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訪問介護における人材不足への効果的な具体策事例|令和3年度介護報酬改定を踏まえて

元山 ゆず香

監修者

介護福祉士

元山 ゆず香

大学を卒業後、特別養護老人ホームにて現場業務に従事。その後、福祉系大手企業に入社し、エリアマネージャーとして、施設介護事業・居宅介護事業・障害福祉サービス事業でのエリアマネジメント・行政対応を経験。また、法人本部に異動し教育部門・監査担当部門の部長を歴任。現在は全国の介護・障害福祉事業所の支援やセミナーの開催、DXO株式会社での介護関連事業の支援などを実施。

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本記事では、【訪問介護員の人材不足】についての現状と、具体的な打開策について、事例を用いながら解説します。

結論、『賃金の引き上げ』、『業務の簡素化・効率化』、『社会的地位を向上させるようなビジョンを描くこと』が最も有効な対策になります。

訪問介護員の現状

厚生労働省より令和2年8月19日に、令和3年の介護報酬改定をめぐる協議を重ねている審議会の中で、2019年度の訪問介護員の有効求人倍率は15.03倍にのぼったとの報告がありました。

これは、訪問介護員の求職者1名に対し、15社が手をあげて待っているという計算になります。

◇第182回社会保障審議会介護給付費分科会資料◇

また、同会議では訪問介護員は高齢化も進んでいると言われており、60歳以上が39.2%を占めるに至り、70歳以上は全体の10.5%と1割を超えたと、厚生労働省が報告しました。(*)

4年前に示された同じ調査結果では、60歳以上が36.4%、70歳以上が6.6%であり、今後、歳を重ねて定年をむかえる訪問介護員が一段と増加していく見通しです。

* 2018年度の「介護労働実態調査」の結果より厚労省が集計。4年前は2015年度の同調査より集計。

この状況は全体的に人材不足が叫ばれている介護業界の中で最も深刻で、施設の職員と比較しても事態の深刻さは明らかです。

このような背景から厚労省は審議会で、ヘルパーの処遇改善、業務の効率化に向けた具体策を検討していくと説明していました。

また、現場の関係者で構成する委員からも、事態を好転させる手を早急に打つよう求める声が相次いでおり、次期改定の大きな焦点になるとみられます。

一方で、審議会の委員の中には、『処遇改善加算や特定処遇改善加算をうまく使えていないのではないか?』等、既存の制度を十分に活かしきれていないことに対する事業所に対しての厳しい意見があることも事実です。

他事業所に見る具体的な人材不足への対策事例

介護研修

時給をあげる

求人広告を見ていると、時給が高く設定されている事業所、そうでない事業所が並んでいます。

この時給の差は、『特定事業所加算』『処遇改善加算』『特定処遇改善加算』を取得しているか否かです。

取得している事業所は収入が高く、その分訪問介護員に還元することが可能であり、また訪問介護員の働きやすい環境を整えながら質の高いサービスを提供することが出来ます。

この対策の課題は、『加算に関する知識が必要』ということと、『効率的に業務運用を行わなければ、管理者とサービス提供責任者の負担が増える』ということです。

日給型等の固定給にする

9時から12時、12時から15時等、登録制という概念をなくし、『仕事がなくてもあっても時給を支払う』という方法をとられている事業所もあります。

3時間固定や、8時間固定の日給制で支払う形ですので、従来『ご利用者様が居なくなってしまうと収入がなくなる』という訪問介護員のマイナス面をカバーした対策と言えます。

この方法の課題としては、『ご利用者が居ない場合も給与支払いが発生する』ということです。

研修制度を充実させる・資格取得を支援する

ブランクのある方や、無資格者を対象として、資格の所持が必須である訪問介護の、求人の間口を広げている事業所もあります。

この場合の課題としては、研修を実施する職員やノウハウの確保、資格取得支援のための投資が必要になります。

業務効率化を図る

時給、勤務体制ではなく、『作業を減らすこと』で他社と差別化を図っている事業所もあります。

IT機器の導入等で訪問介護員の作業を簡素化し、『介護がやりたい』という根本的な訪問介護員のやりがいに目を向けた対応策です。

この場合の課題は、『導入のために投資が必要』ということですが、現在国もIT化を推奨していますので、助成金が充実している背景から、導入がしやすい状況です。

特定事業所加算、処遇・特定処遇改善加算取得・ITを用いた業務効率化をされた法人様の事例がありますので、こちらもご覧になってみてください。

改善実施 事例

1番効果的な対策は何か

合格基準

公益財団法人 介護労働安定センターが実施した、平成30年度介護労働実態調査「介護労働者の就業実態と就業意識調査結果報告書」によると、訪問介護員が望むことは以下の4つが上位を占めています。

  1. 基本給の引き上げ
  2. 賞与(ボーナス)の導入・引き上げ
  3. 能力や仕事ぶりに応じた評価の実施
  4. 勤務年数に応じた評価の実施

一方で、現在の不安や不満には、以下4つが上位を占めています。

  1. 人手が足りない
  2. 有給休暇が取りにくい
  3. 仕事内容のわりに賃金が低い
  4. 業務に対する社会的評価が低い

このことから、【賃金の引上げ】を行いながら【業務を簡素化・効率化】し、【社会的地位を向上】していけるような将来のビジョンを描ける事業所であることが、1番効果的であると言えます。

さいごに

特定事業所加算の取得事業所は全体の4割を超え、自治体も特定事業所加算の取得を推奨するようになってきました。

◇特定事業所加算の取得促進について◇

もともとこの特定事業所加算は、介護の質を向上させていくことを目的とし、訪問介護業界の発展を期待されて作られています。

訪問介護の将来のため、さらに質を向上させながら安定した経営を可能にするこの加算は、令和3年の報酬改定でも引き続き取得が推奨され、特定事業所加算が区分支給限度基準額の管理対象になる可能性が出てきたことも、大きく注目していくべき点です。

安定経営のためにも、業界の発展のためにも特定事業所加算の取得、業務のシステム化は次期報酬改定のキーワードです!

新型コロナウイルスの終息が見えない中、売上収益と人材確保に取り組む皆様を、最大限応援します!

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