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【専門家が回答】部屋が狭いのですが…介護ベッドは置けますか?

2024-11-22

野田 晃司

著者

作業療法士

野田 晃司

専門学校を卒業後にリハビリテーション病院の回復期病棟に勤務。その後、複数の介護事業所を運営する会社に入社。2箇所のデイサービス立ち上げを経験後、会社役員兼デイサービス管理者として約8年間従事。デイサービスのSNS発信が注目され、テレビや新聞などのメディアから取材を受ける。その経験をもとに多方面で講演会やセミナーの講師として活動中。Webライターとしても活動し、数多くの記事を執筆している。

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介護ベッドを検討している方の中には、部屋が狭いことで困っている方も多いのではないでしょうか。実際、介護ベッドは通常のベッドよりも大きい商品も多いため、限られたスペースに設置する際は慎重な判断が必要です。

この記事では、介護の専門家の視点から、狭い部屋でも介護ベッドを無理なく設置するためのポイントや注意点について解説します。

事例:部屋が狭くて介護ベッドを置こうか迷っています

母親の介護をしているAさんは、体力も落ちてきたことで、移乗などの介護が難しくなってきました。介護負担を軽減するため、自宅に介護ベッドの導入を検討しているのですが、自宅の中にベッドを置けるスペースが3畳ほどのスペースしかないことで困っています。狭いスペースに介護ベッドを置く際には、どんなことに注意すればよいのでしょうか?

回答:3畳あれば設置できますが…車椅子に要注意

昇降機能付きの介護ベッドでも平均的なサイズは、幅約90cm〜100cmで、長さ約190cm〜205cmです。一方、3畳分の広さは、幅176〜191cm、長さ264〜287cmであるため、サイズ的には問題なく入ります。

また、介護ベッドの中には組み立て式のベッドもあるため、ベッドの種類を選ばなければ搬入も大きな問題になることはありません。ただし、車椅子で生活している方の場合は、ベッドサイドまで車椅子で移動しなければいけないため、介助者が入れるほどのスペースも確保する必要があります。その場合は3畳のスペースでは、かなり不便を感じる可能性があるため注意しましょう。

介護ベッドを選ぶ際のポイント

介護ベッドを選ぶ際には、使用目的を明確にすることが重要です。目的を明確にした上で、個々の身体機能に合った最適なベッドを使用しなければ、けがなどのリスクが高くなるため注意しましょう。ここでは、介護ベッドを選ぶ際のポイントについて解説します。

将来を見越して長期的に使える介護ベッドが欲しい

介護ベッドを選ぶ際には、将来的に身体機能が低下することを見据えて、さまざまな機能が搭載されたベッドを選ぶのもひとつの方法です。例えば、介護ベッドの中には、ベッドの高さを変更できる昇降機能や、頭部や足部の昇降機能がついているものもあります。これらの機能によって、将来的に介護負担が大きくなった場合でも使い続けられます。

ただし、これらの多機能ベッドは値段が高く、移動も大変です。将来を見越してたくさんの機能がついたものを選んでもよいのですが、使う人の体の状態に合わせて、必要な機能だけを備えたシンプルなベッドを選択することも大切です。一方で、どれが必要な機能なのか自分で判断するのは難しいと感じる人も多いでしょう。その場合は、介護に詳しい人からアドバイスを参考にして決めることをおすすめします。

どんなサイズのベッドを選べばいいのかわからない

介護ベッドのサイズを選ぶ際には、実際に使う人だけでなく、介護する人の立場で考えることも重要です。狭いスペースにベッドを設置した場合、ベッド回りのスペースが狭くなりがちです。ベッドの周りが狭すぎると、スムーズな介助ができない可能性もあります。もし、周囲のスペースを確保できないのであれば、あえて小さめの介護ベッドを選ぶのもひとつの手段です。

ただし、小さいベッドだと転落の危険が高くなるため、注意が必要です。ベッドのサイズを決めるときは、使う本人が快適で、介護する人も作業しやすい大きさを選びましょう。

使い勝手のいいベッドを選びたい

多機能付きの介護ベッドでも、実際に使う人や介護する人にとって使いにくいと感じる場合もあります。例えば、ベッド柵の取り外しが面倒だったり、ベッドを昇降させるときの音がうるさかったりと、ベッドに搭載された機能とは別の面で使いづらさを感じる場合もあるでしょう。

介護ベッドを最も長く使うのは、実際に寝ている人や直接介護する家族などです。どんなに優れた機能があっても、実際に使う人が不便と感じれば意味がありません。機能の豊富さだけでなく、実際に使う人の使い勝手を考えることが最も重要です。

