障害者総合支援法をご存知でしょうか。
障害者総合支援法は平成25年4月に施行されました。障害者自立支援法が障害者総合支援法になり、障害者が住み慣れた地域で生活が続けられるように、制度改正が行われました。
この法律は、3年に1度の頻度で、改正されることが決められています。
障害者の支援が、障害者や支援者のニーズに添う内容に今後も改正されます。
今回の記事では、障害者総合支援法の過去の改定の経過や現状について、詳しく整理して解説します。
目次
障害者総合支援法とは、「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」の通称です。
この法律は、障害者や障害児の方が、障害を抱えながらも尊厳をたもち、住み慣れた地域で生活ができるように支えることを目的としています。
社会情勢がめまぐるしく変化することが考えられるため、障害者や障害児、支援者のニーズの変化に適応できるよう、3年ごとに定期的な改正があります。
障害者総合支援法については、こちらの記事でより詳しく解説しています。
障害者総合支援法の対象者は以下の通りです。
・身体障害者
・知的障害者
・精神障害者(発達障害者を含む)
・満18歳に満たない身体・知的・精神に障害のある児童(発達障害者を含む)
・政令で定める難病等により障害がある者で18歳以上のもの
詳しくはこちらの記事で解説しています。
障害者総合支援法の対象者は?サービスの自己負担額についても紹介!
障害者自立支援が改正されたものが、障害者総合支援法です。
どのように変わったのか、こちらの記事で詳しく解説しています。
障害者自立支援法と障害者総合支援法とは?違いは?それぞれの特徴についてご紹介!
令和4年の障害福祉サービス等報酬改定では、「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策」を踏まえて、令和4年10月以降について臨時の報酬改定を行うとしました。
具体的には、収入を3%程度(月額平均9,000円相当)引き上げるための措置として、福祉・介護職員等ベースアップ等支援加算が算定できるようになりました。
令和3年度に行われた障害者総合支援法改正でも、ひきつづき障害者や障害児の地域での生活と就労を充実することを趣旨としています。
生活の支援と就労について、支援が障害者や障害児のニーズにあった支援を行うことが評価されています。
障害者の重症化や高齢化に合わせて、地域社会が支えになるための仕組みの整備が含まれます。
地域包括ケアを精神障害者にも、提供できるようにということも言及されています。
また、新型コロナウイルスの感染流行にともない、感染症対策や災害対応の強化についてもふれられています。
質の高い相談支援を提供するために、基本報酬の引き上げ、相談支援業務の新たな評価の導入などが行われました。
経営実態の厳しい小規模事業所について、大幅に基本報酬が引き上げられました。
また、特定事業所加算については、事務負担を軽減する目的で、基本報酬への組み込みが行われました。
常勤専従職員の配置をさらに浸透させるために、常勤専従職員の人数に応じた報酬区分が新設されました。
また、すべての区分において常勤専従の主任相談支援専門員を1人以上配置すると評価され、報酬が得られます。
さらに、常勤専従1名の配置が必須の上で、複数の事業所で連携し24時間の連絡体制が確保されることなどで、機能強化型の算定要件を満たすことになりました。
就労移行支援については、一般就労へ移行した支援を多く行った事業所を、基本報酬で評価する方法がとられました。
一般就労とは、会社と個人が契約を結び就労することです。基本的に、会社が決定した労働時間で働くことになります。
また、支援計画会議実施加算が新設されました。
これは、本人や他の事業所を交えて、障害者本人のニーズや能力を話し合う会議を行うことで加算されます。
この会議は、支援の効果を高める取り組みとして評価されるため、報酬が新設されました。
就労定着支援については、厳しい経営の実態を踏まえて報酬の改定が行われました。
就労定着率に応じて、段階的に支払われる基本報酬の区分を現状に見合うものに改正されています。
具体的には、就労継続支援A型の基本報酬等の見直し、就労継続支援B型の基本報酬等の見直しがおこなわれました。
就労継続支援A型に関しては、スコア方式の導入が行われました。
