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障害者総合支援法 令和6年介護報酬改定の柱!『支援体制の充実』

2023-12-04

元山 ゆず香

監修者

介護福祉士

元山 ゆず香

大学を卒業後、特別養護老人ホームにて現場業務に従事。その後、福祉系大手企業に入社し、エリアマネージャーとして、施設介護事業・居宅介護事業・障害福祉サービス事業でのエリアマネジメント・行政対応を経験。また、法人本部に異動し教育部門・監査担当部門の部長を歴任。現在は全国の介護・障害福祉事業所の支援やセミナーの開催、DXO株式会社での介護関連事業の支援などを実施。

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令和6年は障害福祉サービス等報酬だけでなく、医療・介護報酬も含めたトリプル改定の年です。トリプル改定の時は過去も大きな改定内容となっていたため、今回も同様であると予想されます。

今回の障害福祉サービス等報酬で注目すべき内容は、障害者総合支援法における障害者地域支援体制の充実です。

今回は、障害者総合支援法について解説するだけでなく、実際に改定内容としてどのような内容が議論されているかまで紹介します。

ぜひ、最後までお読みください。

障害者総合支援法とは

障害のある方が日常生活や社会生活を営む上で必要な障害福祉サービスなどが定められた法律で、従来施行されていた「障害者自立支援法」を改正する形で、2013年4月に施行され、下記を基本理念としています。

 

  • 障害の有無にかかわらず、全ての国民が基本的人権を持つ個人として尊厳を尊重され、共に生きる社会を実現すること
  • そのために、障害のある人が地域社会で日常生活や社会生活を営むための支援を受けることができること
  • 妨げとなる物事や制度、観念などあらゆるものの除去に努めること

 

参考:厚生労働省「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」

 

対象者

下記が対象者です。

  • 18歳以上で身体障害者、知的障害者、精神障害者(発達障害者を含む)の方
  • 障害児(満18歳未満で、身体・知的・精神に障害のある児童)
  • 障害者総合支援法で指定されている難病を持つ方

 

上記の中で難病とは、治療方法が確立していない疾患やその他の特殊な疾患を指します。これまで難病のある方は制度の谷間に置かれ、必要な支援を受けることができない状況でした。

しかし、障害者総合支援法が難病のある人も対象に含めたことにより、難病のある人で法律が定める条件を満たす人は身体障害者手帳の有無にかかわらず、必要なサービスを利用できるようになりました。

 

障害者総合支援法が対象とする難病には、2021年11月時点で366疾病が指定されています。

 

参考:厚生労働省「障害者総合支援法の対象疾病(難病等)」

 

福祉サービス

大きく「自立支援給付」と「地域生活支援事業」に分かれます。

 

自立支援給付

障害のある方が自分自身でサービスの実施有無を決めて、契約をする仕組みのことで下記のようなサービスがあります。

  1. 介護給付
  2. 訓練等給付
  3. 自立支援医療
  4. 補装具

 

1.介護給付

在宅で訪問によって受けるサービスや施設への通所や入所を利用するサービスとなっており下記の内容です。

  • 居宅介護
  • 重度訪問介護
  • 同行援護
  • 行動援護
  • 重度障害者等包括支援
  • 短期入所(ショートステイ)
  • 療養介護
  • 生活介護
  • 施設入所支援

 

2.訓練等給付

日常生活や社会生活を営むために必要な訓練を提供するサービスで下記の内容です。

  • 自立訓練
  • 就労移行支援
  • 就労継続支援(A:雇用型 B:非雇用型)
  • 就労定着支援
  • 自立生活援助
  • 共同生活支援(グループホーム)

 

3.自立支援医療

障害の軽減を図り、日常生活や社会生活を自立して営むために必要な下記のような医療が対象です。

  • 更生医療
  • 育成医療
  • 精神通院医療

 

4.補装具

障害の状態によって義肢や車椅子など補装具の購入や修理が必要と認められた時に費用が補装具費として支給されます。

 

地域生活支援事業

障がいのある方が住み慣れた地域で生活できるように、市区町村が中心となって行う支援で下記の種類がありますが、内容の詳細は各市区町村や都道府県に委ねられています。

  • 理解促進研修・啓発事業
  • 自発的活動支援事業
  • 相談支援事業(「住宅入居等支援事業」など)
  • 成年後見制度利用支援事業
  • 成年後見制度法人後見支援事業
  • 意思疎通支援事業
  • 日常生活用具の給付または貸与事業
  • 手話奉仕員養成研修事業
  • 移動支援事業
  • 地域活動支援センター機能強化事業
  • 任意事業(福祉ホームの運営など)

 

自己負担額

利用者負担は、報酬額の1割が基本ですが、1ヵ月ごとの利用者負担額には下記のように上限額が世帯の収入状況等に応じて、4つに区分されています。

 

