「介護事業所に勤めているが、処遇改善加算が給料に入っていない」「パート職員は処遇改善加算をもらうことはできない?」「処遇改善手当は、どのような仕組みなのか?」このような疑問を持っている方は多いのではないでしょうか。
本記事では、処遇改善加算が未払いになっている時の対処法について、ご説明します。
目次
「処遇改善加算が支払われていないのではないか?」疑問に思ったことのある方は多いと思います。いわゆる「未払い」と呼ばれる状況です。実際に処遇改善加算の未払いが問題になった例もありますし、正当に加算が反映されているのか、疑問を持つ方もいらっしゃると思います。
大変な業務をこなしているのに、「正当な報酬を得られていないかもしれない」と考えると、不安になりますよね。しかし「未払い」なのかどうかは、様々な視点から確認する必要があります。
処遇改善加算は全ての事業者に支給されている訳ではありません。指定された条件を満たすことで、加算を受けることができます。一体どの程度の事業者が、処遇改善加算を受け取っているのでしょうか。2022年の厚生労働省の発表によると、処遇改善加算を受給している事業者は90%を超えています。あなたの勤務している会社も処遇改善加算を受給している可能性は高いと言えますが、まずは、処遇改善加算を受けているのかどうかの確認をしましょう。
先程「全ての事業者に処遇改善加算が支給されている訳ではない」とご説明しましたが、なぜ処遇改善加算を受給していない事業者がいるのでしょう?処遇改善加算の取得には、一定の算定要件を満たす必要があります。
処遇改善加算は「Ⅰ」「Ⅱ」「Ⅲ」と3段階用意されています。「Ⅰ」に近づくほど受給金額は多くなっていきますが、受給のための条件も厳しくなっていきます。
受給条件 | 受給額 | |
処遇改善加算Ⅰ | キャリアパス要件①②③を全て満たす+職場環境等要件を満たす | 1人あたり37,000円相当 |
処遇改善加算Ⅱ | キャリアパス要件①②を満たす+職場環境等要件を満たす | 1人あたり27,000円相当 |
処遇改善加算Ⅲ | キャリアパス要件①or②を満たす+職場環境等要件を満たす | 1人あたり15,000円相当 |
<キャリアパス要件>
①職位・職責・職務内容等に応じた任用要件と賃金体系を整備すること
②資質向上のための計画を策定して研修の実施又は研修の機会を確保すること
③経験若しくは資格等に応じて昇給する仕組み又は一定の基準に基づき定期に昇給を判定する仕組みを設けること
上記の3つがキャリアパス要件として定められています。どの要件も従業員の給与改善や働きやすさなどに直結する要件になっています。
<職場環境等要件>
職場環境等要件は、Ⅰ〜Ⅲのどの加算においても必要になる条件です。下記の条件区分の中から1つを満たすことが必要ですが、内容はかなりシンプルで、条件を満たすことはそれほど難しくありません。
条件区分 | 内容例 |
入職促進に向けた取組 | 法人や事業所の経営理念やケア方針・人材育成方針、その実現のための施策・仕組みなどの明確化など |
資質の向上やキャリアアップに向けた支援 | 研修の受講やキャリア段位制度と人事考課との連動など |
両立支援・多様な働き方の推進 | 子育てや家族等の介護等と仕事の両立を目指す者のための休業制度等の充実、事業所内託児施設の整備など |
腰痛を含む心身の健康管理 | 短時間勤務労働者等も受診可能な健康診断・ストレスチェックや、従業員のための休憩室の設置等健康管理対策の実施など |
生産性向上のための業務改善の取組 | タブレット端末やインカム等のICT活用や見守り機器等の介護ロボットやセンサー等の導入による業務量の縮減など |
やりがい・働きがいの醸成 | ケアの好事例や、利用者やその家族からの謝意等の情報を共有する機会の提供など |
このように、キャリアパス要件や職場環境等要件を満たすことによって、処遇改善加算を受給することができます。
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処遇改善加算が、正しく給与に反映されているか確認するためには、事業者ごとの配分ルールを知る必要があります。
「給与に入っていない=未払い」という訳ではありません。処遇改善加算の運用は事業者ごとに決めているので、どのように運用されているか疑問のある方は、施設のリーダーや所長などに問い合わせてみる事をおすすめします。
処遇改善加算は、原則として「介護職員の処遇改善」を目的に運用します。しかし、介護職員に対してどのように還元するかは、それぞれの事業者に委ねられています。
例えば、
上記のような決まりはありません。支給額はそれぞれ違う場合もありますし、支給方法も、給与・ボーナス・昇給など、様々な方法での支給が認められています。
処遇改善加算はⅠ〜Ⅲの3段階があります。処遇改善加算を取得している事業者は全体の94%です。その中で、最も多くの支給額となる処遇改善加算Ⅰを取得しているのは、79%。つまり、全体の事業所の74%以上は、処遇改善加算Ⅰを取得しているということになります。
もし、あなたの職場が加算Ⅰを取得していなければ、より補助金額の大きい加算Ⅰを取得している事業者に転職することで、現在の給与以上をもらえる可能性があります。加算について、ホームページなどに載せている事業者も多くありますので、加算がどの程度給与に反映されているのか、まずは確認してみることをおすすめします。
ここからは、多くの方が抱える、処遇改善加算の疑問に答えていきます。処遇改善加算の未払いなどについて不明点のある方は、是非参考にしてください。
処遇改善加算を「全員に分配する」という決まりはありません。事業者は市町村から支給された処遇改善加算を、全て介護職員に分配する義務があります。そのため、多くの職員に事業者が決めた形で手当が分配されますが「全員に支給しなければならない」という明確なルールはありません。
極端な話、1人に全ての加算を分配しても、ルール上は問題ありません。
残念ながら、専用の窓口などはありません。では、自分が所属している事業者での未払いや、その疑いがある場合には、どのような対応をしたら良いのでしょうか。必ずしも解決するとは限りませんが、労働基準監督署や弁護士に相談などを行うことは可能です。
労働や法律の専門家に相談することによって、解決する事例もあります。弁護士には、インターネット上で相談できるサービスなどもあります。まずは、話を聞いてもらうことから初めてみるのも良いかもしれません。
特定処遇改善加算は、技能・経験がある介護職員に対して給与として、多くの加算が反映されるよう定められたものです。また、介護現場で働く他職種の職員との、賃金の差を埋める目的もあります。特定処遇改善加算は、通常の処遇改善加算に比べて「どのような職員にどの程度手当を分配するか」が明確になっています。
- 経験・技能のある介護職員
- 他の介護職員
- その他の職種
職員の区分が上記の3つに分けられた上で、加算の配分には次のようなルールが定められています。
処遇改善加算がピンハネされることはありません。詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。
本記事では、処遇改善加算の未払いや、細かいルールなどについてまとめました。介護業界の人手不足解消のために、導入された処遇改善加算制度。
介護職員の給与改善のために運用されることが望ましいですが、実際に、未払いなどの問題が発生した事業者もあります。自身の働いている施設の処遇改善加算が、正しく運用されているのか、確認してみることも大切かもしれません。その際には、改めて本記事を参考にしてみてください。