介護業界においては人で不足が大きな課題とされています。処遇改善加算とは、これまで他の職種に比べ重い労働で有りながらも低賃金であるという業界の課題を改善すべく創設された加算です。
この加算は、時代と物価の流れに沿ってみなおされる介護報酬改定でも見直されてきており、算定することで業界平均の賃金に近づくことができるようになっている加算でもあります。
目次
加算率は次の表のとおりです。▼別紙1表1 加算算定対象サービス
平成24年から始まったこの加算は、平成27年度介護報酬改定により、法人が介護職員の資質向上や雇用管理の改善を推進し、介護職員が積極的に資質向上やキャリア形成を行うことができる労働環境を整備すること、介護職員自身が研修等を積極的に活用すること等の事業主の取り組みが促進されるよう加算が拡充されました。
また、平成29年度介護報酬改定においては、介護人材の職場定着の必要性、介護福祉士に期待される役割の増大、介護サービス事業者等による昇給や評価を含む賃金改善制度の整備・運用状況などを踏まえ、法人による、昇給と結びついた形でのキャリアアップの仕組みの構築を促すため、加算が拡充されました。
※令和3年度介護報酬改定において、介護職員処遇改善加算4及び5は廃止されることとなりました。(令和4年度以降算定できません。)
介護職員の処遇改善については、平成29年度の臨時改定における処遇改善加算の拡充も含め、これまで数回にわたり取組が行われてきましたが、「新しい経済政策パッケージ」(平成29年12月8日閣議決定)において、「介護人材確保のための取組をより一層進めるため、経験・技能のある職員に重点化を図りながら、介護職員の更なる処遇改善を進める。」とされ、2019年10月の消費税率引上げに伴う介護報酬改定において対応することとされました。これを受け2019年度の介護報酬改定において、特定加算が創設されることとなりました。
また、令和3年度の介護報酬改定において、特定処遇改善加算の介護職員間の配分ルールの柔軟化、職場環境要件の見直しがありました。
特定処遇改善加算とは?配分ルール・2021年介護報酬改定内容について徹底解説!
令和4年2月から9月までの介護職員処遇改善支援補助金による賃上げ効果を継続する観点から、現行の「処遇改善加算」及び「特定加算」に加え、介護職員の収入を3%程度(月額9,000円相当)引き上げるための措置を講じるため、令和4年度介護報酬臨時改定において創設されました。
基本給等の引上げによる賃金改善が一定程度求めつつ、介護職員だけでなく他の職種の処遇改善も行うことができるものとなっています。
【2022年介護報酬改定】新設された介護職員等ベースアップ等支援加算とは?
①賃金改善とみなすことができる記載
基本給のベースアップ、定期昇給、処遇改善手当、賞与、一時金、賃金改善に伴う法定福利費等の事業主負担の増加分 等なお、基本給による賃金改善が望ましいとされています。
【介護職員処遇改善交付金に関するQ&A ○賃金改善の方法等について 問6】
【平成24年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1) 問245】
②賃金改善とみなすことができない記載
福利厚生費、退職手当、職員の増員、交通費、通信費、研修費、資格取得費用(テキスト購入等)、健康診断費、予防接種費用、慰安旅行の費用負担、図書カード・商品券・ポイントカード等の支給、物品購入費用、講習会受講料、住居手当等
毎月支払われる『手当』でも、福利厚生費の意味合いが強ければ賃金改善とみなされない可能性が有りますので、賃金改善とみなすことが出来る記載以外で支払いを考えている場合は、事前に自治体へ確認が必要です。
【対象者】指定基準上の訪問介護員、サービス提供責任者、介護職員、指定(介護予防)小規模多機能型居宅介護従業者(看護師、准看護師として配置されている者を除く。)、(介護予防)指定認知症対応型共同生活介護の介護従業者並びに看護小規模機能型居宅介護従業者(保健師、看護師、准看護師として配置されている者を除く。)として従事している者
【対象外】
他職種のみに従事している者は対象となりませんが、事業所(施設)において当該他職種を人員基準に定められた必要数以上に配置しており、業務の支障がない範囲で介護職員と兼務している場合、実際に介護職員として従事している者は加算対象。
(雇用契約書等における職務内容に介護職員としての業務が明記されている等、直接介護職員であるという根拠が必要です)
【介護職員処遇改善交付金に関するQ&A ○賃金改善の方法等について 問12】
