訪問介護、通所介護などお役立ち情報・書式が満載

  1. HOME
  2. 介護保険法
  3. 介護報酬
  4. 2024年介護報酬改定のチェックポイントと対策を徹底解説

2024年介護報酬改定のチェックポイントと対策を徹底解説

元山 ゆず香

監修者

介護福祉士

元山 ゆず香

大学を卒業後、特別養護老人ホームにて現場業務に従事。その後、福祉系大手企業に入社し、エリアマネージャーとして、施設介護事業・居宅介護事業・障害福祉サービス事業でのエリアマネジメント・行政対応を経験。また、法人本部に異動し教育部門・監査担当部門の部長を歴任。現在は全国の介護・障害福祉事業所の支援やセミナーの開催、DXO株式会社での介護関連事業の支援などを実施。

詳細プロフィール

続きを読む

2024年に介護報酬改定が行われます。次回の介護報酬改定は、医療、介護、障害という3分野の同時改定の年であり、2025年問題直前の改定です。介護保険制度にとって、大きな転換点となる可能性が高いでしょう。

特に介護現場で広がる医療ニーズへの対応や、地域の医療・介護の連携に関する改定が多く行われることが予測されます。また、科学的介護の推進や新サービス設立に関する話題も多く議論されています。

大きな方向転換が起こる可能性が高いからこそ、最新情報を早めにキャッチして、対策を立てておく必要があるでしょう。

今回は、厚労省が出している複数の資料を参考に、2024年の介護報酬改定で注目されているポイントについて解説します。この記事を読むことで、2024年の介護報酬改定にむけて準備すべきことがわかります。ぜひご一読ください。

2024年の介護報酬改定とは

2024年の介護報酬改定が行われる年は、医療保険の診療報酬や障害者総合支援法の報酬も合わせて改定される予定です。複数の報酬改定が行われるため、業界の垣根を超えた大きな変化が起こりやすい年になると考えられます。

また、団塊の世代が一気に65歳以上を迎える2025年問題の直前の年でもあります。介護保険制度の改革が求められる中、2024年の改定は介護サービスを受ける高齢者や家族、介護サービス提供者にとって重要な年となります。

今年の2023年は、2024年の改定に向けた議論が加速する年になるでしょう。介護報酬改定に関する方針や具体的な内容を注視しながら、関係者は改定に対応する準備を進める必要があります。

 

2024年の介護報酬改定の期日とスケジュール

2024年介護報酬改定の期日とスケジュールについて、社会保障審議会で議論が進められています。社会保障審議会では、過去の介護報酬改定による効果検証や調査をもとに、介護保険制度の課題や今後の方向性を検討し、議論が重ねられています。

予定通り進めば、2023年12月ごろに2024年介護報酬改定の骨太の方針が出される予定です。具体的な改定内容については、社会保障審議会の検討を経て決定されることになります。今年は社会保障審議会の動向を注視しながら、介護報酬改定の方針やスケジュールに関する情報を収集し、改定に備えていく年になるでしょう。

2024年の介護報酬改定のポイント

2023年12月20日に開催された社会保障審議会(介護保険部会)では、2024年度の介護保険制度改正に向けた審議の結果を「介護保険制度の見直しに関する意見」にまとめています。社会保障審議会(介護保険部会)の2023年12月20日資料、2023年11月24日資料を参考に、2024年介護報酬改定のポイントをまとめました。数多くのポイントについてふれた資料ですが、特に介護施設経営者層に関係するトピックを取り上げて解説します。

 

看多機の整備

今後、高齢者の増加に伴い介護保険受給者の医療ニーズが高くなります。過去のデータを見比べても、医療的ケアのニーズが高くなっていることがわかります。特に看多機(看護小規模多機能型居宅介護)の登録待機者が増加し、需要が間に合っていない現状があります。

事業所数も増えていますが、地域差もあり参入障壁も大きいため、需要に対して施設数が足りていません。今後、看多機の施設数を増やすために条件の見直しを行う可能性もあるでしょう。

