居宅介護支援における退院退所加算は、医療機関・介護施設などを退院・退所することで在宅での生活を行う利用者に対して行われる加算です。情報の提供を受け介護サービスなどの調整を行うことを評価するために設けられています。
本記事では退院退所加算について詳しく解説しています。本記事を参考に退院退所加算の算定を検討しましょう。
目次
退院退所加算とは医療機関もしくは介護施設を退院・退所し、自宅等に戻って在宅生活に移行する利用者についての加算です。加算方法は入院入所中の情報を元に介護サービスの調整などを行うことで加算がされます。ここでは退院退所加算の概要から、加算対象外になる場合などについて詳しく見ていきましょう。
退院退所加算は医療機関を退院、もしくは介護施設等を退所するなどにて自宅に戻り在宅生活を送る利用者について、入院中や入所中の情報提供を受け、介護サービスの調整等を評価する加算として設けられています。
令和3年度の介護報酬改定では退院退所加算の面談方法の一つとして、テレビ電話などを活用することが認められました。また、算定要件の一つであるカンファレンスにおいて、福祉用具貸与が見込まれる場合に必要に応じて福祉用具専門相談員などが参加することが明確化されました。
居宅介護支援における退院退所加算には5つの種類があります。5つの種類とともにその単位数を見ていきましょう。
退院退所加算は入院もしくは入所期間中に1回を限度とし、算定できます。それぞれの退院退所加算は併算定することができないため、注意が必要です。
退院退所加算の算定対象施設は、次に挙げる医療機関や介護施設です。
ここで挙げた医療機関や介護施設が算定対象となります。
退院退所加算は医療機関等だからといって全て対象となるわけではありません。中には対象外となるケースもあります。ここでは対象外となる場合を見ていきます。
上記のケースに該当すると退院退所加算の算定対象外となるため、算定できるかしっかり確認しましょう。
ここでは退院退所加算のそれぞれの算定要件を見ていきます。それぞれの要件は表に簡単にまとめますので、表とともに算定要件を見てください。
算定要件は以下の通りです。
この3つの要件を満たすことで算定されます。
こちらの算定要件は以下の通りです。
情報提供をカンファレンスかカンファレンス以外によっておこなうかにより、加算(Ⅰ)のイとロは異なっています。
算定要件は以下の3つです。
この条件を満たすことで算定を受けられます。
算定要件は以下の通りです。
加算(Ⅱ)のイとロの違いは、カンファレンス以外2回以上か、そのうちカンファレンスを1回以上受けているかにあります。
算定要件は次の通りです。
このようにそれぞれの算定方法には違いがみられます。その違いを簡潔にするために下記の表を作成しましたので、参考にしてみてください。
算定要件 | (Ⅰ)イ | (Ⅰ)ロ | (Ⅱ)イ | (Ⅱ)ロ | (Ⅲ) |
医療機関等の職員との面談 | 有 | 有 | 有 | 有 | 有 |
情報提供の回数 | 1回 | 1回 | 2回 | 2回 | 3回 |
うち、カンファレンスによる回数 | 不要 | 1回 | 不要 | 1回 | 1回 |
居宅サービス等の調整 | 有 | 有 | 有 | 有 | 有 |
退院退所加算の算定要件におけるカンファレンスとは、入院もしくは入所者等への援助および居宅介護支援事業者に対する情報提供を行うために実施される会議のことをいいます。ただしその会議は従業者及び入所者又はその家族が参加するものに限るとされています。ここでは病院などの場合6つの施設とカンファレンスの注意点についてみていきましょう。
診療報酬の算定方法別表第一医科診療報酬点数表の退院時共同指導料2の注3の要件を満たすものとされています。また退院後に福祉用具の貸与が見込まれる場合は、必要に応じて福祉用具専門相談員や居宅サービスを提供する作業療法士などが参加するものと定められています。
指定介護老人福祉施設の人員や設備及び運営に関する基準第7条第6項及び第7項に基づいて、入所者への援助及び居宅介護支援事業者に対する情報提供等を行うにあたって実施された場合の会議のことを指します。ただし基準第2条に掲げる介護老人福祉施設に置くべき事業者及び入所者又はその家族が参加するものに限るとされています。その他に退所後に福祉用具の貸与が見込まれる場合は、必要に応じて福祉用具専門相談員や居宅サービスを提供する作業療法士なども参加することと決められています。
