介護施設や訪問介護事業所に所属している介護職員の方で、喀痰吸引等研修の受講を検討している方もいるのではないでしょうか。
喀痰吸引等研修を修了することで、今まで実施が認められていなかった医療ケアができるようになり、介護職員としてのスキルアップに繋がります。
今回の記事では、喀痰吸引等研修の概要や受講のメリット、費用相場などについて解説します。
喀痰吸引等研修を修了することで、以下の2つの行為が実施できるようになります。
・痰の吸引(口腔内、鼻腔内、気管カニューレ内部)
・経管栄養(胃ろう、腸ろう、経鼻経管栄養)
痰の吸引や経管栄養は医療行為であるため、介護職員は基本的に実施できません。
しかし、平成24年4月1日に社会福祉士及び介護福祉士法が改正されたことで、喀痰吸引等研修を受けた介護職員は、医師や看護師など医療関係者との連携のもとで実施が可能になりました。
参考:厚生労働省
介護職員が喀痰吸引等研修を受講するメリットは以下の通りです。
・医療ケアが可能になることで仕事の幅が広がる
・現場ですぐに使える実用的な技術が身につく
・資格手当の取得などにより給与アップが期待できる
研修を修了することで、痰の吸引や経管栄養など医療ケアの実施が可能になります。
介護職員として実施できる業務が増えることでより多くの利用者に対応でき、仕事の幅が広がります。
喀痰吸引等研修は講義だけでなく、演習や実地研修への参加が必要です。
シュミレーターや現場で実際に使われている機材を使用して演習を行ったり、施設に足を運んで技術を身につけるための研修を行います。
実地研修はスムーズに効果的なケアを行えるようになるまで繰り返し行われるため、研修修了後に現場ですぐに役立つ実践的な知識と技術の習得が可能です。
また、喀痰吸引等研修を修了することで、資格手当が支給される職場も少なくありません。
さらに、可能な仕事の範囲が増えることで昇進や昇給に繋がる可能性が高くなり、給与アップが期待できることもメリットの1つです。
喀痰吸引等研修のカリキュラムは、対象となる利用者や実施できる行為によって、第1号研修、第2号研修、第3号研修の3種類に分類されています。
それぞれの研修の違いについて、以下にまとめました。
研修の種類 | 講義時間 | 対象者 | 実施できる行為 |
第1号研修 | ・講義50時間 ・演習 ・実地研修 | 不特定多数の利用者 | ・喀痰吸引(口腔内、鼻腔内、気管カニューレ内部) ・経管栄養(胃ろう、腸ろう、経鼻経管栄養) |
第2号研修 | ・講義50時間 ・演習 ・実地研修(気管カニューレ内吸引及び経鼻経管栄養を除く) | ・喀痰吸引(口腔内、鼻腔内) ・経管栄養(胃ろう、腸ろう) | |
第3号研修 | ・講義9時間 ・演習 ・実地研修(特定の利用者に対して必要な行為のみ行う) | 特定の利用者 ・筋萎縮性側索硬化症(ALS)の方や類似する疾患の方 ・高位頚髄損傷、遷延性意識障害、重症心身障がいなどを患っている方 | ・喀痰吸引(口腔内、鼻腔内、気管カニューレ内部) ・経管栄養(胃ろう、腸ろう、経鼻経管栄養) ※実地研修を行った行為のみ実施可能 |
参考:厚生労働省
職場で関わる利用者の状態や必要とされる医療ケアを考慮しながら、受講する研修を選びましょう。
喀痰吸引等研修の受講費用は養成機関によって異なりますが、第1号〜第3号研修それぞれの相場は下記の通りです。
・第1号研修:約3万~23万円
・第2号研修:約2万~20万円
・第3号研修:約2万~6万円
基本研修(講義+演習)と実地研修の両方を行う場合は、費用も10万円以上必要になることが多く、養成機関によっては20万円を超えることもあります。
ただし、介護福祉士実務者研修(医療的ケア)を修了した方や、3年以上の実務経験を経て実務者研修を修了した方は基本研修が免除されるため、そのぶん費用は安いです。
さらに、実地研修を自身の職場である施設で行った場合、養成機関に研修場所の手配を依頼するよりも約2万〜4万円程度安くなることがあります。
国や自治体から助成金や補助金が支給されるケースもあるため、少しでも費用を抑えたい方は、複数の養成機関から情報を集めて検討してみましょう。
喀痰吸引等研修は平成24年4月から始まった比較的新しい資格であるため、修了者はまだ多くないのが現状です。
しかし高齢化に伴い、自力で痰を出せない利用者や食事の経口摂取が難しい利用者など、痰の吸引や経管栄養の医療ケアを必要とする方は今後も増加が見込まれています。
介護職員として仕事の幅や活躍の場を広げたい方は、予算内の費用で受講できる喀痰吸引等研修を見つけてチャレンジしてみましょう。