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訪問介護計画書とは?作成のポイントと具体的事例

元山 ゆず香

監修者

介護福祉士

元山 ゆず香

大学を卒業後、特別養護老人ホームにて現場業務に従事。その後、福祉系大手企業に入社し、エリアマネージャーとして、施設介護事業・居宅介護事業・障害福祉サービス事業でのエリアマネジメント・行政対応を経験。また、法人本部に異動し教育部門・監査担当部門の部長を歴任。現在は全国の介護・障害福祉事業所の支援やセミナーの開催、DXO株式会社での介護関連事業の支援などを実施。

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訪問介護サービスを提供するためには、訪問介護計画書を作成する必要があります。しかし、新たに訪問介護事業所を立ち上げる場合、訪問介護計画書に記載する内容や作成手順などがわからない場合も多いでしょう。

この記事では、訪問介護計画書に記載すべき具体的な項目を紹介しつつ、作成のポイントと作成手順について解説します。この記事を読むことで、これまで一度も訪問介護計画書を作ったことがない方でも作成できるようになります。

訪問介護計画書とは

訪問介護計画書は、訪問介護サービスに関する計画を記載した書類です。計画書には、サービスの内容や提供方法などを明確に記述します。

訪問介護事業所の従事者は、利用者に対して訪問介護計画書の説明を行い、サービス内容に理解と同意を得なければ訪問介護サービスを提供できません。

訪問介護事業所を運営していくために欠かせない書類のひとつが訪問介護計画書です。

訪問介護計画書を作成する目的

訪問介護計画書を作成する目的は、利用者一人ひとりのニーズや状況に合わせて最適なサービスを提供することです。また、担当訪問介護員にサービスの目的を深く理解してもらうためのツールとしても活用されます。

訪問介護計画書をもとに、日々の介護活動が適切に行われているか、設定された目標に向かって進行しているかを定期的に確認し、必要に応じて計画の見直しを行います。仮に、設定した目標とサービス内容が異なっていた場合、すぐに計画書を作成し直さなければいけません。

このように、訪問介護計画書は、利用者と事業所が共通の認識を持ってサービスを提供するために重要な役割を持っているのです。

訪問介護計画書を作成する人

訪問介護計画書を作成するのは、サービス提供責任者です。サービス提供責任者は訪問介護事業所に1名以上配置する職種で、アセスメントや計画の立案、訪問介護員の育成、家族との連携など、幅広い業務を担当します。厚生労働省の資料「各介護サービスについて」によると、訪問介護におけるサービス提供責任者の業務は以下のように記載されています。

サービス提供責任者の業務

①訪問介護計画の作成、②利用申込みの調整、③利用者の状態変化、サービスへの意向の定期的な把握、④居宅介護支援事業者との連携(サービス担当者会議出席等)、⑤訪問介護員に対しての具体的援助方法の指示及び情報伝達、⑥訪問介護員の業務の実施状況の把握、⑦訪問介護員の業務管理、⑧訪問介護員に対する研修、技術指導等

引用:厚生労働省の資料「各介護サービスについて」

厚生労働省の資料には、サービス提供責任者の業務内容として「訪問介護計画書の作成」が明記されています。サービス提供責任者は、利用者の生活状況等を調査し、訪問介護の目標やサービス内容を記載した訪問介護計画書を作成しましょう。

訪問介護計画書を作成する流れ

訪問介護計画書は利用者の実態に沿って、最適な支援を提供するものでなければいけません。そのためには、利用者の情報収集とニーズの把握が必要です。ここでは、訪問介護計画書を作成する流れについて解説します。

利用者の情報収集

訪問介護計画書作成を始める前に、利用者の身体状況や生活状況を把握しなければいけません。利用者の情報収集は、担当のケアマネージャーと連携しながら、サービス提供責任者が主に実施します。

基本情報として、利用者の生活リズムや住環境などを調査します。実際に在宅を訪問し、他の訪問介護職員と住環境を共有できるようにしておきましょう。

サービス利用が始まる前には、ケアマネージャーが担当者会議を開催します。その際に、他の事業所と情報交換を行って、利用者の情報を集めておくことも大切です。

ニーズの特定

利用者のニーズ特定は、訪問介護計画書において重要なポイントのひとつです。収集した利用者の情報から、利用者の生活スタイルや価値観を尊重し、利用者のニーズを特定します。

