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介護予防訪問入浴介護とは?指定訪問入浴介護との違いや利用の流れを解説

2024-10-24

元山 ゆず香

監修者

介護福祉士

元山 ゆず香

大学を卒業後、特別養護老人ホームにて現場業務に従事。その後、福祉系大手企業に入社し、エリアマネージャーとして、施設介護事業・居宅介護事業・障害福祉サービス事業でのエリアマネジメント・行政対応を経験。また、法人本部に異動し教育部門・監査担当部門の部長を歴任。現在は全国の介護・障害福祉事業所の支援やセミナーの開催、DXO株式会社での介護関連事業の支援などを実施。

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介護予防訪問入浴とは、要支援の方を対象とした訪問入浴サービスです。自宅の浴槽で入浴ができない要支援認定者の自宅を訪問し、専用の浴槽を使って入浴サービスを提供します。

訪問入浴サービスというと、浴槽をまたぐことができない重度な高齢者が対象になると考える方も多いと思います。

しかし、実際は要支援認定の方でも訪問入浴が必要な状況もあります。介護予防訪問入浴介護はそのような方を対象にした在宅介護サービスです。本記事では介護予防訪問入浴について、訪問入浴介護との違いを含めて詳しく解説します。

介護予防訪問入浴介護とは?

まず、介護予防訪問入浴介護のサービスはどのようなサービスか、サービスの概要を解説します。

介護予防訪問入浴介護の概要

介護予防訪問入浴介護は、要支援の方に提供する訪問入浴介護サービスです。

要支援1・要支援2というと、介護保険の認定区分では最も軽度な区分で、ある程度身の回りのことも自立している方が大半です。そのような対象者に、本来寝たきりの方が利用する訪問入浴サービスが必要なのかと、疑問に感じる方もいるかと思います。

寝たきりでなかったとしても、訪問入浴のサービスが必要な場合があります。介護予防訪問入浴介護はそのような方を対象にしています。具体的には以下のような方が対象となります。

  • 自宅に浴槽がなく、デイサービスにも行けないため入浴ができない
  • 感染症のリスクがあり、同居家族もいるため、自宅やデイサービス等での入浴ができない
  • 身体的には寝たきりで重度だがまだ介護認定の区分変更申請をしていないため要支援の認定のままである

このように、特殊性の高いケースで介護予防訪問入浴介護が提供されます。適用される条件が限られており、特殊性の高いケースに限定されるため、サービス提供件数も少ないです。

サービス介護予防訪問入浴介護訪問入浴介護
件数5,079件839,187件

参考:厚生労働省「令和4年介護保険事業状況報告(全国計)」

厚生労働省が公表している介護保険事業状況報告から見ても、全国で提供された介護予防訪問入浴介護の件数は1年間でわずか5,079件となります。要介護・要支援を合計した訪問入浴サービス実施件数のうち、およそ0.6%にとどまります。

実際に利用されるケースは限定されますが、代替手段がない状況で活用される代わりのきかないサービスだということがわかります。

ただ、介護予防訪問入浴介護に期待される効果も大きいです。入浴によって身体を清潔に保つことができるだけでなく、リラックス効果や血行促進など、身体機能の維持・改善に大きな効果を発揮します。全身状態を維持・改善する、介護予防・自立支援の役割を果たします。

また、介護予防訪問入浴介護は家族の介護負担軽減にもつながります。対象者が要支援認定といえども、入浴介助は家族にとっても大きな負担です。狭いスペースのなかでの介助は、腰痛などの事故につながりやすく、危険性が高いです。看護師も含めた専門職でサポートすることにより、介護負担を軽減し、在宅介護に安心を提供することができます。

介護予防訪問入浴介護の対象者

介護予防訪問入浴介護の対象者について解説します。

介護予防のサービスなので、要支援1または要支援2の認定を受けている方が対象になります。要介護認定を受けている方が利用する場合は、訪問入浴介護が適用されます。

介護予防訪問入浴介護の人員基準

介護予防訪問入浴介護の人員基準について解説します。訪問入浴介護と比較した表を掲載します。

対象者看護師・人員配置基準介護職員・人員配置基準
訪問入浴介護要介護認定1名2名
介護予防訪問入浴介護要支援認定1名1名

訪問入浴介護の人員配置基準が看護職員1名と介護職員2名であるのに対し、介護予防訪問入浴介護では看護師1名と介護職員1名となっています。介護予防訪問入浴介護では、看護師:介護職員が、1:1と、介護職員1名分少なくても提供することが可能です。

