障害者総合支援法は障害者と障害児を対象に平成25年に施行された法律です。
障害の有無にかかわらず地域で共生できる社会の実現に向けて総合的な支援をおこなうことが示された画期的な法律です。
今回の記事では、障害者総合支援法の内容や対象者、サービスの種類や利用方法を分かりやすく紹介していきます。
目次
障害者総合支援法は、正式名称を「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」といいます。
平成25年にそれまでの「障害者自立支援法」を「障害者総合支援法」へ名称変更し、障害者の定義に難病を追加したのが大きな変革の内容です。
障害者総合支援法についてより詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。
この法律の目的は、障害者及び障害児が基本的人権を享有する個人としての尊厳にふさわしい日常生活又は社会生活を営むこと、そして地域生活支援事業による支援を含めた総合的な支援を行うことです。
対象者の範囲は、次の通りです。
・身体障害者
・知的障害者
・精神障害者(発達障害者を含む)
・満18歳に満たない身体・知的・精神に障害のある児童(発達障害者を含む)
・政令で定める難病等により障害がある者で18歳以上のもの
国は難病について次の要件を満たすことを示しています。
・治療方法が確立していないこと
・長期の療養が必要であること
・診断に関し客観的な指標による一定 の基準が定まっていること
そのうち障害者総合支援法の対象となる疾病は366あり、障害者手帳の有無は利用に際して関係ありません。
障害者総合支援法による総合的な支援は、自立支援給付と地域生活支援事業で構成されています。
自立支援給付には、在宅で介護の支援を受ける「介護給付」や就職のための訓練などを受ける「訓練等給付」、医療費の支援である「自立支援医療制度」などがあります。
利用する場合はこれらの制度を組み合わせることができます。
地域生活支援事業は、市区町村や都道府県によっておこなわれる事業で障害者が地域での生活を過ごしやすくすることが目的となります。
日常生活を送るうえで必要な介助サービスを提供します。
訪問や日中活動、施設サービスなどの形態があります。
区分 | サービス種類 | |
訪問 | 居宅介護(ホームヘルプサービス) | 行動援護 |
重度訪問介護 | 重度障害者等包括支援 | |
同行援護 | ||
日中活動 | 短期入所(ショートステイ) | 生活介護 |
療養介護 | ||
施設 | 施設入所支援 |
訓練等給付とはリハビリテーションや就職に関するサービスをいいます。
自立訓練、就労支援、居住支援の3区分があり、日常生活や社会生活を営むための訓練などを提供します。
区分 | サービス種類 | |
自立訓練 | 機能訓練 | 生活訓練 |
就労支援 | 就労移行支援 | 就労定着支援 |
就労継続支援(A型・B型) | ||
居住支援 | 自立生活援助 | 共同生活援助(グループホーム) |
相談支援は、サービスを利用するためにおこなわれる「計画相談」と地域での関係機関との連携や生活支援をするための「地域相談」に分けられます。
区分 | サービス種類 | |
計画相談 | サービス利用支援 | 継続サービス利用支援 |
地域相談 | 地域移行支援 | 地域定着支援 |
自立支援医療には「精神通院医療」「更生医療)」「育成医療」の3種類があります。
障害の治療にかかる自己負担を少なくするために、自己負担額が1割に設定されています。
地域生活支援事業とは、障害のある方が地域で自立した日常生活や社会生活がおくれるよう、市区町村や都道府県が主体的におこなう事業をいいます。
地域の実情に合わせて柔軟な施策ができるよう自治体によって支援の内容は異なります。
お住まいの地域でどのようなサービスがあるのかは、自治体に確認してみましょう。
補装具とは、障害のある方が日常生活において必要な移動や動作をおこなうために用いる道具をいいます。
身体の欠損または損なわれた身体機能を補完・代替する杖や車いす、装具や装置など種類は多岐にわたります。
この制度では、補装具の購入や修理にかかった費用が、所得に応じて市区町村から支給されます。
障害児が利用できるサービスには、児童福祉法にもとづくものと障害者総合支援法にもとづくものに分かれています。
児童福祉法、障害者総合支援法のそれぞれで利用できるサービスを表で紹介します。
児童福祉法 | 障害者総合支援法 |
児童発達支援・医療型児童発達支援 | 居宅介護・重度障害者等包括支援 |
放課後等デイサービス | 同行援護・行動援護 |
居宅訪問型児童発達支援 | 短期入所 |
保育所等訪問支援 | 移動支援・日常生活用具給付 |
福祉型障害児入所・医療型障害児入所施設 | 自治体独自の支援サービス |
障害者福祉サービスの利用料金は、世帯全体の収入によって異なっていますが、最大でも1割負担となります。
所得を判断する際の世帯の範囲 | |
種別 | 世帯の範囲 |
18歳以上の障害者 (施設に入所する18,19歳を除く) | 障害のある方とその配偶者 |
障害児 (施設に入所する18,19歳を含む) | 保護者の属する住民基本台帳での世帯 |
所得に応じて次の4つに区分けされ、それぞれに自己負担の上限月額が設定されています。
ひと月に利用したサービス量に関係なく負担上限額を超えて利用料を支払う必要はありません。
区分 | 世帯の収入状況 | 負担上限月額 |
生活保護 | 生活保護受給世帯 | 0円 |
低所得 | 市町村民税非課税世帯 | 0円 |
一般1 | 市町村民税課税世帯(所得割16万円(未満) ※入所施設利用者(20歳以上)、グループホーム利用者除く | 9,300円 |
一般2 | 上記以外 | 37,200円 |
参考:厚生労働省
障害者サービスを利用する場合の窓口は市区町村の担当課となります。
ただし介護給付と訓練給付は流れが異なるので注意しましょう。
(介護給付の場合)
1.市区町村の窓口で利用申請
2.障害支援区分の認定が必要です
3.サービス等利用計画案の作成と提出
4.支給決定
5.利用開始
(訓練給付の場合)
1.市区町村の窓口で利用申請
2.サービス等利用計画案の作成と提出
3.暫定支給決定
4.支給決定
5.利用開始
介護給付、訓練給付はいずれも利用開始後に見直しをおこない、必要があれば計画の修正がおこなわれます。
障害のある方のニーズやペースにあった支援が重視されています。
障害者総合支援法は3年に一度、障害福祉サービス等報酬改定によって改定されます。
改定内容については、こちらの記事を参考にしてください。
障害者総合支援法の改正について、令和4年の最新の改正から平成30年の改正までポイントを解説!
障害者総合支援法に関するQ&Aをまとめました。
障碍者自立支援ほうが改正されたものが、障害者総合支援法です。
どのように変わったかこちらの記事で詳しく解説しています。
障害者自立支援法と障害者総合支援法とは?違いは?それぞれの特徴についてご紹介!
障害者自立支援法では、補聴器など日常生活に必要な福祉補助具を給付または貸与しています。
詳しくはこちらの記事を参考にしてください。
障害者総合支援法は、障害のある方の日常生活支援だけでなく、就労や地域移行など社会生活の支援をおこなう法律です。
この制度の特徴は、幅広いニーズに対して柔軟に対応できるよう相談支援や自立支援医療、地域生活支援事業など複数の事業が組み合わせできる点です。
市区町村が主体となり、地域や障害者の実態にあわせて、支援やサービスを用意しているので、利用希望や詳しく知りたい方は、一度担当課へ問い合わせてみましょう。