介護報酬改定は3年に1度行われます。
2021年の介護報酬改定では、下記の5つの大きな目的が定められ、それぞれを達成するために具体的な改定が行われました。
1.感染症や災害への対応力強化
2.地域包括ケアシステムの推進
3.自立支援・重度化防止の取組の推進
4.介護人材の確保・介護現場の革新
5.制度の安定性・持続可能性の確保
参考:厚生労働省
今回の記事では、2021年の介護報酬改定について、5つの目的とそれぞれの具体的な改定内容、変更のあった加算を中心に徹底解説します。
目次
介護報酬改定は3年に1度、経済状況や介護事業所の経営状況など、介護に影響する全ての要素を総合的に判断して行われます。
改定内容は、介護職員の給与に大きく影響する基本報酬や処遇系加算の改定、介護事業所経営において重要な人員基準や加算要件の改定など幅広くなっています。
介護報酬改定について理解することは、介護に携わるすべての人にとって必要不可欠といえるでしょう。
介護報酬改定については、こちらの記事でより詳しく解説しています。
介護報酬改定を徹底解説!2021年/2022年/2024年の改定内容は?介護業界の流れを捉える!
2021年の介護報酬改定の改定率は「0.7%」でプラス改定となりました。
改定率とは、介護報酬の上げ幅、下げ幅のことなので、全体的に見て介護報酬は上がったということになります。
2021年介護報酬改定で、重点的に取り上げられたのは、新型コロナウイルスの影響を受け、感染症や災害などの緊急時でも介護事業を継続できるような対応力強化についてです。
その他にも、団塊世代がすべて75歳以上となる2025年に向けて、持続的にサービスを提供できるようにするため、地域包括ケアシステムの構築や、科学的介護の推進、介護人材の確保やictを導入するなど介護現場の革新について対応策が練られました。
引用:厚生労働省
2021年の介護報酬改定では、新型コロナウイルスの影響や、高齢化社会による要介護者の増加などの社会情勢に対応するため、以下の5つの目的を掲げそれぞれに対して具体的な改定を行っています。
1.感染症や災害への対応力強化
2.地域包括ケアシステムの推進
3.自立支援・重度化防止の取組の推進
4.介護人材の確保・介護現場の革新
5.制度の安定性・持続可能性の確保
この記事では、それぞれについて詳細に解説していきます。
「感染症や災害への対応力強化」は、昨今の新型コロナウイルスの影響により、介護事業所の倒産が相次いだことを受けて盛り込まれたものです。
感染症や災害が発生した場合であっても、利用者に必要なサービスが安定的・継続的に提供される体制を構築を目的としています。
感染症や災害への対応力強化の改定では、『日頃からの備えと業務継続に向けた取組の推進』として、下表の4つの取組が推進されています。
対象 | 具体的な改定内容 | |
①-1感染症対策の強化 | 全介護サービス | ・委員会の開催指針の整備 |
①-2業務継続に向けた取組の強化 | 全介護サービス | ・業務継続計画(BCP)等の策定 |
①-3災害への地域と連携した対応の強化 | 通所系 短期入所系 特定、施設系サービス | ・避難訓練等の実施 |
①-4通所介護等の事業所規模別の報酬等に関する対応 | 通所介護 通所リハビリテーション 地域密着型通所介護 認知症対応型通所介護 | ・感染症や災害の影響によって利用者数が減少した場合に、介護報酬について特例措置を設ける |
それぞれの取り組みについて解説していきます。
対象 | 具体的な内容 | |
①-1感染症対策の強化 | 全介護サービス | ・委員会の開催指針の整備 |
「感染症対策の強化」では、新型コロナウイルス等の感染症防止対策の徹底を目的として、表のような改定が行われました。
施設系サービスは3か月に1回以上、その他のサービスは6ヶ月に1回以上実施する必要があります。
(1部3年間の経過措置あり)
対象 | 具体的な内容 | |
①-2業務継続に向けた取組の強化 | 全介護サービス | ・業務継続計画(BCP)等の策定 |
「業務継続に向けた取り組みの強化」では、感染症や災害等の非常時においても介護サービスを継続して提供できる体制の構築を目的として、表のような改定が行われました。
(3年間の経過措置あり)
対象 | 具体的な内容 | |
①-3災害への地域と連携した対応の強化 | 通所系 短期入所系 特定、施設系サービス | ・避難訓練等の実施 |
「災害への地域と連携した対応の強化」では、非常災害対策が求められる介護サービス事業者を対象として、表のような改定が行われました。
