低所得者が老人ホームを利用したい場合、入居費用などを支払えない可能性もあります。金銭的な問題から、施設を利用できないと考えてしまう方も多いのではないでしょうか。しかし、低所得者でも利用できる老人ホームはあります。
この記事では、低所得者でも利用できる老人ホームをご紹介します。また、低所得者でも利用できる老人ホームを探す方法や注意点についても解説します。
目次
80代の親を持つAさんは、認知症の症状で1人暮らしが難しくなっている父親に、老人ホームを利用してもらいたいと考えていました。しかし、父親には貯金がありません。現在、年金を受け取っていますが、それだけでは生活できずに、家族からも仕送りをしている状況です。
Aさんは、自分の仕事と家事もあるため、父親の介護に時間を使えません。さらに、Aさん自身も、子供の学費や住宅ローンなどでお金が必要なため、父親の介護費用まで負担する余裕はありません。
Aさんは、父親の安全を考えて施設入所を進めたいのですが、経済的な問題で介護施設に入れるのか不安に感じていました。
低所得者の場合、介護保険制度を利用することで、金銭的な負担を軽減しながら老人ホームを利用できます。ただし、介護保険制度を利用するためには、要介護認定を受けなければいけません。事例で出てくるAさんの父親は、認知症の診断を受けており、在宅生活が難しくなっているとのことなので、要介護認定が出る可能性は高いでしょう。
介護保険制度で利用できる老人ホームには、さまざまな種類があります。施設ごとに特徴が異なるため、各施設の特徴も理解した上で選ぶことが大切です。
低所得者が老人ホームを利用したい場合、介護保険制度を利用することや費用の安い老人ホームを探すことが大切です。ここでは、低所得者が老人ホームを利用したいときの対処法について詳しく解説します。
介護保険制度とは、要介護状態の方に対して、自費負担1割〜3割で介護サービスを利用できる制度です。負担割合は所得に応じて決まるため、低所得者の場合は1割で利用できる可能性が高いでしょう。
ただし、要介護度によってサービス利用料が変動したり、限度額が設定されていたりするので注意しましょう。また、土地の売却などで臨時収入があった場合は、自己負担割合が2割以上になることもあるため注意が必要です。
介護保険で利用できる介護サービスは、法律によって基本料金が決められています。しかし、各施設が取得している加算や、介護保険外の費用などによって、各施設ごとの利用料の総額が異なる点には注意が必要です。介護施設を見学する際には、基本料金以外のコストにも注目しながら施設を選びましょう。
生活保護を受けている方の場合、実費負担なしで介護保険サービスを利用できます。そのため、生活保護を受給している方は、介護保険サービスを活用しましょう。
ただし、介護保険給付の対象外になっている食事代などの費用は、実費負担で支払わなければいけません。また、介護保険でカバーできる費用にも限度額が設定されているため、限度額を超えた分は100%自分で負担しなければいけない点にも注意しましょう。
低所得者でも利用できる介護施設の例として、特別養護老人ホームや介護老人保健施設、グループホームなどが挙げられます。
各施設はそれぞれ特徴が異なり、利用条件なども決められているため注意しましょう。ここでは、低所得者でも利用できる介護施設の特徴について詳しく解説します。
特別養護老人ホームは、常時介護を必要とする高齢者が、安心して生活を送るために利用する施設です。特別養護老人ホームでは、24時間365日介護サービスを提供しているため、主に在宅での介護を受けられずに生活が困難になった方が利用します。入居の際に必要な初期費用は無料です。また、公的機関が運営しているため、入居時の月額費用が安い点も特徴です。
介護老人保健施設は、病状が安定している高齢者が在宅復帰を目指すために利用する施設です。要介護1~5の認定を受けている方を対象に、生活援助や医療ケア、身体介護、機能訓練などのサービスを提供しています。
また、初期費用は無料で、入居時の利用費が安いことも、介護老人保健施設の特徴です。ただし、あくまで在宅復帰を目指す施設なので、1回の入居で利用できるのは3〜6ヵ月という縛りがある点には注意しましょう。
グループホームは、主に認知症の診断を受けた高齢者が入所する施設です。認知症と診断されており、要支援2以上の方が利用できます。また、グループホームは、日常生活動作がある程度自立している方を対象としているため、医療的なケアの必要性が上がった場合は退居を求められる可能性もあるため注意しましょう。