ケアマネのカリキュラム見直し

介護保険制度の改正に伴い、ケアマネジャー養成カリキュラムの見直しが進んでいます。具体的には、カリキュラム全体の時間数は増やさず、幅広い知識の獲得に重きをおいた講義中心の時間配分に見直すことが検討されています。また、介護支援専門員養成課程や人材育成研修のオンライン化も検討されています。

さらに、マイナンバー制度を活用して国家資格等のデジタル化も進められる予定です。これにより、取得資格のデータベース化や、職員のスキルアップのための情報提供がスムーズに行われることが期待されています。

4つの場面を想定した在宅医療・介護連携

在宅医療・介護連携の推進において、日常の療養支援、看取り、急変時の対応、入退院支援といった4つの場面を想定して連携を強化する取り組みが求められています。現在、めざすべき姿を設定している自治体は約8割ありますが、そのうち、4つの場面で設定している自治体は約3割という状況があります。

今後は4つの場面を想定した連携方法を設定し、好事例を他機関で共有し横展開するなどのPDCAサイクルを実践する仕組み作りが求められています。例えば、日常の療養支援においては、在宅医療と介護が密接に連携し、家族や地域のネットワークとも連携して、病状や生活環境に合わせた支援を提供することが必要です。

4つの場面ごとに医療機関と介護施設がどのように連携していくのか、具体的な指針が示される可能性があります。

施設入所者へのサービス見直し

特別養護老人ホームにおける医療ニーズへの適切な対応の在り方について議論が行われています。配置医師の実態等も踏まえつつ、診療報酬や介護報酬上の取扱いも含めて、検討を進められるため、医師の配置基準等に何らかの変化があるかもしれません。

特養の特例入所についての規定や、既存施設の活用など利用者層の減少を見据えた議論も目立っていました。自立・要支援者・要介護者が入居可能な混合型特定施設について、総量規制の柔軟な運用等も言及されているため、施設入所者へのサービス提供のあり方が今後変化することも予測されます。

化学的介護の推進と介護情報の利活用

介護レセプト、要介護認定情報、LIFE情報、ケアプラン情報などを電子的に管理し、全国どこからでも閲覧、共有が可能になるプラットフォームを構築する方針が出されています。まずは情報収集や情報の提供を市区町村の事業として行われるようです。

LIFEに関しては、フィードバックの改善と収集項目の精査について指摘されています。事業所・施設側の入力負担軽減のため、入力内容を加算算定項目に絞るなどの対策が議論されていました。

今後も医療・介護での情報共有をより強く推進していくことが予測されます。特に介護分野において、LIFE導入による負担軽減に向けた取り組みも検討されています。

在宅に新サービス創設

都市部における要介護者の様々な介護ニーズに対して、柔軟に対応できるサービスの必要性が高まっています。 その実態を受けて、複数の在宅サービスを組み合わせて提供する複合型サービスの類型を設けることも検討されています。どういった形で複合型サービスを提供するか明確になっていませんが、訪問介護サービスと通所介護サービスを複合的に提供する施設を検討しているようです。

介護事業所の経営状況公表

2024年度から、介護事業においても財務諸表の公表が義務化されます。介護サービス事業者にも財務状況を公表させる方向は、すでに骨太の方針2022や財務省の財制度分科会においても示されていました。

これまで厚生労働省は、3年毎に実施される経営実態調査の中で介護事業所の決算データ収集を行ってきました。しかし、一部の事業所へのサンプル調査だったため、介護業界全体の財務状況を的確に示しているとはいえないでしょう。

想定されている流れとして、決算が終了した介護事業者が財務諸表等の経営に係る情報を都道府県知事に届け出る形式になる予定です。自事業所の経営状態や役員報酬の金額などが利用者・家族に把握されてしまうという懸念がありますが、都道府県に報告後に公の場に公開されることはないため心配する必要はないでしょう。

高齢者虐待防止の推進

近年、高齢者虐待に関する規制が進められています。介護業界の中でも、サービス付き高齢者向け住宅や有料老人ホームなど、介護保険法の影響を受けにくい施設での虐待対策が問題視されています。