対象 | 具体的な内容 | |
①-4通所介護等の事業所規模別の報酬等に関する対応 | 通所介護 通所リハビリテーション 地域密着型通所介護 認知症対応型通所介護 | ・感染症や災害の影響によって利用者数が減少した場合に、介護報酬について特例措置を設ける |
「通所介護等の事業所規模別の報酬等に関する対応」では、感染症や災害で利用者数が減少したとしても、安定して介護サービスを提供できるようにするために、表のような改定が行われました。
各事業所の規模別による報酬単価の算定方法、非常時の利用者減少に対応するための評価基準は下表のように定められました。
対象 | 評価基準 |
大規模型通所介護等 | ・延べ利用者数の減少が生じた月の実績を基礎として事業所規模別の報酬区分を決定 |
通所介護サービス | ・利用者数の減少が生じた月の実績が前年度の平均から5%減少した場合、基本報酬に3か月間+3%の加算 |
なお、上記の特例については2つ同時の取得は認められていないため、申請時には注意が必要です。
通所介護サービスに関する2021年介護報酬改定の詳しい内容に関しては、こちらの記事を参考にしてください。
地域包括ケアシステムは、住み慣れた地域において利用者の尊厳を保ちつつ、必要なサービスを切れ目なく提供できるようにすることを目的としています。
介護や医療、または住まいという観点から、市町村や自治体などが主体となって、各地域ごとに適したサービスを提供していくための取組です。
誰もが住み慣れた土地で自分らしい最後を迎えるためにも、地域と介護保険サービスの円滑な連携、および継続的なサービスの提供は必要不可欠となります。
2021年の介護報酬改定では、利用者の『尊厳の保持』と『自立支援』という主軸を維持しつつ、下表のような新たな取組が新設されました。
対象 | 具体的な内容 | |
②-1認知症への対応力向上に向けた取組の推進 | 訪問系サービス | ・認知症専門ケアの新設 |
多機能系サービス | ・認知症行動・心理症状緊急対応加算の新設 | |
全ての介護サービス | ・認知症介護基礎研修の受講を義務化 | |
②-2看取りへの対応の充実 | 介護医療院等 | ・『人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン』に沿った取組 基本報酬・看取りサービスに係る加算の算定 |
介護老人福祉施設 介護老人保健施設 介護付きホーム等 | ・死亡日以前30日前からの算定に追加して死亡日以前45日前からの対応を評価 | |
介護付きホーム | ・看取り期に夜勤・宿直の職員を配置することへの評価 | |
訪問介護サービス | ・看取り期の利用者にサービスを提供する場合の2時間ルールを緩和し所要時間を合算するのではなく基本の単位数として算定 | |
②-3医療と介護の連携の推進 | 居宅療養管理指導 | ・利用者の社会生活における支援 |
短期入所療養介護 | ・基本報酬の評価改善 | |
介護老人保健施設 | ・所定疾患施設療養費の見直し | |
介護医療院 | ・長期入院患者の受入促進 | |
介護療養型医療施設 | ・令和5年の廃止における期間内の定期的な移行状況の報告 | |
②-4在宅サービスの機能と連携の強化 | 訪問介護サービス | ・通院等乗降介助の際、同一事業者が行うことを条件に、居宅が始点か終点になる場合は目的地間の移送を算定に追加 |
訪問入浴介護サービス | ・初回サービス前の利用調整の評価/部分浴における減算の見直し | |
訪問看護サービス | ・主治医が認める場合は退院当日のサービス提供を算定 ・看護体制強化加算における要件と評価の見直し | |
認知症グループホーム 短期療養 多機能系サービス | ・緊急時短期利用における要件の見直し | |
②-5介護保険施設や高齢者住まいにおける対応の強化 | 短期入所系 施設系サービス | ・『概ね10人以下としなければならない』から、『原則として概ね10人以下とし15人を超えないもの』へと変更 |
②-6ケアマネジメントの質の向上と公平中立性の確保 | 居宅介護支援 | ・特定事業所加算に新たな区分を新設 |
介護予防支援 | ・居宅介護支援事業者との情報連携等における加算の新設 | |
②-7地域の特性に応じたサービスの確保 | 夜間対応型訪問介護 多機能系サービス等 | ・中山間地域等に係る加算の新設 |
認知症グループホーム | ・ユニット数の緩和 | |