対象者が要支援認定で、ADL的にも自立度が高いことが想定されます。利用者自身が自分で体を洗うことや、着替え、移動なども可能な場合が多く、2名でのサービス提供が可能とされています。

また、介護予防訪問入浴介護のサービスを提供するために、介護予防サービス専用に別の職員を配置する必要はありません。配置基準上、訪問入浴の職員と重複でカウントすることが可能です。つまり、訪問入浴介護の人員基準を満たせば、自動的に介護予防訪問入浴介護の基準をクリアすることができます。

介護予防訪問入浴介護の対象者や人員基準について解説しました。次の章では、利用の流れや料金などについて詳細に解説します。

介護予防訪問入浴介護のサービス内容

介護予防訪問入浴介護のサービス内容について解説します。要介護の利用者を対象とした訪問入浴介護と基本的には変わりません。

スタッフが訪問入浴車で自宅を訪問し、看護師が体調や身体状況を確認します。問題がなければ、自宅に浴槽を設置し、そこで入浴の介助をおこないます。もし入浴にリスクがある場合、本人・家族と相談のもと、部分浴や清拭に変更し、サービスを提供します。

要支援の方が対象になるので、着替えや洗身などは可能な限り本人におこなってもらうなど、自立支援や機能維持を意識したサービスを心がけます。入浴後には看護師が再度体調の確認をおこない、片付けをおこないます。以上が介護予防訪問入浴介護のサービス内容となります。

介護予防訪問入浴介護の利用の流れや料金

介護予防訪問入浴介護を利用する流れと料金について解説します。

介護予防訪問入浴介護の利用の流れ

介護予防訪問入浴介護は、基本的には以下の流れで利用することができます。

  1. 相談
    まず、地域包括支援センターか、介護予防支援の事業所指定を受けた居宅介護支援事業所に相談します。介護予防支援の契約を結んでいない場合は、契約をし、地域包括支援センター職員やケアマネジャーに担当になってもらいます。
  2. 予防サービス計画書の作成
    地域包括支援センター職員もしくはケアマネジャーに予防サービス計画書(介護予防ケアプラン)を作成してもらいます。予防サービス計画には、介護予防訪問入浴介護のサービスが位置づけられ、サービス内容や留意点、目標などが記載されます。
  3. サービス担当者会議
    サービス担当者会議を開催します。予防サービス計画書をもとに、介護予防訪問入浴介護事業所の担当者も含めて打ち合わせをおこないます。訪問入浴をおこなう場所や訪問予定の決定、給水や排水の方法などについても確認します。
  4. 契約
    介護予防訪問入浴介護事業所との契約をおこないます。利用料金などの説明、支払いについての確認などもおこないます。
  5. 当日、事前の健康チェック
    訪問入浴実施当日、看護師と介護職員が訪問入浴車で訪問します。入浴前に看護師が健康チェックをおこないます。血圧・体温・脈拍などのバイタルサインを確認。問題がなければ予定通り入浴を実施します。体調に異常が見られる場合は、半身浴や部分浴、清拭などに変更する場合があります。
  6. 入浴の準備と介助
    自宅内に浴槽を設置します。準備ができたら、看護職員と介護職員が協力して入浴介助をおこないます。入浴後には、軟膏塗布などの処置が必要な場合や、爪切りをする場合は看護師が介助します。
  7. 体調確認・終了
    介護職員が撤収をおこない、看護師は入浴後の体調確認をおこないます。特に問題がないようであればサービス終了となります。

これが介護予防訪問入浴介護の一連の流れとなります。

ただし、これは一般的な流れで、状況によってこのような順序通りにならない場合もあります。急を要する場合は契約当日に入浴する場合などもあります。地域包括支援センター職員やケアマネジャーとよく確認し、進めることが必要です。

介護予防訪問入浴介護の料金

介護予防訪問入浴介護の料金について解説します。料金は、介護保険サービスになるため、国が設定した単位数によって決まります。介護予防訪問入浴介護の料金を訪問入浴の料金と比較して紹介します。

対象者単位数単位数(部分浴)
訪問入浴介護要介護認定1,266単位/回1,139単位/回
介護予防訪問入浴介護要支援認定856単位/回770単位/回

2024年4月改定により、介護予防訪問入浴介護の基本報酬は856単位/回となりました。

事業所が受け取る介護報酬は単位数に地域加算をかけ合わせた金額になります。加算のない地域であれば地域加算は×10なので、事業所が受け取る報酬は8,560円/回となります。自己負担が1割であれば856円/回です。