以前は、労働の時間のみで区分されていた報酬が、一日の労働時間、生産活動、多様な働き方、支援力向上、地域連携活動といった5個のスコアをもとに点数化される方式になりました。
このスコアの評価内容は公表することが求められています。公表市内事業所には報酬の減算がされます。
就労継続支援B型に対しては、高い工賃を達成している事業所を評価することが基本報酬に反映されました。
また、工賃の実績にさらに細かく応じられる8段階の報酬が設定されました。
利用者の就労や、生産活動などへの参加を一律に評価する報酬が新設されました。
医療的ケア児者に対する、支援の充実も行われました。主に、看護職員の配置に関する改定がありました。
いわゆる、動ける医療的ケア児にも対応できるスコアを導入し、医療的ケア児の状態や看護師の必要度を報酬と組み合わせてとらえる仕組みを導入しています。
福祉型短期入所施設で、高度な医療的ケアを必要とする障害者の受け入れが可能となるよう、新たに報酬が新設されました。
看護職員配置以外での改定としては、医療型短期入所や共同生活援助において医療ケア児者を受け入れた場合に加算が新設されました。
従来、NICUの退院直後の新生児に対して、障害の認定がすぐには難しく、障害福祉サービスの支給決定が得られにくいという課題がありました。
この点について、新たな判定スコアを用い医師の判断を活用することで、円滑な支給決定とサービス開始につなげることが定められました。
放課後デイサービスの報酬の見直し、児童発達支援の報酬の見直しもされました。
地域包括ケアシステムは、高齢者の介護保険制度のサービスを統括する役割を担ってきました。
しかし、近年ではすべての年代の人々に地域包括ケアシステムが中心となって、支援を組み立てていくことが考案されています。
このような背景のもと、地域包括ケアシステムの仕組みを精神障害者も利用できるように、地域のネットワークづくりといった環境の整備が行われるように定められました。
具体的には、自立生活援助事業者が訪問や電話で緊急の相談に応じた場合の報酬が新設されました。
また、可能な限りの早期の地域移行支援のために、入院後1年未満に退院する場合に退院・退所月加算に加えて更に加算が新設されました。
精神保健医療と福祉の連携を促進する目的で、地域相談支援事業者などが本人の同意のうえで、精神科病院に情報提供することで加算を得ることができます。
医療や介護、障害福祉といった立場からのみでなく、住まい、就労支援、ピアサポーターによる支えあいなどについても、取り組みを評価することが報酬として設定されました。
精神障害者にも、対応した地域包括ケアシステムの構築が、求められています。
新型コロナウイルス感染症のような、感染症の流行があっても、障害者福祉サービスがとぎれずに継続するように、対応力の強化が求められています。
また、地震などの災害についても被災時の対策を検討すること、防災訓練の実施についても行うことが求められています。
感染症や災害にみまわれても、災害時の対応に備え、業務が継続されることを取り組みとして定めています。
地域で連携して対応できるように取り組むことも定められています。
この感染症対策の強化については、3年の経過措置期間がもうけられています。
具体的には、全ての障害福祉サービス等事業所について、感染症の発生に対応できるようにするために、委員会の開催や指針の整備が求められています。
障害者福祉サービス等の持続可能性の確保のために、サービス提供に関する報酬等の見直しが行われました。
具体的には、従来看護の必要量に対して一定だった加算を、医療的ケアを行った場合に、報酬が加算されるという見直しが行われました。
また、障害福祉現場の業務効率の改善のために、ICTの活用を求めています。
報酬算定などに必要な会議などをテレビ電話装置などで行えることを定めています。
障害福祉サービスの持続可能性のためにも、サービスを担う人材確保のための福祉・介護特定処遇改善加算についても改正がありました。
事業者が活用しやすい仕組みとすることで柔軟に利用でき、加算の取得を促進することもめざしています。
平成30年度に行われた障害者総合支援法改正では、高齢な障害者が介護保険を利用して生活できることを円滑に支援する必要性にふれています。
また、医療的ケア児などの個別的なニーズにも対応できるような仕組みが求められました。