多機能系サービス | ・過疎地域等における登録定員の超過において、市町村が認めた場合は減算を一定期間免除 |
それぞれの取り組みについて解説していきます。
対象 | 具体的な内容 | |
②-1認知症への対応力向上に向けた取組の推進 | 訪問系サービス | ・認知症専門ケアの新設 |
多機能系サービス | ・認知症行動・心理症状緊急対応加算の新設 | |
全ての介護サービス | ・認知症介護基礎研修の受講を義務化 |
「認知症への対応力向上に向けた取組の推進」では、介護業界全体の認知症への対応力の底上げ、および利用者やその家族の要望による緊急時の宿泊ニーズに対応可能な体制づくりを目的として、表のような改定が行われました。
対象 | 具体的な内容 | |
②-2看取りへの対応の充実 | 介護医療院等 | ・『人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン』に沿った取組 基本報酬・看取りサービスに係る加算の算定 |
介護老人福祉施設 介護老人保健施設 介護付きホーム等 | ・死亡日以前30日前からの算定に追加して死亡日以前45日前からの対応を評価 | |
介護付きホーム | ・看取り期に夜勤・宿直の職員を配置することへの評価 | |
訪問介護サービス | ・看取り期の利用者にサービスを提供する場合の2時間ルールを緩和し所要時間を合算するのではなく基本の単位数として算定 |
「看取りへの対応の充実」では、利用者本人やその家族との徹底した話し合いを前提として、関係者との連携を一層充実させるとともに、看取り対応の評価区分を見直すことを目的として表のような改定が行われました。
対象 | 具体的な内容 | |
②-3医療と介護の連携の推進 | 居宅療養管理指導 | ・利用者の社会生活における支援 |
短期入所療養介護 | ・基本報酬の評価改善 | |
介護老人保健施設 | ・所定疾患施設療養費の見直し | |
介護医療院 | ・長期入院患者の受入促進 | |
介護療養型医療施設 | ・令和5年の廃止における期間内の定期的な移行状況の報告 |
「医療と介護の連携の推進」では、多職種間の円滑な連携を主軸として、医師等によるケアマネージャーへの適切な情報提供、利用者への地域社会における支援、医療ニーズの受入促進、適切な医療の提供等を目的に、表のような改定が行われました。
居宅療養管理指導の改定内容についてより詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。
居宅療養管理指導に係る2021年介護報酬改定の改定内容を徹底解説!
対象 | 具体的な内容 | |
②-4在宅サービスの機能と連携の強化 | 訪問介護サービス | ・通院等乗降介助の際、同一事業者が行うことを条件に、居宅が始点か終点になる場合は目的地間の移送を算定に追加 |
訪問入浴介護サービス | ・初回サービス前の利用調整の評価/部分浴における減算の見直し | |
訪問看護サービス | ・主治医が認める場合は退院当日のサービス提供を算定 | |
認知症グループホーム 短期療養 多機能系サービス | ・緊急時短期利用における要件の見直し |
「在宅サービスの機能と連携の強化」では、利用者の負担軽減やニーズに配慮するとともに、在宅での療養環境の早期的な整備を目的として表のような改定が行われました。
対象 | 具体的な内容 | |
②-5介護保険施設や高齢者住まいにおける対応の強化 | 短期入所系 施設系サービス | ・『概ね10人以下としなければならない』から、『原則として概ね10人以下とし15人を超えないもの』へと変更 |
「介護保険施設や高齢者住まいにおける対応の強化」では、職員の定着とサービスの質に配慮し、個室ユニット型施設における1ユニットの定員の変更が行われました。
対象 | 具体的な内容 | |
②-6ケアマネジメントの質の向上と公平中立性の確保 | 居宅介護支援 | ・特定事業所加算に新たな区分を新設 |
介護予防支援 | ・居宅介護支援事業者との情報連携等における加算の新設 |
「ケアマネジメントの質の向上と公平中立性の確保」では、安定した経営と適切なケアマネジメントを維持しつつ、事業所間連携を強化することを目的として表のような改定が行われました。
新設された特定事業所加算(A)についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
特定事業所加算(A)とは?算定要件や事業所がするべきことについて徹底解説!