要介護の方を対象にした訪問入浴介護が1,266単位/回なので、410単位もの差があります。これは、介護予防訪問入浴介護の方が介助にかかる手間が少なく、介護職員1名のみで提供することを前提としているためです。

利用者本人の体調不良などにより部分浴・清拭をおこなう場合は単位数が10%減算されます。介護予防訪問入浴介護であれば767単位/回となります(もともとは30%減算だったものの、2021年の報酬改定により10%減算に変更)。

この基本報酬に加えて、事業所によって異なる加算が追加されます。サービス提供体制強化加算や認知症専門ケア加算、介護職員処遇改善加算などの加算を合わせた単位数をもとに料金が決定します。

介護予防訪問入浴介護と指定訪問入浴介護の違い

介護予防訪問入浴介護と訪問入浴介護の違いについて解説します。大きく異なる点は2つ、対象者と人員配置基準の違いです。

  1. 対象者
    訪問入浴介護が要介護認定を受けた方が対象であるのに対し、介護予防訪問入浴介護は要支援の認定を受けた方が対象です。

    必ずしも要介護認定の結果が利用者の身体状況を明確に示しているとは限りません。ただ、一般的に要支援の方は軽度である程度日常生活は自立している場合が多いです。

    それに対して、訪問入浴介護を利用される方は自宅の浴槽で入浴することが困難な方が対象です。具体的に言うと、浴槽をまたぐ動作が難しい方や寝たきりの方など、ADLに大きな課題がある方が中心となっています。介護予防訪問入浴介護と訪問入浴介護では、対象者の要介護度や身体的な状況が異なります。

  2. 人員配置基準
    人員配置基準にも違いがあります。訪問入浴介護が看護師1名+介護職員2名でおこなうのに対し、介護予防訪問入浴介護は看護師1名+介護職員1名でおこないます。介護予防訪問入浴介護は、訪問入浴介護よりも介護職員が1名少ない人員体制でサービスを提供しています。

    ただ、実際は3名体制でルートを組んで訪問している都合上、3名体制で訪問することから、3名でサービス提供する場合が多いのが実情です。

訪問入浴介護サービスを活用する4つのメリット

訪問入浴介護サービスには、4つのメリットがあります。認定の区分にかかわらず、訪問入浴には多くのメリットがありますので、ひとつずつ紹介します。

要介護者の身体が清潔になる

身体の清潔を保つことは利用者にとって重要な意味を持ちます。入浴により、皮膚の状態を適切に保つことができます。高齢者の皮膚は乾燥しやすく、褥瘡(床ずれ)や感染症、擦過傷などのリスクが高いため、皮膚状態には特に注意が必要です。訪問入浴介護を利用することで、全身状態の清潔とともに皮膚状態に異常がないか観察・早期発見もできます。

要介護者へのリラックス効果が期待できる

訪問入浴介護には高いリラックス効果があります。入浴によってストレス解消や緊張の緩和ができます。副交感神経が優位になることで、疲労回復や睡眠の質改善などにも繋がります。特に日本人高齢者は入浴を好む方が多く、大きなリラックス効果を得ることができます。

要介護者の血行がよくなり体の機能が活発になる

訪問入浴介護を通して神経や筋肉の緊張がほぐれ、血行が促進されます。一般的に高齢者は血流が悪くなりやすく、特に要介護状態になると活動量の低下や慢性疾患等による機能不全により血流が悪化します。入浴を通して血行が良くなると、冷えの防止、免疫力の回復、さらには肩こりや腰痛などの慢性的な痛みを取り除く効果も期待できます。

要介護者の家族の負担が軽くなる

訪問入浴介護は家族の介護負担を軽減するのにも大いに役立ちます。入浴は、介助する側にとっても大きな負担があります。浴室という狭く、自由の利かないスペースの中で、滑りやすさや浴槽またぎや立ち座りなど、リスクの高い動作を介助しなければいけません。介助者側の腰痛や転倒などのリスクも多い行為です。訪問入浴を利用することで、家族の介護負担は大いに軽減されます。

まとめ:介護予防訪問入浴介護を活用しよう

訪問入浴介護を受けることで、身体の清潔を保ちつつ、心身機能の維持改善を図ることができます。また、利用者家族の介護負担軽減にもつながることから、在宅介護において重要なサービスです。

要支援の方も同様に、定期的な入浴の機会を確保することで、機能改善や介護予防に大きな意味を持ちます。

どんな環境・どんな状況にある方でも、入浴の機会を維持するために、介護予防訪問入浴介護は重要なサービスです。要介護の方への訪問入浴介護だけでなく、介護予防訪問入浴介護を提供できる状況を整えていきましょう。

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