3年ごとに行われる介護報酬改定。
2021年(令和3年)度の介護報酬改定では「感染症や災害への対応力強化」「地域包括ケアシステムの推進」「自立支援・重度化防止の取組の推進」「介護人材の確保・介護現場の革新」「制度の安定性・持続可能性の確保」が中心となり見直しが行われました。
全体的には改定率「+ 0.7%」のプラス改定となっています。
この記事では2021年の介護報酬改定の変更内容、基本報酬や認知症ケア加算の単位数についてご紹介します。
目次
訪問介護とは、自分や家族だけで日常生活を送るのが難しくなった要介護者に対して介護福祉士やホームヘルパーが要介護者の自宅を直接訪問して食事・入浴・排泄などの「身体介護」や、洗濯・掃除・調理などの「生活援助」を行うサービスです。
訪問介護全体について詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。
【2022年最新版】訪問介護とは?サービス内容や受け方、費用についてご紹介!
訪問介護の基本報酬は+ 1〜2単位のプラス改定となっています。
現行 | 改定後 | ||
身体介護 | 20分未満 | 166 | 167 |
20分以上30分未満 | 249 | 250 | |
30分以上1時間未満 | 395 | 396 | |
1時間以上1時間30分未満 | 577 | 579 | |
以降30分増すごとに算定 | +83 | +84 | |
生活援助 | 20分以上45分未満 | 182 | 183 |
45分以上 | 224 | 225 | |
生活援助加算 | 20分から起算して25分を増すごとに | +66 | +67 |
通院等乗降介助 | 98 | 99 |
新型コロナウイルス感染症に対応するための特例的な評価として、すべてのサービスについて2021年4月1日から9月30日までの間、基本報酬に0.1%上乗せされます。
参考:厚生労働省
超高齢社会の進行により、2025年には団塊の世代の多くが後期高齢者になります。そして認知症患者は700万人を超えると予想されています。認知症高齢者が増えるということは、介護職も対応するスキルを身につけなければなりません。
認知症専門ケア加算は、専門的なケアができることを評価した加算といえます。
これまでは施設系や通所系サービスの加算であった認知症専門ケア加算ですが、取得できる介護サービスが拡がりました。さまざまな介護サービスにおいて、認知症利用者への対応力を向上させていくためです。
そのため、訪問介護においても認知症専門ケア加算が新たに創設されました。
施設系や通所系サービスでも人員の確保が難しく、認知症専門ケア加算を取得する事業所は少ない状況でした。今回の改定をきっかけに認知症利用者に対する専門的なケアができる事業所が増えることが期待されています。
・訪問介護
認知症専門ケア加算(Ⅰ)3単位/日
認知症専門ケア加算(Ⅱ)4単位/日
・定期巡回・随時対応型訪問介護看護、夜間対応型訪問介護(Ⅱ)
認知症専門ケア加算(Ⅰ)90単位/月
認知症専門ケア加算(Ⅱ)120単位/月
(既存の他サービスの認知症専門ケア加算の要件と同様)
・認知症高齢者の日常生活自立度Ⅲ以上の者が利用者の100分の50以上
・ 認知症介護実践リーダー研修修了者を認知症高齢者の日常生活自立度Ⅲ以上の者が20名未満の場合は1名以上、20名以上の場合は1に、当該対象者の数が19を超えて10又は端数を増すごとに1を加えて得た数以上配置し、専門的な認知症ケアを実施
・当該事業所の従業員に対して、認知症ケアに関する留意事項の伝達又は技術的指導に係る会議を定期的に開催
引用:厚生労働省
(既存の他サービスの認知症専門ケア加算の要件と同様)
・ 認知症専門ケア加算(Ⅰ)の要件を満たし、かつ、認知症介護指導者養成研修修了者を1名以上配置し、事業所全体の認知症ケアの指導等を実施
・介護、看護職員ごとの認知症ケアに関する研修計画を作成し、実施又は実施を予定
引用:厚生労働省
地域包括ケアシステムの推進の中でも、看取りへの対応の充実がうたわれています。自宅で最期を過ごす利用者に寄り添い介護していくことが重要になってくるでしょう。