対象 | 具体的な内容 | |
②-7地域の特性に応じたサービスの確保 | 夜間対応型訪問介護 多機能系サービス等 | ・中山間地域等に係る加算の新設 |
認知症グループホーム | ・ユニット数の緩和 | |
多機能系サービス | ・過疎地域等における登録定員の超過において、市町村が認めた場合は減算を一定期間免除 |
「地域の特性に応じたサービスの確保」では、中山間地域や離島など、過疎地でのサービス提供を促進しつつ、各地域ごとの特性に適したサービスを確保することを目的として表のような改定が行われました。
「自立支援・重度化防止の取組の推進」は、制度の目的に沿って質の評価やデータ活用を行いながら、科学的に効果が裏付けられた質の高いサービスの提供することが目的です。
ポイントとなるのは、『科学的介護』と情報の統合です。
これまでは、『CHASE』や『VISIT』というシステムを用いて、利用者の情報とリハビリテーションに係る情報を別々に収集するのが通常でした。
しかし、2021年から新たなデータベース『LIFE』が構築され、2つの情報が統合されたことで、より効率的なサービス提供が期待できるようになりました。
また、状態改善等(アウトカム)を対象とした評価区分の新設や、既存の加算要件を基本サービスとして盛り込む動きも見逃せません。
対象 | 具体的な内容 | |
③-1リハビリテーション・機能訓練、口腔、栄養の取組の連携・強化 | 施設系サービス | ・口腔衛生管理体制加算の廃止 ・口腔衛生の管理体制を整備 ・栄養マネジメント加算・低栄養リスク改善加算の廃止 ・利用者の状態に応じた栄養管理の実施 |
訪問リハビリテーション 通所リハビリテーション | ・リハビリテーションマネジメント加算(Ⅰ)の廃止 ・基本報酬の算定要件変更・新設 | |
通所系 多機能系 居住系サービス | ・口腔・栄養スクリーニングの実施を評価 | |
通所介護 特養等 | ・生活機能向上連携加算において、外部の専門職等に利用者の状態を提供する際、ICTの活用等における評価区分の新設 | |
通所介護サービス | ・個別機能訓練加算における要件の見直し | |
③-2介護サービスの質の評価と科学的介護の取組の推進 | 全介護サービス事業者 | ・CHASE・VISIT(LIFE)による情報提出とフィードバックの活用を推奨 |
施設系 通所系 多機能系サービス等 | ・CHASE・VISIT(LIFE)による情報提出とフィードバックを活用する取組の評価 | |
地域密着型通所介護 認知症対応型通所介護等 | ・ADL維持等加算の対象を拡大 | |
介護老人保健施設 | ・在宅復帰・在宅療養支援等評価指標の見直し(6か月間の経過措置あり) | |
③-3寝たきり防止等、重度化防止の取組の推進 | 施設系サービス | ・利用者に対する医学的評価を基準にした日々のアセスメント ・日常生活における計画に沿ったケアの実施を評価 ・既存の加算に状態改善等(アウトカム)を評価対象とする区分の新設 |
対象 | 具体的な内容 | |
③-1リハビリテーション・機能訓練、口腔、栄養の取組の連携・強化 | 施設系サービス | ・口腔衛生管理体制加算の廃止 |
訪問リハビリテーション 通所リハビリテーション | ・リハビリテーションマネジメント加算(Ⅰ)の廃止 | |
通所系 多機能系 居住系サービス | ・口腔・栄養スクリーニングの実施を評価 | |
通所介護 特養等 | ・生活機能向上連携加算において、外部の専門職等に利用者の状態を提供する際、ICTの活用等における評価区分の新設 | |
通所介護サービス | ・個別機能訓練加算における要件の見直し |
「リハビリテーション・機能訓練、口腔、栄養の取組の連携・強化」は、自立支援と重度化防止の観点から、より質の高いサービス提供を目的として、表のような改定が行われました。
特に既存の加算や算定要件については大幅な改定がみられます。
【通所リハビリテーションの改定内容については、こちらの記事で詳しく解説しています。】
令和3年度の通所リハビリテーションの介護報酬改定まとめ!改訂内容は?
