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要介護1 要介護2 介護保険から外れる?【総合支援事業への移行を予測】

元山 ゆず香

監修者

介護福祉士

元山 ゆず香

大学を卒業後、特別養護老人ホームにて現場業務に従事。その後、福祉系大手企業に入社し、エリアマネージャーとして、施設介護事業・居宅介護事業・障害福祉サービス事業でのエリアマネジメント・行政対応を経験。また、法人本部に異動し教育部門・監査担当部門の部長を歴任。現在は全国の介護・障害福祉事業所の支援やセミナーの開催、DXO株式会社での介護関連事業の支援などを実施。

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この記事では、各社のニュースで話題となっている要介護1.2の方達が総合事業へと移行するかどうかについてご紹介していきます。

要介護1 要介護2が総合事業へ移行するという話の出どころは?

令和4年5月25日の財務省における財政制度等審議会にて以下の内容が議論にあがりました。

令和4年10月現在、決定事項ではないものの社会保障制度全体の財政としては検討していくべきとされているのが現状です。

【議論の内容】

『要支援者に対する訪問介護、通所介護については、地域の実情に応じた多様な主体による効果的・効率的なサービス提供を行う観点から、地域支援事業へ移行したところであり、平成 30 年(2018 年)3月末に移行が完了した。
要介護1・2への訪問介護・通所介護についても、生活援助型サービスをはじめとして、全国一律の基準ではなく地域の実情に合わせた多様な人材・多様な資源を活用したサービス提供を可能にすることが効果的・効率的である。
先に述べた地域支援事業の在り方の見直しに取り組みつつ、第9期介護保険事業計画期間に向けて、要介護1・2への訪問介護・通所介護についても地域支援事業への移行を検討し、生活援助型サービスをはじめとして、全国一律の基準ではなく地域の実情に合わせた多様な人材・多様な資源を活用したサービス提供を可能にすべきである。』

引用:歴史の転換点における財政運営

現在、厚生労働省の介護保険部会でもこの議論が白熱しており、令和4年9月26日に開催された第98回社会保障審議会介護保険部会では、『要介護1,2は軽度者ではない』『認知症等の特別な理由がある場合が多く慎重になるべきだ』との意見が出ています。

総合事業とは?

介護や生活支援を必要とする高齢者や、単身生活者や高齢者のみの世帯が増える中、生活の継続に必要な買い物や掃除の支援、高齢者が生きがいを持って参加できる活動が、これまで以上に必要になると見込まれる中で、従来のホームヘルプやデイサービスだけではなく、住民が実施する取組も含めた、多様な担い手による高齢者の支援体制を、地域の中に作っていくことが必要だという背景から平成29年4月から開始している制度です。

使用できる支援の内容や料金は、各市町村の地域の実情によって設定されています。

総合事業の対象者は?

まず総合事業は「介護予防・生活支援サービス事業」と「一般介護予防事業」に分類されます。

「介護予防・生活支援サービス事業」

【対象者】

  1. 要支援者
  2. 基本チェックリスト該当者(介護予防・生活支援サービス事業対象者)

「基本チェックリスト」とは、高齢者が自身で生活機能に低下があるかどうかをチェックする質問リストのことで、日常生活の様子や身体機能の状態、栄養状態、外出頻度などを確認する25項目の質問で構成されています。

【サービス内容】

  1. 訪問型サービス
  2. 通所型サービス
  3. その他の生活支援サービス
  4. 介護予防支援事業(ケアマネジメント)

一般介護予防事業

【対象者】

一般介護予防事業の対象者は、第1号被保険者の全ての者及びその支援のための活動に関わる者が対象となります。

【サービス内容】

  1. 介護予防把握事業
  2. 介護予防普及啓発事業
  3. 地域介護予防活動支援事業
  4. 一般介護予防事業評価事業
  5. 地域リハビリテーション活動支援事業

総合事業の財政状況は?