給与ではなく役員報酬のみを支給されている場合は加算対象となりませんが、当該役員が介護職員としての勤務実態があり、その労働の対価として支給されている金銭が給与の性質を有している場合は、加算対象となります。
ただし、勤務表、雇用契約書等において上記要件を満たしている(労働者性を有している)ことが客観的に判断できるよう関係書類を整備することが大切です。
加算対象とすることは可能です。賃金改善を行う方法等について派遣元と相談した上で、介護職員処遇改善計画書や介護職員処遇改善実績報告書について、自社職員と対象とする派遣労働者を含めて作成します。【平成27年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.2) 問49】
ポストの設定と実際の職員配置が完全に一致する必要はなく、無理な昇進等はかえって組織の停滞を招く等、キャリアパスの本来の趣旨を逸脱することも考えられることを踏まえ、適切な人事労務管理を実施することとなっています。
個別面談や、自己評価に対し先輩職員・サービス担当責任者・ユニットリーダー・管理者等が評価を行う手法が考えられるとされています。
法人全体の取扱要領や労働基準法上の就業規則作成義務のない事業場(常時雇用する者が10人未満)における内規等が想定されており、当該書面のような就業規則と異なる労働基準法上の作成義務のな
い書類については、キャリアパス要件等届出書に添付する必要があるとされています。
賃金改善期間とは、加算における賃金改善を実施する期間であり、原則4月(年度の途中で加算の算定を受ける場合、当該加算を受けた月)から翌年の3月までとなる。
また賃金改善期間の重複が発生する等の理由がある場合は、賃金改善実施期間を6月から翌年5月までとするなど柔軟な対応が可能とされています。
事業所の指定を行う際と同様に、届出を行う事業所に誓約書等の提出が求めれられ、誓約書をもって確認されます。
サービス利用者数の大幅な減少などによる経営の悪化等により、事業の継続が著しく困難であると認められるなどの理由がある場合には、適切に労使の合意を得た上で、賃金水準を見直すこともやむを
得ないとされ認められています。
加算の算定要件は、賃金改善額が加算による収入額を上回ることであり、加算による収入額を下回ることは想定されないが、仮に加算による収入額を下回っている場合は、一時金や賞与として支給されるこ
とが望ましいとされています。
また、指定権者が実績報告の提出を求める等の指導を行っているにも関わらず、実績報告の提出を行わない場合は、加算の算定要件を満たしていない不正請求として全額返還となるなど、 悪質な事例については、加算の算定要件を満たしていない不正請求として全額返還となることに注意が必要です。
介護職員処遇改善加算の算定要件は、賃金改善に要する額が加算による収入を上回ることであり、事業所(法人)全体での賃金改善が要件を満たしていれば、一部の介護職員を対象としないことは可能で
す。
加算の算定月数と同じ月数とすることとされています。
処遇改善加算を用いて賃金改善を行うために一部の賃金項目を引き上げた場合であっても、事業の継続を図るために、賃金改善実施期間の賃金が引き下げられた場合については、特別事情届出書を届け
出る必要があります。
また、介護職員の賃金水準を引き下げた後、その要因である特別な状況が改善した場合には、可能な限り速やかに介護職員の賃金水準を引下げ前の水準に戻す必要があることに注意しましょう。
一部の職員の賃金水準を引き下げた場合であっても、事業所・施設の介護職員全体の賃金水準が低下していない場合は、特別事情届出書を提出する必要はありません。
参考:24.3.16事務連絡介護保険最新情報vol.267「平成24年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1)(平成24 年3 月)」の送付について
27.4.30事務連絡「平成27年度介護報酬改定に関するQ&A(vol.2)(平成27年4月30日)」の送付について
処遇系の加算は、取得することで平均賃金に至ることができるという加算です。積極的に上位の加算を算定していきましょう。
介護事業者向けに、ベースアップ等支援加算の取得から運用までをまとめました。
<目次>
1)介護職員等ベースアップ等支援加算とは
2)いくら上がるのか
3)仕組みづくりの前に
4)介護職員処遇改善補助金との違い
5)計画の申請から実績の報告まで
6)Q&A
7)まとめ