【訪問リハビリテーションの改定内容については、こちらの記事で詳しく解説しています。】
【2021年介護報酬改定】訪問リハビリの改定内容について徹底解説!
【通所介護の生活機能向上連携加算については、こちらの記事で詳しく解説しています。】
介護報酬改定2021における通所介護の機能訓練計画書について徹底解説!
対象 | 具体的な内容 | |
③-2介護サービスの質の評価と科学的介護の取組の推進 | 全介護サービス事業者 | ・CHASE・VISIT(LIFE)による情報提出とフィードバックの活用を推奨 |
施設系 通所系 多機能系サービス等 | ・CHASE・VISIT(LIFE)による情報提出とフィードバックを活用する取組の評価 | |
地域密着型通所介護 認知症対応型通所介護等 | ・ADL維持等加算の対象を拡大 | |
介護老人保健施設 | ・在宅復帰・在宅療養支援等評価指標の見直し(6か月間の経過措置あり) |
CHASE・VISIT(LIFE)の活用によるPCDAサイクルの推進と提供サービスの質を向上させるとともに、在宅復帰率の推進を目的として表のような改定が行われました。
対象 | 具体的な内容 | |
③-3寝たきり防止等、重度化防止の取組の推進 | 施設系サービス | ・利用者に対する医学的評価を基準にした日々のアセスメント |
利用者の尊厳を保持しつつ、自立支援と重度化防止を目的として表のような改定が行われました。
「介護人材の確保・介護現場の革新」は、喫緊・重要な課題として、介護人材の確保・介護現場の革新に対応することを目的としています。
介護現場において避けては通れない課題の一つが、『介護人材の確保』です。
2009年(平成21年)の介護報酬改定から『介護従事者の人材確保・処遇改善』として取組が実施され、過去の改定でも喫緊した課題として議論の中心となってきましたが、現実としてはやはり厳しい状況が続いています。
大幅な処遇改善はみられませんでしたが、深刻化する人員不足を改善するという観点から、今回の改定でも力を入れた取組がいくつかみられました。
改定内容は下表のとおりです。
対象 | 具体的な内容 | |
④-1介護職員の処遇改善や職場環境の改善に向けた取組の推進 | 特定処遇改善加算/介護職員処遇改善加算の対象となる事業所・サービス | ・賃金改善額の分配ルールの見直し |
サービス提供体制強化加算の対象となる事業所・サービス | ・介護福祉士の割合や勤続年数の長い職員を配置する評価に新たな区分を新設 | |
全介護サービス | ・週30時間以上の短時間勤務等の場合でも「常勤」と認める | |
④-2テクノロジーの活用や人員基準・運営基準の緩和を通じた業務効率化・業務負担軽減の推進 | 介護老人福祉施設 短期入所者生活介護等 | ・見守り機器の導入割合を緩和 |
全介護サービス | ・テレビ電話等を活用した各種会議等の実施を認める | |
居宅療養管理指導 | ・情報通信機器を利用した服薬指導を評価 | |
④-3文書負担軽減や手続きの効率化による介護現場の業務負担軽減 | 全介護サービス | ・利用者等への説明・同意、および記録の交付・保存等における電磁的な対応を認める |
対象 | 具体的な内容 | |
④-1介護職員の処遇改善や職場環境の改善に向けた取組の推進 | 特定処遇改善加算/介護職員処遇改善加算の対象となる事業所・サービス | ・賃金改善額の分配ルールの見直し |
サービス提供体制強化加算の対象となる事業所・サービス | ・介護福祉士の割合や勤続年数の長い職員を配置する評価に新たな区分を新設 | |
全介護サービス | ・週30時間以上の短時間勤務等の場合でも「常勤」と認める |
職員のキャリアアップや職場環境の改善、それに加えて提供サービスの質を向上させるといった目的から、これまでの加算要件等を維持しつつ、より公平性のあるシステムへと変更するため、表のような改定が行われました
対象 | 具体的な内容 | |