区分

世帯の収入状況

負担上限月額

生活保護

生活保護受給世帯

0円

低所得

区市町村民税非課税世帯

0円

一般1

区市町村民税課税世帯(合計所得割16万円未満)

※入所施設利用者(20歳以上)、グループホーム利用者を除く

9,300円

一般2

上記以外

37,200円

 

また、所得を判断する際の世帯の範囲は下記です。

 

種別

世帯の範囲

18歳以上の障害者

(施設に入所する18、19歳を除く)

障害のある方とその配偶者

障害児

(施設に入所する18、19歳を含む)

保護者の属する住民基本台帳での世帯

 

参考:厚生労働省「「障害者の利用者負担」

 

自立支援医療の上限負担額

下記の条件に当てはまる方であれば月額負担上限が決まっており、それ以外の場合は原則1割負担です。ただ、入院時の食事療養費または生活療養費については原則自己負担である点は注意が必要です。

 

区分

所得区分

負担額

生活保護

生活保護世帯

0円

低所得1

市町村民税非課税(本人又は障害児の保護者の年収80万円以下)

2,500円

低所得2

市町村民税非課税(低所得1を除く)

5,000円

中間所得1

市町村民税 33,000円未満(年収約290~400万円未満)

5,000円

中間所得2

市町村民税 33,000円以上235,000円未満(年収:約400~833万円未満)

10,000円

一定所得以上

市町村民税 235,000円以上(年収約833万円以上)

20,000円

 

参考:厚生労働省「自立支援医療の患者負担の基本的な枠組み」

 

障害者総合支援法の改定頻度

基本的には、3年ごとに福祉サービスについて見直し改正すると定められていますが、必要に応じて臨時で実施されることもあります。

なお、最初の改正が2018年に行われ、その後2021年にも改正が行われたため、2024年は3年に1回の改定年度となり、下記のようなスケジュールで進められます。

 

時期

内容

2023年5月

報酬改定検討チームから今後の予定や検討の進め方が出される

2023年7~8月

関係団体へのヒアリング(6回程度)

2023年8月

ヒアリングの意見まとめ、論点整理

2023年9~10月

各サービスの報酬などの在り方を検討

2023年11月

サービス横断的な報酬などの在り方を検討

2023年12月

報酬や基準に関する基本的な考え方の整理、取りまとめ

2024年2月

・報酬改定案のとりまとめ

・パブリックコメントでの意見募集

2024年3月上旬

・官報による周知

・厚生労働省から各指定権者(指定の権限を持つ自治体)へ周知

2024年3月中旬

指定権者から事業所へ周知

2024年3月下旬

・厚生労働省から解釈通知が示される

・厚生労働省からQ&Aが示される

 

障害者総合支援法の次回改定ポイント

2023年8月31日に実施された第35回「障害福祉サービス等報酬改定検討チーム」では、次回改定に向けた主な論点として以下の3点をあげています。

  1. 障害者が希望する地域生活を実現する地域づくり
  2. 社会の変化等に伴う障害児・障害者のニーズへのきめ細かな対応
  3. 持続可能で質の高い障害福祉サービス等の実現のための報酬等の見直し

 

参考:厚生労働省「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定 に向けた主な論点(案)」

 

1.障害者が希望する地域生活を実現する地域づくり

特に、「障害者が希望する地域生活を実現する地域づくり」のためには、今まで以上の「支援体制の充実」が重要で、下記の3点の論点をあげています。

 

障害者が希望する地域生活を実現・継続するための支援の充実

障害者の生活を支えて、どの地域社会でも安心して暮らすことができる環境を整備することは非常に重要と考えており、それを実現するには入所施設や病院から地域へのスムーズな移行支援、さまざまなライフスタイルに対応した地域生活の実現、そしてそれを支えるためにサービスの質の向上に注目しています。

その中でも、障害者が自らの意志で生活を選択し、地域社会で活動できるようにするためには、相談支援の質の向上と提供体制の整備が必要です。特に、意思決定支援を提供することで、障がい者の自立と地域社会への参加を促進できます。

また合わせて、障害者自身が他の障害者を支援するピアサポートの取り組みを促進することなどが含まれています。

 

想定されている検討事項

  • 障害の重度化や障害者の高齢化など、地域のニーズに対応するための方策
  • 強度行動障害を有する障害者等への支援体制の充実を図るための方策
  • 地域生活支援拠点等の整備の推進を含めた障害者の地域移行を促進するための方策
  • グループホームにおける一人暮らし等の希望の実現、支援の実態に応じた適切な評価のための方策
  • 地域における自立した生活を送るための機能訓練・生活訓練の充実
  • 相談支援の質の向上や提供体制を整備するための方策
  • 障害者の意思決定支援を推進するための方策
  • 障害者ピアサポートの取組の促進に向けた方策