介護保険法の影響を受けにくい施設でも虐待防止措置を講じるための指針の整備が検討されています。一方、介護保険上の在宅サービスにおける虐待防止対策に関しても、報酬に影響させることも検討されています。

住まいと生活の一体的支援

高齢者の住まいに関する問題が深刻化しています。住まいの課題解決に向けたサポート体制の構築のため、複数の自治体において住まいに課題を抱える者に対する住まい支援を強化していく方針です。

総合的な相談対応や一貫した支援を行える実施体制を整備するとともに、見守り支援や地域とのつながり促進支援など、地域共生の観点を取り入れたマネジメントを行います。介護保険部局や住宅部局等が連携する「住まい支援センター」を設置し、一部の自治体でモデル的な事業を実施していく予定です。

その他

その他のトピックに関しては以下の通りです。

  • 各自治体の介護保険事業計画作成に関するストラクチャー指標とプロセス指標を設定する
  • 独居の困窮者・高齢者等の住まいの確保を社会保障の重要な課題として位置づけ、対策を検討する

 

以上の内容に関して議論されています。まだ大まかな方針だけが確定しているものも多く、今後詳細な内容が決定する可能性もあるでしょう。

 

2024年の介護報酬改定による介護職員の待遇について

介護報酬が増加すれば、相対的に介護職員の給与も上昇する可能性があります。しかし、2024年の介護報酬改定で報酬額が増加する可能性は低いでしょう。一方で、介護職員の処遇改善加算に関しては拡充が進んでいく可能性があります。

介護現場で広がる医療ニーズに対して、介護職員のスキルに応じた加算も検討されています。その中でも特に問題視されているのが、喀痰吸引の必要性です。現場レベルでは、喀痰吸引のニーズが高まっています。喀痰吸引は医療行為にあたるため、専門的な研修を受けた職員か、看護師・准看護師しか実施できません。

介護報酬改訂で重要性を増す特定事業所加算の要件にも、喀痰吸引が必要な利用者へのサービス提供、という条件が入っています。介護職員が喀痰吸引研修を受けることは、介護職員の処遇改善にプラスに働くだけでなく施設経営者にとっても大きなメリットがあります。

2024年介護報酬改定に向けて、必要な準備とは?

2024年の介護報酬改定では、高まる医療ニーズへの対応、医療機関や介護施設等との情報共有がキーワードになっています。高まる医療ニーズに対応できるように、医療機関との連携を取れる準備をする、介護職員に喀痰吸引研修を受けてもらう、といった準備をしておくとよいでしょう。

医療機関や他施設と情報共有しやすいように、ICTを導入するなどの環境整備をしておくことも重要です。新しい複合型サービスができる可能性もあるので、新サービスに関する最新情報も収集しておきましょう。

まとめ

2024年は医療報酬、介護報酬、障害福祉サービスのトリプル改定が行われる年です。そのため、地域共生社会に向けた抜本的な改定が行われる可能性があるでしょう。

介護保険分野で多く議論されている内容は、介護領域での医療的ケアのニーズ拡大、4つの場面を意識した医療・介護連携、といった議題です。

改定翌年の2025年は高齢者が急増する年になることが予測されています。2025年問題へ向けた最後の改定となるので、介護報酬の大きな変化が起こる可能性もあります。最新情報を入手しつつ、今後の経営方針を考え、早めに対策していきましょう。

 

出典:

https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001015834.pdf

https://kaigokeiei.com/news/ptbff7ogo

https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001027165.pdf

 

介護事業所向けお役立ち情報
2024年介護報酬改定完全理解マニュアル
紹介画像


介護事業所向けに2024年の介護報酬改定に関する情報をまとめました!
<目次>
1)2024年介護報酬改定のについて
2)2024年介護報酬改定の改定内容
3)2024年介護報酬改定のスケジュール
4)2024年介護報酬改定に備えて事業所がすべきこと

 

お役立ち資料:介護報酬改定に備えたい方に

介護事業所向けに2024年の介護報酬改定に関する情報をまとめました。
2024年の介護報酬改定に向けて、事前に準備をしておきたいという方は、ぜひご一読ください。
詳しく見る