2024年の介護報酬の改定に伴い、送迎加算の要件も見直されることになりました。この記事では、送迎加算の算定要件、算定のための方法について詳しく解説します。
通所を必要とする福祉サービスでは、利用者が通いやすくするために送迎を行う福祉介護施設があります。しかし、送迎は通常業務に上乗せされる業務であり、余裕がない予算、人員の中で実施されている事業所も多いでしょう。
利用者の通所にかかわる送迎業務を行う事業所では、福祉サービスの向上のため送迎加算を組み込むことができます。
送迎加算は、居宅(自宅や入所施設)から通所系福祉介護施設への送迎を行った際に加算できます。介護報酬と同様に1単位1円で計算でき、施設や加算の種類によって片道ごとの単位が決まっています。往復の送迎では1日2回分の送迎加算がつきます。
国土交通省、厚労省によって平成18年に改正された道路運送法40号では、施設介護事業所の送迎に関して、自家輸送扱いとすることが認められており、安全を考慮した運行体制で管理することと定めています。
通所への送迎は自家輸送扱いとなるため、一種免許(普通自動車運転免許)があれば十分です。また、送迎業務にのみ使用する車両に関しては、自家用車扱いとなり、旅客自動車運送の届出は不要です。
しかし、これは自治体などが費用を負担するなどして、利用者からは一切運賃を貰わない場合に限ります。有償での送迎サービスの業務を兼ねる場合は、行政に対する申請および、二種免許(営業用自動車運転免許)の取得が必要となります。
送迎加算の対象となるサービスは、短期入所系福祉サービスおよび通所系福祉サービスです。詳しくは以下の表をご覧ください。
根拠法 | サービス種別 | |
介護保険法 |
| |
障害者総合支援法 | 成人向け |
|
児童向け |
|
送迎加算の算定要件は、介護保険法における送迎加算と障害者総合支援法における送迎加算によって異なります。ここでは、それぞれについて説明します。
介護保険法において、通所系サービスにおける送迎の業務は基本報酬に含まれているため、送迎加算の対象になりません。ただし、訪問介護員などによって送迎がおこなわれる場合は、通所系サービスの従業者が送迎を実施していないことになるため、送迎減算が適用されるため注意しましょう。
短期入所系サービスでは、送迎加算を算定できます。該当するのは、短期入所介護・短期入所療養介護・介護予防短期入所生活介護・介護予防短期入所療養介護です。
短期入所系サービスでの送迎加算も、事業所と居宅間の送迎が条件であり、事業所から他事業所への送迎では算定できません。また、時刻やルートを決めて一律にバスなどに乗車させる際も算定が出来ないので注意が必要です。
障害者総合支援法においては、通所系サービス、短期入所系サービスのいずれにおいても幅広く送迎加算の算定対象となります。
ここでは成人向けサービス、児童向けサービスと分けて解説します。
送迎加算の算定には、以下の要件があります。
- 1回の送迎で平均10人以上が利用する
(定員20人未満の事業所は定員の半分以上が送迎利用をしている)- 週3回以上の送迎を実施している
送迎加算(I):1,2の条件を両方満たすことで算定可能
送迎加算(II):1,2のどちらかを満たすことで算定が可能
※1人当たり1日片道10単位を加算できます。
児童向けサービスにおいて送迎加算が算定できるのは「児童発達支援」「放課後デイサービス」における送迎です。
算定要件は以下の2つでいずれかを満たすと送迎加算の算定が可能です。
- 障害児(重症心身障害児以外)に対して、居宅や学校から事業所間の送迎を行った
- 重症心身障碍指に対して、居宅や学校から事業所間の送迎を行った
送迎加算の算定の際には、医療的ケア児の送迎については医療ケアが可能な職員の付き添い、重症心身障害児については職員の付き添いが必要になるので注意しましょう。徒歩での送迎は市区町村によって加算対象になるかどうか異なります。あらかじめ、算定できるか確認しておきましょう。
