ターミナルケアマネジメント加算とは、ターミナル期を迎えている利用者に対して頻回に訪問し、手厚いケアを提供した居宅介護支援事業所が算定できる加算です。
ターミナルケアマネジメント加算は、算定対象となる利用者や、算定できるタイミングなどの条件が細かく設定されています。この加算の算定要件について詳しく知りたい経営者も多いでのはないでしょうか?
この記事では、ターミナルケアマネジメント加算の算定要件や単位数について詳しく解説します。また、この記事を読むことで、2024年介護報酬改定で見直されるポイントについても把握できます。
目次
ターミナルケアマネジメント加算は、2018年度介護報酬改定で新設された加算です。この加算は、ターミナル期の利用者に対して状態変化の把握等を実施し、主治医や居宅サービス事業所へ情報提供を行っている居宅介護支援事業所を評価するための加算です。
2020年に公開された厚生労働省の資料「居宅介護支援・介護予防支援」では、ターミナルケアマネジメント加算の概要について以下のように記載されています。
ア、ケアマネジメントプロセスの簡素化
著しい状態の変化を伴う末期の悪性腫瘍の利用者については、主治の医師等の助言を得ることを前提として、サービス担当者会議の召集を不要とすること等によりケアマネジメントプロセスを簡素化する。
イ、頻回な利用者の状態変化等の把握等に対する評価の創設
末期の悪性腫瘍の利用者又はその家族の同意を得た上で、主治の医師等の助言を得つつ、ターミナル期に通常よりも頻回な訪問により利用者の状態変化やサービスの変更の必要性を把握するとともに、そこで把握した利用者の心身の状況等の情報を記録し、主治の医師等や居宅サービス事業者へ提供した場合を新たに評価する。
引用:厚生労働省「居宅介護支援・介護予防支援」
ターミナルケア期の利用者は心身の状態が変化しやすく、状況に応じて柔軟に介護サービスの内容を変更させなければいけません。そのため、医療機関や複数の介護施設と連絡調整を行うケアマネージャーの負担が大きくなってしまいます。
ターミナルケアマネジメント加算は、ターミナルケアに対する負担増を評価しつつ、手厚い対応を行った居宅介護支援事業所を評価するため創設されました。
ターミナルケアマネジメント加算は、2024年の介護報酬改定によって対象者の要件が変更されているため注意が必要です。ここでは、介護報酬改定による変更点を踏まえつつ、ターミナルケアマネジメント加算の算定要件と単位数について詳しく解説します。
2024年介護報酬改定前にターミナルケアマネジメント加算を算定する場合、算定対象者には以下の条件が求められていました。
末期の悪性腫瘍であって、在宅で死亡した利用者(在宅訪問後、24時間以内に在宅以外で死亡した場合を含む)
2024年の介護報酬改定前までは、末期の悪性腫瘍によって在宅で死亡した利用者が対象となっています。
そのため、ターミナル期の利用者に対して手厚いケアマネジメントを実施したとしても、悪性腫瘍以外で死亡した場合にはターミナルケアマネジメント加算は算定できませんでした。しかし、2024年の介護報酬改定によって、算定対象者の条件が緩和されています。
厚生労働省の資料「令和6年度介護報酬改定の主な事項について」では、以下のように記載されています。
【算定要件】
自宅で最後を迎えたいと考えている利用者の意向を尊重する観点から、人生の最終段階における利用者の意向を適切に把握することを要件とした上で、当該加算の対象となる疾患を末期の悪性腫瘍に限定しないこととし、医師が一般に認められている医学的知見に基づき、回復の見込みがないと判断した者を対象とする。
引用:厚生労働省「令和6年度介護報酬改定の主な事項について」
2024年介護報酬改定以降、算定対象者の条件を末期の悪性腫瘍に限定せず「医師が回復の見込みがないと判断した者」が対象となります。算定対象者の枠が広がったことで、より多くの居宅介護支援事業所がターミナルケアマネジメント加算を算定しやすくなるでしょう。