介護老人保健施設の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準第8条第6項に基づき、入所者への指導及び居宅介護支援事業者に対する情報提供等を行うにあたって実施される場合の会議のことを指します。ただし基準第2項に掲げる介護老人保健施設に置くべき従業員及び入所者又はその家族が参加するものに限ります。
また退所後福祉用具の貸与が見込まれる場合は、必要に応じて福祉用具専門相談員や居宅サービスを提供する作業療法士などが参加するものともされています。
健康保険等の一部を改正する法律附則第130条の2第1項規定によりなおその効力を有するとされた指定介護療養型医療施設の人員、設備及び運営に関する基準第9条第5項に基づき、患者に対する指導及び居宅介護支援事業者に対する情報提供を行うにあたり実施される会議のことを指します。ただし基準第2項に掲げる介護療養型医療施設に置くべき従業員及び患者又はその家族が参加するものに限ります。また退院後に福祉用具の貸与が見込まれる場合は、必要に応じて福祉用具専門相談員や居宅サービスを提供する作業療法士などが参加することとも定められています。
介護医療院の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準第12条第6項に基づき、入所者への指導及び居宅介護支援事業所に対する情報提供を行うにあたって実施された場合の会議のことを指します。また退所後に福祉用具の貸与が見込まれる場合は必要に応じ、福祉用具専門相談員や居宅サービスを提供する作業療法士などが参加することも決められています。
指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準第134条第6項及び第7項に基づき、入所者への援助及び居宅介護支援事業者への情報提供を行うにあたって実施された会議のことを指します。ただし基準第131条第1項に掲げる地域密着型介護老人福祉施設に置くべき従業員及び入所者又はその家族が参加するものに限ります。また退所後に福祉用具の貸与が見込まれる場合は、必要に応じて福祉用具専門相談員や居宅サービスを提供する作業療法士などの参加も規定されています。
注意点として次のものがあげられます。
以上4点が注意点ですので、しっかりと把握しておきましょう。
退院退所加算の算定における注意点は5つあります。
ここにあげた注意点を元に退院退所加算の算定を受けるようにしていきましょう。
退院退所加算を算定するまでには次の流れがあります。
退院退所加算はこのような流れのもと、加算を行っていきます。
ここでは退院退所加算に関する主なQ&Aを紹介します。ここの項目を参考にし、疑問点を解消していきましょう。
結論から言うと、両方同時に算定はできません。
しかし初回加算と退院退所加算のどちらを優先するべきかという規定もありません。そのためそれぞれ要件を満たしている場合は、事業所がどちらを算定するか選択することができます。
具体例としてカンファレンスにかかる会議の概要や開催概要などが挙げられます。なおカンファレンスに参加した場合の記録については、居宅介護支援経過のほかにもサービス担当者会議の要点を活用することも可能です。
退所施設からの参加者として当該施設に配置されている介護支援専門員や生活相談員、支援相談員など利用者の心身の状況や置かれている環境を把握し、居宅介護支援事業者の介護支援相談員に必要な情報提供が行える人を想定しています。
退院退所加算は入院又は入所期間中に3回まで算定可能です。ただし3回算定できるのは、そのうち1回についてカンファレンスに参加し、在宅での療養上必要な説明を行ったうえで居宅サービス計画を作成した場合に限ります。
居宅サービス計画について、「介護サービス計画書の様式及び課題分析標準項目の指示について」において標準例として様式を示しているものもあります。しかし、当該様式の中であれば第5表の「居宅介護支援経過」の部分が想定されます。そのためそれ以外であれば内容を満たすメモ等であったとしての可能です。
退院退所加算は「医療機関を退院」「介護施設等を退所」などで自宅に戻って在宅生活を送る利用者について入院中や入所中の情報提供を受けることで、介護サービスの調整等を評価する加算として設けられます。
カンファレンスに参加など規定はありますが、受けられる加算として重要なものです。この記事を参考に、退院退所加算を検討してみてはいかがでしょうか。