看取り期に入ると利用者の身体状況が不安定になり、水分補給や体位変換、おむつ交換などが頻回になるので、訪問回数が増える場合が多いです。このことから訪問介護を柔軟に行えるようにするため報酬改定が行われました。
今までは「訪問介護に係る2時間ルール」がありましたが、2時間未満の訪問でも所要時間を合計しなくて済むようになりました。
訪問介護に係る2時間ルールとは、介護サービスを1日に2回以上利用する場合に、基本的に次のサービスまで「2時間以上は間を空けないといけない」というものです。もし2時間未満になった場合は、それぞれ介護報酬は算定できず所要時間を合計することになります。
例 | ||
現行 | それぞれの所要時間を合計して単位数を算定 | 1回目の身体介護25分、1時間半後に2回目の身体介護20分提供 →所要時間を合算した単位数を算定するため、30分以上1時間未満の396単位を算定 |
改定後 | 所要時間は合計せずにそれぞれの単位数を算定 | 1回目の身体介護25分、1時間半後に2回目の身体介護20分提供 →それぞれ算定できるため、250単位×2回=500単位を算定 |
看取り期に入ると、利用者や家族も不安に思うものです。訪問介護で柔軟な対応ができると、利用者も安心して療養生活を送ることができるでしょう。また家族にとっても介護負担が軽減し、安心して介護する事ができます。
通院等乗降介助について、現行では自宅から病院、または病院から自宅など1カ所の目的地しか行けませんでした。
改正後は同一の事業者が行うことを条件に、目的地が数カ所ある場合でも居宅がスタート又はゴールとなる場合には算定可能となりました。
通所系や短期入所系サービスから病院への移送も、同一事業所が行うことを条件に算定が可能となっています。
現行では2カ所の病院に行きたい場合でも、いったん自宅に戻ることが必要でした。
しかし改定により自宅に戻る必要がなくなったため、利用者の身体的・経済的負担が軽減され、また時間のロスもなくなりました。
2カ所の病院に行きたい場合 | |
現行 | 自宅→A病院→自宅→B病院→自宅 |
改定後 | 自宅→A病院→B病院→自宅 |
訪問入浴介護について、新規利用者への初回の訪問入浴介護の調整に対する報酬が新たに定められました。
初めて訪問入浴介護を利用する時には、利用者や家族に既往歴や自宅での様子などを聞きアセスメントをしていきます。
また、居宅や部屋の様子を見ながら浴槽の設置場所を決めたり、給排水のホースの通り道を確認します。このような初回の準備や調整に対する評価がされることになりました。
初回加算200単位/月
算定要件は、訪問入浴介護事業所において、新規利用者の居宅を訪問し浴槽の設置場所や給排水の方法などの確認を行った上で、利用者に対して初回の訪問入浴介護を行った場合となります。また、清拭や部分浴を実施した時の減算幅が少なくなりました。
現行 | 改定後 | |
清拭や部分浴の実施 | 30%/回を減算 | 10%/回を減算 |
算定要件は、訪問後に利用者の心身の状態が悪く全身入浴は困難だと判断し、清拭や部分浴(洗髪、陰部、足浴等の洗浄)を実施した場合となります。
また、訪問入浴介護でも、訪問介護のように「認知症専門ケア加算」が取得できることとなりました。
認知症専門ケア加算(Ⅰ)3単位/日
認知症専門ケア加算(Ⅱ)4単位/日
訪問介護の単位数に関連して、訪問介護の料金について詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。
2021年(令和3年)度の介護報酬改定で特徴的なのは、新型コロナウイルスなどの感染症への対応や災害時の対応における事業継続計画(BCP)、科学的介護の取り組みです。
これによって多くの加算が創設されました。訪問介護や訪問入浴でも新しい加算が取得できたりと、柔軟な対応ができるようになっています。
介護報酬改定では毎回いろいろな介護サービスで単位数の変更や加算が新設されます。その都度、改定内容を把握していきましょう。