介護しやすいお部屋のレイアウトを決めるポイント

最適な介護ベッドを選んだ場合でも、部屋全体のレイアウトができていないと、実際に介護する際に困ります。ここでは、介護しやすいお部屋のレイアウトを考える際に意識すべきポイントについて解説します。

自宅内での移動経路を考える

介護をおこなう中で最も重要なのは、移動経路です。例えば、部屋からトイレに行くまでは、介護者が介助しやすい移動経路を考える必要があります。経路を考えずにベッドを設置してしまうと、介護の効率が悪くなり、最悪の場合は転倒などの事故に繋がる可能性があるからです。

日常生活で移動する行動範囲を予測した上で、ベッドの位置を決定しましょう。特に、ベッドは、一度場所を決定した後の移動が大変です。設置後に移動する手間を省くためにも、部屋のレイアウトから慎重に考えることが重要です。

できればベッドの両サイドを空ける

介護ベッドを配置する際には、できるだけベッドの両サイドを空けるようにしましょう。両サイドを空けることで、シーツ交換や介護をしやすくなります。部屋が狭くてスペースを確保できない場合は仕方ありませんが、もし可能なら両側に十分なスペースを設けることをおすすめします。

寝る人が過ごしやすい配置にする

ベッドを使う時間が長いのは、実際にそのベッドで寝る方です。そのため、介護を受ける方が快適に過ごせるように配置を考えましょう。例えば、テレビが見やすい場所にベッドを置くことや、家族を呼びやすい位置にベッドを配置するなど、ちょっとした工夫が重要です。

こうした配慮をすることで、安全性も確保できます。逆に、寝る人の過ごしやすさを無視して配置した場合、自分で動こうとしてベッドから転落する可能性もあります。ベッドサイドでの事故を防ぐためにも、介護を受ける方が過ごしやすい配置を考えましょう。

どうしても介護ベッドを置けるスペースがない場合

部屋に介護ベッドを置くスペースが足りない場合は、住宅のリフォームや改修をする方法もあります。

ただし、介護の専門家ではない方が部屋のレイアウトから考えるのは難しいため、福祉用具の専門家などに相談して決めることが大切です。ここでは、介護ベッドを配置するスペースがない場合の対策についても解説します。

福祉用具の専門家に相談する

福祉用具の専門家は、ベッドの配置や部屋の使い方を改善し、スペース不足の問題を解決してくれます。さまざまな事例を元に、実際に介護をする際の行動スペースなどを想定した上で最適なレイアウトを提案してくれるため、まずは福祉用具の専門家に相談するのがよいでしょう。

リフォームを検討する

どうしても介護ベッドを置くスペースが確保できない場合は、リフォームを検討しましょう。ただし、介護を目的としたリフォームは、介護に関する専門知識が必要不可欠です。一般的な工務店に依頼するだけでなく、ケアマネジャーや市役所の介護福祉課に相談し、計画的に進めることが重要です。

もし、身近に介護の専門家がいないのであれば、必ず担当のケアマネジャーや市役所にある介護福祉課の窓口へ相談しましょう。リフォームは費用が大きくなってしまうため、失敗すると大きな損失が発生する可能性もあります。

補助制度は積極的に活用する

各自治体によっては、介護目的のリフォームに対して、補助制度があります。また、介護保険制度でも住宅改修費用を補助してくれるため、こうした補助制度は積極的に利用しましょう。介護保険制度でも住宅改修費の補助は以下の通りです。

支給上限額自己負担額住宅改修の種類
介護保険制度最大18万円1割
  • 手すりの取付け
  • 段差の解消
  • 滑りの防止及び移動の円滑化等のための床又は通路面の材料の変更
  • 引き戸等への扉の取替え
  • 洋式便器等への便器の取替え
  • その他前各号の住宅改修に付帯して必要となる住宅改修

引用:厚生労働省「福祉用具・住宅改修」

介護保険を利用してリフォームする際は、一旦全額を負担した後に給付されるため、事前にリフォーム資金を準備しておきましょう。また、市区町村がやっている補助制度については、自治体ごとに申請方法や補助額などが異なるため、詳しくは各自治体窓口へ問い合わせましょう。

まとめ:狭い部屋に介護ベッドを入れるなら専門家へ相談しましょう

狭い部屋に介護ベッドを設置する際には、スペースの問題や適切な配置に悩む方も多いでしょう。

介護ベッドの選び方や配置は、介護を受ける方と介護者の両方にとって不便さを感じないように配慮することが大切です。しかし、介護に詳しくない方が、最適な介護ベッドや部屋のレイアウトを決めるのは難しいでしょう。

もし、狭いスペースに対してどのように介護ベッドを設置すべきか悩んだ場合は、福祉用具の専門家や介護の専門家に相談することをおすすめします。専門家にアドバイスをもらいながら、快適で安全な介護環境を整えるようにしましょう。

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