訪問介護サービスでは、利用者の隠れた可能性を発見し、それをもとに自立支援に向けたサービスを提供することが重要です。そのためには、利用者のできない部分よりもできる部分に焦点を当てましょう。

特に、利用者が言葉に出しているニーズと、本当に必要なニーズが合致していないケースには注意しなければいけません。利用者が言葉にしているニーズだけでなく、その裏にある最も重要なニーズを把握することで、より良い訪問介護サービスを提供できます。

訪問介護計画書を作成

利用者のアセスメントを行い、ニーズを特定した後には、訪問介護計画書を作成します。訪問介護計画書は、利用者の生活スタイルや特定したニーズをもとに、どのようなサービスを提供するかを具体的に記述する重要な書類です。

訪問介護計画書の作成は、利用者の実態に沿った内容でなければいけません。そのため、利用者やその家族、そしてケアマネージャーと連携しながら進める必要があります。

訪問介護計画書の具体的な記載項目は次の章で解説します。

訪問介護計画書の記載事例

訪問介護計画書には、決まった様式がありません。しかし、計画書内に記載すべき項目は、ある程度決められています。ここでは、訪問介護計画書に記載すべき項目と、その内容について事例を出しながら解説します。

計画書の作成者・作成月日

訪問介護計画書では、最初に計画書の作成者と作成月日を記載します。これは、アセスメントの日付や設定された目標がいつ時点のものであるかを確認するためです。

作成者の氏名と作成年月日が記載されていない場合、計画書の内容がどの時期に作成されたものか不明確になり、後で振り返って評価できなくなる可能性があります。

訪問介護計画書の最初に計画書の作成者と作成月日を記入し、計画書の信頼性と透明性を保つことが重要です。

利用者の基本情報

訪問介護計画書には、サービスを受ける利用者の基本情報を記載しておきましょう。利用者の基本情報は、サービス提供責任者や訪問介護員が利用者の背景を理解し、適切なサービスを提供する際に重要な情報が含まれています。訪問介護計画書に記載すべき基本情報の例は以下のとおりです。

  • 氏名
  • 性別
  • 住所
  • 生年月日
  • 要介護認定日
  • 要介護度

一般的には上記の項目が含まれますが、それ以外にも「1日の生活スケジュール」などが含まれる場合もあります。

本人及び家族の希望

訪問介護計画書には、利用者本人及び家族の希望や要望を明確に記載しなければいけません。なぜなら、訪問介護計画書は、利用者の意思を尊重したものでなければいけないからです。

具体的には、利用者が将来的に考えている生活、家族が現在困っていることなどを記載します。訪問介護計画書の内容が、利用者や家族の希望に沿った内容になっているか確認しながら書類を作成しましょう。

援助目標

訪問介護計画書では、必ず援助目標を設定しなければいけません。具体的な目標を設定することで、利用者は訪問介護員の訪問の目的を理解し、訪問介護員は何を達成すべきか明確になります。

例えば、「現在は自宅内を移動するのが困難なため、自分1人で移動できるようになる」や「夜中1人でトイレに行けるようになる」など、具体的かつ達成可能な目標を設定しましょう。

援助目標は、解決すべき課題を明確にし、長期目標と短期目標に分けて段階的に設定します。目標を明確に記載することで、効果的なサービス提供と評価が可能になります。

週間予定表

訪問介護計画書の週間予定表は、サービス提供のスケジュールを明確に示す項目です。

何曜日の何時に、どのような内容のサービスが提供されるのかを一覧表にして記載します。これにより、利用者や訪問介護員はいつどんなサービスが行われるのかを一目で確認でき、スムーズなサービス提供と調整が可能になります。

週間予定表は、利用者のサービス利用の透明性を保ち、訪問介護員の業務計画を作成する際にも役立ちます。

サービス区分とサービス内容

訪問介護計画書では、提供するサービスの種類と内容を明確に記載します。

訪問介護のサービス区分には、身体介護、生活援助、通院等乗降介助などがあります。サービス内容では、それぞれの区分に応じた具体的なサービスを詳細に記載します。

例えば、身体介護で排泄介助を提供する場合、トイレ内での動作手順や介助方法といった内容を明記しましょう。また、見守り支援を行う際は、利用者自身が行う部分と見守りが必要な動作などを詳しく記載します。