医療と福祉の連携の推進

令和6年度の改定は障害だけでなく、診療報酬・介護報酬も同時改定となっているため、重度化、高齢化、医療的ケアの必要性、精神障害や難病など多様な障がい特性にも配慮しながら、保健・医療、福祉およびその他の施策の連携を推進するための方策を検討する必要があるとされています、

 

想定されている検討事項

  • 相談支援と医療との連携のさらなる促進策
  • 医療的ケア児の成人期への移行にも対応した医療的ケアの体制の充実を図るための方策
  •  重度障害者が入院した際のコミュニケーション支援の充実
  • 障害者支援施設等における医療機関との連携強化・感染症対応力の向上

 

精神障害者の地域生活の包括的な支援

2022年12月16日に交付された「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律等の一部を改正する法律」が順次施行されています。その中には精神障害者の福祉に関して定めた「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(精神保健福祉法)」も含まれており下記の内容を推進しています。

  • 障害者等の地域生活の支援体制の充実
  • 精神障害者の希望やニーズに応じた支援体制の整備

  

この内容をさらに推進するために、医療、障害福祉・介護、住まい、就労などの社会参加だけでなく、地域の助け合い、障害理解や障害者支援に関する教育・普及啓発も必要だとしました。

 

具体的に検討する内容

  • 精神障害者の医療と相談支援との連携のさらなる促進策
  • 精神障害者の退院支援に資する地域生活支援拠点等の整備を推進するための方策
  • 精神障害者の虐待防止を図るための方策

 

参考:厚生労働省「「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律等の 一部を改正する法律」の公布について(通知)」

 

2.社会の変化等に伴う障害児・障害者のニーズへのきめ細かな対応

さらに細かく、下記2つの論点が示されています。

  • 障害児に対する専門的で質の高い支援体制の構築
  • 障害者の多様なニーズに応じた就労の促進

 

上記の中で今回は、「障害者の多様なニーズに応じた就労の促進」をお伝えします。

 

障害者の多様なニーズに応じた就労の促進

障害者の一般就労移行と就労支援は以前に比べて進展はしているものの、利用者さんの多様化と働き方の変化により、障害者の就労環境も変化しています。そのため、障害や病気があっても能力を発揮し、活躍できる働きやすい社会を実現するためには、雇用施策と福祉施策の連携強化がより重要になります。

特に、障害者の希望や能力に合わせた就労を支援する「就労選択支援」が実施されることで、障害者が社会で活躍できる環境が整うことが期待されています。

 

想定される検討事項

  • 企業等で雇用される障害者の定着支援の充実を図るための方策
  •  就労継続支援A型の生産活動収支の改善を図り、効果的な取組を評価するためのさらなる方策
  • 就労継続支援B型の工賃向上を図り、効果的な取組を評価するためのさらなる方策
  •  就労選択支援の創設

     

    持続可能で質の高い障害福祉サービス等の実現のための報酬等の見直し

    現在は、物価高騰・職員不足の深刻さ、さらには賃金上昇などの理由により人材確保がより難しい状況ですが、質の高い障害福祉サービス等を提供するには、人材を確保し、経営状況などを踏まえた対応が必要です。

    同時に、障害福祉サービスなどの予算額も年々増加しています。実際、厚生労働省の発表では、障害福祉サービス関係予算額は平成19年が5,380億円となっていましたが、令和4年時点で18,478億円と15年間で約3倍に増加しています。

     

    参考:厚生労働省「障害保健福祉に関する令和4年度予算案の概要」

     

    この問題に対して、サービス間・制度間の公平性、透明性を高め、長期化している経過措置への対応も視野に入れ、メリハリのきいた報酬体系を行うとともに、人員不足の中でも効率的な制度運用や効果的なサービス提供を行うためにICTの活用などを含む業務の効率化に注目しています。

     

    想定される検討事項

    • 物価高騰・賃金上昇等を踏まえたサービスの安定的な提供のための人材確保策など
    • 経過措置への対応(食事提供体制加算等)
    •  サービス提供の実態やサービス内容・質に応じた評価
    • 障害者虐待の防止を図るための方策
    • 情報公表制度の在り方を含むサービスの質の確保・透明性向上のための方策
    • サービス提供事業者や自治体の事務・手続き等の標準化、簡素化、ICTなどの効率化等の方策

     

    まとめ

    今回は、令和6年に改定される障害者総合支援法の内容だけでなく、その中でも報酬改定の柱である「支援体制の充実」について紹介しました。

    障害者総合支援法は基本的に3年に1回改定されますが、2024年の改定は医療・介護も同時に改定が実施されるため大きな改定になると予測されています。

    特に、障がい者であったとしても、ご自身が希望する地域で生活するために必要な支援体制の充実が重要です。

    改定情報が確定するのは3月ですが、方向性は12月頃、概ねの内容は2月頃に、厚生労働省の報酬改定検討チームのWebサイトに掲載される資料で把握できるため、早めに情報を収集して準備に備えましょう。

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