2024年は障害福祉サービス等報酬の改定年です。同時に医療・介護も改定されるため、注目度がいつもより高くなります。
前回の改定時では、精神障害者支援体制として精神障害が合っても自分が住み慣れた地域で過ごすためのシステム構築が重要視されていましたが、今回もその方向性は変わらずより推進される予測です。
今回は、精神障害だけでなく障害者について詳しく説明するだけでなく、実際に前回改定された内容と、今回予測される改定内容について詳しく紹介します。
ぜひ、最後までお読みください。
目次
現在国内において、障害のある方を取り巻くさまざまな法律があり、その法律ごとに「障害者」についての定義が異なります。
例えば、障害のある方が日常生活や社会生活を営む上で必要な障害福祉サービスなどが定められた法律である「障害者総合支援法」では下記のように定義しています。
四肢に不自由があったり、視覚や聴覚に制限があったりするなど、身体機能に何らかの障害がある状態のことで、身体障害者福祉法は、身体障害者を「身体上の障害がある18歳以上の人で、身体障害者手帳の交付を受けた人」と定義しています。
身体障害者福祉法によると、大きく分けて5つに分かれます。
視力や視野などに障害があって、目が見えにくい・見えない状態で下記のような症状があります。
聴覚障害は、音を伝えるための外耳・中耳、音を感じ取るための内耳などに何かしらの障害があって耳が聞こえにくい・聞こえない状態で下記のような症状があります。
一方、平衡機能障害は、耳や脳神経などの機能に障害があって、起立や歩行などに支障が生じる状態で、目を開けた状態で立っていることができない。または目を開けた状態で直線を歩行中に10m以内に転倒もしくは著しくよろめいて歩行できない状態をいいます。
音声機能・言語機能は構音器官の障害などによって、音声を発することが難しかったり、音声・言語のみで意思疎通に支障がでている状態です。
症状としては、身体障害者3級では音声を全く発することができない、もしくは発声しても言語機能を喪失した状態、4級は音声、言語のみを用いて意思を疎通することが困難な状態です。
そしゃく機能障害は、食べ物を食べるための機能に障害があって、摂取できる食べ物の内容や摂取方法に支障がでている状態です。
症状としては、身体障害者3級では経管栄養以外に方法のない状態となり、4級ではそしゃく・嚥下機能の著しい障害のある状態です。
上下肢・体幹に障害があり、歩く・座るなどの下肢の運動機能障害、握る・なでる・摘むといったような手指の運動障害などに障害があって、日常生活の動作へ支障がでている状態です。
症状はどれくらい関節が動くかで下記のように分類されます。
ただ、上記の内容は評価の一部になるため、判定に当たっては、その機能障害全般を総合して決める必要があります。
身体の内部に障害がある状態で、下記のような障害があります。
知的機能の障害が発達期(おおむね18歳まで)にあらわれ、日常生活に支障が生じているため、何らかの特別の支援を必要とする状態です。
重症度は、知的能力を表すIQ(知的指数)と日常生活への適応能力を総合的に判断したうえで、これが発達期(18歳以下)に発症したかどうかで判断をしていきます。重症度は下記の4つに分けられます。
重症度 | IQ(知能指数) |
軽度 | 約50~70 |
中等度 | 約36~49 |
重度 | 約20~35 |
最重度 | 約19以下 |
上記のようにIQ(知能指数)で重症度をおおまかに分類できますが、IQだけで判断されるわけではありません。IQが70以下でも適応能力が高ければ、知的障害ではないと判断される場合もあります。
なお適応能力は、日常生活や社会生活に必要な能力がほかの同年齢の方に比べて、どれくらい低いのかを基準に下記3つの領域における能力で主に評価します。
難病法では下記を定義としています。
上記の内容に当てはまる難病は、2021年11月時点で366疾病に指定されています。
また、難病法に定められた難病のうち、医療費助成の対象となる「指定難病」もあり、「難病」の定義に加えて下記の定義も合わせて必要です。
難病法が施行される前は、医療費助成が行われる疾病は56疾患でしたが、難病法により大きく範囲を拡大し、現時点では338疾患が指定難病とされています。
感情や行動に著しいかたよりが見られ日常生活や社会参加が困難となっている状態のことです。
厚生労働省の発表によると、精神障害の患者さんは2002年では約258万人でしたが、2020年には約502万人と約2倍に増加していることからも、非常に身近な疾患であることが分かるはずです。
なお、精神障害には、下記のような種類があります。
原因や症状を理解するため下記の3つに分類します。
脳挫傷・感染症など、外傷や疾患、薬物の影響など理由がはっきりしており、脳神経の働きが阻害され、精神症状がみられるものです。
急性ストレス障害・心的外傷後ストレス障害(PTSD)などのストレス反応や適応障害など心理的ストレスが原因で症状が出現するものです。
統合失調症、気分障害(うつ病、双極性障害)など原因がはっきりしないのに精神障害がみられるもので、この内因性精神疾患だけを指して精神障害と定義する場合もあります。
基本的には、3年ごとに見直し改定を実施しますが、必要に応じて臨時で実施されることもあります。実際、2021年に改正が行われましたが、2022年に障害者総合支援法が改定され、改正内容は2024年4月より施行されます。
2024年度の改正内容を把握するためには、前回の改定内容をしっかりと理解することが重要となっており、下記が主要な内容です。
上記の6つが改定の軸でした。その中で、「4.精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの推進」に関しては、精神障害者であっても、地域社会の一員として安心して自分らしく暮らせるように医療、障害福祉・介護、住まい、社会参加、地域の助け合い、教育が包括的に確保された「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」の構築を推進する観点から、地域包括ケアシステムの構築に資する取り組みを推進するための改定が下記のように行われました。
2023年8月31日に実施された第35回「障害福祉サービス等報酬改定検討チーム」では、次回改定に向けた主な論点として下記の3点があります。
「1.障害者が希望する地域生活を実現する地域づくり」の分野で、今まで以上の「支援体制の充実」が重要で、下記の3点の論点をあげています。
上記の中で、「精神障害者の地域生活の包括的な支援」は、2022年12月16日に交付された「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律等の一部を改正する法律」が順次施行されますが、その中には精神障害者の福祉に関して定めた「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(精神保健福祉法)」も含まれており下記の内容を推進しています。
これらの内容をより推進するために、下記の内容を具体的に検討すると予測されます。
今回は、次回の報酬改定で、どのように精神障害者の方への支援が変わるかについて紹介しました。
障害福祉サービス等報酬改定は基本的に3年に1回改定され、2024年の改定は改定年です。前回は2021年に改正が行われましたが、その後、2022年に障害者総合支援法が改定されました。
その内容は、精神障害者であっても、地域社会の一員として安心して自分らしく暮らせるように医療、障害福祉・介護、住まい、社会参加、地域の助け合い、教育が包括的に確保された「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」の構築を推進するとなっており、2024年度の改定はこれらの内容をより推進される方向です。
今後は精神障害だけでなく、どのような障害があっても自分が暮らしていた地域で変わらず過ごすための支援体制の充実がより重要になるはずです。