④-2テクノロジーの活用や人員基準・運営基準の緩和を通じた業務効率化・業務負担軽減の推進 | 介護老人福祉施設 短期入所者生活介護等 | ・見守り機器の導入割合を緩和 |
全介護サービス | ・テレビ電話等を活用した各種会議等の実施を認める | |
居宅療養管理指導 | ・情報通信機器を利用した服薬指導を評価 |
テクノロジーの活用による業務の効率化、および感染症対策に配慮した多職種間の連携を推進しつつ、深刻化する人員不足や定着率の改善を目的に、表のような改定が行われました
対象 | 具体的な内容 | |
④-3文書負担軽減や手続きの効率化による介護現場の業務負担軽減 | 全介護サービス | ・利用者等への説明・同意、および記録の交付・保存等における電磁的な対応を認める |
職員の業務負担を軽減することを目的として、表のような改定が行われました。
必要なサービスは確保しつつ、適正化・重点化を図ることを目的としています。
少子高齢化の進行により、介護や保険料における利用者の負担は増加する一方です。
そのような背景から、ここでは、サービス提供の効率化と制度の見直しに重きを置いて、複雑化する要件の改善、取得率の低い加算等を見直すための取組が行われました。
なかでも、特筆すべきは『囲い込み』への対策です。一部のサービス付き高齢者向け住宅では特定の利用者を囲い込み、過剰なサービス提供や同じ系列の事業者サービスを利用させるといった行為が問題となっています。
そのため、今回の改定では区分支給限度基準額の割合が高い利用者のケアプランを点検するといった措置もみられました。
また、廃止となった加算や基本報酬の見直しを把握しておくことは、サービス提供における需要を知るとともに、国が求める基準を見定めることにつながります。
対象 | 具体的な内容 | |
⑤-1評価の適正化・重点化 | 介護療養型医療施設 | ・令和5年の廃止における基本報酬の見直し |
処遇改善加算の対象となる事業所・サービス | ・上位区分の新設により現行の一部区分を廃止 | |
介護予防訪問リハビリテーション/介護予防通所リハビリテーション | ・1年以上の長期訪問を減算の対象とする | |
住宅介護支援(サービス付き高齢者向け住宅等) | ・一部の利用者に対するケアプランの点検・検証 | |
⑤-2報酬体系の簡素化 | 療養通所介護 | ・日単位報酬体系から月単位包括報酬へ変更 |
通所リハビリテーション 訪問リハビリテーション | ・リハビリテーションマネジメント加算(Ⅰ)の廃止 | |
施設系サービス | ・口腔衛生管理体制加算・栄養マネジメント加算を廃止し、基本報酬として評価 |
対象 | 具体的な内容 | |
⑤-1評価の適正化・重点化 | 介護療養型医療施設 | ・令和5年の廃止における基本報酬の見直し |
処遇改善加算の対象となる事業所・サービス | ・上位区分の新設により現行の一部区分を廃止 | |
介護予防訪問リハビリテーション/介護予防通所リハビリテーション | ・1年以上の長期訪問を減算の対象とする | |
住宅介護支援(サービス付き高齢者向け住宅等) | ・一部の利用者に対するケアプランの点検・検証 |
「評価の適正化・重点化」では、職員の事務負担を考慮しつつ、利用者に対する公平なサービス提供を確保し、サービス内容の点検等を目的に、表のような改定が行われました。
対象 | 具体的な内容 | |
⑤-2報酬体系の簡素化 | 療養通所介護 | ・日単位報酬体系から月単位包括報酬へ変更 |
通所リハビリテーション 訪問リハビリテーション | ・リハビリテーションマネジメント加算(Ⅰ)の廃止 | |
施設系サービス | ・口腔衛生管理体制加算・栄養マネジメント加算を廃止し、基本報酬として評価 |
「報酬体系の簡素化」では、利用者の状態に適したサービス提供を目的として、表のような改定が行われました。
5つの目的の見出しでも触れましたが、新たに追加された加算など変更のあった加算について、表にまとめました。
加算を算定することは、事業所経営において最も重要であると言っても過言ではありません。