その上で、高齢な障害者や障害児に対する生活の支援について制度が創設されています。
また、就労にも焦点をあて、就労支援についても制度を創設し、質の向上がめざされました。
一人暮らしを望む障害者を対象に、病院やグループホームから一人暮らしに移行できるように自立支援援助が創設されました。
自立支援事業所は、巡回訪問で生活を支援して、必要なアドバイスや医療機関との連携をすることで、一人暮らしを望む障害者を支えます。
そうして、障害者が望む生活を継続していけることもめざしています。
これらのサービスを行う自立支援事業者に対する報酬として、「自立支援援助サービス費」が新設されました。
就労定着支援は、就労移行支援などを利用して、一般就労に移行した障害者の方を対象に新しく創設されました。
このような障害者の方が、就労にともなって、生活に困難を感じた場合に相談や調整ができる体制を整えるものです。
この支援は、就労定着支援事業所が企業や自宅を訪問し、必要な連絡や調整を支援するものです。
利用期間は、3年が上限とされています。
この期間を過ぎると、障害者就業・生活支援センターに引き継がれます。
就労定着支援事業所には、就労定着率に応じて、就労定着支援サービス費が報酬として支払われます。
日頃より、重度訪問介護をうけている方に対して、病院などに入院中の場合でも、訪問介護が一定条件のもとに、実施できることになりました。
病院以外にも、診療所、介護老人保健施設、介護医療院、助産院への訪問が可能です。
対象者は、障害者区分6の障害者の方です。障害者の個別の状態をよく知る介護士が、コミュニケーションについての支援に入ることにより、入院中の環境調整やサービスの質を改善することをめざしています。
平成30年の障害者総合支援法改正は、障害児の高齢化に伴う介護保険の活用や障害児のさまざまなニーズに答える趣旨を含んでいます。
障害児へのサービスの質の確保と向上をめざすための環境整備の一環で、補装具を成長などに伴い短期間で取り替える必要がある場合に対する支援が拡大されました。
借与の活用が実施されています。
補装具の中でも、特に障害者総合支援法を活用して補聴器の支給を受ける方法については、こちらの記事で詳しく解説しています。
障がい児通所支援事業の総量については都道府県が地域のニーズに応じて、決定することになっています。
特に、児童発達支援及び放課後デイサービスについて、新規参入が多くサービス支援事業所が増加しました。
都道府県はニーズの総量を把握したうえで、都道府県が指定をすることになります。
つまり、ニーズよりも多い支援量にならないように、都道府県は指定をしないことができます。
外出が著しく困難な障害児の方を対象に、発達支援を目的とした訪問によるサービスが認められました。
対象は重度重度心身障害児などの重度の障害児で、障害児通所支援に通うことが難しい場合に利用できます。
児童発達支援センターなどに、居宅訪問型児童発達支援が新設されました。
日常生活における基本的動作の指導や、知識や技能をえるための支援が訪問でも、うけられるようになりました。
外出が難しい重度の障害児が、発達の支援を受けられることが保障されました。
障害福祉サービスを提供する事業所は、平成22年から平成29年で約2倍の数に増加しました。
障害者や障害児の立場からは、数多くの事業所から、自分自身が利用するサービスを選択しなければならないこともあります。
そのような状況がある中で、多くの事業所のサービスの質の維持と向上が課題とされました。
こういった背景から、事業所が提供する障害福祉サービスについて都道府県へ報告を行うことが求められることになりました。
都道府県はこの報告された内容をもとに、情報を公開することになりました。
この情報は、利用者がサービスを選択する際に情報収集に利用できます。
近年、行われた障害者総合支援法の改正について、詳しく解説し整理しました。
また、令和4年にまとめられた障害者総合支援法の改正案の概要についても述べました。
一貫していたのは、地域生活を支援することと、就労支援でした。
これまでの改正の趣旨、そして今後の方向性としても、障害者や障害児が住み慣れた地域でより良く暮らせることを大きな目標としているといえます。
地域でそのような方を支える仕組みをつくり、そのために活用できるICTを含めたサービスが充実していくでしょう。