令和4年5月25日に議論されている内容を読むと、要介護1,2の利用者は総合事業に移行すべきと言いながら、『総合事業の予算について、上限を超えないよう市町村へ強く求めていく』とも話されており、上限いっぱいのはずである総合事業へ要介護1,2の利用者を移行させるという矛盾が目につきます。

●軽度者(要介護1.2)へのサービスの地域支援事業への移行等

要介護1.2の軽度者に分類されているご利用者の支援を『総合事業に移行すべき』という議論がされている。

●地域支援事業のあり方の見直し

相当数の市町村が上限を超えているため、法的な整備を強めて管理していくとしており、2024年の介護報酬改定を待たずに、令和4年3月にすでに見直しが実施されている。

要介護1.2が総合事業へ? 要支援はどこへ?

各社のニュースを見ていると、決定事項のように話されたりしていますが、現在は議論されている状態ですので、本日現在は決定事項ではありません。

しかしながらこの議論については、2021年度の介護報酬改定の前から議論が行われており、2040年に向けた社会保障全体の改定を鑑みてもいずれは実行される可能性が高いものと認知されています。

要介護1.2の方達が上限いっぱいいっぱいの総合事業へ移行された場合、現在の要支援者はどこに行くのか?と言うと、民間の支援を受けることとなることが予想されます。

ただし、特別養護老人ホームと同様に『認知症』『看取り』等、特別な配慮が必要な方達についてはこの制限から外れることが予想されます。

また、状況によっては訪問介護の『生活援助のみ』が総合事業へ移行される等の可能性も考えられています。

2024年に実行されるのか?

2015年に開始した特別養護老人ホームの入居者要件『要介護3以上』が実施された際は、1つ前の2012年の介護報酬改定で特別養護老人ホームは『中重度に特化したサービスてある』と明確にされるという1ステップを踏んでいます。

また、総合事業の創設時は『数年かけて段階的に行われた』ということから、今回も段階的に行われることが予想出来ます。

振り返ると、居宅介護支援は要介護3以上と以下で介護報酬が異なりますし、加算をはじめとする介護報酬制度の中では要介護3以上と以下で分けれられている報酬が数多く存在します。

2040年に向けて、将来的には『要介護3以上の方のみ』が介護給付の対象に絞られることや、『身体介護のみ』が介護給付の対象となることが考えられるため、『介護』という言葉の定義自体が変わる可能性が高いです。

総合事業の対象者はヘルパーしか支援が出来ない?

国は、2040年に向けて介護報酬改定を重ねて制度の設計を行っています。

現在75歳になられている方達と、2040年に75歳を迎えられる方達では、生きてきた生活の背景や状況が異なります。

例えば、現在75歳の方々は20歳をすぎてからマクドナルドの1号店、コンビニの1号店、カップラーメンの発売等、外食になじみがない状態から目覚ましい日本経済の発展の中を生き抜いてこられました。

一方、2040年に75歳を迎えられる方達は現在57歳、ドラム式の全自動洗濯機や宅配クリーニング、クイックルワイパーやお掃除ロボット、食洗器等も通常の生活で使用され、食事も惣菜や宅配、買い物はインターネットを使用されることに抵抗が無い世代だと言えます。

現在は『日常当たり前として手作り』が望まれる介護も、2040年には『日常当たり前として宅配』が望まれる介護へと変貌を遂げることは間違いありません。

こうなった場合に、『手作り』は介護ではなく『贅沢なもの』となれば、これは介護保険の対象外とされてしまうことになります。

まとめ

本日は要支援1,2の方達が総合事業へ移行するという噂について、現在の国による議論の内容をご紹介してまいりました。

今後はさらに厚生労働省内で介護報酬改定に向けた議論が進んでいきますので、動向の共有を皆さんとさせて頂けたらと思います。

お役立ち資料:介護報酬改定に備えたい方に

介護事業所向けに2024年の介護報酬改定に関する情報をまとめました。
2024年の介護報酬改定に向けて、事前に準備をしておきたいという方は、ぜひご一読ください。
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