2021年で変更点のあった加算をしっかりと抑えて、よりよい事業所経営を目指しましょう。
2021年の改定で外せないポイントとなるのは、やはりLIFEの導入です。
新設された加算の算定要件においてもLIFEの活用が必要となる項目がいくつかみられました。
下記の表は新設された加算の一例です。
加算名 | 対象 | 要件の概要 |
科学的介護推進体制加算 | 施設系 通所系 多機能系サービス等 | ・利用者の心身に関する情報をLIFEにて提出、フィードバックをもとにサービスの改善 |
口腔・栄養スクリーニング加算 | 通所系 多機能系 居住系サービス | ・利用者の口腔機能を定期的に確認し、健康状態や改善情報等を担当ケアマネジャーに提供 |
栄養マネジメント強化加算 | 施設系サービス | ・前年度の平均入所者数50人に対し、1人以上の栄養管理士を配置。利用者ごとの栄養状態等をLIFEにより提出 |
今回の改定で見直された加算の一例です。
加算名 | 改定前の対象・要件 | 改定後の対象・要件 |
看取り系加算 | 死亡日以前30日前からの算定 | ・31日~45日前までを算定/介護付きホームにおける看取り介護加算(Ⅱ)の新設 |
認知症専門ケア加算 | 施設系/短期入所系/居住系サービスが対象 | ・訪問系サービス(訪問介護/訪問入浴介護/定期巡回・随時対応型/夜間対応型訪問介護)を対象へと追加 |
生活機能向上連携加算 | リハビリテーションを実施している専門の医師や理学療法士などの助言をもとにサービスを提供 | ・現行の要件に加え、ICTの活用等による評価区分の新設 |
サービス提供体制強化加算 | 勤続3年以上の職員30%以上/職員のうち介護福祉士の割合が40%~50%以上 | ・勤続7年以上の職員30%以上に見直し/介護福祉士50%~70%以上 ・勤続10年以上の介護福祉士25%以上の区分を新設 |
拡大された加算については、主に状態改善等(アウトカム)評価系加算が目立ちます。
引き上げとなった単位数、および追加となった対象サービスを表にまとめました。
加算名 | 改定前の単位 | 改定後の単位・対象 |
ADL維持等加算 | 月:+3~6単位 | ・月:+30~60単位/介護老人福祉施設等を対象へと追加 |
褥瘡マネジメント加算 | 月:+10単位/3月に1度 | ・月:+3~13単位/毎月の算定/看護小規模多機能型居宅介護を対象へと追加 |
排せつ支援加算 | 月:+100単位/6月を期限 | ・月:+10~20単位/期限を設けない/看護小規模多機能型居宅介護を対象へと追加 |
提供サービスの質を向上させるとともに、職員の負担を軽減させるという目的から、テクノロジーの活用が推進されています。
ICTの導入や見守り機器の活用等は今後の改定でも注目すべきポイントの一つとなるでしょう。
推進される加算 | 要件の概要 |
テクノロジーの活用 | ・見守り機器の導入割合を緩和 |
基本報酬の改定についてはこちらの記事で解説しています。
介護報酬改定を反映した2021年の単位数は?基本報酬や加算減算の変更点について徹底解説!
介護報酬改定は3年1度行われますが、2022年のように臨時で介護報酬改定が行われる場合もあります。
介護報酬改定を理解する際には、直近の介護報酬改定については流れを知っておくことでより理解が深まります。
その他の年度の介護報酬改定については、下記の記事で詳しく解説しています。
【令和4年度】2022年の介護報酬改定について徹底解説!改訂内容とは?
介護報酬改定は何年ごと?歴史・対応するべきこと・背景を徹底解説!
今回の記事では、2021年の介護報酬改定について、5つの目的とそれぞれの具体的な改定内容について解説しました。
今後の介護報酬改定では、介護人材の確保等といったこれまでの課題に加えて、アウトカム評価の拡大やテクノロジーの活用といった要素も評価の対象となることが考えられます。
介護業界の流れに柔軟に対応していくためにも、現行の制度をよく理解し、将来に備えておくことが重要となるでしょう。
参考:厚生労働省