従業者による介護が困難と認められる場合
ロ:暴力行為、著しい迷惑行為、器物破損行為等が認められる場合
ハ:その他障害者等の状況等から判断して、第一号又は前号に準ずると認められる場合
利用者の同意を得ていることが前提で、下記のすべてに該当する場合。
イ:利用者の支援に1年以上従事することが見込まれる場合
ロ:利用者への支援に熟練した介護職員の同行が必要であると認められる場合
参考:厚生労働省
「移動介護緊急時支援加算」とは、訪問介護員が自ら車を運転し送迎をした際に、利用者からの要請等に基づいて緊急的に吸痰や体位変換等の支援を行った場合の加算です。
参考:厚生労働省
訪問介護員の自家用車に乗せることは、道路運送法違反のため行わないでください。
重度訪問介護を実施している事業所
240単位/日
利用者1人に対し1日につき240単位が加算されます。
1人の利用者に対して、同日に複数の事業所が移動介護緊急時支援加算を算定できる支援を行った場合、それぞれの事業所が加算の算定をします。
移動介護緊急時支援加算の算定要件は、訪問介護員自らが運転する車に利用者を乗せ走行させる場合で、移動中に必要な介護を緊急的におこなった場合に算定できます。
支援の内容は、利用者の求めに応じて喀痰吸引や体位の調整、衣服着脱などを行いますが、水分補給・排泄など、常時介護が必要な人の障害の特性で起こる緊急的な支援ならどんな支援でも算定することが可能です。
2人の訪問介護員で介助した場合にも算定可能ですが、その場合であっても1日に付き240単位の算定となります。
重度訪問介護の移動加算に関するQ&Aをまとめました。
基本的に重度訪問介護で通院した場合にも移動加算はつくと考えられます。
しかし、市区町村が障害福祉サービスの支給量などを決定をするので、各自治体によって解釈が違うことがあります。
実際に移動加算を算定する前に、自治体に確認するといいでしょう。
移動加算の支給上限は決まっていません。
一人ひとり重度訪問介護や移動支援の支給量(1か月に使える時間)が決定されているため、その中で障害福祉サービスを実施していくことになります。
障害者一人ひとりに決まっている支給量の中で障害福祉サービスを提供します。
しかし、ご本人の状態や環境の変化により時間を増やすことが必要になる場合もあります。支給量より超えそうなときは、事前に市区町村へ相談をして支給量変更の申請をしましょう。
各自治体のルールにより、超えてはいけないと決まっていることがあるので、事前に確認が必要です。
重度訪問介護の移動支援を利用できるのは、社会生活で必要不可欠な外出や社会参加のための外出になります。
通勤や営業活動など経済活動が理由の外出では利用できません。
移動支援では、運転に関して支援に含まれていないため加算の対象になりません。
しかし、運転手以外に訪問介護員が同行して車中で介護をする場合は、走行中の車内でも介護報酬の算定が認められます。
重度訪問介護は介護報酬が低い傾向にあるため、事業所としては少しでも加算を取得したいと考えていることでしょう。
加算取得には一定の条件を満たすことが必要なため、移動加算を算定したい場合は日々の書類への記載が重要になります。
実施指導や監査のときにしっかりと説明ができるように、日頃から記録は確実にしておきましょう。