本記事では、介護事業所におけるICT化の課題と、その解決方法についてご紹介していきます。
目次
介護サービス事業所では、事業所の開設~サービスの提供時~事業所の閉鎖時の一連の業務プロセスの中で作成する書類・記録の電子化が進んでいません。
介護サービス事業所にとって負担の大きい書類としては、「個別援助計画」や日々作成・蓄積す
る「サービス提供時の記録(介護記録等)」などがあげられます。
また、負担を感じさせる要因として「記録の保存期間」が指摘されています。記録の保存期間は、
各サービスの指定基準内で規定のある「完結の日から 2 年間」の「完結」の取り扱いが自治体
によって異なり、保存期間を 5 年としている自治体もあります。
介護業界では平成30年頃より『生産性の向上』がうたわれるようになり、厚生労働省内でも老健局認知症施策・地域介護推進課の中に生産性向上担当という部署も存在するようになりました。
ICTの活用については、従来の紙媒体での情報のやり取りを抜本的に見直し、ICTを介護現場のインフラとして導入していく動きが求められています。
介護分野のICT化は、介護職員が行政に提出する文書等の作成に要する時間を効率化し、介護サービスの提供に集中する上でも重要であると言われており、介護現場の情報をICT化することにより、ビッグデータの蓄積が可能となり、エビデンスに基づく介護サービスの提供を促進することにも繋がります。
また、間接的業務について、ICTを活用することにより、働きやすい環境作りに繋がり、介護業界のイメージを刷新しつつ、活躍の場を創出し、介護分野への多用な人材の参入促進につなげていくことが期待されています。
介護分野におけるICT化の促進のため、導入に際しての支援事業も存在します。
介護保険法に基づくすべての事業を対象に、以下の条件のもと支援を受ける事が可能で、令和2年には予算が拡充され、補助の対象も拡大しています。
[要件]
■記録、情報共有、請求の各業務が一気通貫になる
■ケアマネ事業所とのデータ連携に標準仕様の活用
■CHASEによる情報収集に対応
■導入事業所による他事業者からの照会対応
■事業所による導入効果報告 等
[補助金額]
事業所規模(職員数)に応じて以下の設定
■1~10人 100万円
■11~20人 160万円
■21~30人 200万円
■31人~ 260万円
[補助対象]
■介護ソフト
■タブレット端末
■スマートフォン
■インカム
■クラウドサービス
■他事業者からの照会経費 等
■Wi-Fi機器の購入設置
■業務効率化に資するバックオフィスソフト(勤怠管理、シフト管理等)
厚生労働省の専門部署や支援事業までも存在しているのにも関わらず、令和3年現在、介護現場では未だICT化が進んでいません。
介護現場では紙の書類が山の様に存在し、それらが日々蓄積され、これをもとに介護報酬の請求をあげたり、ご利用者の情報の共有がされているのが現状です。
事業所間の情報共有には未だFAXが主な通信手段であり、若い層を中心に進むLINE等で情報共有がなされている場合は個人情報保護が完璧に出来ているとは言えません。
介護現場においてICT化が進まない主な理由は以下です
①従業員の退職リスク
訪問介護事業では特に、ベテラン層が多く在籍しています。
スマートフォンを使いこなせる職員は稀で、文字の変換や句読点、改行等の操作が困難な場合が殆どです。どの事業所もマニュアルを作成したり、何度も研修を重ねたり、動画を撮影したりと工夫をしていますが、これらについていけない従業員は次第に退職を考えていきます。
管理者やサービス提供責任者の業務効率化と、ベテラン従業員の退職リスクを天秤に図りながら慎重になっているのが現状です。
②ICT導入後の業務フローが組めない
紙媒体が当たり前であった現場の業務フローを、ICT導入によって組み替える場合に発生するのが、『ICT導入後のフローが組めない』という課題です。
個別支援計画の作成から介護報酬請求までの業務プロセスを経て得られる成果物は、従業員の給与、介護報酬、運営基準上必要である書類等、1つではありません。
業務プロセス1つの内、1部にICTを導入すれば、成果物に繋がる全ての業務プロセスを組み直す必要があります。これらの手間がICT化の妨げになっています。
③成果物すべてを出せるICTがない
介護請求ソフト1つとっても、この業務プロセスの中で効率化される部分、出せる成果物が異なり、『何を買ったら業務の効率化につながるのか分からない』と悩まれている経営者の方も少なくありません。
また、ほとんどの介護ソフトは業務プロセスの1部しか効率化できず、成果物も限られ、現場で行われているすべてを網羅するものは存在しません。
1部の成果物を出すためのプロセスが効率化されたとしても、導入した結果、他の成果物を出すためのプロセスが複雑になり、全体としては業務効率化につながらないといった事象が多く存在します。
①業務プロセスと成果物を可視化する
前項で説明した通り、介護現場で出さなければいけない成果物をすべて出せるソフトはこの世に存在しません。また、成果物は同じ名称や根拠資料の書類で有っても、自治体や介護事業所により多種多様に存在しています。
介護現場における業務効率化全てを1つのソフトで解消することは困難です。
『成果物の内、どれに1番時間を要しているのかを明確にし、他の業務プロセスに大きな影響を及ぼさないソフトはどれか。』『業務効率化を図らねばならぬほど残業しているのはどの職種か』を事前に検討し、ICTを導入する必要があります。
②ヒトが行う部分と、機械が行う部分を分ける
魔法の様なソフトが無い以上、ヒトの力は必要になります。
ICT導入を行うと言うと、現在の膨大な業務から解放されると言う期待をしてしまいがちですが、それでは介護の専門職が存在する意味も無くなってしまいます。
ヒトが行うべき部分と、機械が行うべき部分を明確にしなければ、業務の効率化は図れません。
現在存在する介護業界向けのソフトや機器は、そのほとんどが販売に限られており受ける事の出来るサービスは『保守』と機器の『質問受付』のみです。
例えば特定事業所加算の運用をサポートする介護ソフトは複数存在しますが、要件の1部のみサポートするソフトです。
特定事業所加算運用には複数の要件を毎月確実にこなしていく必要があり、これらが出来ているかは『ヒト』の目で確認せざる得ません。
こなすことにソフトを用い、ヒトの目で出来ているかを確認する業務プロセスが必要です。