介護保険法における送迎加算と障害者総合支援法によって送迎加算の算定方法が異なるため、順番に説明します。
介護保険法では、短期入所系サービスが算定の対象となります。
- 通所の送迎において片道につき184単位を算定できます
- 2024年度からの介護報酬改定に伴い「特別通院送迎加算」も算定できるようになります。透析等が必要な利用者に対して、通院の送迎を1か月につき12回以上行うことで、594単位を加算できることとなりました
障害者総合支援法では、幅広いサービスが算定対象となります。
- 成人を対象としたサービスにおいては加算が2種類に分けられます
- 送迎加算(I):1人あたり片道21単位
- 送迎加算(II):1人あたり片道10単位
- 児童を対象としたサービスについては利用者1人につき、以下の加算が出来ます。
- 障害児(重症心身障害児以外):片道54単位
- 重症心身障害児または医療的ケア児:片道40単位
- 医療的ケア児(16点以上):片道80単位
※同一敷地内の送迎についても所定単位の70%を算定できます。
勤務先の事業所において送迎加算を算定するためには、算定要件を満たしていることが必要です。徒歩での送迎など、都道府県によって加算要件は異なるので確認しましょう。
新たに送迎加算を算定する事業所は、都道府県などに届出書を提出しなければいけません。
居宅サービス・地域密着型サービスの場合は、前月の15日以前に届出をすることで翌月初めから加算が可能です。施設サービスでは加算算定月の1日までに届出をすることで算定できます。
送迎加算を算定するということは送迎サービスを実施することになります。利用者に説明をしながら、送迎希望者の人数を見通しておくとよいでしょう。ケアマネージャーや相談支援専門員にも説明し送迎を必要としている利用者の情報を共有していくことが必要です。
送迎加算の算定は、届出だけでなく日々の管理が必要です。誰が、いつ利用をしたのかなど加算対象となっていることを確かめるための記録を残しておきましょう。
最後に送迎加算についてのよくある質問とその回答を紹介します。
一種免許(普通自動車運転免許)があれば、自家用車による送迎で送迎加算を算定できます。しかし、介護系の資格があるほうが利用者やそのご家族も安心して利用することができるでしょう。
送迎車のリフトや車いす固定装置の使い方は物によっても異なります。スムーズな乗降ができるよう、事前に確認しておきましょう。
あくまでも事業所と居宅間の送迎が原則です。事業所外で支援を行った際は、その活動場所から居宅までの送迎も算定対象となります。居宅以外の場所に送迎をしたり、利用者を居宅まで送迎しない場合には、算定対象外となる可能性があります。
また、やむを得ない状況であり、合理的な理由があるときには自治体の判断で居宅以外の送迎であっても加算が認められる場合もあります。居宅以外の場所への送迎を行う際は、予め利用者と合意の上で、特定の場所を決めておく必要があります。
2023年11月から、より効率的で利便性の高いしくみを作るために、送迎の外部委託、複数の事業所の利用者を一緒に乗せる共同送迎が認められるようになりました。
共同送迎の条件としては
などが挙げられます。
外部委託での共同送迎では、ドライバーの確保、送迎ルートや停留所の決定、利用者情報の管理、車両のトラブル対応などの複雑な管理、運行のために必要な業務を委託先に頼むことができます。
送迎は、利用者を居宅や事業所に送り届けるだけでなく、利用者やその家族のこころのケアとしての役割も果たします。そのため、運転技術だけでなく思いやりの心がある信頼できる事業所に委託することが大切です。
福祉・介護サービスにおいて送迎加算を導入することで、利用者にとっては送迎によって安心して通所ができることが魅力といえるでしょう。事業所にとっては、送迎を行わない事業所との差別化ができるだけでなく、送迎加算で得た収益によって、福祉・介護サービスの質の向上に繋がるでしょう。