2024年介護報酬改定以降のターミナルケアマネジメント加算の算定要件と単位数については、以下の表をご参照ください。
ターミナルケアマネジメント加算の算定要件と単位数 | |
算定要件 |
|
単位数 | 400単位/月 |
ターミナルケアマネジメント加算を算定するためには、24時間連絡が取れる体制を確保することと、死亡日直前に訪問して情報連携を実施している必要があります。
ターミナルケアマネジメント加算を算定する際には、加算を算定するタイミングや、算定できる事業所の条件などに注意しておきましょう。ここでは、ターミナルケアマネジメント加算を算定する際の重要ポイントについて解説します。
ターミナルケアマネジメント加算は、在宅で死亡した利用者に対して算定する加算なので、1人の利用者につき算定できるのは1回のみです。定期的に算定できる加算ではないため注意しましょう。
また、ターミナルケアマネジメント加算は、原則として在宅で死亡した利用者の死亡月に算定します。利用者の居宅を最後に訪問した日の属する月と、利用者の死亡した日の属する月が異なる場合は、死亡した日の属する月に算定しなければいけません。
ターミナルケアマネジメント加算は、原則として在宅で亡くなられた利用者に対して算定できる加算です。そのため、基本的には医療機関で亡くなった利用者に対して算定することはできません。
しかし、死亡診断を目的として医療機関に搬送され、24時間以内に死亡が確認された場合等は、ターミナルケアマネジメント加算を算定できます。亡くなられた際の条件によっては、医療機関で亡くなった場合でも算定できることを覚えておきましょう。
ターミナルケアマネジメント加算は、1人の利用者に対して1事業所が算定できます。仮に、加算の算定要件を満たす居宅介護支援事業所が複数ある場合、死亡日又は死亡日に最も近い日に利用した居宅サービスを位置付けたケアプランを作成した事業所が算定できます。
例えば、もともとA事業所がケアプランを作成していたが、利用者が死亡する10日前にB事業所が担当になりケアプランを再度作成したとします。
A事業所とB事業所は、どちらも24時間連絡が取れる体制を確保しつつ、医療機関等と連携している場合、両方の事業所がターミナルケアマネジメント加算の算定要件を満たしています。しかし、この場合に加算を算定できるのは、最後にケアプランを作成したB事業所のみです。
ターミナルケアマネジメント加算は、1人の利用者に対して1事業所しか算定できないため、他に算定要件を満たす事業所がないか事前に確認しておきましょう。
2024年介護報酬改定によって、ターミナルケアマネジメント加算に関連する加算の要件も見直されています。
介護報酬改定以前は、特定事業所医療介護連携加算を算定するための条件として「ターミナルケアマネジメント加算を年間5回以上算定すること」という内容が含まれていました。
しかし、2024年介護報酬改定によって、特定事業所医療介護連携加算の算定に必要なターミナルケアマネジメント加算の算定回数が「年間15回以上」に変更されています。算定対象者の幅が広がったことによる算定要件の緩和とバランスを取った形です。
ターミナルケアマネジメント加算と同時に、特定事業所医療介護連携加算の算定を検討している事業所は注意しておきましょう。
将来的に高齢者の人口が増えることで、悪性腫瘍や難病を抱える高齢者数も現在より増加していきます。そのため、介護業界でのターミナルケアに対するニーズは、今後も拡大していく可能性が高いでしょう。
高齢者の増加によって、居宅介護支援事業所がターミナル期の利用者へ対応しなければいけない場面も多くなる可能性があります。ターミナルケアマネジメント加算は積極的に算定しておくとよいでしょう。
特に、2024年の介護報酬改定で算定対象者の幅が広がるため、ターミナルケアマネジメント加算を取得する良いタイミングです。これまで算定していなかった事業所は、積極的に加算を取得していくとよいでしょう。