グループホームは、施設によって費用が大きく異なり、施設によっては特養や老健よりも利用費が高くなる場合もあります。
ケアハウスとは、高齢者が自立した生活を送りつつ、必要に応じて介護サービスを受けられる施設です。介護をしっかりと受ける施設というより、共同生活をする場所と考えたほうがよいでしょう。原則、個室の居室が用意されており、プライバシーの守られた空間で生活できます。ただし、医療的ケアの必要性が高くなると、退居を求められる可能性があるため注意しましょう。
また、ケアハウスには、自立型と介護型の2種類があり、介護型のほうが手厚い介護を受けられますが、費用が高くなる傾向があるため注意しましょう。
サービス付き高齢者向け住宅は、バリアフリー構造で一定の面積と設備があり、専門家による安否確認と生活相談サービスが受けられる住宅です。価格帯は幅広いため、低所得者では利用料が支払えない施設もありますが、安い入居費用で利用できる施設もあります。
ただし、介護を受けるための施設ではないため、介護を受けるためには外部のサービスを利用しなければいけないことが多く、入居費用以外に介護サービスを受けるための料金が発生する点には注意しましょう。
低所得者が入れる老人ホームを探す際には、市区町村役場の窓口で相談する方法や、地域包括支援センターに相談する方法などがあります。ここでは、低所得者でも利用できる老人ホームを探す方法について詳しく解説します。
市区町村役場は、介護保険の申請や生活保護の申請を管理しています。まずは、市区町村役場の窓口へ相談に行くことで、必要に応じて生活保護や介護保険の申請についてもサポートしてくれます。どこに相談したらいいのか迷ったら、まず市役所に問い合わせるとよいでしょう。
各市区町村には、地域包括支援センターという施設が設置されています。地域包括支援センターとは、地域に住む高齢者の生活を支えるための相談窓口です。主に、介護、医療、福祉に関する情報提供や支援計画の作成、地域ネットワークの構築などを行っています。
地域包括支援センターには、ケアマネジャーが在籍しており、担当になったケアマネジャーが介護保険の申請手続きや施設見学の連絡などを行ってくれます。
すでに気になっている介護施設がある場合は、直接施設に相談に行く方法もよいでしょう。一部の介護施設には、生活相談員という相談に対応するための職員が配置されており、相談に来た方に対して、各施設の特徴や施設を利用するまでの流れについて説明してくれます。また、場合によっては、ケアマネジャーを紹介してくれることもあるでしょう。
低所得者が老人ホームを探す際には、特に利用費に注目してしまいますが、施設の立地やサービス内容について注意することも大切です。ここでは、低所得者が老人ホームを探す際の注意点について詳しく解説します。
老人ホームを選ぶ際には、施設が建っている場所にも注目して選ぶことが大切です。利用料金の安い老人ホームを探していると、自宅や家族の住んでいるエリアから遠く離れた場所にある施設を選んでしまうこともあります。
しかし、自宅や家族の居住エリアから離れた施設に入所すると、その後施設に通ったり、荷物を取りに行ったりする際に不便です。入所後の生活も考えて、できる限り家族が通いやすい施設を選びましょう。
入居費用の安い施設を選ぶ場合、加算の少ない施設や、食費などの保険外費用が安い施設を選びがちです。しかし、加算が少ない施設は「加算を取得できるだけの体制を整えていない」ということです。また、保険外費用が高い施設は、それだけ施設内で提供する料理やレクリエーションなどのイベントにコストをかけているともいえます。
利用料金の安い施設を選ぼうとすると、サービスの質が悪い施設を選んでしまう可能性があります。低所得者が老人ホームを探す際には、入居費用だけでなく、サービスの質についても注目しながら施設を選びましょう。
所得に関係なく利用できる老人ホームは、数多くあります。特に、生活保護と介護保険制度を活用して施設に入所できれば、実費負担0円でさまざまな介護サービスを利用できます。
また、介護施設を選ぶ際には、利用料金だけでなく、サービスの内容や立地にも注意して選ぶことが大切です。介護保険などの手続きや、施設利用までの流れなど、わからないことがある方は、まずは市区町村役場や地域包括支援センターなどに相談しましょう。