訪問介護計画書にサービス内容を明確に記載することで、利用者がサービス内容を確認できるだけでなく、訪問介護員が支援方法を共有する際にも役立ちます。

サービス提供に関する評価

訪問介護計画書では、サービス提供に関する評価を記載します。この項目では、サービス提供の成果を検証し、援助目標の達成度を評価します。

訪問介護計画書を作成後、短期目標見直しの時期、もしくは利用者の状況変化時に評価を行います。サービス提供責任者は、この評価を通じてサービスの内容を見直します。

評価を行った結果、サービス内容に変更が必要な場合は、計画書内容を変更しなければいけないため注意しましょう。

利用者やその家族への説明及び同意と交付

作成した訪問介護計画書の内容は利用者や家族に周知する必要があります。作成した訪問介護計画書について、利用者や家族へ説明と同意を行いましょう。

また、同意を得た訪問介護計画書は、複製したものを利用者や家族へ交付しなければいけません。同意を得た後は、必ず計画書の控えを家族に配布しましょう。

訪問介護計画書を作成する際のポイント

訪問介護計画書を作成する際には、いくつか注意すべきポイントがあります。ここでは、訪問介護計画書を作成する際のポイントについて解説します。

利用者の実態に沿った内容になっているか

訪問介護計画書作成時には、利用者の実態に沿った内容になっているか確認しましょう。

訪問介護計画書を作成する際には、利用者の身体機能や家庭環境を考慮し、サービス内容や計画が利用者のニーズに適しているかを検討します。また、利用者本人の能力や実際の生活状況を理解し、どのように支援することで利用者の能力を最大限に発揮できるかも考慮しなければいけません。

訪問介護計画書は、訪問介護員だけでなくケアマネージャーや家族も確認する書類です。利用者の実態と異なる点があれば、トラブルに発展する可能性もあります。

計画書を作成後に、再度中身をチェックして、利用者の実態に沿った内容になっているか確認しましょう。

ケアプランと異なる点はないか

訪問介護計画書の内容は、ケアプランの方針と異なる点がないように注意しましょう。

訪問介護サービスは、ケアマネージャーが作成するケアプランの中でサービスの目的と大まかな内容が決定されています。ケアプランと異なる計画を立ててしまうと、利用者に悪影響を及ぼす可能性もあります。

例えば、ケアプラン上では「訪問介護サービスを利用して自宅内で入浴する」となっているにもかかわらず、訪問介護計画書に入浴支援を記載していなかったとします。

この場合、ケアマネージャーは訪問介護サービスで入浴していると考えていたのに、実際には利用者が何日も入浴していない状態になるかもしれません。それが原因で利用者が体調を崩す可能性も考えられます。

利用者に不利益が発生しないように、ケアマネージャーと連携してケアプランの方向性に沿った訪問介護計画書を作成しましょう。

利用者が見てもわかりやすい内容になっているか

訪問介護計画書は、利用者や家族が見てもわかりやすい内容にしていなければいけません。

訪問介護計画書は、サービス提供責任者が作成します。そのため、介護業界の専門用語や独特の表現を使って計画書を作成することもあるでしょう。しかし、訪問介護サービスは、計画書の内容を利用者や家族が納得したうえで提供されるものでなければいけません。

訪問介護計画書の内容を利用者に納得してもらうためには、できる限り専門用語を少なくして、素人にもわかりやすい表現で作成することが望ましいでしょう。

まとめ

この記事では、訪問介護計画書の作成方法について解説しました。訪問介護計画書とは、訪問介護サービスを提供する際に作成する書類で、事業所内外で連携するために必要不可欠なものです。

訪問介護計画書を作成する手順として、まずサービス提供責任者が利用者の基本情報を調査し、利用者のニーズを特定しなければいけません。特定したニーズと、他事業所からの情報をもとに訪問介護計画書を作成し、利用者から同意を得ます。

訪問介護計画書に記載すべき項目として、利用者の基本情報、本人及び家族の希望、援助目標などが挙げられます。

訪問介護計画書を作成する際には、ケアプランや利用者の実態に沿った内容であり、利用者が見てもわかりやすいようにまとめなければいけません。

訪問介護計画書は、訪問介護事業所を運営していくうえで重要な役割を持つ書類のひとつです。丁寧に作成してより良い訪問介護サービスを提供できる事業所を目指しましょう。

 

参考資料
厚生労働省の資料「各介護サービスについて」

 

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